化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

クリーン燃料製造への投資

2006-09-27 | バイオマス
ビルゲイツやウォーレンバフェットなどの大富豪が莫大な個人資産を慈善事業に投じる話題が以前にありました。
今回はクリーン燃料製造に私財を投資するというお話です。英国バージングループを率いるリチャード卿が航空や鉄道事業などからの収益のうち、個人資産についてクリーン燃料の開発に投資するといいます。投資総額は10年間で3,500億円とも言われています。その手始めとしてネットチケット販売会社を売却し、既に350億円を用意しているそうです。

自分の世代が親の代から引き継いだ美しい地球を子供たちの世代に渡してゆくためには、温暖化抑制が大事であり。そのためには化石燃料を代替するクリーン燃料の開発製造が不可欠との考えです。

リチャード卿はお金をどこかに寄付するというのではなく、自らのクリーン燃料事業に投資するとしています。事業ですから将来的には利益を上げることを目標にしているのでしょうが、すべての関連事業で収益を上げるものではないとのことです。

彼の会社では既に石油由来でない航空燃料の開発として、多年草や食料でない農産物からバイオ燃料を製造するプロセス研究に着手しています。

バージングループは36年前にレコードの通販会社として始まりました。今では航空会社、携帯電話、ワイン販売、鉄道事業などを擁しています。彼は起業家精神で新しい事業に取り組み、1999年にはナイトの称号を与えられています。もちろんなかには失敗した事例もあり、バージンコーラや真実テレビショウなどは顧客から見向きもされませんでした。

エネルギー関連研究には大きな資金が必要なことから、国プロとしても取り組まれています。2007年の米国予算ではバイオ燃料に175億円(対前年60%増)であり、再生可能エネルギー全体では1,150億円になっています。
最も1970年代のオイルショック時に石油代替燃料開発に投じられた金額に比べるとはるかに少ないそうです。

米国予算と比較して、リチャード卿が個人で投資するという金額の大きさが理解できます。



全く関係ないが、ファイターズよ、今日も全力でプレーしてシーズン1位になってくれ。それにしても金村の件はがっかりです。間違いは誰にもある、というヒルマン監督の言葉をかみしめて欲しい。

自動車メーカーを訴えろ?

2006-09-22 | 環境
カリフォルニアの州検事は、地球温暖化が同州の環境、経済、農業、人の健康に被害を与えているとして、自動車メーカー6社を北カリフォルニア地裁に訴えました。

GM,トヨタ、フォード、ホンダ、クライスラー、日産は毎年289百万トンのCO2を排出している自動車を製造して、公共に対して迷惑を及ぼしていると主張し、賠償の責任があるとしています。

自動車は全米で5番目、カリフォルニアで3番目のCO2排出源であり、その責任は自動車メーカーにあるとしています。さらに大気汚染、海岸侵食、水不足によりイ1000万人以上が被害を受けていると主張しています。

自動車の排気ガスと水不足がどういう因果関係にあるのか理解に苦しみますが、言いがかりの感はぬぐえません。

案の定、自動車メーカーは反論しています。
先に北東部の7州が同様に環境被害という理由で電力会社を訴えたが敗訴した。それと同じように全く迷惑な話しだ。
今の自動車は一世代前のものに比べると99%クリーンになっている。さらに究極のクリーン自動車、水素自動車の開発を継続しているし、その間の繋ぎとして、フレックス燃料エンジンも開発した、ということです。

ちなみにフレックス燃料エンジンとはエタノール混合ガソリン用エンジンで、エタノールの混合比率がいくらであっても自動的に対応できるエンジンです。

さらに、訴えを起こした州検事総長は次の選挙に出馬予定なので、そのための人気取りだろうとのうわさもあります。

最も米国のメーカーは利益率の高いSUV車を積極的に販売してきました。SUVは燃費が悪いのでCO2排出抑制に米国メーカーが真摯に取り組んできたとは言いがたい面もあります。その間に、日本のメーカーの小型車、高燃費車に押されて、GMやフォードは販売不振でアップアップ状態ですから、米国メーカーは「空気を汚した」のではなく、「空気が読めなかった」という大きなつけをこれから払うことになります。

