防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

目分量 - 目で覚える、体で覚える -

2009年06月21日 | 技術動向

テレビ東京系列の番組で「ソロモン流」という番組を見ていました。今日の放送はABCクッキングスタジオです。妻が時々通っている料理教室で、ABCというのは”イロハ”すなわち入門ということで、料理初心者の女性を中心に22万人もの会員がいるそうです。料理のテーマが月に一度程度あって、だれでも簡単に作れるレシピがweb上で公開されているのです。

この社長さんは、気軽な雰囲気作り、敷居が高いと思わせないことに努力をしているそうです。女性と子供が動けば巨大なマーケットが動くことを改めて実感させられます。プロの味を追及する料理教室は多々あれど、初心者向けは少なかったとのこと。

そのなかで、おばあちゃんの味、おふくろの味を若い世代に伝えたいという企画をしているというのです。いま防災や地盤技術者の分野でも技術伝承がさかんに言われるようになっていますが、料理の世界でもそういうことがあるようです。

印象的だったのが、おばあちゃんの『目分量』という概念です。塩何グラム、しょうゆ何mlと、数値が示されているレシピしか知らない女性たち、そして、経営者で今45歳の社長さんでさえ『新鮮な概念』」と驚いていたのです。おばあちゃん自身は、そんなの先代、先々代から目で覚えて、体が覚えているから測ったことなんかないわよという話。

私がよくやる空中写真判読や渓流の土砂調査なんかは、まさに目分量の世界です。礫に付着したコケの状況、植生の育ち方、細粒分・砂の抜け方なんかを総合的に判断して、今後豪雨があったら流下していきそうだ、あるいは、安定傾向にありそうだ、、などを判断するわけです。

私の上司は、地質調査でいちばん重要なことは”勘”だといいます。それは多くの”観(察)”に裏打ちされた経験知であり、それこそ露頭を見たときの目分量です。例えば、渓流の堆積物の植生が何センチ以上だから土砂は動く、動かない、クラックがあるから擁壁が危険、と項目別(まさにレシピ)にチェックするだけの仕事に何の疑問も持たずに終始すると、想定の範囲が狭くなり、いつか大事故が起こる、、と危惧を口にします。

私たち防災技術のサービスは、自然科学を基礎としているだけに、さすがに敷居はある程度高くなります。しかし、防災や自然科学に関する知識を持っていることで得した気分になったり、相談窓口をいかに気軽にできるか、マーケットの創出には、その辺の”感(性)”を磨くことも重要であると思います。