野田首相の羽田国交相世襲立候補公認せずに見るマヤカシ

2012-11-19 10:38:41 | Weblog

 非自民・非共産連立政権での首相経験もある民主党の77歳羽田孜が今期限りの引退を表明、2012年11月16日今回の衆議院解散で正式引退となった。当然、その後継者が問題となる。羽田孜の長男羽田雄一郎(45歳)は13年前の1999年10月初当選の参議院議員であり、現在国交相を務めている。

 《羽田元首相後継に雄一郎氏…「世襲にあたらぬ」》YOMIURI ONLINE/2012年11月11日13時43分)

 民主党の羽田孜元首相(衆院長野3区)の後援会「千曲会」が11月10日、長野県上田市内で正副会長会を開催、長男の羽田雄一郎国土交通相(参院長野選挙区)を後継者として事実上一本化する方針を決めたという。

 父親の羽田孜は首相になる前は細川政権で外務大臣、自民党時代は大蔵大臣や農水大臣を歴任している。息子として父親の履歴に近づくか、乗り越えることを目指す意志を抱いていたとしても不思議はない。行く末の可能性として総理大臣を頭に描いているとしたら、あるいは明確に野心しているとしたなら、参議院議員でいるよりも、衆議院在籍である方が有利となる。

 後継者を目指すのは当事者からしたら、当然の流れとも言える。

 但し民主党は2009年4月23日午前、党本部で政治改革推進本部(岡田克也本部長)総会を開催、同党国会議員の世襲を制限する党の内規をつくり、2009年マニフェストに政治不信解消を目的として、「現職の国会議員の配偶者及び三親等以内の親族が、同一選挙区から連続して立候補することは、民主党のルールとして認めない」と世襲禁止を謳っている。

 佐藤圭司千曲会会長(参院議員3期の実績を挙げ)「世襲にはあたらない。政治情勢が紛糾する中で、いつまでも待っている訳にはいかなかった。我々の意見を固めて党と相談したい」

 記事結び。〈県連の北沢俊美代表と倉田竜彦幹事長が7月、党本部に確認要請を行っていたものの、明確な回答は示されていなかった。〉――

 答は7日後の11月17日に出た。「公認せず」が答である。

 《衆院選:民主、羽田国交相公認せず 「脱世襲」強調》毎日jp/2012年11月17日 21時45分)

 記事は書いている。〈民主党は内規で、現職議員の死亡・引退直後に同一選挙区から3親等以内の親族が立候補することを認めていない。これを厳格に適用することで世襲候補の多い自民党との対立軸を鮮明にする狙いがある。〉――

 自民党との違いを見せるためなら、政治改革からの方針ではなく、選挙を有利に導こうとする方便からの非公認方針であって、一種のマヤカシとなる。

 野田首相(11月16日衆院解散直後記者会見)「脱世襲政治を推進するために政治改革の先頭に立つ。世襲政治家が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する古い政治に戻ってはならない」

 なかなか勇ましい「脱世襲政治」宣言となっている。但し世襲政治家が多い自民党に対抗する意味合いも含んだ声高な世襲禁止宣言だとすると、純粋な動機だとは言えなくなる。

 元々がキレイゴトが多い首相である。

 翌日の11月17日、首相発言を受けての安住幹事長代行の仙台市での対記者発言。

 安住淳幹事長「新しく立候補する方には(内規の)規制があり、守る。脱世襲は政治改革の一丁目一番地。いろんな人に政界に出るチャンスを与え、政治を変えるのが民主党の原点だ」――

 北沢俊美元防衛相・党長野県連代表「雄一郎議員は参院で3期当選した現職大臣。確立した政治家としての立場を全然考慮していない」

 地元と中央との利害対立である。

 別の「毎日jp」でも、野田首相の世襲禁止の発言を伝えている。

 野田首相(11月18日、首相公邸前で記者団に)「脱世襲は私が政治改革推進本部の事務局長の時に決めた内規だ。貫徹する。例外は作らない」

 民主党議員として立候補を認めず、公認を与えないということであっても、民主党の党籍を離れて無所属として立候補はできる。父親の羽田孜は2009年(平成21年)7月21日の第45回衆議院議員総選挙で、次点に120万票以上の圧倒的な差をつけて当選している。

 その前回は130万票以上の差、さらにその前回は140万票以上の差をつける圧倒的な強さでの当選となっている。

 いわば地元選挙区では盤石の地位を築いていた。

 例え無所属で立候補しても、国交相の知名度、羽田孜の息子であることの知名度、親のジバン・カンバン・カバンを引き継いだなら、現状の民主党の不人気を差し引いたとしても、当選は確約されているようなものであろう。

 問題はその後である。予想では民主党の党勢は退潮すると見られている。中には惨敗の見方もある。当然、喉から手が出る程に無所属から一人でも多く民主党に入れて数を増やしたい欲求に駆られることになったとしても不思議はない。

