もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

スプートニクと中国製造2025計画

2018年08月08日 | 中国

 米中関税戦争に対する湯浅博氏の評論を読んだ。

 氏は今回の関税戦争を21世紀の支配権を巡る米中の争闘と捉え、支配権獲得のために中国が推進する「中国製造2025政策」に対して関税障壁は対症療法にしかすぎず、技術の模倣・窃盗常習犯である中国に対しては知的財産保護の根治療法も併せて行うべきとしている。ここで例記されているのがスプートニク・ショックである。自分が中学2年生であった1957年(昭和32年)当時、アメリカは核の運搬手段としての長距離ロケット技術でソ連を圧倒的に凌駕しているとの自信を持っていたが、人類初の人口衛星はソ連(スプートニク1号)によって成し遂げられた。アメリカを嘲笑するかのようなスプートニクからの電波を「何時でもアメリカを核攻撃できる」メッセージと受けとめたアメリカは一種のパニックに陥ったことをラジオや新聞で知ったものである。以後「ライカ犬打ち上げ」「ガガーリンの有人飛行」と立て続けに後塵を拝したアメリカが、核運搬技術でソ連を凌駕できたと安堵できるためには1969年のアポロ11号の月面着陸まで待たねばならなかった。そのためにアメリカが採った政策は、理系学生の育成補助、NASAを設立して技術と資源を集中、開発技術の防諜(防衛)であり、先端技術開発の手引き書とも呼べるものとされる。湯浅氏は支配権争奪の根治療法として、中国製造2025政策に対しても同様の対策、特に知的財産の保護を急ぐべきと説いている。

 かって技術開発に関して「2番じゃ駄目なんですか」と発言して嘲笑を買った政治家がいたが、先端の科学技術で一旦後塵を拝した場合、その回復にはアメリカのような大国でも10年以上の時間が必要であることを歴史は教えている。とかく対症療法は耳目を集めるものの、根治療法が論じられることは少ない日本。尖閣問題、慰安婦・徴用工問題、核武装の是非、憲法問題。モリカケ・裏口入学・危険タックルを置いても、根治療法を議論すべき問題は山積していると思うのだが。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