ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「天城一の密室犯罪学教程」

2005年01月23日 | 書籍関連
天城一氏の「天城一の密室犯罪教程」を読破。この作品は、昨年度の”このミス”で3位に選ばれる等、高評価を得ているので是非読みたいと思っていた。

天城氏の作品は、以前より一部のミステリー・ファンには高く評価されていたというが、一般的には殆ど知られた存在でなかったと言える。と言うのも、1947年にかの江戸川乱歩氏の推挙を得てミステリー誌に処女作が掲載された氏であったが、数学者として大阪教育大学の教授という顔も持っていた事もあってか寡作に過ぎ、同人出版や私家版で纏まった事はあるものの、短編集として刊行されるのはデビュー57年目にして今回が初めてという有様だった。それが故に、彼は幻の”探偵作家”と呼ばれてもいたらしい。

肝心な読後感だが、正直言ってピンと来なかった。発表年等を考慮して文体の古めかしさには目を瞑るとしても、可も無く不可も無くといった文章に惹かれる事は無かったし、何よりも各種のプロットに魅力を感じなかった。当時は斬新且つ奇抜なプロットであったのかもしれないが、如何せん昨今のミステリーを読み漁っている身からするとどうしてものめり込めなかった。

この感覚は、2001年の”このミス”で1位を獲得した泡坂妻夫氏の「奇術探偵曾我佳城全集」を読んだ時にも感じた。*1

毎年発表されるミステリー・ランキングなるものは、その年々で活きの良さを感じさせる作品が選ばれるべきものと思っている。決して、古い作品だから駄目と言う訳ではない。アガサ・クリスティー女史の作品の様に、文体は古めかしいものの、文章やプロットが今でも充分魅力的なものであれば、(初めての刊行が当該年ならば)上位にランキングされても全く構わないだろう。唯、文化勲章の様に、過去の功績に対して与えられる様なものであってはならないと思う。

期待度がかなり高かっただけに、この作品を読み終えた時の落胆度は激しかった。

*1 泡坂氏の作品で言えば、「乱れからくり」は御薦めである。
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8 コメント

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天城氏って高齢だったのですか… (でこぽん)
2005-01-23 22:20:55
こんばんは。でこぽんです。



トラックバックありがとうございました。

すごく参考になりました。本当に嬉しいです。



このミス3位でしたから、読んでおかなきゃと思っておりましたが、エントリを拝見して読むのを止めました(笑)。

「文化勲章の様に、過去の功績に対して与えられる様なものであってはならないと思う。」まさにその通りだと思います。

このミス1位の『生首に聞いてみろ』も10年ぶりの作品だったのですが、そういうことが関係してなければよい、と思ってしまうのは私だけでしょうか。



ところで、天城一さんって、大西巨人さん(大正8年8月20日― (1919 ―)と同年代でしたのね。

大正8年というのを見て、あら随分とお年なのねと思い、そういえば、大西さんが確か同じぐらいのはずだったと調べてみたら、やはりそうでした。



大西さんの作品では『深淵』をちょうど去年の今頃読みました。ミステリ仕立てでちょっと変わった作品でしたが、そういえば文体も奇妙でしたね。とても不思議な感覚の読書だったのですが、なかなか面白くて好きな作品でした。ご高齢でもミステリを書けるんだという失礼な感想を抱いてしまったのでした。



年齢において文体が古めかしくても「文章やプロットが今でも充分魅力的なものであれば」というのは本当にそう思える読書でした。



では、失礼いたします。

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トラバありがとうございました。 (typhoon-no15)
2005-01-24 22:04:08
私もこの本を図書館で借りて読みましたけど

途中で挫折しました。

文章が難解で内容もよく分かりませんでした・・・

(自分の読解力の無さもありますが)

昔はこういう時でも一応全部読んだものですが

そんな根気も体力も無くなってます。
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Unknown (masangin)
2005-01-25 00:06:56
虎場ありがとうございます。僭越ながらこちらからもトラックバックさせていただきます。

確かに「奇術探偵曾我佳城全集」と似たような理由での受賞かも知れませんね。技巧を尽くしたミステリ比べると確かに物足りなさを感じます。

とはいえ、いくつかの短編では面白いものもあったと思います。

10位くらいなら文句もなかったでしょうか(笑
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またお邪魔します。 (でこぽん)
2005-01-25 01:23:51
giants-55さん、こんばんは。でこぽんです。

あの~、giants-55さんの書き込みが「のぽねこ」さんのエントリだったのです(笑)。

いえ、間違われたのが「のぽねこ」さんのところで良かったです。「のぽねこミステリ館」でたくさんミステリを紹介しておられますので、参考にされてくださいね。

http://plaza.rakuten.co.jp/nopomystery/



さて、なんだかものすごく褒めていただいたりして恐縮しております。有り難うございます。でも、そんなに凄いものでもないんです。特にミステリに関しては、ネットで知り合った方にお聞きしたりして知識を埋めていっております。そうそう、乾さんの『匣の中』の暗号の解読も全面的にある人に頼りましたから。



