菅仮免の「一に雇用、二に雇用、三に雇用」が一向に実現しないうちの値上げ&増税攻勢

2011-07-01 09:43:13 | Weblog



 昨6月30日、政府・与党が社会保障と税の一体改革案を正式決定した。《消費税10%へ 改革案を決定》NHK NEWS WEB/2011年6月30日 19時18分)

 決定内容は、低所得者や非正規労働者などへの社会保障を拡充し、その財源として消費税率を「経済状況の好転を条件に、西暦2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げる」とするもの。

 政府側は当初、「2015年度までに段階的に10%に引き上げる」としていたのに対して民主党側が引き上げ時期などに幅を持たせるよう求めた結果、「2015年度」が「2010年代半ば」に、政府の条件なしの引き上げ案に対して、「税率の引き上げは、経済状況の好転を条件とする」を付け加えて決着。

 ということは、「経済状況の好転」がなければ、「2010年代半ばまでに」の期限も、「段階的に10%まで」の増税率も崩れるということなのだろうか。いわば増税時期、増税率を共に経済状況に対する従属的変数とした。

 与謝野経済財政担当相も野田財務相も市場の信任を確保するためには増税時期や増税率は明示すべきとの態度を取っていたこと、さらに菅仮免が常々「一体改革は待ったなし」と言っていたことからしても、また「段階的に10%まで」としている引き上げに関しても、関連法案で「13年度に3%、15年度に2%」(SankeiBiz)の2段階を予定していたことも崩れることになり、政府案は決定的に後退したと言えるのではないだろうか。

 だとしても、いずれはやってくる消費税増税ということなのだろう。

 「NHK NEWS WEB」記事は菅仮免の発言を伝えている。

 菅仮免「社会保障制度の大改革が必要だという共通認識は持ってきたが、これまでの政権では決定にならなかった。今回の決定は歴史的な決定で誇らしく思う。ただ、この成案で終わりではなく、これからが本当の始まりだ。野党各党に幅広い協議をお願いし、さらに、それを超えた成案が得られるよう今一層の努力をお願いしたい」

 「この成案で終わりではなく、これからが本当の始まりだ」と言いつつ、「今回の決定は歴史的な決定で誇らしく思う」と、「歴史的な決定」と位置づけて誇る相変わらずの矛盾を犯している。

 民主党が自民党に代って政権交代を果たしたとき、鳩山前政権も菅政権も機会あるごとに「歴史的な政権交代だ」、「歴史的意義がある」と盛んに言っていたが、2010年7月12日の当ブログ記事――《菅首相の責任を問うには十分な過半数割れ参院選44議席獲得》に次のように書いた。

 〈選挙による戦後初めての政権交代そのものは歴史的意義を持つかもしれないが、政権自体が歴史的意義を持つわけではない。歴史的と言える何かを成して、あるいは歴史的と言える何らかの結果を出して初めて歴史的意義を持つ。その点を誰もが誤解している。

 いわば政権交代という歴史的意義を経た、単なる政権に過ぎない。〉――

 この文脈で菅発言を解釈すると、この成案を法律に変えて社会的な機能を持たせ、国民の生活向上に貢献し、生活及び将来的な安心の付与に役立ったとき、いわば「この成案で終わりではなく、これからが本当の始まりだ」ではなく、好結果を見て初めて、「今回の決定は歴史的な決定」と位置づけることができる。

 多くの国民を不幸のどん底に突き落としたなら、「歴史的な決定」どころではあるまい。

 大体が民主党案に譲歩し、政府案が後退していながら、「歴史的な決定」と言うこと自体が牽強付会に近い。相変わらず自己都合な合理的判断能力しか示すことができないようだ。

 記事最後の解説自体が「歴史的な決定」だとは受け止めていない。

 菅が退陣表明したこと。与野党協議が始まる環境が整っていないこと。民主党内の多くが税率引き上げ時には衆院選挙で国民の審判を受けるべきと主張していること。こういった理由から実際の引き上げまでには紆余曲折が予想されるとしている不確実性にしても、決して「歴史的な決定」の保証とはなっていない。

