福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

朝日新聞は自前の世論調査で私たちに何を言わせようとしているか?

2011-04-18 10:33:12 | 新聞
朝日新聞がお得意の電話世論調査を実施したそうです。集計結果まとめの記事があります。

こうした世論調査の問題点はまたじっくり検討させてもらうとして、とりあえず、以下の点を指摘させてもらいましょう。皆さんが記事をごらんになるときの参考にしてください。

1.設問の構成
まとめの記事は言う、

『 「原子力発電は今後どうしたらよいか」という質問で四つの選択肢から選んでもらうと、「増やす方がよい」5%、「現状程度にとどめる」51%、「減らす方がよい」30%、「やめるべきだ」11%。・・・・・・・原子力発電の利用の賛否は「賛成」50%、「反対」32%。』

「原子力発電は今後どうしたらよいか」という設問と 「原子力発電の利用の賛否」という設問が別々にある。私はまとめの記事を読んでいて、最初は、アンケートでこの二つの問いが並列されていた、という事実が理解できなかった。ついで、何でそんな余剰的なたずね方をするのか疑問に思った。しかし、集計結果のほうを見て納得がいった。記事の提示順序とは違って、結果では「原子力発電の利用の賛否」の問いが先行し、ついで「原子力発電は今後どうしたらよいか」という設問がくる。これだけですでに怪しい。

『◆原子力発電を利用することに賛成ですか。反対ですか。
賛成 50 反対 32
◆日本の原子力発電は、今後、どうしたらよいと思いますか。(択一)
 増やすほうがよい   5
 現状程度にとどめる 51
 減らすほうがよい  30
 やめるべきだ    11』


単純に「原発賛成か反対か」とたずねる前に、あなたは原子力の電気に依存して生活しているのをどう思っているのですか、と突っ込みを入れているのだ。チャット形サイトの書き込みには「そんなこと言ってるオメーのパソコンだって原子力の電気で動いてるんだろが、ばか!」というような調子が蔓延しているが(そしてそれについては、これまでの大マスコミのキャンペーンが大いに責任があるが)、それと同様のことを、朝日的インテリ奥様風にアレンジしているだけである。

2.恣意的なそして作為的な「相関」の指摘
上の二つの設問に関して、まとめ記事は言う、

『原子力発電の利用の賛否は「賛成」50%、「反対」32%。「反対」の層でも、原子力発電の今後について20%が「現状程度にとどめる」と答えた。』

つまり、「原子力発電を利用することに反対です」と答えた人たちでも、「日本の原子力発電は、今後、どうしたらよいと思いますか」と問われれば、、20%が「へらせ」とか「やめろ」とは言わずに「現状程度にとどめる」のがいいと言うというのだ。こういう相関関係は調査が信頼できるものなら、確かに考察に値する点だろう。しかし、こうした相関(20%という数値はこの相関が例外的に重要であるという主張を正当化しないだろう)を問題にするなら、どうしてたとえば「原子力発電の利用「賛成」50%」の人々のうち、どのくらいの人が、原発を「今後減らすほうがよい」とした30%に含まれるか、見るべきではないか。さらに、この50%の人のどのくらいが、「福島第一原発の事故に対して不安を感じる」と答えたか、「他の原発で大きな事故が起きる不安を感じる」と答えたか、という相関も見るべきではないか。ところが、

『(福島第一原発の事故に対して不安を)「大いに感じる」と答えた人のなかでは、原子力発電を今後、「減らす」「やめる」と答えた人の合計が55%と高い。』

という相関だけ指摘する(過去記事「朝日新聞の勝田敏彦氏は?????なことで知られている」の先輩記者さんの言い方と似てます)。

たった一、二の相関だけわざわざ選択して取り上げる根拠はなんだ。その相関が、他の相関を隠しながらその相関だけが暗示しているメッセージを発するためではないのだろうか。

(この項続く)


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