ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「でぃすぺる」

2024年05月03日 | 書籍関連

**************************************************************小学校最後の夏休みが終わった。小学校卒業、残るは半年。ユースケは、自分のオカルト趣味を壁新聞作りに注ぎ込む、“掲示係”に立候補する。此の地味で面倒だと思われている掲示係の人気は低い。此れ思う存分怖い話を壁新聞に書ける!・・・だったが、何故か学級委員長を遣ると思われたサツキも立候補する。

優等生のサツキが掲示係を選んだ理由は、去年亡くなった従姉のマリ姉に在った。
マリ姉は1年前の奥神祭りの前日、グラウンドの真ん中で死んでいた。現場に凶器は無く、薄らと積もった雪には、第一発見者以外の足跡は残されていなかった。詰まり自殺の可能性は無く、マリ姉を殺した犯人が、雪が積もる前に凶器を持ち去った筈。犯人は、未だ捕まっていない。

捜査が進展しない中、サツキはマリ姉の遺品パソコンの中に、「奥郷七不思議」のファイルを見付ける。其れ一見、地元に伝わる怪談話を集めた物の様だったが、何れも微妙に変更が加えられている。然も、「七不思議」の筈なのに、記されているのは6つしか無い。警察が、此の怪談に注目する事は無かった。そして、マリ姉に怪談を集める趣味が無かった事を、サツキは良く知っている。

マリ姉が態々「七不思議」を残したからには、其処に意味が在る筈。
そう思ったサツキは掲示係になり、「七不思議」の謎を解こうとする。ユースケはオカルト好きの観点から謎を推理するが、サツキは飽く迄現実的に、マリ姉の意図察し様とする。其の2人の推理を聞いて、3人目の掲示係で在るミナが、冷静にジャッジ下す

死の謎は、「奥郷町の七不思議」に隠されているのか?3人の“掲示係”が挑む、小学校生活最後の謎。
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2017年、第27回鮎川哲也賞を受賞した「屍人荘の殺人」(総合評価:星4.5個)で文壇デビューを果たし、此の年のミステリー関連の年間ブック・ランキング2018本格ミステリ・ベスト10[国内編]」、「2017週刊文春ミステリーベスト10[国内編]」、そして「このミステリーがすごい!2018年版[国内編]」の3つで1位を獲得した今村昌弘氏。「凄い新人が現れたなあ!」と嬉しく思った物だが、残念な事に“寡作作家”というのが現在の所。今回読了した「でぃすぺる」は、彼にとて通算5冊目の上梓作品で、個人的には「もっと多くの作品を上梓して貰いたいなあ。」と思っている。

「でぃすぺる」という、非常に不思議なタイトルの作品。英語dispel」には「追い散らす。(心配等を)拭い去る。(等を)晴らす。一掃する。」といった意味が在り、其れを平仮名表記しているのだ。

内容的には「小学6年生の3人が、女性の殺害事件を、彼女がパソコン上に残した「奥郷町の七不思議」なるファイルを元にして解き明かして行く。」という物で、主人公の1人・ユースケが大のオカルト好きという事も在り、オカルト+ジュヴナイル本格ミステリーといった感じに仕上がっている。

ユースケ達は「奥郷町の七不思議」に記された6つの怪談話に付いて、1つずつ検証して行くのだが、其れ其れに“矛盾点”というか、“違和感覚える点”が見付かり、其れ等が謎を解き明かす手掛かりとなる。検証して行く過程は興味深いし、違和感を覚える部分に付いても「成る程ねえ。」という思いが湧く何の為にマリ姉は、こんな怪談話を残したのか?

読み終えた後に、どうしても消化不良感が残ってしまう。と言うのも、謎解き自体は“論理的”で在り、納得出来る物なのだが、“犯人の正体”がオカルト的で在り、余りにも非現実的なので。思えば今村氏のデビュー作「屍人荘の殺人」も似た感じでは在るのだが、此方は非常にエンターテイメント性が高く、其れがに“”が気にならなくなっていた。でも、「でぃすぺる」の場合は、エンターテイメント要素が薄いので、粗が気になってしまうのだ。

「でぃすぺる」というタイトル、恐らくは「(闇等を)晴らす」という意味合いから付けられと思われるが、判り難さも含めて“良いタイトル”では無い気がする。タイトルにも消化不良感が。

総合評価は、星3つとする。


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