「裏を返して、馴染みになって・・・」という表現、ご存知ですか?
河辺さんが「十分なギャラをご用意できなくて、こんな狭いところで
演奏していただくのは申し訳なく・・・」などと言われて
「いやいや、少しでもジャズに馴染みのないお客さんに楽しんでもらえる機会が
あるほうがね 喜んでやりますよ。その代わり”裏を返して"おくれよ。」と
おっしゃっていました。
元々は遊郭の言い習わしから来ていて、「初会」「裏を返す=2度目」
そして3回目にやっと「馴染みになる」というのが暗黙の了解事項。
つまり、最初に派手に遊んでお金を使っていただいても、それっきり、というのは
あまり好まれるお客ではなかったわけです。 この、粋筋の言い方が定着して
「2度目3度目を、あまり間をおかずに頼みますよ」と言うのを
「裏を返してね」と表現しているわけです。
初めて来られて
「いや~~、気に入ったなあ。今日は連れて来られて紹介してもらったから
今度は一人で来ていいですか」というような場合に
「ハイ、お顔のわかるうちに裏を返していただければ」
そこで「それってどのくらいの期間?3か月くらい?」などと聞くのは野暮というもの。
くすっと笑っていたら
「ママが顔を覚えてるのって一か月くらい?」と重ねてご下問。
ご一緒の方がイライラして
「そういうこと言うんじゃないその気があるなら来週来りゃいいんだ」
時間というのは、容赦なく流れていくものですが、主観的なものでも
ありますね。 退屈なことに付き合っていると、永遠に終わらないような気がするし、
集中して何かに取り組んでいるときには、長いか短いかなんて考えてもいない。
一区切りしてふと我に返った時に「あっという間だったかも」と感じるわけですが、
「12年目?あっという間だったでしょ?」などとあっさり他人に言われると
・・・そうでもないゼとも思いますね。