ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

小児救命

2009年07月25日 | 時事ネタ関連
*************************************
=「1歳から4歳」の国別死亡率(人口10万人当たり)=

1位:  スウェーデン(18.9)  
2位:  オーストリア(19.6) 
3位:  カナダ(20.7) 
4位:  イタリア(21.2)  
5位:  スイス(22.1)
6位:  イギリス(22.6)
7位:  オランダ(24.1)
8位:  スペイン(24.7)
9位:  オーストラリア(25.0)
10位: フランス(25.1)
11位: ドイツ(25.3)
12位: ベルギー(25.9)
13位: 日本(28.6)
14位: アメリカ(32.4)

日本を除く13ヶ国の平均は23.7。
*************************************

7月19日付けの東京新聞(朝刊)に「小児救命に『構造的欠陥』 長寿国の実情 幼児死亡率は“最悪”水準」という記事が載っていた。冒頭で紹介させて貰ったのは、世界保健機関(WHO)のデータを基に弾き出された「各先進国の年齢階層別の死亡率(人口10万人当たり)」の内の「1歳から4歳」に関するランキング。1位に輝いたスウェーデンの場合で言えば、同国の1歳から4歳迄の幼児は10万人当たりで18.9人が亡くなっている計算となるが、それに対して我が国の場合は約1.5倍の28.6人が亡くなっている事になる。この数値は調査対象となっている14ヶ国中13位で、“実質的には”最悪の水準と記事はしている。「14位のアメリカは32.4人と更に悪いではないか?」という疑問も湧く事だろうが、同国の場合は「他殺」による死亡が多く、それを除いた場合で言うと実質的に日本が最悪水準と分析する人も居るのだとか。世界一の長寿国とされる我が国は、他の年齢階層では殆どが1位か2位となっており、それだけに「1歳から4歳」の死亡率の高さが突出している結果。

この結果を重く見た大阪府立母子保健総合医療センターの藤村正哲総長等は、2005年&2006年に亡くなった1歳から4歳の幼児2,245人の死亡原因と場所等を徹底的に調べ上げ、その結果として「充分な救命救急治療を受けられなかったのではないか。」との推測に到ったと言う。死亡幼児の内84%の1,880人が病院で死亡。その内、2年間で1人だけの死亡を取り扱った病院での死亡数は314人と最多で、2人が236人、3人が201人と続く。5人以下の病院での死者数を合計すると1,037人で(病院で死亡した総数の)5割を超えていた。

これに対して小児救急に定評の在るイギリスのイングランド地方のデータを同様に分析した所、病院死亡の481人の内、6割以上の295人が、10人以上の死亡を取り扱った病院で亡くなった事が判明。この結果に付いて藤村氏はイングランドでは重篤な幼児は、専門医が居る大病院に集中する仕組みが出来ている。これに対し、日本では、経験豊富な病院に必ずしも搬送されていない。とした上で、「日本の小児医療の在り方に、構造的欠陥が在る。」と指摘。

例として挙げられていたのは「香川県」と「イングランド南東部のサリー州」。人口と面積がほぼ等しい双方だが、香川県の場合は20余の病院に小児科が在るものの、医師数は殆どが4人以下。一方、サリー州の場合は4病院しかないものの、何れにも20人以上居るとか。「日本では各自治体が病院を持ちたがるが、それが間違い。医療提供体制を再構築しなければ、幼児の死亡率は下がらない。現状では、小児科医は幾ら居ても足りず、過重労働の問題も解決出来ない。」とする藤村氏の主張には、納得させられる物が在る。

小児の死亡率が低い欧米では、小児専門の救急医療が当たり前なのだとか。厳然と区別するのには理由が在り、例えば小児が脳卒中心筋梗塞となるのはな一方で、インフルエンザ等が原因の急性脳症脳炎は小児特有と、大人と幼児とでは救急対応に差異が生じるケースが間々在る為と言う。我が国にも24時間体制の小児集中治療室(PICU)を備えた病院が無い訳では無いが、その数は4ヶ所だけ。小児の重篤患者は約200ヶ所の“一般の”救命救急病院に搬送されているのが実態。

又、物理的な問題も在る。「救命救急の基本」とされる気道確保だが、その為の「呼吸チューブ」は成人の場合「大」と「小」の2種類程度で対応出来るが、小児では0歳児から14歳児迄15種類も必要。使用期限の問題も在り、こういった医療器具の問題一つ取っても、小児救急の専門家、集約化が重要不可欠

課題は色々在るが、一番の問題は救命救急医療は不採算となり勝ちで、特に投薬量が少ない小児ではその傾向が強い。という点だろう。公的な補助無しでは、より良い小児救命救急医療の確立は困難という事。静岡県立こども病院小児集中治療センター長の植田育也氏は、小児救急医療をカテゴリーとして認め、保険点数で少なくともトントン遣れる様に小児集中治療加算を付けて欲しい。と主張している。

更なる公的補助となると、必然的に国民の背負う負担は更に増す事になるだろう。政治家や官僚、そして一部の人間を肥やす為の負担は真っ平御免だが、適った負担増なら致し方無い。未来を背負って立つ子供達の為ならば、猛反対する人間も少なくないのではないか。勿論、無駄な負担を徹底的に無くした上での事だが。

コメント (6)    この記事についてブログを書く
« 政治家はマニフェストを声高... | トップ | 「ハゲタカ」 »

