化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

テスラが時価総額トヨタ越え

2020-07-03 | 環境
テスラの電気自動車は確かにかっこいい。アメリカのショールームで見ました。でも年間生産台数はまだ40万台です。一方、2019年のトヨタの生産台数は国内340万台、海外は560万台であり合わせて900万台を超えています。生産台数でみれば、テスラはトヨタの20分の1より少ないのに、時価総額がトヨタを超えている。やっぱり、電気自動車にかける世の中の期待がそれだけ大きいという事でしょう。


でも忘れちゃいけないのは、トヨタが本気で電気自動車作ったらどうなるの、という事です。ハイブリッドが有るので、対外的には大きな声で言ってませんが、きっとすごく安くていい電気自動車を作るのではないか、と想像します。



テスラでもう一つ見ておくべきは、LiBを用いた大電力の蓄電池、メガパックというそうです。太陽光発電や風力発電と組み合わせて使うシステムです。LiBは高価なので大容量蓄電には不向きと思ってましたが、それなりに値段も下がってきていて実証化試験に使われているそうです。日本のメーカーも頑張ってください。


電気自動車の電気代

2019-07-25 | 環境
電気自動車が普及するかどうかは、価格と航続距離がどこまで改善されるかだろう。各国とも補助金やら燃費規制あるいはNEV規制で後押ししようとしているが、結局は消費者から見て既存のガソリン車との比較になる。

もう一つ別の観点としてガソリン代ならぬ電気代を計算してみます。
ガソリン車の燃費は20km/l、ガソリン価格160円/lとすると100円での走行距離は12.5kmです。一方、電気自動車の燃費は実走行データで7km/kWhだそうです。家庭用の電力料金は28円/kWh程度でしょうから、100円で走れる距離は25kmとなって、ガソリン代のおよそ半分になります。これは結構魅力的ではないでしょうか!

ここで一つ問題があります。ガソリンは52.8円/lのガソリン税が入ってます。電気自動車が普及すればするほど、ガソリン税の税収が減ってしまいます。これは困ったことですね。電気自動車の電気だけにガソリン税相当の税金を掛ける事になるのでしょうか?

燃料電池自動車の普及

2018-04-21 | 環境
電気自動車に押され気味ですが、燃料電池自動車は果たして普及するのでしょうか!

思い起こせば小泉首相が2002年末に首相官邸に納車されたトヨタの燃料電池自動車に乗ったて、2007年までに4万台普及させる政府方針を打ち出しました。あの時は正に、水素社会を日本がリードするといったムードでした。
(今でも小泉さんは原発を否定的に見ているのはその流れかと思います)

残念ながら燃料電池の量産化、低コスト化はそれほど容易なものではなく計画は実現しませんでした。
プリウスでさえ発売から4万台を達成したのは7年後。燃料電池自動車がそれよりも短期間で数万台も普及するわけがないと当時は思っていました。
いや普及させなければいけないんだ、というスローガンで政府の補助金事業に多くの怪しい研究やら開発が応募したものでした。

あれから12年後の2014年末、トヨタはMIRAIを市販しました。この三年間でのMIRAIの登録台数はおよそ5,000台だそうです。政府の目標は2020年に4万台の燃料電池自動車を普及させることといいます。
12年前とは大分状況も変わっています。 

MIRAIは700万だそうです。庶民には手が出ませんが、レクサスのハイグレードを買う人から見れば高くは有りません。また、色んな補助金が出るそうで500万くらいで買えそうです。(私はそれでも買えませんが)
トヨタの量産体制も整ったようで年間1万台くらいは作れるといいます。そうであればあと三年で4万台は手の届く目標ですね。

問題は水素ステーションでしょう。2018年3月末で計画中の9箇所を含めて水素ステーションは103箇所です。但し移動式と称する水素ボンベを積んだトレーラーを設置しただけのものが39箇所もあるので、実際に定置式のステーションは64箇所しか有りません。都内でではありませんよ、日本全国でです。北海道には1箇所もまだ有りません。

というわけで自動車会社、石油会社、ガス会社等11社が参画して日本水素ステーションネットワーク合同会社を作って、今後4年で80箇所の水素ステーションを作るといいます。
それで4万台の燃料電池自動車の給油ならぬ給水素を賄うといいます。面で考えると少ないのですが、線で配置を考えればよいのでしょうね。

