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パイプラインのリークによりアラスカ原油生産停止

2006-08-08 | 石油
アラスカのPrudhoe Bayパイプラインで腐食による原油リークがあり、パイプラインでの送油を停止しているという。ここはアラスカノーススロープと呼ばれる油田地帯で、1967年にエクソンモービル、コノコフィリップスとBPにより開発されてきました。現在はBPがその操業に当たっています。原油生産量は40万BDといいますから、全米生産量の8%に相当するようです。このニュースを受けて、WTI価格は77ドル/バレルまで上昇しました。6月の最高値を更新することは無かったようですが、2ドル以上の上昇といいます。

40万BDは確かに少なくは無い量です。米国エネルギー省はBPやその他の製油所からの要請があれば備蓄原油を融通すると発表しています。また、西海岸の製油所には充分量の在庫があるので、このBPアラスカの生産停止が直ちに原油供給不足につながりはしないといえます。したがって、WTI価格が上がったのは、相場が上がりたがっていたから上がったのであって、BPの事故はその口実にされたに過ぎないという見方があります。

細かいことを補足すればアラスカノーススロープ原油は重質で高硫黄分(Dirty and sour)なので、この原油を精製している製油所ならば代替のLight and sweet原油の処理は容易です。逆にWTIをメインに処理しているような製油所に大量のノーススロープ原油を処理しようとしても出来ない相談になります。

WTI価格について、見掛けの最高値は本年6月の77.30ドル/バレルですが、インフレ調整後の価格で言うと1981年の86ドル/バレルが最高値だそうです。つまり、81年当事に比べれば原油価格は安いということになります。確かに日本でも、当事はガソリン1Lが160円位していたように記憶しています。今はまだ140円ですし81年当時の物価で価格を調整すれば160円は200円近い値になるのかもしれません。

BPはまだ当該地区の全パイプラインの検査を終えていないので、復旧にどれくらいの日数がかかるのかを公表していません。少なくとも16kmに及ぶ部分のパイプはすべて交換する、ということを表明しているようです。そもそもBPのこの地域では3月に5,000バレルの原油リークがあったという前科があります。この事故を受けて米政府よりパイプラインの総点検を要請されて、5月以降に順次実施してきたなかで今回の事故を見つけたようです。

ノーススロープでの更なる油田開発については、下院で承認が取れたのに上院で承認されなかったという状況があるそうです。もともとこの施設は米アモコの所有でしたが、BPがアモコを合併したことでBPの所有となった経緯があります。米国石油資源をイギリスの会社に開発させていいのか、という論調が議会の決定に影響しているのかもしれません。

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