気象庁は東日本大震災時の津浪警報の反省を踏まえて、新方式の津波警報に切り替える。《“想定しうる最大規模警報を”》(NHK NEWS WEB/2011年7月27日 19時18分)
従来の警報方法は地震計に従って地震規模を推定し、津波の高さを予想、警報を出す。だが、3・11の場合は地震の規模をマグニチュード7.9と推定、地震発生から3分後に予想津浪高を宮城県「6メートル」、岩手県と福島県「3メートル」と見て津波警報を出した。
その後、沖合観測の津波高を参考に予想到達津浪高を段階的に「10メートル以上」に引き上げたが、停電等の影響で最初の警報しか伝わらなかったケースが多く存在した。
当然、住居を内陸部に構えていて、海岸からの距離に応じて6メートル程度なら、あるいは3メートル程度なら、ここまで到達しないだろうと判断し、逃げ遅れた犠牲者が多数出たはずだ。
新方式は地震発生から3分程度で津浪警報を発表する迅速性は今後も確保する。停電等によるあとからの二次情報、三次情報が伝わらない可能性をクリアするためにマグニチュード8を超える巨大地震の場合は地震規模に応じて想定し得る最大規模の警報を発表する。
要するに地震規模が大きい場合、何よりも住民に避難行動を選択させるということであろう。取り敢えず避難を促しておいて、より時間をかけることで得ることができるより正確な観測データに基づいて最大規模の警報以下の津浪データーである場合は警報内容をデーターの水準に切り下げる。
この方法は最大規模の危機を常に想定して、想定と対応させて準備しておいた考え得る最大限の有効な防御方法を的確、合理的に駆使し、危機を最小限に抑える危機管理の思想に則った、気象庁の新方式の津浪予想方法と言える。
いわばこれまでの方法は危機管理の思想に則っていなかった。器機が観測データーとして示す数値を機械的に忠実に読み取って、その数値から予測し得る範囲内の津浪を予想してきた。
そして最終的な正確なデータは時間を置いてから、あるいは日を置いてから、つまり被害が既に発生してから判明する、遅きに逸した情報提供と言うことになった。
次ぎの記事が津浪警報の伝達状況を伝えている。《震災避難者の7割近く、津波警報の更新知らず》(YOMIURI ONLINE/2011年7月27日19時29分)
内閣府などの調査だそうで、岩手、宮城両県の避難者の7割近くが最初の予測しか見聞きせず、その後「高さ10メートル以上」に引き上げられたのを知らなかったという。
当然のことだが、この7割近くというのは生存避難者の7割近くであって、避難死者の殆んどは10割近く知らなかった可能性が考えることができることからすると、全体で8割、9割が知らなかった可能性が生じる。
調査対象は避難所や仮設住宅の住民(岩手391人、宮城385人)。
地震発生3分後に出された最初の津波高警報は「岩手3メートル」、「宮城6メートル」。
更新された情報を知らなかったとの回答者。
岩手――63%
宮城――74%
「予測の高さなら、避難しなくても大丈夫」と判断した割合。
岩手――10%
宮城―― 3%
より内陸に位置していたか、予測津波高よりも高い防潮堤に守られていたかどちらかであろう。そしてこの割合も生存避難者の割合であって、これを避難死者にそのまま当てはめることはできない。
上記「NHK NEWS WEB」記事に戻るが、最初に発表する津波高予想は具体的に発表するかどうかは結論は示さなかったという。理由をそれぞれが発言している。
専門家委員「具体的な数字より、『巨大津波が到達する』などと、住民が逃げようと判断できるような表現にすべきだ」
専門家委員「住民向けや自治体の防災担当者向けなど、受け取る人によって情報の内容を分けてはどうか」
永井章気象庁地震津波監視課長「重大な事態を正しく伝え、住民に逃げてもらうための警報にすることが大事で、今後、避難を呼びかけるための表現の工夫などをさらに検討していきたい」