これまではFCVも水素SSも補助金頼みです。問題は補助金が無くなっても、あるいは段階的に減額になっても、経済原理に従って水素燃料がガソリンとほぼ同じ価格で供給されるかどうかと思います。現状では水素SS一箇所建設するのに4億円かかるといいます。それでもガソリンと同じ価格(エネルギー等価)で水素を提供出来るようしていく必要があります。

どんなにCO2低減に寄与しても、地球環境に良いと言っても、FCVも水素燃料も安くなって今のガソリン車、ディーゼル車と同じ土俵に載らなければ我々庶民は買えません。



ツバルより危ない沖ノ鳥島

2009-12-13 | 環境
温暖化による海面上昇でツバルが海に沈んでしまうかもしれない、という映像を今日もテレビで放送していました。
たしかに大変なことなのでしょうが、素朴なギモンとしてツバルには満潮と干潮はないのでしょうか?あるとすればその時の潮位の差はどれくらいになるのでしょうか?
満潮の時にハリケーンが来たら結構高潮になると思いますが、ツバルに住んでいる人たちはこのような災害にどう対応しているのでしょうか?

ところで日本の沖ノ鳥島はツバルよりも海抜は低いはずです。Wikiによればツバルは海抜5mで、沖ノ鳥島は15cmだそうな。

海面上昇が起きたならツバルが海に沈む前に沖ノ鳥島が沈んでしまうでしょう。そうなると、日本の領土としての主張はどうなるのでしょうか?沖ノ鳥島が領土でなくなると経済水域は大きく縮小してしまいます。
ツバルも大変でしょうが、日本にとっては沖ノ鳥島がなくなる方が大変なことだと思うのですが、誰もそんなことに言及する人はいないようです。

海面下に沈んでも日本の領土として主張できるのですかね。
もしそうならばコンクリートの囲いまですることはないはずですから、海面に少しでも出ているということが重要なんだと思います。

ツバルの心配をする前に沖ノ鳥島の心配が先と思うのはあたしだけでしょうか!

中国に学ぼう

2009-12-12 | 環境
中国は嫌いという機運があるように感じる。

もうすぐ日本は中国にGDP世界第二位の座を奪われるから、なんとなく面白くないと感じるのは確かだ。しかし、一人当たりのGDPで日本に迫ってくるのは相当先の話でしょう。

日本を差し置いてアメリカと米中関係を築き、これからの世界をリードして行きそうなので、気に入らないと思う人もいるでしょう。でも、これは現実ですからいくら日本のプレゼンスが低くなるとやきもきしてみてもしかたがない。中国を非難しても日本のプレゼンスが上がるわけじゃありません。自衛隊を胸を張って軍隊と呼べないようなおなしな国(国外から見れば)の仕組みを改めることの方が先でしょう。

中国は一党独裁だ、人権が尊重されない、民族紛争がある、格差社会だ、と指摘することで、世界のリーダーにはなれないと主張するのは無理筋というものです。

政権交代により混乱を極めている日本に比べて、中国共産党の方が外交問題をうまく対処していると見て取れます。
日本にも格差はあるし、いろいろな差別は存在しています。中国だけを避難出来る立場にはないでしょう。

考えてみれば、遣唐使、遣隋使の時代から日本は中国に多くを学びました。今使っている漢字も中国に教えてもらったものです。
中国が好きか嫌いかとは別に、中国に学ぶことはこれからも沢山あるはずです。

COP15で中国はCO2総量規制には反対して、GDP1単位あたりのCO2排出量を削減するというアイデアを出してきました。これはとても理にかなっている意見と思います。

成長期の中学生高校生にメタボが気になる中年の標準カロリーを当てはめさせるような今のCO2量規制は無理というものです。

GDP1単位あたりのCO2排出量の各国比較です。(ECCJ 2000年データ)
日本    92
アメリカ 250
ドイツ  128
フランス 145
中国   891

やはり日本はダントツに省エネ国家ですね。ドイツ・フランスも日本の1.5倍近いです。中国の数値は桁外れに大きいですが、逆に言えばこの数値を半分にするのはそれほど難しいことではなく、しかも効果が大きいはずです。

