駆け出しの頃に、ある先輩(管楽器で歌も歌う方)が
「歌える曲なんて何曲かありゃいいんだよ」とおっしゃっていたことが
ありました。
名の売れている名人であれば、その人が歌う時には
「待ってました!いつものアレ、頼むよ~~」なんて声もかかり、
実際、毎回同じ曲だとしても、その場にいるお客様方は、十分に
満足してお帰りになります。
それこそが、現場のプロの仕事だし、一般の方の良く知らない曲を
無理に聴かせるのは間違っている、とも言えるわけで、その頃活躍していた
中堅の先輩方でも、常時50~100曲も歌えれば、立派なジャズ・シンガー
だと思われました。
また、ファンの前で繰り返し同じ曲を歌うことで、
その人のその曲には得も言われぬ味が加味されて、しまいには
その人のその曲には得も言われぬ味が加味されて、しまいには
本当にその人のために書かれた曲のような気もしてくる
くらいでした(*^_^*)
後年になって、ものすごくいろんな曲をやりたくなったのは、
ハッキリ言ってスタンダード・ナンバーに魅せられた私の
個人的な志向であって、後輩や生徒さんにお勧めはしませんし、
レパートリーが多いからより良い歌手だということにはなりません。
「その人の歌うこの曲が聴きたい」と思われること、目標は
そこに尽きます。
ただ、現場での選曲の際には「では今日は深まる秋の歌で」とか
「秋と言えばやはり月、でしょう!」などとその時その時の
情趣を盛り込んで会話も含めて楽しめるように、と思うので、
オーディエンスとしては、知ってる曲ならうれしいし、知らなくても
「ほうほう、なるほど。今宵の雰囲気に合ってる」などと、
その場を楽しんで聴き流していただければ良いかな、と思っています🍂🌙