ドリリングコントラクター

2006-09-21 | 石油
自民党総裁選はあっさり安倍氏が過半数を獲得してしまいました。2位3位連合の逆襲などの権謀策術ははるか昔の話です。もう小説・吉田学校の世界には戻らないのでしょうか。個人的には将来への明確なビジョンと実行計画を示しているビジネス感覚あふれる麻生氏に期待していたのですが、残念です。

タイのクーデターはそれほど大きな衝撃を与える間もなく、首相の亡命とクーデター軍の民主主義制度における改革団宣言、近い将来の選挙ということで落着です。アメリカの新聞HPを見て、このクーデターが大きく取り上げられていないのは不思議でしたが、そういうことかと納得しました。

さて、カナダでは原油高を背景に石油掘削が2年続けて増加する見込みです。これに対してガス掘削は価格が変動しているため、やや減少すると予想されています。

石油井の数を見ると、2004年が4,427、2005年が4,822と9%の増加です。また1月から6月の上半期で比較すると2005年が1,746、2006年が2,235で実に28%の増加になっています。

一方、ガス井は2005年に比べて2006年は2%の減少だそうですが、コールベッドメタンについては増加しており、ガス井全体の30%に達するそうです。

原油高により石油掘削数が増加するのは容易に理解できますが、もう一つの理由としてgrowing rig fleetというものがあげられています。rig fleetとは日本ではなじみの薄い言葉です。直訳すれば掘削リグの一団ですが、要するに石油掘削会社が保有する掘削リグ装置一式といえばよいでしょうか。

10年前のリグ数は460だったそうですが、2006年は800に増えているそうです。リグですから文字通り石油井を掘る機械です。これが増えるということは石油会社が井戸掘りを増加させている、つまりは原油開発を進めているということです。

油田の権利を持っている石油会社は、自分で油井を掘るのではなくこの石油掘削会社(Drilling contractor)に仕事を発注するわけです。ところがリグ機械の数が不足していると、いくら石油会社が原油開発をしたくてもできないことになります。
逆に言えば、リグ数の増加により石油会社の原油開発が順調に進んでいるということになります。

原油生産量と並んでリグカウントという数値が石油業界では使われています。リグカウントとはこの掘削井のことですから、これが増加しているということは将来の原油生産井を増やしていることで原油生産量増加に直結します。いわばリグカウントは原油生産量(原油生産能力といったほうがよいか)の先行指標ということになります。

原油高とインフレ

2006-09-20 | エネルギー
足元の原油価格は$65/バレルを下回り、下げ傾向が続いています。それでも2004年初は30ドル程度でしたので、2倍以上の原油高が続いていることになります。ガソリン価格、電気料金、航空運賃など、原油価格を直接その価格に反映させる仕組みのものは確かに上昇していますが、それ以外の一般物価はそれほど上昇しているという感じがありません。日本ではむしろ漸くデフレを脱却してほんの少しプラスになった程度です。

アメリカでも事情は変わらないようです。エネルギーと食糧を除いたコアインフレ率は過去27ヶ月で2%と、多くのエコノミストが理想的としている1.5%を少し上回る程度です。この間の原油価格の上昇幅に比べると、明らかにまだ原油高は物価・インフレとして現れてはいないようです。

その理由の一つにエネルギー生産効率の向上が上げられます。1980年には$1,000のGDPを稼ぎ出すのに2.5バレルの原油を消費していたそうですが、今は1.5バレルだそうです。別の数値で表現すると、1ドルの買い物をすると11潜とはエネルギーコストであったものが、8.5セントになっているといいます。これは生産効率そのものが向上したこともあるでしょうが、省エネ型の産業(IT産業など)に構造転換していることもあるでしょう。