 また財政健全化にも深く関わる増税時期、増税率を共に経済状況に対する従属的変数とした以上、今回の政府・与党の社会保障と税の一体改革案が「歴史的な決定」となるかどうかにしても景気次第となる。だが、菅仮免は政権発足当初から「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と言い、「雇用を生み出せば、経済の成長につながる」とする経済成長論を掲げてきたが、今回の大震災という悪条件を抜きにした発生前の時点で「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と言っていた程には雇用は見るほどの創出を生み出せないでいることからすると、党に妥協、決定した「経済状況の好転」という条件自体の根拠が曖昧となり、いくら間もなく退陣すると言っても、「歴史的な決定」という意義づけを益々怪しくする。

 確かに雇用が個人個人の収入を保証し、生活を保証する。だが、政府が雇用創出策に無策であったために「一に雇用、二に雇用、三に雇用」は既に虚ろな響きと化している。

 また雇用=収入が結婚に大きく関係していることから、収入別に応じた既婚と未婚の関係から雇用がどういった状況にあるのか見ることができる。《年収300万円境に大きな開き》NHK NEWS WEB/2011年5月12日 9時48分)

 内閣府が去年9月から10月にかけてインターネットを通じて全国の20代と30代の未婚と結婚3年以内の男女合わせて1万人を対象に行った結婚に関する調査。 

年収300万円未満
 20代既婚――8.7%
 30代既婚――9.3%

年収300万円~400万
 20代既婚――25.7%
 30代既婚――26.5%

雇用形態で見た結婚状況
 正規雇用男性既婚 ――27.5%
 非正規雇用男性既婚――4.7%

結婚したいと考えている未婚の男性に対して「結婚生活で不安に思うこと」
 「経済的に十分な生活ができるかどうか」――57%

未婚の女性の結婚の決め手や結婚相手に求める条件
 「性格」 ――95%
 「経済力」――67%(3人に2人に当る)

 如何に収入の多寡が結婚に影響しているか、例え雇用を得ていたとしても、生活には収入の多い少ないが大きく影響することがこの調査は物語っている。

 2009年8月、自民党最後の首相麻生太郎が学生のイベントに招かれたとき、学生から「結婚資金がないために晩婚化し、その結果として少子化につながっているのでは」と質問を受けた。

 麻生太郎「カネがねえなら結婚しない方がいいね。先ずね。迂闊にそんなもんはしない方がいい」

 そういった問題ではなく、景気をよくし、結婚して十分に生活できるだけの収入を保証するのが政治の役目だと思うが、雇用・収入と言う点で当時と現在と殆んど変わっていない状況は「一に雇用、二に雇用、三に雇用」を全くのウソにしているということであろう。

 「一に雇用、二に雇用、三に雇用」の景気政策を熱心にぶち上げながら、ぶち上げたことに反して実現の兆候を見い出す政治能力を発揮できていないにも関わらず、いわば経済政策に無策でありながら、消費税増税の時期を「経済状況の好転」を条件とする、この矛盾を無視して、「歴史的な決定」だとすることができる。

 最優先の先決問題は「一に雇用、二に雇用、三に雇用」の実現であり、その後の消費税議論だと思うが、「一に雇用、二に雇用、三に雇用」を実現するだけの能力がないにも関わらず、消増税を持ち出す。国民の生活を苦しくする予感しか湧かない。

 また、昨年の参院選挙中の2010年6月に菅仮免は消費税に関して、「例えば年収300万、400万以下の人にはかかる税金分だけ全部還付するという方式、あるいは食料品などの税率を低い形にする方式で、負担が過大にかからないようにする」と言っていたが、具体的にどういった形にするのか、低所得者救済を目的とした税金還付方式、あるいは食料品軽減税率を設けるのかどうなのか、具体的な内容を提示せずに増税の時期と税率だけの案で終わらせ、「歴史的な決定」だと言うことも矛盾の一つに数えることができる。

 石油高騰も原因しているだろうが、福島原発事故の煽りを食って電気料金が値上がりしている。再生エネルギー法案が成立して電力会社が太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電気の全量買取りが義務付けられた場合、その価格は電気料金に上乗せされる。

 このことも「一に雇用、二に雇用、三に雇用」が実現しないうちの値上げの可能性が高い。

 益々極々一般的な国民は苦しい生活を強いられることになる。



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