応用地質学会誌最新号に、『応用地質 次の50年に向けて- 地盤と防災 - 』のパネルディスカッションの記事が記載されていました。メンバーや議論の内容からして、ここ10年程度あまりかわっとらんなあという印象です。例えば、
Q:ハザードマップなどの作成にあたっては、どうしても曖昧な部分が生じてくることがあると思われますが?
A:市民に対して空振りのない広報や対応をするということは、非常に重要な課題であるが、行政側の対応としては学問的に未解明なことがあっても、市民を守るために危機管理を実施すべき立場であることを自覚し、現状においてできるだけのことを実施していく姿勢が必要である。
曖昧だから自然なので、そこをマニュアル的にコントロールできないんですよという啓発をすべきではないでしょうか。
http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20090613ddlk19100070000c.html
山梨大と県教委は12日、指導力の優れた理科教員「CST」(コア・サイエンス・ティーチャー)の養成プログラム事業を今年度から始めると発表した。理科を苦手と感じる小中学校の教員をCSTが指導することで、理科教育を充実させ、子供の理科離れを防ぐことが目的だ。独立行政法人・科学技術振興機構の理数系教員養成拠点構築事業に採択され、2年間で約1900万円が助成される。
対象は、山梨大教育人間科学部の学生と県内小中学校の現職教員。プログラムは2年間で、計300時間の授業や実験、見学などを履修する。現職教員の場合は、夏休みや夜間に受講する。
プログラムの内容は▽山梨の植物や地質の現場見学▽DNA(デオキシリボ核酸)実験など高度な実験体験▽最先端科学施設の訪問--など。
楽天イーグルスの野村監督が、監督は「気づかせやさん」と表現しました。知識を与えるだけでなく、自らの探究心を高めるような指導方法を考えていく必要があるでしょう。
高野秀雄『斜面と防災』に次のような説明があります。
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同書では、排水工ではなく、水圧低下工と言うべきである。という説明がありますが、本質を捉えていると思います。
http://japan.internet.com/busnews/20090611/5.html
3Dは二次元の”平面図”や”断面図”に比べて格段の情報量を持ちます。さらにスケッチアップも使えるとなると、これからの世代にとっては、”平面図”や”断面図”は死語になっていくのでしょうか。しかし、その副作用として”わかった気になる”ことがあげられます。”現場”まで死語になっては、大変困ったことになります。
圧倒的なビジュアルは、しばしば思考停止を招くので、こういったツールに使われないようにしなければなりません。
斜面の健康診断という響きですが、我々地質コンサルタントは、地球の医者というように自らを医者にたとえることはよくあります。しかし、世の中のニーズが全然ありません。斜面の健康診断、地質を知ることによるメリットを事業化しないと、マイナー分野からの脱却はありません。
七五三掛地すべり地には1000年以上の歴史を持つお寺があって、そこに地変の記録は一切のこっていないのだそうです。このことが正しいとすると、明治時代に活動した庄内平野東縁断層系による地震時にも動かなかったということになります。では、なぜいま。。。
少し考えているのは、2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震、2008年岩手・宮城内陸地震、地質年代のスパンで言えば3連発といってもいい直下型地震で、岩盤(といってもかなり土砂化しているのですが)がかなり劣化していた、そこに豪雨があったということだろうということです。
それにしても新旧の地すべりが幾重にも重なっています。地すべりと田園風景は表裏一体であることを、改めて認識させられます。
私も「防災ブログ」なんぞ構えているわけですが、今日の武田先生のブログは強烈でした。
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科学について社会に責任を持っているのは,大学教授などの教員,特定の資格を持った専門家(技術士など)である.社会に対して責任ある解説ができるためには次のことが必要である.
1) 普遍的な科学的原理に従っていること。
2) 長期間,高度な訓練を受けていること。
3) 不特定多数に対して責任を持つこと。
4) 身分が保障されていること.
5) 特定の利害関係を持たないこと.
