マ・オー -魔王、日本が舞台のオンラインゲームを始める- (GA文庫) 価格:¥ 630(税込) 発売日:2012-10-17 |
読了。
うーん、イマイチ(´ω`)
以下雑感。
・まず世界観の話からすると、「異世界で流行しているオンラインゲームの中に主人公が召喚される」という二重構造が肝になっていると思いますが、身も蓋もないことを言うと、ただ単に作品構造を分かりにくくするだけのナンセンスな設定としか思えませんでした。たしかに、よくある「異世界に召喚された主人公がチート能力持ち」みたいな設定はチープすぎる気もしますし、紛うことなき一般人である主人公を一般人のまま活躍させるにはどうすればいいかと考えた場合、今作の「日本を舞台にしたオンラインゲーム上で、日本人らしく振る舞うことが重視される」という設定は一つのエクスキューズになるかもしれません。が、「え? 俺は普通のことやっただけなのに、どうして皆騒いでるの?」みたいな勘違いSUGEE系のネタは基本的に長持ちしないので、すでに1巻ですら中盤を過ぎたあたりから展開が苦しくなっていたのはかなり先行きが不安になりました。1巻だけでお腹いっぱいになったというか、登場人物たちのやり取りに飽きてしまって、続きがまったく気にならなかったです。
・次にキャラの話をすると、ヒロインである真緒をはじめ、どのキャラもインパクトに欠けるのは否めないと思います。キャラを立たせようという努力や、個性を持たせようという試みは伝わってくるんですけど、いかんせんどれもこれも上手く作用していません。例えば真緒はわかりやすいツンデレを軸にしたキャラですが、それにプラスされた左手の動きに感情が現れてしまうとか、そういった個性を持たせるための設定のひとつひとつが噛み合ってないというか、上っ面の設定をかき集めただけで、作者さん自身も真緒をどういうキャラにしたいのかよくわかってないように感じます。それは、もうひとりのメインヒロインである幼馴染みにも言えることで、優等生キャラだけどヤンデレというのが「単に相反する要素をくっつけただけじゃね?」と思えてしまいました。
・つーか、すげー失礼な物言いになりますが、他作品や他作品のキャラクターとの差違を出すために工夫した箇所が「ココ工夫しました!」って猛烈にアピールされてるように感じてしまって鼻につくんだよなあ。異世界召喚モノだけどチートじゃないとか、ツンデレっぽいけど良い子とか、優等生だけどヤンデレとか、まるでパズルのピースを機械的に当てはめたみたいに「相反する要素同士の組み合わせ」しか見られないのはつまらないです。
・異世界召喚モノというだけだとありふれているから異世界のオンラインゲーム上に召喚されたことにしよう、とか、ツンデレというだけだとありふれているからツンデレと相反する要素を沢山つめこんだキャラにしよう、とか、主人公がチートだとありふれているから一風変わったチートを目指してみよう、とか。ぶっちゃけ、こういった工夫や一捻りというのは、新しいアイディアを生み出すために必要不可欠なものですけど、作品の面白さに繋がらなければ何の意味もないです。
・で、最後の野球の試合のみ、「日本人らしい行動を取ることが高評価」というのを覆す設定を持ち込んでしまったのは、個人的には大失敗だと思いました。このゲーム内で日本人らしく振る舞うというのは、いわば作品の根幹設定なんですから、たとえ絵面的に地味になろうが魔法などが存在するファンタジー異世界という設定が何の意味もないものになろうが、ゲーム内での採点基準に関してはブレちゃいけないと思います。このどっちつかずな感じが作品全体に蔓延しているというか、「現代モノとファンタジーモノのいいところどり」をしようとして失敗してしまっている一番の原因でもあり、僕としては発想の掘り下げが足りなかったんじゃないかなーと思わざるを得ません。
・まとめると、日本人らしく振る舞うことが肝要なオンラインゲームという発想そのものには目新しさがあるのに、その設定を貫き通すことができなかったというのが非常に作品の印象を悪くしています。で、この練り込み不足は、作品の設定のみならず、キャラの設定にも表れていて、結果的に世界観にもキャラにもこれといった見所がなくなってしまっていると思いました。
続きは買わなくてもいいかなということで一つ。