もう一つの理由は原油価格そのものです。表面上の原油価格は最高値域にありますが、インフレ補正をすると当時約30ドルであった1980年の原油価格は86ドル(2005年ドル)になるそうです。つまり、今よりも1980年当時のほうが原油は高かったということです。確かに、日本でも当時はガソリン価格が150円をはるかに上回っていたと記憶しています。日本の場合為替の関係もあるでしょうが。1リットル200円を超えたら自家用車などは維持していけないな、と感じたことを思い出します。

とは言うものの生産・流通の中間過程における価格吸収も限界に近づきつつあり、原油価格の上昇は蓄積効果を上回って確実に物価に浸透していくことと予想できます。

現実にインフレが消費者価格の上昇として現れた時、経済成長が減速圧力を受け、さらにこれがエネルギー需給のタイト感を緩和して、エネルギー価格が下がるというシナリオもあるかもしれません。その場合、エネルギー価格の下落によるメリットと経済成長減速によるデメリットを比較すると後者のほうがはるかにその影響が大きいように思います。

石油価格下落による代替エネルギーの経済性の悪化や経済減速による代替エネルギー開発への補助金の削減などのトーンダウンは、かつてオイルショック後の日本で経験しています。代替エネルギー開発はしっかりしたポリシーとフィージビリスタディを基本にしなければなりません。

イワノビッチの横暴

2006-09-19 | エネルギー
表題の言葉は別のブログから引用させていただきました。ロシアには昔から「イワノビッチの横暴」といわれる体質があるそうです。確かに、日ソ不可侵条約を破って終戦直前に日本に攻め込んだという実績があります。今回のサハリン2開発許可の破棄はロシアらしい戦術です。終戦後、北方領土は60年たっても帰っては来ないのだから、商事も物産もこれまで投資した5000億円や6000億円はあきらめたほうが良いのではないでしょうか。まともな相手ではないので交渉にはならないでしょう。

撤退に当たって、ロシア側が開発を継続できないような処理を現地、プラントに施す(もちろん、開発を途中で中止することに伴う環境保護のための措置という名目で)ことはできないものでしょうか。日本を追い出して最後の仕上げだけ自分たちでやろうとしてもできない、ということがわかればロシアも少しは譲歩するかもしれません。

一方、サハリン1は問題を抱えながらも開発は進んでいるようです。こちらはエクソン(30%)、日本(30%、石油資源、伊藤忠、丸紅)、ロシア(40%)のように初めからロシアが参加していますので、サハリン2のような露骨な横槍はないようです。生産される原油は主に日本向けに船積みされますが、天然ガスはハバロフスクの会社が引き取ることになっていますので、ロシアとしても開発を中断させてしまっては元も子もないというところでしょう。

8月から原油生産が開始され、第1船の積出準備も整っているようです。年末までには原油生産量を25万BDまで引き上げる計画です。エクソンモービルの発表によれば、開発費は為替の影響を受けて上昇しているといいます。但し、モスクワの新聞が報道しているように$17Billionではない、としています。

エクソンモービルとロシア政府の間では、サハリン1ブロック近くの油田について見解が分かれています。エクソン側は油田は現在の契約の中にあると主張していますが、ロシア側は新たな油田なので新規に入札をするとしています。

資源開発に当たっては内戦が勃発する、なんていうカントリーリスクがつき物です。ロシアも極めてカントリーリスクが高い国(開発がうまくいけばいくほど)と認識しなければなりません。

バイオ燃料に投資のブーム

2006-09-15 | バイオマス
アメリカでは原油高と税制優遇によりバイオディーゼルの製造工場の新設が相次いでいます。2004年には22箇所しかなかったバイオディーゼルの製造所が今では76箇所に増えています。この勢いは当分止まりそうもありません。

