大阪都構想の賛否を問う住民投票が告示された。
2010(平成22)年に当時の橋下徹府知事が提唱してから早や10年、2015(平成27)年の住民投票で否決されて今回は2度目の住民投票となる。投票権もなく利害も持たない異国の出来事であるがどのような物であろうかと勉強した。
響きがいいために大阪都構想と呼ばれるが、実態は現在24区に分割されている大阪市を廃止して4(当初案では5)特別区に再編成するものの、実現した場合にも大阪都と呼ばれるものでは無いとされている。
橋本氏が大阪市の解体を提案した背景には、大阪市の財政規模(発言力)や既得権益が余りにも大きく、大阪府整備の阻害要因(二重行政)になっているという点であったように記憶している。
大阪市長が強硬に反対したために橋本氏は2011年に府知事を辞任して大阪市長に転身し府知事には盟友の松井一郎(現日本維新の会代表)氏が当選したものである。2015年に橋本氏が引退し維新の吉村洋文氏が市長に当選したが、2019年には再び松井氏が大阪市長に転身し吉村洋文氏が知事となった。
このように2011年以降の大阪市長や府知事には一貫して都構想推進者が選ばれているので、住民投票で都構想が否決されるのは何とも不思議な構図であるように感じられる。大阪市解体のメリット・デメリットについて、それぞれの主張を読み比べるが今一ピンとこない。大阪府と大阪市の二重行政解消と行政の効率化について、総論としては双方とも認めているようであるが、各論については意見が分かれているようである。最も大きなものは、これまで大阪市の補助を受けていた文化事業等の既得権益が見直される可能性、橋下市長からバカ呼ばわりされた悪名高い大阪市教育委員会や左派の牙城であった大阪市交通局(民営化され大阪市が全額出資する大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)と大阪シティバス)が大阪市の解体によって弱体化することからの抵抗が大きいように思える。住民サービスについては大阪市に代わって特別区が行うことから、利便性に関しては向上するものと見られているが、新制度移行には多額の費用が掛かることから、中国コロナの今でなくてもという空気も根強いようである。また、構想が実現した際には、大阪市は政令指定都市ではなくなるために地方交付金の配分が不利になると懸念する声も大きく、慣れ親しんだ町名からの変更に難色を示す声も大きいようである。
職員厚遇問題・勤務時間中の政治活動・天下り問題・生活保護問題等々、大阪市は既得権益の巣窟であったとされ、それらの既得権益は自民党・社民党・立憲民主党と強固に結びついている。住民投票の告示日に立民の辻元清美議員は街頭で都構想反対を叫んだが、住民サービス向上よりも票田が霧消する危機解消を優先させるのはこの間の事情を物語っているように感じさせてくれる。大阪市民は辻元議員の金切り声に惑わされずに冷静に判断して欲しいものであるし、慣れ親しんだ地名表示を無視された市民は平成の大合併でそこら中にいる。地名が変わっても太閤さんのお膝元、天下の台所、上方文化が損なわれることは無い。松下幸之助氏は「やってみなはれ」でパナソニックを築き上げた。大阪の行政改革には、既得権益に無縁な市民の判断がかかっていると、無責任な局外者の口出しで終演。