6) 何らかの社会的な認知を得ていること。
このことを理解するには「他人の体を傷つけても傷害罪にならない外科医」を考えればすぐ分かる.外科医はすべての要件を整えている。
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いやあ耳が痛いです。私はほどんど語る資格はありません。しかも、1)については、安全率や土砂整備率といった、ご都合的な数値を振り回しているので、耳に激痛です。
今日は妻と一緒に星野富弘展に行ってきました。青空にそよ風、木漏れ日、暑すぎることもなく最高の一日でした。
星野富弘さんの「花の詩画集」はもうかなり有名ですね。
そんななか、以下の詩が印象に残りました。
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暗く長い土の中の時代があった
いのちがけで芽生えた時代もあった
しかし、草はそういった昔をひとことも語らず
最も美しい今だけを見せている
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地質技術者も自然の歴史と会話します。
こんな美しい描写をしてみたいものです。
仕事ばかりしていると、このような詩心を忘れがちです。
いろんな現場が舞い込んできました。出張シーズンの到来です。ただ、最近の現場は、あまり知的生産を伴いません。状況写真があればいいってなもんばかりです。マニュアル主義の(何度も言いますが)弊害です。マニュアルで生産性向上を目指したんだと思いますが、とてつもない逆効果です。
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宅地耐震化:自治体の66%検討せず - 工事費負担が障害に -
http://mainichi.jp/select/today/news/20090603k0000m040139000c.html
対象の147自治体に聞き取り調査したところ、昨年度までに事業を開始したのは、21自治体のみ。今年度新たに予算をつけたのは7自治体で、「前向きに検討」と答えたのは22自治体にとどまった。
障害になっているのは、原則として対策工事費の半分を住民が負担する点だ。多くの自治体が「工事をしても完全に被害を防げるとは言い切れず、住民の合意を得るのが困難」と説明する。造成地を「危険」と判断した場合、土地の資産価値が下がることを懸念する自治体も多かった。国の補助率が調査費の3分の1、工事費の4分の1と低いことへの不満も出ている。
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相変わらずだなあという印象です。まず、「工事をしても完全に被害を防げるとは言い切れず、、」という部分ですが、”完全に防ぐ”というところが、まず自然現象をイメージできていないと思います。コンクリートモルタルで急斜面を覆ってしまえば、がけ崩れは完全に防ぐ事ができるというのと同じ発想ではないでしょうか。自然は複雑系であって、土砂や水、植物がいろんな規模でいろんばペースで動きます。マニュアルどおりには行きません。
そして、これも相変わわらずなのですが、「「危険」と判断した場合、土地の資産価値が下がる」という間隔です。これは宅地耐震化事業に始まったことではなく、地すべりや土石流、活断層についても伝統的に言われてきたことです。
しかし、一度被災して多くの人が二重ローンを組む場合がもっと深刻です。エコブームでは"自然とうまく共生しよう”といいますが、地震は「来るべき」現象です。日本の豊かな自然は、地震や豪雨のたまものなんです。自然は”強制”するものではないのです。
要は最悪の事態だけを避ければなんとかなるのです。危険と判断されたあとに、安全にする努力をすることが、最高の資産価値とはいえないのでしょうか。
ゼネラルモーターズが破綻しました。ニュースはコレ一色です。BIG3は鳴りを潜めました。おそらくこういった事態になることを、あまり想像していなかったでしょう。
しかし、あまり同情的な声はないようです。技術革新に対して消極的で、デカイ車を造り続けたことや給料が高すぎたことなどが、一般的にいわれています。
同じような雰囲気は、建設コンサルタント業界にもあります。地震大国、豪雨頻発の日本において、防災の必要性は常にあって、その事業はなくならないといった論調です。しかし、こういった論調は、低燃費高性能などの市民のニーズを軽視し、ステイタスを求めるひともまた減らないだろうといったGMの雰囲気と一緒です。河川や道路がBIG2みたいな雰囲気ですが、業界が大きすぎてつぶせないという雰囲気も似ています。
今度の地すべり学会では、このところ休日を利用して歩いていた擁壁のチェック法についてまとめてみようと思っています。これまで宅地や擁壁の危険度判定といえば、被災宅地危険度判定士という資格に代表されるように「事後」の点検が主体だったと思います。この点検は、大きな地震が起こった後ですので、亀裂や段差が相対的に小さいものでも、結構目立つものです。そのため、幅3cmだとかある程度定まった値が出てくる訳です。
そうなると、昨日の記事にも書きましたが。「誰でもできる」「個人差がなくなる」という、技術者の存亡に関わる大問題が出てきてしまいます。
この問題を避けるために、技術者のための調査票を作成したつもりです。特にスケッチに重点を置いています。対象となる宅地だけでなく、そこが谷埋め盛土であった場合、宅地耐震化などの公的補助も必要だからです。公共事業の対象とならない場合、自主防災組織などの共助も必要でしょう。いずれにしても、エンドユーザーたる住民に、専門家が直にその力を発揮できるようなきっかけのひとつとしたいと思っています。
今日から薬事法が改正され、登録販売者の資格を得れば薬の販売ができるようになるそうです。先の裁判員制度もそうですが、うがった言い方をすれば"素人の参画”に不安を覚えます。やはりプロの薬剤師の方が、的確なアドバイスができるでしょう。
プロというのは、自分の意見を持ち、自分で課題を見つけ解決法を見つけると定義することができると思います。薬剤に関してQ&Aマニュアル的なものができてしまったら、重大な過失が起こってしまいそうな気がししてなりません。
道路防災点検や盛土の点検なども、きちんと土地の成り立ちを知り、今後の挙動をイメージできる人がやらないと、”想定外の連発”が起こり、大きな事故につながってしまいそうです。盛土の地中侵食や古い防空壕などがあると落とし穴ができてしまいますが、技術者の想像力が及ばない箇所に発生するといえそうです。