日本は欧州勢に賛同するような1990年比でCO2排出量削減という馬鹿げた基準を捨てて、中国の主張するGDP比排出量を基準とした削減案に賛成する方が良いはずです。日本にとって中国を見方につけるのは、国の利益にかなっています。
しかもこっちのほうが理にかなっています。

このアイデア、だめですかね。

朝まで生テレビ

2009-08-30 | 環境
一昨日の朝まで生テレビでは地球温暖化がテーマで、激論が交わされたそうです。選挙期間中なので、やはりこういうテーマが選ばれたのでしょうが、それはとってもいいことです。

地球は本当に温暖化しているのだろうか、むしろ氷河期に突入している入り口にいるのではないか、あるいはいまおこなわれている地球温暖化抑止の方策は本当に実効あるものなのだろうかが、論点だったそうだ。

このブログでは何回も触れているが、地球が温暖化していようといまいと、省エネを目指さなければいけないことになんら変わりは無い。そして、残念なことではあるが省エネは生産活動の面から見ればコストアップの要因に必ずなっているのです。それを技術でいかに安上がりに仕上げるか、という技術競争を国際的にやっているのです。

一方、省エネをやっても金儲けは出来ないので、温暖化を口実に金儲けをしようとする輩がいることは確かです。京都議定書はヨーロッパが仕掛けたルールです。それが証拠に日本は排出枠を海外から購入して2012年までの目標を達成しようとしていますが、購入先はヨーロッパです。(ロシアも含む)

でもこれっていいんでしょうかね。結局お金を払えば、温暖化ガス排出削減目標を達成できるという仕組み。おかしくないですか?お金を払ったら温暖化ガスを排出し続けてもいいのは、温暖化抑制にはならんでしょう。

つまりはヨーロッパに仕掛けられた戦略にはまってしまった、ということに他ならないのです。

国内でもスーパーのレジ袋有料化が浸透していますが、これってスーパーがレジ袋のコストを削減できただけじゃありませんか? だって、ホームセンターでは今でも無料でレジ袋をくれますよ。あるいはコンビにはどうしてレジ袋有料化にならないのでしょうか?

朝までテレビを見なかったのはちょっと後悔です。

さて、いよいよ開票の時間が近づいてきました。政権交代はなるのでしょうか。
各党の政策からは日本の将来が見えてきませんが、覚せい剤タレントのニュース見るよりはまだ選挙番組見てたようがいいような。
それにしてももういい加減、のりピーを取り上げるのはやめて欲しい。

カーボンマイナス東京10年プロジェクト

2007-10-14 | 環境
今日のサンプロに石原都知事が出ていました。そこで、「カーボンマイナス東京10年プロジェクト」を昨年12月にはじめたが、なかなか進展させるのは難しいといった話がありました。もちろん、ゴア副大統領(元の)のノーベル平和賞受賞に関連した話題であることは言うまでもありません。大統領や元首を終わってノーベル賞をもらう人はいましたが、大統領になりそこなってもらう人は珍しいといえます。

このことからアメリカの環境に対する姿勢が見えるような気がします。石原知事の言葉を借りれば「アメリカと中国は似ていて、金、金の思想」ということでしょう。日本はどうか、一概には言えませんが、自分の生活に置き換えて考え直してみる必要があります。

東京都が率先してやった環境政策としては、ディーゼル車の締め出しがあります。結局国もこれを追認するしかなかった。今度も同じことになるでしょうか。
蛇足ながら、ディーゼル車は省エネという観点からは優れているので、燃料やフィルター技術の向上で復活させるべきと思います。

ところで先の東京10年プロジェクトの中の主なものは
1)大規模CO2排出事業所に対する削減義務と排出量取引制度の導入
2)家庭からの「白熱球一掃作戦」を展開
3)大規模新築建築物等に対する省エネ性能の義務化
4)ハイブリッド車などの大量普及をめざす「低燃費車利用ルール」の策定
などです。

白熱球の一掃作戦によりどれほどの効果があるのか、疑問はあります。一般家庭で白熱球を使っているのはトイレ、廊下などです。この二つの部分で消費される電力は高が知れているので、省エネ効果は大きくないはずです。しかし、家庭の省エネ意識を高める意義はあると思います。白熱球一掃はむしろ、民生業務の分野、商店やスーパーなどの照明に適用したほうが効果は大きいと思われます。