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
政治は老人に向きすぎ (びすこSTi)
2009-07-25 07:13:17
お久しぶりにコメントさせていただきます。
衆院選選挙があるため、どうしても政治の話になってしまいますが、票を稼ぐための政治なので有権者である成人、ことに人口分布から老人に手厚い政治がまかり通っている日本ではいたし方ない数字ではないでしょうか。
例えば公園の遊具が危ないことについては、安全策にお金が使われるのではなく、維持費削減もできて一石二鳥と言わんばかりに撤去する。子供たちのための国づくりをしない、子供ないがしろの行政ではこの国の将来など見えません。
選挙区によって一票の重さが違うと騒いでいますが、年齢ヒストグラムで政治を動かされる方がもっと深刻だと思います。
未成年者だって国民であり大切な一つの命。子供にも選挙権を与え親が代理投票する意味で、子供の数だけ親の選挙権増やして欲しいものです。
返信する
>びすこSTi様 (giants-55)
2009-07-25 11:35:25
書き込み有難う御座いました。

「臓器移植法」の改正がずっと棚上げになっていたのには、「脳死を死と看做すか否か?」という難しい線引きが在ったのも然る事乍ら、一番の理由は「この法案が票に繋がらないから。」というのが大きかったとも言われていますね。本来は「国民全体を見据えた政治」が為されるべきなのに、高度経済成長期以降は特に「企業」、それも大手企業を専ら見据えた政治が為されて来た。その次に来るのが「政治家」や「官僚」を見据えた政治で在り、優先順位として最も低いのが「一般国民」だったのではないかと。

その一般国民の中でも「票に結び付かない。」という理由から、ぞんざいに扱われて来たのが子供達というのは言えると思います。

「国民の生活第一」を叫ぶ民主党も、いざ政権奪取したらどうなるかは判らない。連合との“密着度”が過ぎれば、其処に癒着が生じて来るだろうし。

特定の階層だけを見据えた政治は自分もおかしいと思うけれど、票を投じる側も自身のメリットばかりに囚われるのでは無く、「この国をより良くする為には、どうしたら良いか?」という観点を常に持ち、表層的な情報に踊らされる事無く、多くの方向からの情報を積極的に取り入れ、自身の頭で考える癖を付けないといけないでしょうね。ジョン・F・ケネディー元大統領の「国家が貴方の為に何をしてくれるかでは無く、貴方が国家の為に何が出来るかを問おうではないか。」は、非常に奥深い言葉だと思います。
返信する
Unknown (マヌケ)
2009-07-25 14:35:11
政治は老人に向き過ぎというのはとても賛成です。 政治家は政治家自身がある程度の年齢なので、彼らの将来とは老後ですからね。 おのずと若者が思い描く将来とは、かなりのズレがあるはずです。 今、職につけなくて苦労している若者には年金の話題どころではないでしょうし、介護や高齢者医療どころでもないでしょう。 ところで、統計数字には驚きました。 小児の救命救急医療がそんな状況であるとは初めて知りました。 虐待や育児放棄などの犠牲が増えたのかと思ってしまいましたが、そうではないのですね。 私はイメージだけでこの国のすべてが最先端を行っていると思いこんでいただけなのでしょう。 こんな大事な分野はないがしろにされていてはいけないと思います。 受けられる医療の質にも格差が生じてきているようですが、郵政民営化とかよりも医療制度の改革が優先順位でみればずっと先だったですね。
返信する
>マヌケ様 (giants-55)
2009-07-25 15:31:51
書き込み有難う御座いました。

「過酷な労働条件と、それに全く見合わない対価。」というのは様々な分野で見られる事ですが、小児科医にもそういった感じがします。「患者を何とか助けたい。」と徹夜に次ぐ徹夜で身を削り乍ら、その対価は決して恵まれているとは言えない。本当に気の毒に感じるし、我が国の医療行政の“負の遺産”が、小児科にもろに影響を及ぼしている様にも。

「高品質の医療」を求める人が少なくない一方で、「限られた財源」という現実が在る。「何処に妥協点を見出すか?」は我々国民に突き付けられた課題でも在りますが、「未来を背負って立つ子供達の命は、出来る限り救って上げられる環境を構築して欲しい。」というのが自分の思い。その為には、或る程度の負担増は已む無しと覚悟しているし。
返信する
小児医療だけではありませんが (破壊王子)
2009-07-25 23:19:41
『SIGHT VOL.40 特集 さよなら自民党』の中で臨床医の小松秀樹氏のインタビュー『医療崩壊のすべては1983年、中曽根政権から始まった』が非常に興味深かったです。

詳しくはそちらを御覧あれ。

ちなみに医療は5兆円あれば立ち直るそうです。(こう書くと、馬鹿の一つ覚えで防衛費を削れとかいう知能の低い人がいますが)追加経済対策が15兆円。三分の一でOKだとか。

但し毎年だそうですがね。
返信する
>破壊王子様 (giants-55)
2009-07-25 23:51:17
書き込み有難う御座いました。今回はこちらにレスを付けさせて貰います。

御紹介戴いた「SIGHT VOL.40 特集 さよなら自民党」ですが、ぱっと見た瞬間はTV番組なのかと思いましたけれど、検索すると雑誌なんですね。(http://ordinaryday.txt-nifty.com/odlog/2009/06/post-f01b.html)リンク先を拝見すると、その他にも興味深い記事が載っており、近い内に読んでみたいと思います。

それにしても、医療行政崩壊の根っこが中曽根政権迄遡るとは・・・。政治家と官僚の罪も小さくないけれど、以前にも書いた様に医師会も全く無関係という訳ではないと思いますね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。