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「てんかん診療ガイドライン2018」の改定詳細

2018年08月24日 | 一般情報・疫学・レビューなど

8年ぶり改訂の『てんかん診療ガイドライン2018』詳報

日本神経学会監修の「てんかん診療ガイドライン」が改定されて、詳細が医療従事者用の記事に掲載されていたので、ドラベ症候群に関係しそうな内容を紹介します。

 

日本神経学会監修の『てんかん診療ガイドライン2018』

 8年前に発行された『てんかん治療ガイドライン2010』では、薬物療法の効果が得られないてんかんを「難治てんかん(薬剤抵抗性てんかん)」とまとめて表現していた。だが、抗てんかん薬で発作を抑制できないてんかんが全て難治てんかんとされるわけではない。そこで、『てんかん診療ガイドライン2018』(以下、2018年版)では、「薬剤抵抗性てんかん」を独立して定義した。

 薬剤抵抗性てんかんの定義は、2018年版で「そのてんかんに対し適切とされる抗てんかん薬を単剤あるいは多剤併用で副作用がない範囲の十分な血中濃度で2剤試みても一定期間(1年以上もしくは治療前の最長発作間隔の3倍以上の長いほう)発作を抑制できないてんかん」とした。つまり、発作が3カ月に1回起きていた患者の場合、有効性を判断する期間は9カ月だが、1週間に1回起きていた患者の場合は3週間となる。患者ごとに異なる発作の頻度を反映できるようになった。

 前版に引き続き、2018年版でも『てんかん診療ガイドライン』作成委員会の委員を務めた須貝研司氏(前・国立精神・神経医療研究センター病院てんかんセンター長)は、「薬剤抵抗性てんかんが定義されたことで、外科手術を検討するタイミングが明確化し、患者の発作の頻度によってはより早期から検討できるようになった」と話す。

 これは、前版では外科手術の適応を検討するタイミングを、適切な抗てんかん薬2~3種類以上で「2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されない」ときとしていたためだ。だが、2018年版では、薬剤抵抗性てんかんと判断されれば「外科手術の適応を検討する」としたため、「2年以上」の治療期間の縛りがなくなり、患者の発作頻度に合わせて、より早期から外科手術の適応を検討できるようになった。聖隷浜松病院(静岡県浜松市)てんかんセンター長の榎日出夫氏は、「てんかん発作は発生する期間が長引けば長引くほど治りにくくなるため、外科治療の適用がある患者は適切な時期に実施できる方がいい。より積極的に外科治療を検討できるようになったのは福音だ」と話す。

 

新規抗てんかん薬の登場で変わる治療

 前版の作成後、新規抗てんかん薬に関するエビデンスが構築されてきたことを受けて、薬物療法に関しても大きな変更があった。「前版は2008年までの文献を基に作成したため、その頃出たばかりだったり、まだ出ていなかった薬剤については、エビデンスが弱かったり、触れられなかったりした」(須貝氏)。そのため、前版ではカルバマゼピンのみだった新規発症てんかんで発作型が部分発作の場合の第一選択薬は、2018年版では新規抗てんかん薬のラモトリギン、レベチラセタム、トピラマートを含め5種類に増えている(表2)。


表2 新規発症てんかんの選択薬と慎重投与すべき薬剤(出典:日本神経学会『てんかん診療ガイドライン2018』)

 一方、新規発症の全般てんかんの第一選択薬は、前版までと同様バルプロ酸だ。ただし、全般性強直間代発作では「妊娠可能年齢女性ではバルプロ酸以外の薬剤治療を優先する」という文言が2018年版では書き加えられた。背景として、前版でも指摘されていた胎児の催奇形性リスクだけでなく、バルプロ酸を妊娠中に服用した母親から生まれた小児は用量依存的にIQ(知能指数)が低下することや、自閉症スペクトラムの発症リスクが高いことなどが指摘されるようになったことがある。

 なお、新規抗てんかん薬の中には、併用療法としてのみ承認されており、日本の保険診療上は単剤使用ができない薬剤も少なくない(関連記事:新規抗てんかん薬が使いたくても使えない!?)。例えば、前述の部分発作の第一選択薬の中でも、トピラマートは現在、併用療法としてのみ承認されている。2018年版では、冒頭の「てんかん診療ガイドライン改訂について」内で、現在承認されている抗てんかん薬を表にし、保険適用上の注意点と合わせてまとめた。須貝氏は、「てんかん診療に日常的に関わる専門以外の医師が、うっかり査定されないようにしていただくために表を作成した」と狙いを説明する。

 

けいれん発作が5分以上持続したらてんかん重積状態と診断

 その他、2018年版では国際抗てんかん連盟(ILAE)が推奨するてんかん重積状態の診断基準などにも触れている。

 てんかん重積状態については、前版では「発作がある程度の長さ以上に続くか、または短い発作でも反復し、その間の意識の回復がないもの」とし、発作の持続時間など明確な定義はなされていなかった。また、「これまで持続時間については、30分とすることが多かった」と記載されているが、実際の臨床では30分たたなくても静注薬による治療介入がされており、ガイドラインと臨床現場での実態に乖離がみられていた。そこで2018年版では、けいれん発作が5分以上持続すればてんかん重積状態と診断して治療すべきというILAEの推奨に触れ、CQの要約でも「けいれん発作が5分以上持続すれば治療を開始すべきで、30分以上持続すると後遺障害の危険性がある」と示した。

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