白熱球一掃やハイブリッド車普及というと、なんだか家電メーカーやトヨタの回し者のような感があります。しかしそれらの会社がいち早く省エネ商品を開発しているのですから、こういうキャンペーンの言い回しになるのは当然でしょう。

東京都のみならずほかの自治体もこういった目標をそれぞれ持っているはずです。しかし、国の目標よりも低い目標を掲げるわけには行かず、さりとてできるかどうかわからない高い目標、国よりも高い目標を掲げて国から目をつけられても損、ということであんまり大々的に公表していません。
たぶん、県庁などの環境関連部署の行動目標くらいにしてあるのでしょう。
東京都だから、国とけんかできるんで、ほかの県は国と喧嘩はできないということだと思います。

以前環境省が炭素税を持ち出しました。これからは炭素税ではなく、CO2排出賦課金を都道府県に課したらどうでしょうか。当然、都会で人口の密集している県、工場が多い県などは賦課金を多く払います。一方、過疎で人口が少ない県は、森林面積が多いので、CO2を吸収しているはずです。こういった県に賦課金を還付すればよいでしょう。

こういった都道府県単位の賦課金、還付金は地方活性化の財源にまわすこともできるはずです。ふるさと納税では、結局役所がどこにお金を多くまわすかをコントロールしてしまいます。CO2賦課金ならばそんな役所の恣意が入らないのでは、と考えるのは単純すぎるかな。

猛暑と地球温暖化

2007-08-16 | 環境
猛暑です。なんといっても猛暑ですね。涼しいはずの北海道でも今週は30℃をはるかに越える日が続きました。

熊谷で日本最高気温を更新したというニュースと同時に地球温暖化が進んでいるというニュースを流しています。

これだけ暑いとエアコンに頼らざるを得ないのですが、エアコンを回すことによってエネルギーを消費するわけですから、さらに温暖化を加速し気温のベースを押し上げてしまうという皮肉です。

われわれも何とか工夫しながらこの温暖化を抑制する努力をしなければなりません、と司会者がしゃべっています。しかしその格好を見てちょっと待て、といいたくなります。

司会者は長袖スーツにネクタイを締めて涼しそうな顔でしゃべっています。テレビのスタジオというのはライトが当たって結構暑いものだと聞いたことがあります。にもかかわらずこの涼しげな顔はどういうことでしょうか。たまたまこの司会者だけが暑さに強いのでしょうか。

違うでしょう。スタジオの気温を根限り低く設定しているはずです。そのためにエアコンはフル稼働のはずです。われわれも、温暖化抑制のための努力をしなければと、呼びかけるのならば、まずは自分たちがクールビズでスタジオの気温は現在28度あるのでノータイで失礼します、とでもいったらよいのでは。

テレビ局は特別、と考えているのならば大きな勘違いでしょう。

溶融炭酸塩形燃料電池

2007-03-28 | 環境
燃料電池といえば一般的には自動車向けや小出力(1kW)の家庭用、あるいはもっと出力の小さいパソコンや携帯電話用が話題になります。これらはいずれも固体高分子形(PEFC)と呼ばれるものです。燃料電池は多くの場合、使用されている電解質により分類されます。この電解質というのは物質は通すけれども電気(電子)を通さない性質を持つ、燃料電池にとって心臓部に当る部品です。

固体高分子形燃料電池とは文字通り、電解質が合成高分子で出来たフィルムを使っています。この固体高分子の中をプロトン(水素イオン)がアノード側からカソード側に移動します。現在世界で最も台数が多いのがこのタイプで、家庭用1kWクラスのものは5,000台が使われているそうです。もちろん使われているといっても実験的に使用されているもの、つまり実用ではないものも多く含まれています。

ところで台数でみると固体高分子形が最も多いのですが、発電量で見ると溶融炭酸塩形(MCFCと略す)が最も大きくなります。これは名前のとおり電解質がリチウム、ナトリウムやカリウム炭酸塩から成っています。

この溶融炭酸塩形は300kW規模のものが最も多く導入されていますが、大規模なものでは3,000kWとか5,000kWというものもあります。FuelCellエナジー社(米国)は自社の溶融炭酸塩形燃料電池の設置状況を公表していますが、2006年までの累計で日本・韓国に限ってみただけで8,000kWに達しています。日本と韓国、しかもある一社のものだけで家庭用規模8,000台に相当するのですから、全世界では発電量から見れば溶融炭酸塩形が最も多いのが理解できます。