 あるいは羽田雄一郎氏側から復党を願い出るというケースも考えることができる。

 喉元通れば熱さを忘れた頃合いを見計らって、復党を認めるといった事態が起きはしないだろうか。

 一旦、復党を認めたなら、世襲立候補禁止方針は「現職議員の死亡・引退直後」と銘打っている以上、次からは民主党公認候補として正々堂々と立候補できることになる。

 党の公認を得ずとも当選できる自信のある世襲議員が離党して、あるいは初立候補であったとしても、無所属立候補・無所属当選を一旦果たして復党、あるいは入党という手続きを取りさえすれば、自ずと世襲政治家が増えていくことになる。
 
 結果的に「脱世襲」と言いながら、世襲政治家の存在を民主党内に認めることになる。あるいは世襲政治家に対して民主党は党内に居所を提供することになる。
 
 これは一種のマヤカシではないだろうか。

 こういった事態が起きた場合、野田首相が言っている「いろんな人に政界に出るチャンスを与え、政治を変えるのが民主党の原点だ」の主張に反するはずだ。

 野田首相が「脱世襲は私が政治改革推進本部の事務局長の時に決めた内規だ。貫徹する。例外は作らない」と勇ましく宣言するなら、例え無所属で立候補して当選しても、復党・入党の類いは認めないとする禁止事項を内規に規定して初めてマヤカシとなることから免れることができるはずだ。

 だが、そういったことになりかねないことについては一言も触れていない。

 細野民主党政調会長が11月12日衆院予算委員会で質問に立ち、自民党の世襲議員批判を行なっている。

 細野(自民党に世襲議員が多いことを指摘し)「私は自分の力で政治家になりたいと思い、この世界に入った。親のすねをかじって政治家になったのとは全く違う」(時事ドットコム)――

 世襲政治家であろうとなかろうと、政治能力を欠いていて、結果責任を出せなければ意味はない。親の脛をかじっていて苦労知らずだからと言って、政治能力を欠いていることにはならない。

 逆に親の脛をかじるだけの生活の余裕はなかった、苦労を経験しているからといって、その苦労が常に政治能力や他人に対する思い遣りに結びつく保証とはならない。

 11月18日日曜日のフジテレビ「新報道2001」でも批判している。

 細野「誰にでもチャンスがある民主党と、党五役全員が世襲で、総裁選候補もすべて世襲だった自民党は、在り方そのものに大きな違いがある」(MSN産経

 民主党には世襲議員ではない若い議員が多く占めていて、そのような若い議員が若いうちは世襲という問題は起きないが、引退時期を迎えたとき、その後継を息子や娘に引き継がない、あるいは一旦無所属立候補・無所属当選して入党という手続きを取らなかった場合、初めて誰もが認めることができる「誰にでもチャンスがある民主党」となる。

 だが、残念ながら、日本は権威主義社会である。能力よりも権威が幅を利かす。学歴、親の職業・地位、家柄等々の権威が。権威主義社会だから、親にしても子どもに自身の権威を継がせたい衝動を抱えることになる。優れた家柄を自分の代で終わらせたくないと。

 権威主義がつくり出した自民党の世襲議員の多さでもあって、民主党も自民党のように長い歴史を経たとき、多くの世襲議員を抱えない保証はない。

 そうであったとしても、政治能力、結果責任は世襲か否かで決定する要素ではないはずだ。

 このことは、ブログに何度も書いているが、菅無能が首相になったときにつくづく思った。

 2010年6月8日の首相就任記者会見。

 菅無能「この多くの民主党に集ってきた皆さんは、私も普通のサラリーマンの息子でありますけれども、多くはサラリーマンやあるいは自営業者の息子で、まさにそうした若者が志を持ち、そして、努力をし、そうすれば政治の世界でもしっかりと活躍できる。これこそが、まさに本来の民主主義の在り方ではないでしょうか」――

 政治世界に於ける活躍の素質を普通の家庭という環境に育った、非世襲のサラリーマンや自営業の志を持った息子に置いている。

 いわば志を持つという条件付きながら、普通の家庭という環境が政治世界に於ける活躍の素質を約束し、そういった素質が政治世界に多く占めることが「本来の民主主義の在り方」だと言っている。

 当然、世襲政治家は政治世界に於ける活躍の素質は持たないことになる。
 
 しかし菅無能自身、政治世界に於ける活躍の素質が約束されているとしている非世襲のサラリーマンの息子で、なおかつ志を持っていながら、政治能力を決定的に欠いていた。

 リーダーシップもなかったし、合理的判断能力も欠いていた。

 何も自民党の肩を持つわけではないが、私に言わせれば、世襲批判は菅無能を学習できなかった無考えが言わせているか、単なる選挙戦術か、いずれかに過ぎない。

 自民党を世襲で攻撃するよりも、世襲政治家である安倍晋三の国家主義を攻撃の対象とすべきだろう。

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