『模倣犯』は驚くような作品ではないと思います。後味はよくないけど読んでおいたほうがいいかなという作品ですね。『半落ち』と『永遠の仔』はなんでこれで直木賞がとれなかったのかという良い作品ですね。



『葉桜の季節に君を想うということ』の感想ですが、giants-55さんと同じ様に「このミス1位も当てにならない」と言った某作家を知っています。しかも途中で叙述トリックを破ったためにラストも驚かなかったという最悪のものでした。面白いからと薦めた私はとほほでした。議論しましたが負けました。そういえば、読んだ当初は確かに驚きはしましたが、普通だと思ったんですよね。人に薦めるのは本当に難しいです。



『生首に聞いてみろ』は悪くはないですが、「このミス1位」としては納得がいきません。ミステリに関してはこの作品より『螢』のほうが上だと思っております。是非お読みになってください。一つ目のトリックは見破れると思います。問題はラストです。完全にやられちゃいました。



あ、それから「アヒルと鴨のコインロッカー」はですね、「アヒル」と「鴨」は似ているけど違うものっていうことかな。要するにワケワカラン物語でした。検討をお祈りいたします。



どうもお邪魔いたしました。

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お世話になっています (blues54)
2005-01-25 16:00:22
 TBありがとうございました。この頃、サボり気味で気付くのが遅れました。申し訳ございません。(^^;;

 実は、「硝子のハンマー」を読んでから、色々な評があるので、「天使の囀り」「青い炎」と続けて読んでいる最中で、ブログがおろそかになっています。

 改めて、貴志作品の感想を述べさせて下さい。

 別の話ですが、先日の北海道新聞には、「この生首に聞いてみろ」がこのミス1位の影響で、近頃、また売れているという事が書いてありました。

 おそるべし!このミス!!!



では、これからもよろしくお願いします。



ん?天城一の密室犯罪学教程については、時間があった時にでも読ませて頂きます。(^^;;
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>でこぽん様 (giants-55)
2005-01-26 01:38:32
別の方の所にレス付けてしまったみたいで、申し訳有りませんでした。又、誤ってレス付けてしまうといけないので、此処に書かせて戴きます。



「生首に聞いてみろ」も「アヒルと鴨のコインロッカー」もイマイチっぽい感じですね。図書館に予約入れているので、取り敢えず読んでみます(^o^;;;。



「葉桜の季節に君を想うということ」に付いては、色んな意見が在ると思います。個人的にはプロットもそうですが、あの文体が些か肌に合いませんでした。でも、ミステリー大好き人間の知り合いは、かなり評価していました。あの”オチ”は評価が分かれる所なのかもしれませんね。



これからも宜しく御願い致します。
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はじめまして (のぽねこ)
2005-01-26 07:59:23
マイレコの方にコメントいただいた、のぽねこです。

でこぽんさんが「間違われたのが「のぽねこ」さんのところで良かったです」と言ってくださっていますが、嬉しい言葉です。giants-55さん、私もミステリは相当読んでいますので、よろしくお願いします。ところで、『QED』シリーズは面白いですよ。

これから、サイト内を見させていただきますね。

私も歴史好きですよ。といっても、西洋史ですし、歴史物小説は読まないのですが…西洋史関連でも大量に専門書を読んでいますので、よければ私のサイトをご覧下さい。でも、giants-55さんの好みが日本史だったらどうしましょう…。サイトを見てからコメントした方がよかったかも知れませんね。

それでは、失礼します。
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コメントありがとうございます (のぽねこ)
2005-01-27 21:30:52
私のページへのコメント、ありがとうございました。

歴史が、そしてミステリが好きでしたら、

高田さんの著作はどちらの好奇心も満たしてくれますよ。

歴史の重要性は感じているのですが、

なぜ歴史学をしているのか、と問われると、

「面白いから」以外の回答がまだできない私です。

私は心性史を専門にしているのですが、中世ヨーロッパの人の心性を見て、どうなるの?と言われると、困ってしまうのです。政治史、経済史などは、現在への教訓をいっぱい持っていると思います。心性史にも、現在について考える一つの手がかりを与えてはくれるでしょう。しかしまだ、自分がしていることの意味を十分に人に説明できる段階ではありません。

ああ、とても個人的な話になってしまいましたね。すみません。ともあれ、高田さんの著作は面白いです。もしシリーズで読むおつもりでしたら、第一作の『QED 百人一首の呪』から読んでいただけると良いと思います。紹介しました『QED 鬼の城伝説』もとても面白いのですが。

こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。
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