溶融炭酸塩形は固体酸化物形(SOFCと略す)と並んで高温型燃料電池とも言われます。溶融炭酸塩形の運転温度は650から700℃、SOFCは800℃以上になります。PEFCが100℃程度の運転温度ですから、かなり高温といえます。

高温型燃料電池の利点は、電池温度が高いので電池反応速度が大きくなる、高価な金属触媒を必要としない、COによる触媒被毒の心配がないことなどです。燃料電池のコストダウンで一番の障壁は白金触媒といわれますから、白金触媒を使用しないことは大きな利点です。さらにCOも燃料とすることが出来ます。化石燃料の改質で水素を作る場合、COを極力減らすためにさまざまな装置が必要ですが、MCFCではそれが必要ありません。

但し不利な点もあります。高温条件で使用されるので高価な材料が必要となる、電解質となる炭酸塩を作り出すために空気のほかにCO2をカソード側に常に供給する機構が必要になるなどです。高価な材料といっても運転温度はSOFCより低いので、これから材料開発をしなければならないということはありません。

溶融炭酸塩形の導入先は排水処理施設、ホテルや病院などです。排水処理施設では消化ガスを燃料にすることが出来るため、ホテルや病院ではコジェネレーション機器の一つとして導入されています。更なるコストダウンや性能向上が必要ですが、現状で最も商業利用に近い燃料電池と考えられます。

産業・エネルギー部門の自主行動計画

2007-02-27 | 環境
前回の続きです。97年6月に経団連は『温暖化対策のための自主的な温暖化ガス削減計画』を策定し、実行してきました。行政から数値目標を押し付けられる(ということは役所の規制行政が増える)ことを嫌って、産業界は自主的にCO2を削減します、と先手を打ったわけです。

これには60業種が参加し、産業・エネルギー部門の35業種では数値目標を定めています。これが功を奏しているといっても良いのか、その他の部門が軒並みCO2排出量増加しているにもかかわらず、産業・エネルギー部門はCO2排出量を減少させています。

経産省は毎年計画の進捗を点検し、改善などを指導する、ということで面子を立てています。

ところで業界別のCO2排出量(2005年、百万トン/年)は以下のとおりです。
日本鉄鋼連盟    182
日本化学工業協会  75
石油連盟      45
電気事業連合会   39
日本製紙連合会   25
セメント協会    22
その他       66
合計        454

鉄鋼が飛びぬけて高くなっています。これは鉄鉱石の還元により銑鉄を作るのですから、原理的にCO2が生成するのは仕方のないことです。化石燃料の燃焼によりCO2が排出しているのではありません。しかしそうも言っていられませんから、製造プロセスの改善によりエネルギー効率を向上させることや、今後、鉄スクラップのリサイクル量が増えて、電炉鋼比率が上昇していくことでCO2排出量削減が期待できます。

電力会社からの排出量が39 million tonと少ないのは意外です。日本の電力化率は42%ですから、日本で消費している一次エネルギーの42%は電力に転換されています。そう考えると発電により相当量のCO2排出があってもおかしくありません。

日本の総発電量は約1兆kWh/年(1×10^12kWh)です。全電源平均のCO2原単位は0.378kg-CO2/kWhなので、両者をかけると発電により排出されるCO2は378 million tonと計算されます。

電気事業連合会の排出量はそれのおよそ10分の1です。しかし考えてみれば、電力会社は発電した電力をすべて自分で使っているわけではありません。電力は工場や家庭で使われるわけですから、CO2排出の区分けは電事連ではなく業務部門や家庭部門などの使用部門になるわけです。

結局、電事連が負うべきCO2排出量は、発電に伴って要した部分のみになるのでずっと少なくなります。ところで、具体的にどういう計算や集計をして39 million tonという数値になるのかは良く分かりません。

温暖化対策としての自主行動計画

2007-02-21 | 環境
温暖化ガスを削減しなければならないことは、もはや誰の目にも明らかです。京都プロトコルに乗らない某国大統領も、温暖化ガス削減の政策を強く打ち出しています。石油メジャーですら「低炭素エネルギーへのシフト」といって、温暖化ガスという言葉を使ってはいませんが、その意味するところは同じエネルギー使用量でもCO2排出量を削減すること、を目指しています。