バイオディーゼルを手がける企業はこぞって、製造設備の増強や新設を行なっていますが、その資金はベンチャーをはじめとしていろいろなところから出ているようです。

Greenshift Corporaion(ニューヨーク州)は$22Millionをかけて年産45Millionガロンの工場を新設します。資金はCornell Capital Partnersから出るそうです。
Renewable Energyは$100Mの資金を集めて年産60Mガロンの工場を建設します。資金はBunge Ltd.と二つのベンチャーファンドからでるそうです。

食品大手のCargillやArcher Daniels Midland Companyといった会社もバイオ燃料に投資するとしていますし、石油大手のシェブロンやBPといった会社もバイオ燃料の製造や取扱いに注力を始めました。

さしずめスモールビジネスにBig companyが終結するといった感じです。

現在76あるバイオディーゼルの生産工場は、平均で30Mガロンを生産し$20Mの売り上げだそうです。
アメリカ全体では2.3Bガロンのバイオディーゼルが生産されていることになります。しかし、全米でのガソリン消費量は140Billionガロンですから2桁違います。また、バイオエタノールをるくめたバイオ燃料の売り上げは$15.7Bでそのうちバイオディーゼルはわずかに$1.6Bです。

バイオ燃料の需要の高まりがバイオ燃料ビジネスを後押しし続けることでしょう。

ガソリン中のベンゼンの低減

2006-09-12 | 石油
ガソリンへのバイオエタノールの混合は、ただ単純に混ぜればよいというものではなく、その他のガソリン性状の規格を守らなければなりません。
一例としてベンゼン濃度についてみてみます。

ベンゼンの発がん性が指摘されて、日本では2000年にガソリン中のベンゼン含有量の規格が5vol%から1vol%に変わりました。また、関連して蒸発エミッションを低減するため2001年から夏場の蒸気圧(RVP)は78kPaから72kPaに低減されました。つまりRVP(37.8℃)規格は44から72kPaとなりました。但し、寒冷地用のものの上限は93kPaです。

アメリカではハイオクガソリン(Reformulated gasoline)中のベンゼン濃度を1vol%以下に規制しています。しかし2011年1月1日から全ガソリン中のベンゼン濃度は0.62vol%以下になろうとしています。ハイオクガソリンは全ガソリン中の35%程度を占めています。

それでは今のガソリン中のベンゼンの濃度はどれくらいになっているのでしょうか。規制が無いのではっきりとした実績は分かりませんが、ハイオクより高いのは間違いないでしょう。ガソリンの主な基材であるリフォーメートのベンゼン濃度は0.2から8.0vol%、FCCナフサは0.5から1.3vol%です。ガソリン中のベンゼンを0.62vol%以下にするには、この基材中のベンゼンを下げなければなりません。

リフォーメートのベンゼンを減らすには接触改質装置原料からベンゼン前駆体を分離することです。また、FCCナフサではFCC装置の運転条件、すなわちシビアリティ、触媒、原料ならびに添加剤を調整してやる必要があります。例えば、FCC運転をガソリンモードからプロピレンモードにするとベンゼンは0.5%から1.3%に増加します。

ガソリンの品質に関する規格は厳しくなる一方です。オクタン価はRONとMON平均で85から87に増大すると予想されています。オクタン価をあげるにはリフォーメートをたくさん入れればよいのでしょうが、それではベンゼン含有量も多くなってしまいます。

VOC規制も厳しくなる方向です。さらにエタノールの混合義務化の影響もあります。エタノールはリフォーメートと同じオクタン価ですが、RVPが1.3psi(9kPa)上昇します。このRVPの上昇を大目に見てもらえるのか、あるいは現行のRVP規制そのままなのか、はたまたVOC低減の観点から低くなってしまうのか、これらによってベンゼン含有量を低減する量やその方策が異なってきます。

