福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

原爆ブランド“HIROSHIMA®&NAGASAKI®”を死守せよ!:被曝データ独占販売団体の決起集会

2011-06-11 23:17:05 | 新聞
停止原発を夏前に再稼働させて、やっぱり原発のおかげでピーク時の電力不足を切り抜けられましたと言い、やっぱり原発は必要、ありがたい、たよりになる、原発はかしこい主婦の味方、よい子の友、一家に一台原発を…という「やっぱり原発」推進キャンペーンが次に必要とするものは、被ばくを恐れる神経質な「放射能過敏症」の治療・矯正である。被ばくという「受け入れられない現実」を受け入れさせるさせるにはどうしたらいいか。ここでも放射線と健康被害という物理と医学の問題を心の問題にすりかえ、「正しい心」を持てない非国民を排除して「異常」のレッテルを貼りつけ、罪悪感で顔も、声も上げることができないようにすることだ。

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朝日新聞によれば、広島・長崎の原爆症研究者たちが集会を開き、『収束のめどが立たない福島第一原発事故に関し、広島、長崎で蓄積された研究成果を生かすべきだとの声が相次いだ』のだそうだ。では、ふたつの原爆投下以来、何十万のものぼる死者-原爆投下時の死者だけでなく、その後の放射線障害による死者も含めて―、そして今も原爆症で苦しむ人たちの死と病の研究から彼らが引き出した教訓・方策・提言・アドバイスはなんだろう。今や悪名高い福島県のアドバイザー神谷研二(広島大)と山下俊一(長崎大)は、この集会で、異常な放射線量が毎日、出続け、累積値をどんどん高めている福島の現実に対して、『「『放射能がうつる』といった根拠のない風評被害が広がっている」と懸念』し、『住民の不安は我々が面談してもなかなか払拭(ふっしょく)されない』と慨嘆する。言うまでもなく、彼らは被ばくについてより広範で正確な情報を与えようともしない。福島の人々のことを考えれば、ずっと多くの地点での正確な放射線測定と詳細な汚染地図の作成、過去のデータのごまかしのない提示に基づく被ばく予測、内部被ばくを含めた個人の被ばく量の正確な測定、など今後の適切な対策のためにしなければならないことはたくさんある。しかし、彼らはそんなことに目もくれない。あげくの果ては、

『福島原発事故でも長期化による心理的影響が懸念されるとし、「心のケアに継続的に取り組むことが重要だ」』

という結論に達し、『広島と長崎が立ち上がっていく必要がある』と気勢を上げたという。これは、この連中がチェルノブイリでやったごまかし手法そのままだ。神谷・山下らは、ニッポンの被曝ビジネスのドン重松逸造とともにチェルノブイリに乗り込んだ。地元の人は、ヒロシマ・ナガサキからくる放射線の専門家は、原爆に反対し、被ばくの現実の悲惨さを熟知しているゆえに、自分たち住民の側に立った調査をしてくれると期待した。しかし、彼らはそれを見事に裏切る。重松が率いた「国際チェルノブイリプロジェクト」(すでにビジネスのにおいのする名称だ)の報告書に言う。

『住民に・・・放射線と直接に関係がある障害はみられなかった。・・・・どんなに大規模で詳細な疫学研究を長期間行っても、自然発生のガンや遺伝的影響と区別できるような増加は将来も観察できないであろう』(今中哲二編 チェルノブイリ事故による放射能災害、p.25)

現状の被害どころか、勝手に将来の影響もないと断じている。彼らが認める唯一の健康への影響は『事故に関連する不安が高いレベルで継続し、心配やストレスといった形で多大な心理的影響を及ぼした』。そう、すべては心の問題。怖いのは放射線ではなく、それへの不安。「安全ではなく安心」、という被ばく哲学の原型が生まれた。こうして、『広島・長崎の原爆症研究者たち』は、『蓄積された研究成果』をダンピングしてさばくことで、“HIROSHIMA®&NAGASAKI®”ブランドを、IAEAだのICRPだのWHOだので構成される原子力マフィアの被ばくデータ国際市場に進出させることに成功した。原爆の「権威」にもとづいて放射線被ばくの危険性を否定するという、よその者にまねできない『世界一』(山下俊一講演)の先端技術で市場の独占をはかれる。それは以下のようなWHOの専門家グループ(フランスで告訴されているペルラン氏も含まれる)の見解と完全に符合する。物理的・身体的影響の否定と心理要因の専一的強調、被害者の側に立つ研究者に対する非難、自分たちの『提案を適切に理解できるように』するためのキャンペーンと教育の推奨、これらすべてが今、私たちの福島で繰り返され、これからもっと激しく展開されてゆくだろう。少し長いが、被ばくをごまかし、強制する国際機関と、それに連なるわがニッポンの誇る原爆ブランド管理者たちの意図と戦略を十全に示したものとして、熟読に値する。

『放射線に詳しい知識を持たない科学者たちが、さまざまな生物学的な効果や健康上の現象を放射線被曝と関連づけた。これらの変化が放射線と関連することはあり得ず心理的要因やストレスによるものであろう。そうした効果を放射線に関連させたことは、人々の心理的圧力を増加させただけだったし、さらにストレス関連の病気を引き起こした。そして、放射線専門家の能力に対する大衆の信頼を徐々に損ねたのであった。次に、それは提案されている規制値に対しての疑いにつながった。大衆や関連する分野の科学者たちが、住民を守るための提案を適切に理解できるようにして、この不信感を乗り越えねばならないし、そのための教育制度の導入が早急に検討されるべきである。』(同上書、p.24)

ところで、山下俊一は、本人の弁によれば長崎の被爆者だそうだ。弟子の高村教授は、これも山下によれば、「被爆三世」だそうだ。被爆者については、私にも個人的な経験がある。以下のエピソードは20数年前の実体験である。

昔勤めていた職場に、広島出身でアメリカ帰りの男がいた。あちらでは人もうらやむポストをあちこち歴任していた。「なんであんなすごいキャリアの人がうちなんかにいるわけ?」、と下っ端たちは噂し合った。ある日、私はその男と仕事上の打ち合わせをしなくてはならなくなった。それが初対面だった。話が終わって別れ際、男はわずかに私の方に歩を進め、こう言った。「ぎむりさん、ボクはね、実は原爆症なんですよ」。突然の、何の脈絡もないカミングアウトだった。私は、そのとき、この男のステーツでの成功の秘密はこれだと直感した。



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