日経新聞によれば政府は学校や病院に対してCO2削減の数値目標を課すとのことです。日本では製造業やエネルギー業が自主行動計画に沿ってCO2排出削減を進めています。しかし、その他の部門ではちっとも進まないのが現状です。特にCO2排出量が増加してしまっている学校や病院などに数値目標を課そうという事のようです。

記事にはCO2排出量の現状と目標がまとめられているので、忘備のために記しておきます。単位はすべて百万トン(million ton per yaer)、CO2換算値です。
年度           1990年   2005年    目標
国全体          1,261   1,364(+8.2)  1,185(-13.1)
産業・エネルギー部門  550   540(-1.8)   504(-6.7)
運輸部門          217   257(+17.1)  250(-2.7)
業務部門          164   234(+42.7)  165(-29.5)
家庭部門          127   175(+37.8)  137(-21.7)
CO2小計         1,058   1,206(+14.0)  1,056(-12.4)
カッコ内の数値は増減率です。

CO2合計値と国全体の数値の差は、その他のメタン、代替フロンなどが含まれると新聞記事の但書きにあります。より正確に記せば、この差の中にはメタン、代替フロンなどのその他の温暖化ガス、さらに森林吸収分、今日とメカニズムによる海外からの排出権購入によって削減される分も含まれる、ということです。

話が細かくなるので以降はCO2排出量のみについて書きます。
チーム-6%という言葉が定着しつつあります。それではCO2排出量の目標値が1990年との比較で-6%かというとそうではありません。上の表で分かるようにCO2排出量で見ると1,056 million tonが1,056 million tonですからわずかに0.2%の削減です。これに先に述べた森林吸収や排出権の購入などをあわせて-6%にするということです。

むしろ足元2005年を基準として12.4%を削減しなければならない、といった方がピンとくるのではないでしょうか。 1990年から2005年にかけての増加量は148 million tonですから、家庭部門の排出量以上です。

言い方をかえれば、家庭の人口が2倍になったとおなじくらいに増加したことになります。日本の人口は減少しているのに、人口が倍増したくらいにCO2排出量が増えてしまったのはなぜでしょうか。

CO2排出量を減らすために、省エネ機器の導入を進めるといった具体的な方法を考える前に、なぜこんなに増加したのか、その原因を考えて見ることも必要でしょう。

産業・エネルギー部門はこの15年間で10 million ton減少しています。この減少量は満足できるものではありませんが、他の部門が大幅に増加していることを考え合わせると、自主行動計画の策定と実施が確実に行なわれているといえます。

その他の部門はいずれも増加していますが、業務部門の増加率が42.7%と最も大きくなっています。業務部門でもスーパーや百貨店は既に自主行動計画に参画しています。記事によれば学校(研究機関)や病院での排出量が倍増しているといいます。そこで増加量の多い学校と病院を対象に数値目標を設定しようということです。

ところで病院と学校は同じ理由によってCO2排出量が倍増しているのでしょうか。高齢化により医療施設にかかる人が増えた、医療の高度化により多くに機器が利用されるようになったなどが思いつきます。これらが病院におけるCO2増加の原因でしょう。

一方、学校はどうでしょうか。少子化ですから生徒の数はむしろ減っています。全国の教室が冷暖房完備になってきた、という話も聞きません。OA教室やPC教室など、電気を使う教室が増えてきているのでしょうか。学校・研究機関でのCO2増加の原因は良く分かりませんね。

地球温暖化の現状

2007-01-31 | 環境
世界100カ国以上の国から科学者たちがパリに集まって、気候変動会議を行なっています。金曜日には最終報告書がまとめられ、3部構成のうちの第一部が発表されます。

科学者たちは1950年以降の温暖化の主な原因は、人間の活動であるということを90%の確率で確認したといいます。くどい言い回しで、残りの10%の原因は何ですかと聞きたくなります。要はほとんど人間のせいですよ、ということです。