また、ヨーロッパをはじめカナダや日本のガソリンはベンゼン1%規制のままです。アメリカでは夏場のガソリン需要期には10%を輸入に頼っています。この輸入品を0.62vol%規格を適用することが可能かと言う課題もあります。

ところでアメリカでのガソリン消費量はどれくらいなのでしょうか。
1日当り360 million galといいますから131 billion gal、つまり500百万kLです。きりのいい数字ではあります。石油全体の消費は1,090百万kLで2,080万BSD(330日)です。これは世界の25%に相当します。ちなみに石油は一次エネルギーの40.2%ですから、一次エネルギー全体では2,711百万kL(原油換算)になります。

話題の2006年のエタノールのガソリンへの混合量は4.0 billion galと予想されているので、3%に相当します。

燃料作物とバイオ工学

2006-09-11 | バイオマス
NYTimesより
バイオテクノロジーを用いてエタノールを製造するためのコーンや他の作物を改良する開発が進められています。原油の高騰と化石燃料使用抑制(輸入石油に頼ることの安全保障上の観点と地球温暖化抑制の観点から)を追い風にバイオ燃料は増産の方向ですが、そこには解決すべき課題がたくさんあるようです。

1.燃料作物改良の目的・目標
農作物はこれまで害虫と除草剤への耐性を上げる改良が加えられてきましたが、燃料作物ではリグニンを減らす改良が目指されています。リグニンは植物の剛性を保つために必要な物質ですが、エタノール転換に際しては邪魔者です。

現在のところ、バイオエネルギーに関する技術的関心は燃料作物からバイオ燃料への転換技術におかれていますが、バイオ燃料の重要さが増すにつれて単位農地面積当りの生産エネルギー量に関心は移るでしょう。それはバイオ燃料の最大の弱点が量的確保にあるからです。

またコーンの発酵可能なデンプン量を増やすことで、エタノール収率は2から5%はアップするといいます。

2.遺伝子操作と一般的な交配による品種改良
Syngenta社は2008年に遺伝子操作で改良したコーンを製品化するとしています。これはエタノール工場で添加する酵素を初めから含むものです。同社は海底火山の近くにいる微生物からの遺伝子を酵素コーンに移植しています。高温耐性のある微生物からの遺伝子を持つので、エタノール発酵条件をより高温に、より酸性度アップ方向にできることでエタノール生産効率は向上します。

DuPont社はバイオディーゼルのための大豆を改良すると発表しています。
Ceres社はswitch grassを燃料作物にする開発を実施しています。

モンサント社やDuPont社は現時点での燃料作物の改良に必ずしも遺伝子操作が必要というわけではないといいます。一般的な品種改良のほうが開発期間が短くて済むという理由からです。さらに燃料コーンに要求される特性は、病気、害虫や干ばつへの耐性ですが、それは食用コーンに要求されることと同じです。従って、必ずしもSyngenta社の酵素コーンが必要ではないといいます。

環境主義者は、遺伝子操作作物が野生種と交配することで森林がしおれてしまうことを心配し、この様なバイオ燃料の情報が国民の車社会への熱中を加速する(省エネと反対の機運)ことに反対しています。

2000年にはAventis CropScience社のスターリンクコーン事件がありました。飼料用のみに認められた遺伝子操作コーンが異花交配により食用コーンにも混ざっていることが判明し、回収と輸出停止になったというものです。

さらにはエタノール発酵槽に後からそのような酵素を加えることと、あらかじめ燃料コーンの中にその酵素を入れ込んでおくことにどれくらいの差があるのか、という疑問もあります。

一方、賛成者は国外の石油への依存という恐怖に比べれば、遺伝子操作作物のリスクは小さいと主張しています。
Syngenta社は酵素コーンについて食用、資料用の両方の認可をアメリカ、ヨーロッパ、南アフリカなどいくつかの国で取得する方針です。この酵素は安全であり、事実唾液にも含まれているというのがその根拠です。

