JR東海の社会的貢献を欠いた自己利益中心主義

2007-07-24 07:12:00 | Weblog

 7月19日(07年)の『朝日』朝刊。≪富士・ブラジル人学校 認可されてもJR通学定期買えず≫

 記事によると、県内のブラジル人学校で初めて今年3月に各種学校の認可を受け、4月1日から開校した富士市の「エスコーラフジ」の生徒がJR東海の「学校及び救護施設指定取扱規則」に定めた各種学校は認可と開校のいずれの日から1年を経過していることが学割適用の条件とする社内規則によってJR通学定期をいまだに購入できずに困惑しているという。

 もし定期券を購入できたら、御殿場市や富士宮市、静岡市清水区からJRで通学する生徒の通学費の負担が3分の1から4分の1に軽減されるという。

 そして記事は次のように伝えている。<同社は「通学定期の原資は一般の乗客の運賃で、公平性の観点から慎重に審査している」とする。各種学校は規模や水準が多様なので、計画通りに授業の科目や時間数が実現し、継続して学校が運営されていることを確認するために、1年の経過を置いているという。規定の見直しは考えていないとしている。
 一方、エスコーラジフジの生徒13人が利用する富士急静岡バスは、県の認可の写しなどの提出を受けて同校に通学定期を適用することを決めた。生徒たちは通常運賃の4割引の通学定期で通っている。
 同校はブラジル国内と同じ教科書を使ってポルトガル語で授業をしており、本国と同じ卒業資格が得られる。言葉の問題などで日本の学校になじめず、移ってくる生徒もいるという。各種学校にした狙いの一つは経済的な負担の軽減で、行政の補助や授業料への消費税などの非課税とともに、通学定期の適用も軽減につながると同校は考えていた。
 経営する神和学園の神尾正和理事長は「県の審査をクリアしてようやく認可を受け、期待感が大きかっただけに残念だ。できるだけ早く通学定期を購入できるようにしてほしい」と話している。>
 
 富士急静岡バスがどのような社内規則に従って県の開校認可と同時に定期券発行を認めたか記事は書いていないが、JR東海は「通学定期の原資は一般の乗客の運賃」だから、開校したばかりで海のものとも山のものとも知れない出来立てホヤホヤの学校の生徒に定期券を発行して1年も続かず「原資」をムダにした場合に失うことになる「公平性」を持ち出しているが、要するに取引が長期に亘る保証がなけれが値引きはできないという商売上の損得の観点に立った企業利益に限定した「学校及び救護施設指定取扱規則」ということなのだろう。

 断るまでもなく人間が社会を生存の場とする生きものであるのと同じく、企業も社会を生存の場としている。いわば社会あっての人間であり、社会あっての企業を生存原則としている。企業としてのJR東海は乗客に通勤、もしくは移動の便宜を与えることで社会に貢献し、その利益で自らの企業を成り立たせている。

 だがこの社会貢献は企業利益追求に関連し合った、その範囲を出ない社会的に限定された貢献であって、学割定期券発行に関して「学校及び救護施設指定取扱規則」から一歩も踏み出せないでいるのはそのためだろう。

 しかし如何なる企業も企業利益追求と関連し合わない社会からも相互的に恩恵を受けているのであって、そのような恩恵の相互性によって企業は企業利益追求とは関係しない社会的貢献活動を企業の社会に果たす役割として求めらているのだろう。それが果たすべき社会的責任の一つとなっている。

 とすれば、<計画通りに授業の科目や時間数が実現し、継続して学校が運営されていることを確認するために、1年の経過を置>くのではなく、逆に積極的に学割定期券を発行して生徒の経済的負担の軽減に寄与することで<継続して学校が運営され>る後押しの一助とすることも企業の社会に向けた貢献であり、社会的責任の一部を成すのではないだろうか。

 企業規則に縛られ、企業経営のみに目が向けていたのでは果たすべき社会的貢献は企業利益追求に関連し合った貢献に限定され、社会に向けた幅の広い視点と柔軟な対応を欠くことになる。広い意味での〝企業の社会的貢献〟という観点からしたら、「一般の乗客の運賃」を「通学定期の原資」とする関係に囚われた確実性のある社会的事象を担保できなければ投資できないという「公平性」から離れて、例え長期の学校運営に関して不確実な時点にあるとしても、ブラジル人学校生徒の経済的負担の軽減に役立つことは確実に言えることで、それが生徒たちの教育を補助する社会貢献の一つとならないはずはない。

 JR東海の姿勢は「通学定期の原資は一般の乗客の運賃」だとする企業利益擁護のための企業内規則にのみ目を向けた内向きの姿勢を優先させる結果、企業利益から離れた社会的貢献に対する社会的責任の視線を欠くこととなっているのではないだろうか。

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