――東日本大震災が菅仮免を生き延びさせ、なでしこジャパンに戦意高揚のモチベーションを与えた――
菅仮免が余命幾ばくもない、風前の灯かと見られていた政権の命運が東日本大震災で生き延びることができたのは周知の事実となっている。
10%台にまで落ちた菅内閣低支持率、各地の県議選や市議選の敗北、前原前外相の外国人献金問題を受けた引責辞任、菅仮免自身の外国人献金問題に対する国会追及等で窮地に立たされていたが、東日本大震災発生が野党に休戦と協力を強いることとなって、窮地からの解放、感謝、感謝の延命装置となって働いてくれた。
一方なでしこジャパンの佐々木監督はドイツ戦の前のミーティングで東日本大震災のビデオを見せたと言う。《サッカーの女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で…》(西日本新聞/2011年7月13日 10:39)
〈▼ドイツ戦の前のミーティングで佐々木則夫監督はビデオを見せた。東日本大震災の被災地の映像が収められていた。映像の最後に「自分たちに今できることは何だろう」のメッセージが流れた。頑張るしかない、と選手は思いを一つにした。〉――
「自分たちに今できること」とは被災者に夢と希望と元気を与えること以外にあるまい。当然、優勝こそが夢と希望と元気を最大化し得る唯一最高の機会であることは監督に教えられなくてもそれぞれの胸に響いたはずだ。
優勝して被災地に最高・最大の夢と希望と元気を与えることができたなら、大震災も影響した日本の経済の低迷や菅仮免発信の日本の政治の混迷を受けて自信喪失している国民にも被災地を越えて夢と希望と元気を与えるができる。
もし佐々木監督が自信喪失状態の日本全体を対象として国民に夢と希望と元気を与えようと各選手に奮起を促したとしたら、却って漠然とした対象となって精神を一点に集中するには妨げとなったかもしれない。
だが、東日本大震災の被災者に夢と希望と元気を与えることは日々テレビでも被災地や被災者の映像を目にしていただろうから、具体的対象足り得て、そこに向けて精神を一点に集中することもより現実感を得ることが可能となる。
要するに佐々木監督は被災地のビデオを見せることで、各選手の勝利に向けたモチベーションを高めた。優勝こそが被災者への贈り物となる夢と希望と元気を最大化し得ると各自の心に自ずと刻み付けることとなった。
早々の退場は自分たちの意図を自ら裏切ることになる。夢と希望と元気を与えるどころか、失望を与えかねない。
菅仮免が昨日(2011年7月18日)、サッカー女子ワールドカップなでしこジャパン初優勝に関するコメントを発表している。《菅首相、なでしこ絶賛「あきらめない闘い、勇気くれた」》(西日本新聞/(asahi.com/2011年7月18日21時6分)
菅仮免「日本国民に、そして中でも被災地の方々に最高の贈り物をありがとう。劣勢になっても最後まであきらめないで頑張りぬく闘いは、皆に勇気を与えてくれた。本当にうれしく思う」
記事論評。〈政権内からも辞任要求が噴出する自らを鼓舞するかのようだった。〉――
確かになでしこジャパンはスポーツの分野で被災地・被災者だけではなく、それを超えて多くの日本国民に「勇気をくれた」。だが、政治の分野で菅仮免はどれ程に日本国民に「勇気をくれ」ているだろうか。
先ずは基本は菅仮免自身が政治の分野で国民に勇気をくれることであるはずだ。一国のリーダーを担っている以上、自らの政治の力で日本の経済を活性化し、社会を活性化して国民に勇気を与えることを自らの責務としているはずである。
だが、現実は勇気どころが、菅政治は国民に政治不信を植えつけることにのみ役立っている。NHKが7月月8日から3日間行った世論調査では無党派層は46.2%。今の方式で調査を始めて以降、最も高い数値だそうだ。
7月9、10日実施の朝日新聞世論調査によると、無党派層は53%。7月2、3両日実施の毎日新聞世論調査では、無党派層は54%に達して、97年に始めた現行の電話調査方式で最高を更新したという。
7月7~10日実施の時事通信社の世論調査では無党派層は67.4%。菅仮免が如何に国民に政治不信を植えつけているか、勇気どころか、有り難いことに失望を「与えてくれ」ている。
自らが役目としている政治の分野で国民に何ら勇気を与えることができずして、他者の勇気づけを称賛する。自身がウソつきでありながら、他者の正直を大称賛するようなものだろう。称賛する資格はないということである。
