ヨーヨー・マの「シルクロード・プロジェクト」は、シルクロード沿いの民族音楽の音楽家たちを集めて、それぞれの民族の差異、共通項を見出しさらに新しい音楽作り演奏することで、それぞれの伝統音楽を残していこうという、文化人類学的な意味合いで始められた。
このドキュメンタリー映画も冒頭は「シルクロード・プロジェクト」の成り立ちや過程を追っているが、途中から演奏家一人一人にスポットがあてられていく。
イランで革命が起きて家族全員死に自身はヨーロッパを何千キロも歩いて逃げた過去を持つ、イランのケイハン・カルホール。
内戦続くシリアから亡命したキナン・アズメ。
文化大革命で国外に出させるために両親に音楽を学ばされたという中国のウー・マン。
などなど。
故郷を離れて国境を越えて活躍する音楽家たちの、どこにいても“外国人”である自分のアイデンティティを再構築する姿を描いている。
神妙な気持ちにもなるけど、当然ながら世界的な音楽家たちの名演も素晴らしい。
特に最後の全員によるアンサンブルが民族音楽の結晶としてのカタルシスに満ちていて大感動です。