ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「湿地」バルタザール・コルマウクル

2018-12-27 06:35:04 | 映画


アマゾン・プライムにて鑑賞。他レビューを見ると結構評価低いようだけど、私はなかなか面白かったです。とにかく最近は2時間近くかかる映画鑑賞に集中力が続かないのでよほど面白くないと途中でやめてしまうのだけど最後まで観たのだからそれだけでも面白かった証拠であります。重く暗い映画が好きなこともあります。



以下ネタバレご注意を。




馴染みのないアイスランド映画、ということですが馴染みがないから楽しいことも多々あります。一番の驚きは主人公刑事がドライブスルーで羊の頭を買うところ。どうするんだと思ったら普通に食べていました。リアルな羊の頭で肉の色もどす黒くてかなり衝撃です。それをナイフで切りながらむしゃってます。「いつもの」と言ってましたからいつも羊の頭を食ってるわけですね。日本人も魚の尾頭付きを好むわけですから、頭がついた魚に引いてしまう人もいるのを思うとさほど変わらないとは言えますが。

また司法解剖の際に使用している手袋でそのまま肉(別の肉です)をつまみ食いしているという場面にも心配になりました。全体に「アイスランドはアメリカとは違って色々遅れているんだよ。雑なんだよ」的な演出があり、そこがまた面白みでもありました。

レビューが低いのは出演者の渋さもあるのですかね。主人公が冴えない中年男で当然美女が演じるべき女性刑事を太めの中年女性神ぼさぼさ化粧なし的な方が担当していて若手のホープ的青年もあまり美形というほどでもないという。しかも主人公の娘はヤク中でかなり荒んだ容貌であります。
私としてはその辺の配役がとても良い感じに思えましたので、そこらが好き不好きの所以のようにも思えます。

というか。主人公男性、冴えない中年男と書きましたが私は渋くてかっこいいと思って見ていました。娘がいる、というところも含めてしかも北国の刑事ものであるのもあって昔読んでいた「マルティン・ベックシリーズ」を思い出してしまいました。
北国ものというのはほんとうに寒々しい感覚が作品を形作りますね。どうしてもそうなるのかと不思議にも思えます。すべてが情熱的な南国ものとは決定的に違う冷たい空気で満ちていますし、人々の容貌もやはり冷えているのですよね。

そして凍てつく景色。風が吹きつける何もない海辺にポツンと建つ一軒家の寂しさ。傍にある墓地も寂しげに見えます。
この映画は謎解き、よりもこうした冷たい空気感を表現した作品であるのでしょう。
そうした冷たい感覚の中で荒んだ麻薬中毒の娘を抱き上げる中年親父の優しさがほんのりと温かく感じられます。

父親の娘の愛情を描いた映画でありました。



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