食品安全センターの関係者はこの酵素(のための遺伝子)はまだ良く解明されていない微生物から取り出されたものであり、この酵素自身がアレルギーを生じさせる可能性も否定されてはいないと慎重な意見です。
農業省は同社に対してこの酵素コーンについてもっと情報を提示するよう要求しています。

3.セルロースの利用

コーン全量をエタノールに転換してもガソリンの15%にしかならない現状では、コーン以外の作物に注目する必要があります。

またエタノール生産増加により固いコーンの需要が高まります。農家は輪作をやめ、毎年コーンを作ることを強いられますが、これは土壌にゆがみをもたらし害虫や病気を増やす元になります。

量的確保の観点からはバイオエタノールの原料をデンプン・糖ではなく、セルロースに求めることは必然に思えます。例えば多年草植物であれば、灌がいや植付けに要するエネルギーは少なくてすみます。
Ceres社は一般的な交配と遺伝子操作の両面からswitch grassの研究を進めています。現在のところ、通常5トン/acreの収穫量が9トン/acreに向上しているといいます。

Mendel Biotechnology社は中国原産のmiscanthusに注目しています。収穫量は20トン/acreも可能であり、植付けも受粉も灌がいの手間も要らず、少なくとも10年間はただ刈り取るだけでいいといいます。
さらにポプラも候補の一つといえます。ポプラはゲノム解明された最初の木だからです。

この様な状況にあって、燃料作物の開発は一般的な交配技術から次第に遺伝子操作に移行していくことは間違いないでしょう。それは地球を守る、地球温暖化を抑制する技術に反対するのは困難だからといえそうです。

2005ハリケーンの後遺症

2006-09-08 | 石油
昨年アメリカ・ガルフ地区を襲った大型ハリケーン(カトリーナとリタ)は記憶に新しいところです。ニューオーリンズの町は一瞬にして洪水で破壊されてしまいました。と同時に石油施設も甚大ならざる被害をこうむりました。
石油生産設備の95%、ガス生産設備の85%の操業がストップしました。

被害の全容はいまだ集計中とのことですが、前例の無いものだったのは間違いないところです。8月29日に上陸したカトリーナによって44の石油プラットフォームが破壊され、20のプラットフォームが損傷を受けたと報告されています。一方、9月24日にテキサス州とルイジアナ州の境に上陸したリタによって、オフショアの69のプラットフォームが破壊され、他に32箇所が損害を受けたそうです。
復旧工事は続けられているものの6月末時点でまだ、10%近くの設備は運転再開できていないといいます。

被害額としては、石油とガスの生産がストップしたことで$16B、掘削リグ・プラットフォーム・パイプラインなどの損害として$31Bという集計がなされています。さらにハリケーン後に保険額が$13M/四半期から$20M/四半期に上昇したといいます。

このようが大型ハリケーンへの対応策としてBPではプラットフォームとの通信のための光ファイバーケーブルを新たに$100Mかけて施設するといいます。これまでは人工衛星を利用して通信を行なっていたそうですが、それだと嵐の中では通信が出来なかったそうです。プラットフォームの足を長くして海面との間隔を大きく取り、高波による被害を減らそうという措置もとられるようです。あるいは海底パイプラインにコンクリートバッドの補強を施すことも検討されています。

この二つのハリケーンは異例中の異例というものでしょうが、心理的には大きな影響を今年も与えています。それはハリケーンと原油価格の関係に見られます。
カトリーナ被害が発生した直後の9月3日にガソリン価格はガロン当り$3.05と最高値を付けましたが、これは前週よりも37セントの上昇でした。しかしハリケーンが去った後は徐々に価格は低下し、10月21日にはハリケーン前と同じ$2.61まで戻りました。

