もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

20新小銃について

2020年08月28日 | 自衛隊

 産経新聞の20式新小銃紹介記事を読んだ。

 20新小銃は国産小銃としては64式、89式に次いで3代目であり、公表されている諸元を比較して、項目(64式/89式/20式)と表記した。全長cm(99/91.6/78-85)、重量Kg(4.3/3.5/3.5)、口径mm(7.62/5.56/5.56)、弾倉(20/20-30/30)、毎分発射速度(450-500/650-850/?)、脚(有/無/無)、単価万円(17/30/28?)となっていた。射距離や有効射程については弾薬の仕様によって異なるので割愛、単価についても年度ごとに変動するので参考値である。20小銃の調達数については、陸上自衛官(予備自衛官を含む)、海空特殊部隊員、艦艇搭載小火器、海上保安庁装備として64小銃の生産数が23万丁(損耗補填を含む)であったことが目安になると思う。日本人にとって更に扱い易くなったとされ、折畳み(伸縮)銃床の採用で女性隊員も操作携行が容易になったとされる20小銃は今後30年程度自衛隊の主力小銃であり続けると思うが、初年度の調達が3,000丁とされていることや64小銃の年度最大調達数が2万丁であったことから考えると、ライフル所要数の全てを新小銃に替えるるのには5~10年かかるものと思われる。現在の緊迫した情勢や、海上自衛隊にも島嶼奪還・防衛の特殊部隊が創設された現状では笑い話に属するであろうが、海上自衛隊の末端部隊が64小銃を手にしたのは、2000年が指呼の間に迫った頃で、既に陸上自衛隊装備の89小銃は耐用更新時期を迎えつつあった。当時は陸海空統合運用や共同作戦の必要性が現実味を帯びた時期であったが、艦艇の弾庫には7.62㍉小銃弾は豊富にあるものの、共同して行動する陸上自衛官が携行する5.56㍉ライフルには供給し得ないとともに、当然のことながら海上自衛官は89小銃の操作・射撃経験や教育すら受けていない状態であった。防衛・軍備と云えば、ミサイル防衛や敵基地攻撃能力に関する話題に目が向けられがちであるが、小火器や小火器弾薬についても整備・統合を加速させる必要があるように思う。支那事変~大東亜戦争において小銃弾の生産は年間4~5億発であったとされるが、弾種が増えれば生産・統制・供給が複雑になって、最前線の弾薬不足に繋がる危険性が有る。自衛隊が3軍の小火器仕様を統一して整備を急ぐとともに、民間企業であるために急速な生産能力の拡充ができない小銃製造の豊和工業、銃弾製造大手の日本工機等に対して、税制等の面から支援することがあっても良いのではないだろうか。

 弾種が増えれば前線への供給に影響すると書いたが、戦闘下ではさらに拍車がかかるであろうことは理解できる。都市伝説であろうが、米軍の硫黄島上陸作戦では、激越な日本軍砲火に耐えて辛うじて橋頭堡を確保した上陸部隊に対して、最初に届いた物資はコカ・コーラであり、指揮官は「欲しいのは弾だ」と無線で絶叫したとされている。現地が欲しいのは7.62㍉弾か?5.56㍉弾か?など問い合わせることは出来ない。シンプル・イズ・ベスト。統合運用や共同作戦には、装備・軍需品の統一と統制が不可欠であると思う。手始めに小火器の統一を加速することから着手されては如何と感じた記事であった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