自覚しているかどうかしらないが、危機管理の思想に則った津浪予想の新方式への切り替えということはあくまでも最初の観測データーから予測したよりも高い津波が襲った場合に備えた危機管理であって、この備えに関して一般住民も自治体の防災担当者の区別はないわけで、住民に1分1秒を争う緊急を要する避難行動を選択させる危機管理からの津浪予想である以上、自治体の防災担当者も広報無線等による避難指示後は同じ行動を取らせるべきだろう。
分けた情報を鵜呑みにして自分たちは大丈夫だと安心しているところへ最初の予報よりも高い津波が襲ってきた場合、逃げ遅れる危機管理の失態を招かない保証はない。
先ず避難、津波が収まってから、救助なり自治体としての対応を取る。死ななくても済む人命を犠牲にしたのでは危機管理にならない。
また実際の津波高が初期の観測データを以てしても気象庁の職員にも分からない時点での住民に避難行動を緊急的に選択させる危機管理からの予想であるなら、マグニチュード8といった地震規模に応じて「15メートルクラスの津浪が予想されます」と数値を出して高めに設定した方が危機管理としての役目を的確に果たすことができ、住民に避難行動を取らせやすくする。
そのためには地震発生直後には正確な津波高は予測できない、高い津波が襲ってくる場合もあり、低い津浪の場合もあるが、高かった場合に備えた危機管理からの予想され得る最大規模の津波高予報だと前以て周知徹底させる必要がある。
あくまでも危機管理の思想に則るという自覚を持つべきであり、こういった危機管理を機能させる観点からの気象庁の対応とすべきで、また機能させてこそ、人命の犠牲を可能な限り抑えることができるはずだ。
参考までに上記「NHK NEWS WEB」記事を全文参考引用。 《“想定しうる最大規模警報を”》(NHK NEWS WEB/2011年7月27日 19時18分)
ことし3月の巨大地震の直後に、気象庁が発表した大津波警報で、津波の高さの予想が実際を大きく下回っていた問題を受けて、気象庁は、巨大地震が起きた場合には想定しうる最大規模の警報を発表し、より正確な規模が分かった段階で適切な水準に切り下げるという考え方を初めて示しました。
3月の巨大地震の直後、気象庁は、地震の規模をマグニチュード7.9と推定して大津波警報を出し、予想される津波の高さを宮城県で「6メートル」、岩手県と福島県で「3メートル」と発表していました。その後、沖合で観測された津波の高さを参考に、高さの予想を段階的に「10メートル以上」に引き上げましたが、停電などの影響で最初の警報しか伝わらなかった人も数多くいました。気象庁は27日、津波警報の改善策を探るために設けた勉強会の2回目の会合で、今後の警報のあり方について初めて基本方針を示しました。それによりますと、地震発生から3分程度で警報を発表するという迅速性は今後も確保しながら、あとからの情報が伝わらない可能性があることを考慮するとしています。そして、今回のようにマグニチュード8を超える巨大地震の場合、地震や津波の規模が小さく見積もられるおそれがあるため、想定される最大の地震に基づいて最大規模の警報を発表するとしています。そのうえで、観測データなどからより正確な規模がわかり次第、警報の内容を適切な水準に切り下げるとしています。一方で、最初に発表する警報で、津波の高さの予想を具体的に発表するかどうかは結論を示しませんでした。これについて出席した専門家の委員からは「具体的な数字より、『巨大津波が到達する』などと、住民が逃げようと判断できるような表現にすべきだ」という意見や、「住民向けや自治体の防災担当者向けなど、受け取る人によって情報の内容を分けてはどうか」などといった意見が出されました。気象庁の永井章地震津波監視課長は「重大な事態を正しく伝え、住民に逃げてもらうための警報にすることが大事で、今後、避難を呼びかけるための表現の工夫などをさらに検討していきたい」と話しています。気象庁は、9月初めごろに3回目の会合を開く予定で、地震や津波の対策を検討している国の専門調査会の議論も踏まえて、この秋までに警報の改善策の最終報告をまとめることにしています。 |
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