今年も先日のハリケーン・アーネストに気をもんだようですが、熱帯低気圧になった途端にガソリン価格は11セント下落して$2.98になりました。この11セントという下落幅は昨年のハリケーン後以降ではもっとも大きなものです。
夏休みのガソリン消費シーズンも終わり、ハリケーンの懸念も遠のいてガソリン価格は下がってきたということでしょうか。ドライブをするならば今だ、という声も聞こえます。もっとも、原油高の影響はそのまま残っていますから、ロングドライブとは行かないでしょう。

カリフォルニアのCO2削減法案 その2

2006-09-04 | 環境
カリフォルニアのCO2削減法案は議会を通過したものの、法廷での論争に移っています。米ではこれを経ないと発効はしないようです。(こういった法案成立の過程は良く知りませんが。)法案そのものについて産業界は賛成、反対に二分されているようです。

法案では2020年までにCO2排出量を25%削減するとしています。2009年までに細部の規制内容をまとめ、2012年からの運用を目指しています。規制の中には補助金や排出権取引などの項目も盛り込まれるようです。

米国では国としての統一された温暖化対策政策を欠いているので、各州、各地域がばらばらにまるでパッチワークのようにCO2削減に対応しています。例えば北東部7州では2019年までに発電によるCO2排出を10%削減することを決めています。
京都プロトコルを経てEUにより導入された温暖化抑制システムは有効に機能しないという意見があります。それは、排出権取引に当たってのベースラインの確定がずさんだからという理由によります。

カリフォルニアはこれまでも環境政策の先陣を切ってきました。同州が1960年代に実施したスモッグ規制はその後、1970年になってエアークリーンアクトとして全米で実施されるようになったという実績があります。
また同州は2004年に自動車からのCO2排出抑制を目的に2009年モデル車の燃費規制を決めましたが、これは北東部州に広がっています。最もいまだ自動車会社と法廷闘争中で法律自体は発効していませんが。
自動車会社にしてみれば、SOx規制・NOx規制と違って燃費規制は排ガスをフィルターに通せば解決出来るというものではなく、エンジンの再設計を迫られることとなり、コストアップを嫌っているためです。

この法案については産業界でも賛成、反対と意見が分かれているようです。
カリフォルニア製造・技術協会は、同州の単独先頭主義は州内経済の競争力を弱めるとしています。同州ではこれまでもエネルギー利用効率向上を継続して追及してきており、その結果としてエネルギーコストが最も高くなっています。ここからさらに1段アップのエネルギー効率向上は容易なことではなく、他州に対して大きな不利を背負うことになると主張しています。
温暖化が問題になるようであれば、省エネを進めるのではなく、技術の転換を図ればよい、と主張しています。これは、産業の転換ということでしょうが、同州にはその能力があるといいます。

賛成の意見はUCバークレーの研究グループからのものがあります。CO2排出量を1990年当時まで抑制すると、州内で$74ビリオン(州内GDPの3%)の生産が増大し、雇用が89,000人分生まれると主張しています。また、エネルギー効率向上の方策はまだまだ残されているといいます。
パソコンや半導体、インターネット産業のようにCO2規制により同州企業がエネルギー技術のトップランナーになれるとしています。確かに、CO2規制はハイテク産業にとっては対応しやすく、セメントや石油精製産業にとって対応することは簡単ではないでしょうが、すでにバイオ燃料などの取り組みも始まっています。

1970年当時の大気汚染浄化のための排ガス規制は、州内の大気汚染が全米中でもひどく、対応を迫られていたという背景があります。進んで先陣を切ったというよりも、最も早く対応しなければならなかったわけです。確かに、規制の内容はもっとも厳しいものであったことも事実です。
これに対して温暖化防止では、今現在カリフォルニアにおいて何か実害が発生しているわけではありません。(もっともこれは世界中そうですが)それゆえ、実害が無いのに、なぜ先陣を切るのかという意見があるものと思います。いずれにせよ、全米7位の経済圏でビジネスをしようとするのならば、この規制に対応していかなければならないようです。