福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

「人々」ってだれ?「より悪い事態」ってどんな事態?:知ったかぶり報道の無責任

2011-04-10 00:35:39 | 新聞

4月2日の読売新聞はロイター等に基づいて、

『国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は1日、訪問先のケニア・ナイロビで記者会見し、福島第一原発の事故について、「(危機を脱するまで)人々が考える以上に時間がかかる。明日とか、あさっての話ではない」と述べ、危機的な状況は長期化するとの認識を示した。』


この「人々」というのは、おれたちのことだろうか?

制御室の電気が回復したのが3月22日。毎日新聞によれば、日本原子力技術協会最高顧問の石川迪夫氏が「トラブルは峠を越えた」とし、『「小康状態のまま2週間が経過しており、今後、大きな変化が生じるとは考えにくい」と述べて、事故は収束に向かいつつあるとの見方を示した。』のが26日。確かに、使用済み燃料プール火災鎮火と外部電源の復旧以来、私たちの緊張感がふっとほぐれたのは確かだ。そのときに、原子力の世界的権威機関の日本人ボスが「人々が考える」ことは正しくないとおっしゃる。たいへん気にかかるおことばだ。一方、スキャンダルでコケたとはいえ、日本の政治権力の一角を影でしっかりと掌握していると誰でも認める民主党小沢一郎氏は、

『福島第一原発の事故に関し、「自分なりに情報収集しているが、政府や東電が発表するよりも悪い事態になっているようだ」と語った。』3月31日 読売新聞


さらに、こちらは表の政府の担当官、細野豪志首相補佐官は、

『3日・・・放射性物質の外部放出が止まる時期について「達成はおそらく数か月後が目標だ。その先に原子炉を冷却する仕組みを作り、安定させる目標がある」と述べ』4月3日 読売新聞

たのだそうだ。しかも細野氏は、後日国会でこの発言の根拠を問われたとき、情報ソースを明示しなかった。

本当のことがわかっているのは、自分たちだけ。放射性物質にさらされている大衆は、愚かに楽観するのみ。そして、ジャーナリストたちははこうした情報上の隔離に加担する。「自分なりの情報」とはどういうもので、それはどこから来たか、小沢先生にたずねることもしない。情報を隠しあい、取引し、加工することになれた記者さんたちは、彼らの記事を読む普通の「人々」がこうした内部の秘密情報にアクセスがないのをなんとも思わない。そして権威・権限・特権を持つ人々と、日ごろから持ちつ持たれつの関係でタイコモチ兼検閲官を任じている記者さんたちは、そうやって色っぽく隠された情報が、思わせぶりのチラリスムで大衆の劣情を刺激して、情報の値段を高くすることを知っているのだ。「ねっ、見た?、怖いでしょう、知りたいでしょう、ボクは少し知ってるよ、今度、偉い人にきいてあげてもいんだけどな・・・・」

4月7日から、各紙(朝日読売J-CAST ニュース)は、ニューヨーク・タイムズの報道に基づいて、米原子力規制委員会(NRC)が3月26日に出したレポートの内容を紹介した。なるほど、福島原発の原子炉本体についてとても「峠を越えた」どころではない話が出ている。原子力産業維持のためには何でも言うだろう原子力技術協会最高顧問さんよりははるかに信憑性がある。偉い人々のネタ元は、非公開のこのレポートあたりにあったのだろうか。3月26日からゆうに10日以上が経過している。その間、しかも外国のメディアが暴露するまで、「人々が考える」よりも「より悪い事態」は何の説明もされずに放置された。


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