既にいくつかのドラフト案がマスコミに流れています。

今世紀末には北極の氷は夏の間は全くなくなる。

夏の地中海沿岸にはほとんど住めなくなり、逆にアルプスが冬のスキーの行楽地から夏場の避暑地になる。

温帯地域での夏の期間が長くなり、降雨量の少ないアフリカや南アジアでは干ばつ被害が多く発生する。

しかし、どれくらい海岸線が後退し、どれくらい海面が上昇するのかを推定するのは困難なようです。何しろ海面の上昇は昨日今日始まったわけではなく、1000年以上前からだそうです。産業革命以前から海面上昇は始まっているのですから、それは明らかに人間のせいとはならないでしょう。地球の自然として海面上昇という現象があり、これに産業革命以降の人間の活動が上乗せになっているということです。

産業革命以前の原因による気温の上昇は2から4℃であるという主張もあります。この原因は火山活動が大きなものでしょう。だからといって気温上昇はしょうがないとあきらめるわけにも行かず、さりとて火山活動を人工的に抑制するなんて出来ません。せめて人間が上乗せしている部分だけでも減らそうということです。

温暖な地域では砂漠化が進む、干ばつが起こるなど被害ばかりですが、地球温暖化のプラス効果は無いのでしょうか。

寒冷地に住む人にとっては、
暖かい冬は燃料代が少なくて済む、ということは灯油などの燃料消費が少なくなるのでCO2排出量は減る、

除雪費が少なくて済み赤字の自治体にとっては助かる、

夏季の気温が上がるので農作物の収穫量が増えて、増えた分でアルコールなどバイオ燃料を製造できるので、ますますCO2排出抑制につながる、などです。こう見る限り困ったことにはならないようです。

シアトルの雨

2006-11-29 | 環境
秋の長雨といいますが、今月のシアトルの降雨量が新記録を樹立するかどうかという話題です。日本ではイチロー選手のマリナーズで有名なシアトルですが、その気候については意外と知られていないでしょう。

緯度で言うと北海道よりもさらに北で、サハリンの南端に相当します。しかしメキシコ湾流のお陰で冬でも気温がマイナスになることは少なく、雪もめったに降らない土地です。もちろん夏は24℃くらいの気温で、湿度が低いですから快適な土地柄です。しかし、10月頃から始まる雨季の間は、毎日の降水確率が50%以上となり、この時期だけはいただけないようです。

これまでの11月の最大降水量は1953年の12.9インチ(シアトルタコマ空港)と1933年のシアトル市内での15.33インチがあります。1945年に公式降雨記録計がシアトル市内からシータコ空港に移されたので、最高記録が二つになっています。

今年の11月はこれまでに14インチを上回っているので新記録達成の可能性が高いということです。最もシアトル市内のほうがシータコ空港に比べて平均で11%降水量は多いので、シータコ空港での最高記録は17インチ以上となり、記録更新は難しいのではといった、玄人の意見もあります。

これは地球温暖化の一つの証拠だ、などと騒ぎ立てないところが良いですね。

長雨は憂鬱ですが悪いことばかりではありません。カスケード山の雪が多くなりスキーには最高、水不足の心配がないし水力発電により大量に電気ができる、来年には鮭が沢山帰ってくるなどです。
但し日照不足、日に当たらないことによる健康障害の心配があるので、うす曇でも屋外に出て活動すること、と専門家は呼びかけています。

2009年に中国は世界一の温室効果ガス排出国に

2006-11-17 | 環境
先日国際エネルギー機関(IEA)が温暖化ガスの予想レポートを発表しています。これまでにもあちこちで言われていることですが、今後中国の影響がますます大きくなり、2009年にはUSを抜いて世界一の温暖化ガス排出国になるといいます。これは、昨年の予想よりも10年以上早くなっているとのことです。

中国、インド、ブラジルを初めとする発展途上国は京都プロトコルに入っていません。さらには自主的に排出量の制限を設けるようなこともしていませんので、地球全体としての温室効果ガスの削減は、遅々として進まないというのが実情です。

中国は先進国が今以上の温室ガス削減をすべきであると主張しています。今現在の温室効果ガス増加は、先進国が過去に排出したものによります。従って、先進国は過去の付けをもっと払うべきで、それを途上国にまで押し付けるのはおかしいとの主張です。食べることも満足にできていない国の国民に向かって、温暖化ガスの排出削減を訴えることは無理でしょう。確かにそういう面は否定できません。しかし、一口に中国といっても年収1億円以上の生活をしている人口は日本より多いといいますから、それらの人々は温暖化ガス削減に協力しても良いのではないかと考えられます。

