野村克也元監督が好んで口にしていた言葉の1つに、「勝ちに不思議の勝ち在り。負けに不思議の負け無し。」というのが在る。元々は「肥前国平戸藩の第9代藩主で、心形刀流剣術の達人でも在った松浦清。」の言葉だそうだが、「何かに成功する時には、偶然や運に左右される場合が時折在るけれども、何かに失敗した時には必ず原因が在り、偶然に失敗するという事は無い。だから、其の原因を解明し、次に同じ失敗をしない様にする事が肝要。」という戒めだ。
首位ジャイアンツが、2位カープに僅か「1ゲーム差」で臨んだ一昨日(10日)からの3連戦。初戦を迎える前は、「ジャイアンツは、3連敗するのではないか・・・。」という不安な思いしか無かった。と言うのも、「カープの先発投手は初戦が森下暢仁投手、2戦目がアドゥワ誠投手、そして3戦目が床田寛樹投手と、今季のジャイアンツが“大苦戦している3投手”が予定されていた。」から。
「何れだけ、今季のジャイアンツが苦戦していたか?」というのは数字を見れば歴然で、3連戦前の対ジャイアンツの成績は其れ其れ「森下暢仁投手(4試合先発で2勝0敗):<防御率>3.33、<WHIP>1.52」、「アドゥワ誠投手(3試合先発で2勝0敗):<防御率>1.83、<WHIP>1.22」、そして「床田寛樹投手(3試合先発で0勝0敗):<防御率>2.25、<WHIP1.50>」となっており、詰り「此の3投手を相手にジャイアンツは4つ負けを食らい、1つも黒星を付けさせていない。」事になる。細かく数字を分析すると、「森下投手はそこそこ打っているが、アドゥワ&床田両投手には抑えられている。」というのが、ジャイアンツ打撃陣の実情だろう。
加えて、今回の対戦地はカープの本拠地「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」。此処での対戦をジャイアンツが苦手にする様になって久しいが、今季は「1勝4敗2引き分け」と1つしか勝てていない在り様。なので、ジャイアンツ・ファンの自分が「3連敗するのでは・・・。」と、不安な思いしか無かったのも当然の事。
そんな状況で迎えた一昨日の初戦、ジャイアンツは先発・菅野智之投手が力投を見せ、「1対6」の大差で勝利を掴んだ。今季の菅野投手は「“嘗てのエース”が蘇った。」という感は在ったものの、試合巧者のカープを相手に「天晴れ!」な投げっ振りだった。
初戦には勝利したものの、2戦目のアドゥワ誠投手は「ジャイアンツにとって“難攻不落”な存在。」で在るのは変わり無い。「初戦の勝利でゲーム差を『2』に広げたけれど、今日の試合は負けて、再びゲーム差『1』になるんだろうな。」という自分の怯懦な性格が顔を出して迎えた昨夜の試合。
ジャイアンツの先発フォスター・グリフィン投手は6回を投げ切って僅か「3安打」に抑えるも、「2失点」してしまう。6回を投げ切って2失点ならば、先発として充分合格点を与えられる内容なのだが、如何せん相手は“難攻不落”のアドゥワ誠投手。彼も6回を投げ切って僅か「2安打」、そして「無失点」と、ジャイアンツは完全に抑え込まれていた。
其の儘ゲームは進み、「2対0」とカープが勝った状態で迎えた9回表のジャイアンツの攻撃。マウンドに上がったのは、カープの絶対的な守護神の栗林良吏投手。「ジャイアンツの負けは100%確定。」と、自分を含めた誰もが信じて疑わなかっただろう。ところが・・・。
栗林投手が、まさかの大乱調。2安打&4つの与四死球と1つのアウトも取れずにマウンドを降りる事に。此の時点でジャイアンツは「2対3」と逆転していたが、以降に登板したカープ投手陣を打ち崩し、此の回だけで「9得点」。結局、「2対9」の儘、ジャイアンツはカープに連勝し、ゲーム差を「3」に広げたのだった。
冒頭の言葉を借りれば、「ジャイアンツにとっては『勝ちに不思議の勝ち在り。」で在り、又、大乱調の栗林投手が登板したカープにとっては『負けに不思議の負け無し。』。」という事になる。野球の怖さを改めて思い知らされると共に、「こうなったらジャイアンツは、明日の試合も絶対に勝たないと。」という思いを強くした。