野田首相は政治を前に進めたいのか、政権にしがみつきたいのか

2012-10-25 12:01:20 | Weblog

 野田首相は自公に対して解散をカードに「社会保障と税の一体改革」3党協議に漕ぎ着けたものの、与野党の利害に反する政策は棚上げし、あるいは先送りして3党合意を成し遂げ、「一体改革」という名に反する一体性のない「社会保障と税の一体改革」を成立させた。結果として2014年4月8%、2015年10月10%の2段階増税の消費税増税のみが確固不動の姿を取る不完全な一体性となった。

 だが、野田首相は解散をカードとした「社会保障と税の一体改革」成立でありながら、そのカードを切らないままポケットにしまいこんで、自公野党の解散要求に言葉を弄して応じない。

 そこで自公は2012年度予算執行の裏付けとなる赤字国債発行法案は新しい体制・新政権のもとで通すべきだと、その成立をカードとして解散を迫ったが、野田首相が応じないまま時間が過ぎ、9月7日通常国会閉会によって廃案となった。

 成立は臨時国会に託す道を残すことになったが、自公が赤字国債発行法案成立をカードとしていることに変わりはない。野田首相が時期を区切って解散のカードを切りますと確約しなければ、政治は現状の停滞状況に陥ったまま前へ進まないことになる。

 いわば解散をカードに「社会保障と税の一体改革」を成立させたのだから、成立以後、そのツケが野田首相自身に回って来るのは既成事実としなければならない。

 政治を前に進めるには解散という勝ち目のない前門の虎を迎え撃たなければならない。政権にしがみついたとしても、赤字国債発行法案阻止という、これも手強い後門の狼が待ち構えている。

 赤字国債発行法案が成立していないことによって、既に地方自治体では弊害が出ている。野田政権は新たに赤字国債を発行できないために9月7日、地方交付税の支出を一部先延ばしする「予算執行の抑制」を閣議決定。

 国からカネが回ってこないから、つなぎ資金として金融機関からの借入金で賄う自治体も発生、金利が余分にかかることになって、ただでさえ苦しい地方財政を圧迫し出しているという。

 そういった自治体は感謝の気持で首相官邸の方向に足を向けて眠ることもできまい。足を向けて寝ることはできなくても、ツバを吐きかけてやりたいという自治体があるかもしれない。

 10月19日に民主・自民・公明の3党党首会談を開催、野田首相は赤字国債発行法案成立への協力を求めたが、先の党首会談で谷垣総裁と山口公明党代表に約束した「近いうちに信を問う」の「近いうちに」の時期明示を断り、会談は物別れに終わっているところを見ると、自身は解散をカードに「社会保障と税の一体改革」を成立させておきながら、解散を交換条件とした自公の赤字国債発行法案成立のカードは呑むつもりはないらしい。

 但し政府関係者なる人物は3党首会談が物別れに終わったあと、野田首相は年内に解散のカードを切る用意があるとの発言をしている。

 政府関係者(野田首相の3党首会談での解散に関わる発言について)「赤字国債発行法案などが成立すれば、年内に解散する用意があることをギリギリの表現で伝えており、自民・公明両党にも読み取れたはずだ」(NHK NEWS WEB

 この発言が野田首相の解散のカードをちらつかせはするものの、ちらつかせる以上のことは何もしなかった見せかけと同様に当てにもなならない希望的観測でしかないことを岡田副総理の10月21日和歌山講演の発言が証明している。

 岡田副総理「赤字国債発行法案などの成立は解散の条件ではないということは、野田総理大臣とも確認している」(NHK NEWS WEB別記事)

 この発言に対して藤村官房長官。

 藤村官房長官「総理大臣がそう言うからには、そのとおりだと思う」」(同NHK NEWS WEB

 いわば自公は赤字国債発行法案成立をカードとして解散を迫ってきたが、野田首相はその成立を解散のカードとしてはいないということであり、しかも、当然のことだろうが、党執行部ぐるみの戦術としているということである。

 党首会談後、安倍自民党総裁国家主義者は次のように発言している。

 安倍晋三「臨時国会の具体的な日にちへの言及はなく、『できるだけ早い時期に』という言い方だった。昨日約束したことを今日、本人がいる前で違えているのだから、信頼関係を回復する努力を首相自身にしてもらわなければ、とても(国会)対応はできない。(審議拒否は)常識だろうと思う。(近いうちに解散するという約束を果たす)責任感がないなら、総辞職すべきだ」(YOMIURI ONLINE

 赤字国債法案成立への協力が解散獲得のカードとならないなら、審議拒否に出て、その成立そのものを阻止し、解散を否応もなしに仕掛けるという戦術転換への狼煙(のろし)であろう。

 だが、このような姿勢に対して世論は味方になるどころか、逆に形勢不利を突きつけることになった。マスコミの世論調査は解散を交換条件とした審議拒否を過半数を超える確率で「評価しない」を映し出した。

 そこで自民党執行部は「審議に応じる方向で検討」という戦術転換に出た。早急に答を出すのはあまりに打算的と取られる危険性が生じる。

 但し参院自民党は野田首相が、いわば参議院問責の身であり、それを解き放つ条件としてのことだろう、「野田総理大臣が年内解散を確約するなど、けじめをつけないかぎり、審議には応じられない」(NHK NEWS WEB)と主張していて、衆議院側と態度を違えているという。

 尤も、衆議院側は世論の反発を抑えるために審議には応じて世論を宥め、参議院側は問責を正当化の楯に審議拒否に出て、世論を相半ばさせる、あるいは止むを得ないと納得させるチームプレーに出ているということもある。

 いずれにしても野田首相が「社会保障と税の一体改革」成立を解散のカードとした以上、そのカードは、少なくとも現在の内閣支持率、現在の民主党支持率が現状のままのジリ貧状態にある間はどこまでもついて回る。

 逆に自公は内閣支持率と政党支持率が現状のジリ貧状態にある間に解散のカードを切らせようと焦っているはずだ。
 
 当然、そのカードを切らないことには政治は前に進まない。

 自分の方からカードとしながら、それを切らないということは政権にしがみつくことを意味する。

 既に野田政権は追いつめられているのである。にも関わらず政権にしがみついて、政治をこのままの停滞状況に置くのか、停滞状況を破って、例え政権を失うことがあっても、兎に角も政治を前へ進める状況をつくり出すのか、偏に野田首相の決断にかかっている。

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