安倍晋三のサミット開催地伊勢志摩選定は天皇の日本であることを外国首脳に紹介することにある

2015-06-07 08:15:32 | 政治


 安倍晋三が来年日本開催のG7(7カ国主要首脳会議)開催地を三重県志摩市と決め、「伊勢志摩サミット」と命名した。ドイツで行われる主要7カ国(G7)首脳会議に向かう羽田空港で記者団に語ったという。  

 安倍晋三「サミット開催候補地は、どの候補地もそれぞれ甲乙つけがたい、大変すばらしい場所だった。選定においては大変迷ったが、日本の美しい自然、豊かな文化・伝統を世界のリーダーたちに肌で感じてもらえる、味わってもらえる場所にしたいと考え、三重県で開催することを決定した。伊勢志摩サミットだ。

 伊勢神宮は悠久の歴史をつむいできた。そして、たくさんの日本人が訪れる場所であり、日本の精神性に触れて貰うには大変よい場所だ。ぜひG7のリーダーたちに訪れていただき、伊勢神宮の荘厳で凛(りん)とした空気を共有できればよいと思う。さらには大小の島々、美しい入り江、志摩には日本の原風景とも言える美しい自然がある。ぜひ日本のふるさとの情景をリーダーたちに肌で感じていただき、絶景をともに楽しみたい」(NHK NEWS WEB

 「伊勢神宮は悠久の歴史をつむいできた」、「日本の精神性に触れてもらう」

 この二つの文言で安倍晋三が開催地を志摩市に決めた意図が分かる。
 
 伊勢神宮は皇室の祖神である天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀っていて、その別格性故に明治時代から戦前までの近代社格制度に於いてはすべての神社の上に位置する神社として社格の対象外とされ、この間、国家神道の中心を成していたという。

 その歴史的価値づけを受け継いでのことだろう、現在では日本各地の神社を包括する宗教法人である神社本庁の本宗(ほんそう=総親神(そうおやがみ))に格付けされているという。

 国家神道とは、〈明治維新後、天皇統治体制のもとに国家によって形成され、振興された国民宗教。伊勢神宮を本宗として、その下に全国の神社を階層的に組織編成し、宮中祭祀を基準にして祭祀を行うものであった。〉と「コトバンク」が解説している。

 その教義は天皇万世一系論、現人神(あらひとがみ)論、日本神国論、 忠孝一致説(「主君―ここでは天皇―に忠節を尽くすことと、親に孝行を尽くすこととは同じであることの意」)などを柱としていたという。

 つまり「伊勢神宮は悠久の歴史をつむいできた」と言っているその「歴史」とは、神聖にして侵してはならない国家の統治者としての天皇家の存在性の歴史であって、その存在性は万世一系の尊い血筋と、現人神としての畏れ多き姿、日本が神国であることの偉大性、さらに忠孝の教示者としての姿等々によって彩られていた。

 安倍晋三はそのような歴史を伊勢神宮が紡(つむ)いできたとしているのである。

 安倍晋三のこの伊勢神宮観は天皇家を日本の歴史の中心とする考え、あるいは天皇の存在を日本の伝統・文化とイコールさせる考えと相互対応している。

 安倍晋三2009年(平成21年) 建国記念日奉祝中央式典記念講演 

 安倍晋三「日本の歴史というのは、言ってみれば、いわばつづら織りのようなものでありまして、タペストリーですね。

 この長い歴史をそれぞれの人々が個々の歴史を積み重ねる中で、全体のつづら織ができあがってきたわけでありますが、やはり、真ん中の中心線というのは、わたくしはそれはご皇室であろうと、このように思うわけであります」

 2012年9月2日放送「たかじんのそこまで言って委員会」

 2012年5月20日放送の安倍晋三登場の場面を再放送していた。

 安倍晋三「皇室の存在は日本の伝統と文化そのものなんですよ。まあ、これは壮大な、ま、つづれ織、タペストリーだとするとですね、真ん中の糸は皇室だと思うんですね。この糸が抜かれてしまったら、日本という国はバラバラになる」――

 「日本の伝統と文化そのもの」が皇室の存在とイコールだとしている。つまり日本国民は天皇の存在性を日常的に呼吸し、血としていることによって自らの伝統と文化を成り立たせていることになる。

 でなければ、皇室の存在が日本の伝統と文化そのものとはならない。

 安倍信三著『美しい国へ』(2006年7月出版)

 「『君が代』が天皇制を連想させるという人がいるが、この『君』は、日本国の象徴としての天皇である。日本では、天皇を縦糸にして歴史という長大なタペストリーが織られてきたのは事実だ。ほんの一時期を言挙げして、どんな意味があるのか。素直に読んで、この歌詞のどこに軍国主義の思想が感じられるのか」――

 横糸は次の糸が同じ色と材質を受け継ぐが、布の幅で常に一区切りさせていく。縦糸は同じ一本の糸が布を貫く。日本国民、あるいは日本の民衆が織りなす歴史は次の時代に影響を与えるものの、時代時代で区切られていくが、天皇家の織る歴史は時代性を超えて一本の糸を成し、悠久の姿を取る。

 つまり日本の歴史をその中心となってつなげてきたのは天皇家の存在であり、その存在に対する国民の思いということになる

 安倍晋三は日本の歴史に天皇家の存在の永遠性、その悠久性を見ている。

 この天皇中心の歴史観と皇室の祖神天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀っている伊勢神宮が「悠久の歴史をつむいできた」と言っている伊勢神宮観とどこにも変わりはない。

 安倍晋三は羽田空港で記者団にG7各国首脳に「日本の精神性に触れて貰うには大変よい場所だ」と、こうも言っている。

 安倍晋三は2012年4月28日の自民党主催「主権回復の日」にビデオメッセージを寄せている。

 安倍晋三「皆さんこんにちは。安倍晋三です。主権回復の日とは何か。これは50年前の今日、7年に亘る長い占領期間を終えて、日本が主権を回復した日です。

 しかし同時の日本はこの日を独立の日として国民と共にお祝いすることはしませんでした。本来であれば、この日を以って日本は独立を回復した日でありますから、占領時代に占領軍によって行われたこと、日本はどのように改造されたのか、日本人の精神にどのような影響を及ぼしたのか、もう一度検証し、そしてきっちりと区切りをつけて、日本は新しいスタートを切るべきでした」――

 戦後、占領軍によって日本は改造され、その改造によって「日本人の精神」が悪影響を受けたとする趣旨の歴史認識である。

 戦後の日本国家と日本人の精神が占領軍によって改造されていると否定的に把え、改造される前の戦前の日本国家と日本人の精神を肯定している以上、羽田空港で言及した「日本の精神性」にしても、当然、天皇家の悠久の存在性を縦糸とした歴史を刷り込まれて、その影響が色濃い姿を取っていた戦前の「日本の精神性」を指すことになる。

 安倍晋三がそのように歴史認識し、自らもその歴史認識を精神としていて、天皇家の存在性が空気となって神社空間を覆っている伊勢神宮に主要7カ国(G7)首脳を案内して、「日本の精神性に触れて貰う」。

 天皇の日本であることの紹介に他ならない。自身も天皇の日本だとしているのである。

 そのためにG7開催地を伊勢志摩と選定した。

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