他をいくら称賛しても、国民の日本の政治に対する希望・食欲を満たすことはできない。
もし称賛するなら、元左翼らしく、これまでの政治活動を自己否定する総括を経てから行うべきだろう。
今日19日、菅仮免は首相官邸でなでしこジャパンのメンバーと面会する予定そうだが、無能首相に面会する資格もない。
なでしこジャパンはモチベーションのみで決勝戦を勝ち取ることができたわけではないことは断るまでもない。練習と実戦の積み重ねで得た高度な実行力とブレない精神力を強力な基盤として、それに加えた被災者に最大・最高の夢と希望と元気を与えようという+αのモチベーションをさらなるバネとして戦意を高めていったはずだ。
菅仮免みたいに政界を生き延びていく世渡り上手の処世術のみで首相の座を射止めたものの、自身を立脚させ、力を発揮させる指導力の基盤も実行力の基盤も元々持たないために結果として政治不信のみを成果とする以外になす術がなかった無能力とはわけが違う。
結果としてウソつきが正直という美徳に関しては他者の正直を大称賛する以外に手がないように菅仮免も誇ることができる自らの能力を持たないために他者の目を見張る能力を称賛して自らの無活躍を誤魔化すことになる。
自身に褒めるべき能力のない人間が往々にして陥る他者能力の称賛であり、そうすることによって自身の無活躍の埋め合わせとし、自己存在の維持をどうにか図る。
菅仮免が7月16日昼すぎに自衛隊のヘリコプターで福島第一原発を訪問、作業員100人余りに対して「原発の最前線で闘っている皆さんのおかげで事故の収束に向けてだんだんと前に進んできている。本当に厳しい環境だが、日本を助ける、日本人を助ける、その先頭に立っているんだという心意気で、これからも頑張っていただきたい」(NHK NEWS WEB)と激励、その努力を称賛しているが、本来なら、「日本を助ける、日本人を助ける、その先頭に立」つのは菅仮免自身でありながら、その義務と責任を満足に果たし得ていない自らの能力不足・対応遅れを作業員の行動を称賛することで埋め合わせようとする、同じ心理からの自己存在維持に当るはずだ。
あるいは首相としての体面を保った。
体面を保つこと自体が自己存在維持に相当する。
普通の神経の持主なら、自らの能力不足、政府の対応遅れの謝罪から入るはずだ。
その夕方、福島県郡山市を訪問、福島第一原発の周辺の12の市町村長らと会談して、「この4か月余り、市町村長、職員の皆さんが、みずから被災している中で、避難生活を続けている人たちのために全力を挙げていることに心から敬意と感謝を申し上げたい」(NHK NEWS WEB)と発言したことも、全力を挙げるのは第一番に政府でありながら、全力を挙げ得ていない、あるいは菅仮免の存在自体が復旧・復興の障害となっている代償に市町村長たちの「全力」を称賛することで自らの能力不足を補って自己存在の維持を図るあるいは自らの体面を保つ「敬意と感謝」であるはずだ。
菅仮免は昨日の「KAN-FULL BLOG」でもなでしこジャパンの優勝に最大限の称賛を送っている。 素晴らしい!(「KAN-FULL BLOG」/11/07/18(月曜日))
先を見すえて/菅直人直筆のページ
本当に、うれしい。なでしこジャパンが、優勝しました。
今回の女子サッカーW杯優勝は、日本国民に、そして被災地の皆さんに、最高の贈り物です。澤選手をはじめ、あたらめて日本女性の精神力の強さを感じます。
外国選手に対して、比較的小柄な日本選手たち。一歩も引かないプレーで接戦に持ち込み、劣勢になっても最後まであきらめないで頑張りぬく、なでしこジャパンの闘いは、皆に勇気を与えてくれました。
私の代わりに、強烈なサッカーファンであるスポーツ担当の鈴木寛文科副大臣が、政府を代表してフランクフルトに応援に行きました。なでしこチームは、明日帰国して、官邸に来てくれることになっています。素晴らしい結果を出してくれたことに、心から、おめでとうとありがとうを伝えます。 |
手離しの称賛となっている。
先ずは自身が成すべきことを成し得ず、そのために国民から祝福も称賛も受けていない一国の首相がスポーツの分野で偉業を成し得た彼女たちを大絶賛で祝福し、称賛する。
この矛盾は無視できない。
祝福し、称賛することで自身の無活躍から自らも目を背け、国民の目も背けさせようとする。そうすることで自己存在の維持を図る。体面を保つ。
この倒錯した感覚は如何ともし難い。
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