一方、排出量が現在No1のUSは、中国などの地球温暖化に大きな影響を持つ国が入らないのはフェアーでないので、プロトコルを批准しないというスタンスです。最も、京都プロトコルという枠組みではありませんが、自主的に温暖化ガスの排出量削減に取り組んでいることも事実です。その目標削減量が大きいか、小さいかの議論はあるでしょうが。

推定によれば、2030年までの世界のエネルギー需要は53%増加し、石油消費量は85 million BDから116 million BDに増加します。増加量の大部分は発展途上国によるものです。
一方、石炭消費は59%増加して、その結果CO2排出量は55%増加して2030年には44.1 billionトンになるといいます。

2012年に京都プロトコルの第一履行期間が終わります。2013年以降の枠組みを話し合うための会議が始まっています。次の枠組みではインド、中国、ブラジルなども参加を目的としていますが、すんなりとは行きそうもありません。

京都プロトコルにしてもカナダや西ヨーロッパの国々は足元で、1990年よりも温暖化ガス排出削減ができていません。日本も同様です。結局これらの国々は排出権を購入し、森林吸収に期待するしか道が無い様に思われます。2013年以降も同じような枠組みを続けることに同意はできないでしょう。そもそも、削減量を比率(日本ならば-6%)ではなく、絶対量で決めるべき、との意見もあります。しかし、省エネと同じように比率でやるしかないと思います。絶対量で規制していくと、エネルギー効率の高い国ほど厳しい規制になってしまいますから。あるいは一人当りのエネルギー消費効率を向上させるなどを指標にすることも一考に値します。

USや中国を初めとして発電を石炭に頼っている国は多数あります。過去3年間の石炭消費の増加量は、それ以前の23年分に相当するといいます。その増加量の90%は中国です。今後、中国の5.5%の成長率を見込むと2009年にはCO2排出量がUSのそれを抜きます。

中国ではCO2排出よりも依然として硫黄化合物の排出削減に注力しています。増え続ける電力需要に応じて増え続けるSOxの低減に手一杯というところでしょうか。しかし、石油消費抑制には対応しつつあり、新車の燃費規制を打ち出しています。規制値はUSよりも厳しくEUよりも甘いというものです。

中国だけではありません。イギリスも原油高騰の影響を受けて古い石炭火力を再開させて石油火力の割合を落としています。これにより温暖化ガス排出は確実に増えているのですが、EU内の他の国から排出権を買ってその増加を埋め合わせています。

中国に限らずEUも本質的に温暖化ガスの削減を実現しているとは言いがたいようです。

EUの温暖化ガス削減の現状

2006-11-08 | 環境
EU15カ国の削減目標は基準年に対して8%です。ところが最新の2004年統計によれば0.9%しか削減が進んでいないそうです。1990年から2004年にかけて経済は32%増大しているそうですから、経済成長に比較すれば温暖化ガスは増えていないといえるのですが、目標値には遠く及びません。このまま行くと2010年の中間年では-0.6%にとどまると予測されています。

EU-15全体で-8%ですが、各国の目標はまちまちでドイツ-21%、イギリス-12.5%という国もあればフランスゼロ、スペインは逆にプラス15%です。これには各国の一次エネルギー源構成比やCO2排出量の過多が異なるためです。

メンバー国は計画されているがまだ実行に移されていない政策や方法に直ぐにでも取り掛かる必要があります。これにより-4.6%まで削減を進めることができるそうです。

その上で-8%を達成するため、京都メカニズムで-2.6%、森林CO2吸収で-0.8%を見込んでいます。排出権取引での購入額は10カ国合計で2.83 billionユーロに上ります。

2004年以降にEUに加盟した10カ国(EU-10)は実に-22.6%を2010年に達成する見込みです。これはCO2排出削減の努力もさることながら、政情不安などにより経済活動が停滞したことが理由ではないでしょうか。このEU-10は京都議定書には含まれていませんが、EU-15+EU-10の25カ国全体では-10.8%を達成できるとしています。

但し計画している政策を直ちに実行に移すこと、その実行により確実に成果が上がることが必要なわけで、楽観視はできないはずです。