化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

この先の原油価格と生産量はどうなるのでしょう

2020-04-22 | 石油
原油価格の下落が止まりません。一昨日のWTIはマイナス領域になりました。4/21はWTIが10ドル程度、Brentが18ドル付近でしょうか。
原油を買うとお金が付いてくる。お金を払ってでも原油を引き取ってほしいと思っている人が取引所で取引しているという事だそうです。お金を払ってでも引き取ってほしいのは、例えばごみ・廃棄物などです。これ以上家とか工場の中に置いておけないので、お金を払って引き取ってもらう。原油の状況はそういう事なんですね。もう原油を貯めておくタンクが無いんでしょう。

これを見たトランプ大統領は、今が原油の買い時だとして、国家備蓄のタンクに原油を買うそうです。買うという表現はおかしいか、お金をもらって引き取る。本当にアメリカ政府がお金をもらうんだろうか?

リグカウントも激減しており、2019年最大で1000以上あったものが4/17には529、このうち油井は438です。ここ1か月くらいで300程度は減っています。リグカウントは原油生産量の先行指標ですから、6か月後にはシェールオイル生産能力は激減している事になります。最も生産量が既に減ってます。

この状況に鑑みて5月から原油生産に合意しているサウジは、すぐにでも減産を開始するかもしれないとWSJは伝えています。でも遅すぎの感があります。

カナダ政府は石油業界に2450億円の援助を発表しましたが、アルバータ州知事はいいことだがまだ少ないと言っています。カナダの石油産業は危機に瀕していると。
オイルサンド生産業者は生産停止を公表しています。SAGDと呼ばれる蒸気で地中を温めて溶け出たビチューメンを回収する方法では、このような削減は永久的なダメージを油井に与えてしまうようです。

コノコフィリップスは10万BD、ハスキーは1.5万BD、セノバスは4.5万BDの削減を発表しました。カナダ全体での削減量は150万BDに上るとTDバンクを予想しているそうです。


OPEC+の減産の内訳

2020-04-18 | 石油
OPEC+が5月から970万BDの減産を開始することで合意したと伝えられています。OPEC+はサウジとロシアが主役ですが、それ以外の国も含めて各原油生産国はどれくらいの減産をするのでしょうか。JOGMECのWebに一覧表が載ってましたので、抜粋してみました。

OPEC 減産量 5/1以降の生産量
サウジ 254万 849万
イラク 107万 359万
UAE  73万  245万
クウェート 65万 217万

非OPEC
ロシア 254万 849万
メキシコ 10万 168万
カザフ 39万  132万
オマーン 20万 68万

減産率はメキシコ以外どこも23%になっています。メキシコは駄々をこねて削減率6%になってます。サウジとロシアの数字はぴったり同じです。そうなるように色々と工夫をしたのでしょう。非オペックですがカザフスタンが意外に多くの原油生産をしているんですね。日本に輸入されないのであんあり意識してませんでした。

970万BDというと世界の原油生産量の1割ほどですが、OPEC+としては23%の減産率になってます。ですから、OPEC+以外の産油国もOPEC+と同程度の減産になれば、2,300万BD程度が減産されるはずです。この減産が足元の需要量減少にほぼ見合うのかどうかは、意見の分かれるところでしょう。

この減産合意は6月末までなので、その後がどうなるかです。
IEAの直近のレポートでは、世界の原油生産は2020年後半に9,000万BDとなっており、需要が9,700万BDまで回復するので、2020年下期は原油在庫が減っていくと予想しています。


今年の下期には原油需要がコロナ前まで回復するという予想には納得感がありませんね。来年3月あるいはもっと先にならないと、経済活動は完全には元に戻らないという予想がありますから。

低油価と環境問題に直面しているカナダのオイルサンド産業

2020-04-15 | 石油
原油価格は3月末に過去20年間の最低レベルとなってから、少し持ち直しているものの低いままです。あまり注目されてませんが、世界第5位の産油国であるカナダの原油価格下落(WTIとの値差)は止まりません。

原油の価格はまず原油性状によって決まります。硫黄分が低い方が高い原油よりも高い、軽質な原油の方が重質のものよりも高いという具合です。
ところが、2017年以降は、軽質のWTIの方がより重質なドバイ原油よりも安くなっています。当たり前ですが原油価格がその性状だけでなく、需給の状況によっても影響されるからです。WTIの場合、2017年以降アメリカのシェールオイル生産量増加並びにカナダのオイルサンド生産量増加により、北米地域での原油需給が緩んだためと言われています。

カナダのオイルサンド由来の原油には合成原油(Synthetic Crude Oil)と希釈ビチューメン(Western Canada Select)の二種類があります。WCSの方がより重質(API≒20)で高硫黄(3.7%)なので、SCO(API≒40、硫黄0.4%)よりも安値となっています。更にオイルサンド由来の原油はWTIに比べて相当安くなってます。


カナダの原油生産量はざっくり500万BDで、そのうちオイルサンドは300万BDあります。カナダ国内の原油需要は150万BDですから、大部分は輸出されます。カナダの産油地域はアメリカの製油所が集中しているガルフ地区からは遠く、輸出のためにはロッキー山脈を越えてカナダ西海岸まで輸送する必要があります。ところがこれらに使うパイプライン能力が不足していて、鉄道貨車で運ぶ必要があります。つまりカナダの原油は販売地域が限定されていて、地域外の製油所からは安くないと買わない、と言われているわけです。

現在のカナダの原油生産量は90万BD減少しているようですが、原油貯蔵タンクが満杯になるにつれて150万BDまで減少が大きくなるとみられています。最大の理由はCovid-19による石油製品消費の減少です。外出禁止により自動車用ガソリンの消費はなくなり、飛行機が飛ばなくなったことでジェット燃料の消費もなくなっていることから、容易に想像できます。

オイルサンドは生産コストが高いことに加えて、CO2排出量も多いことから地球温暖化の観点からも敬遠されるようになってきています。採掘されたオイルサンドは油分と砂の分離に温水を使っており、このため大量のエネルギーを必要とします。
日立総合計画研究所の試算ではオイルサンド由来の原油生産では、通常の石油生産のおよそ3倍のCO2排出量になるそうです。

オイルサンドはカナダという治安のよい国にある資源で、その量はサウジアラビアの原油量を凌ぐと言われています。低価格とCO2排出量の低減という二つの大きな課題を抱えているオイルサンドを、うまく利用する方法を開発する事が望まれます。


石油の在庫能力はどれくらいあるのか

2020-04-09 | 石油
タンカー市況が急激に好況になっていると言います。新型コロナウィルスの影響で世界中の経済活動がスローダウンしていますが、逆の業界もあるようです。理由は幾つかあります。
原油生産量は4月以降増えていますが、逆に需要は急激に減少しています。そうすると原油在庫量は増えます。陸上タンクだけでは足りずにタンカーを浮かべて在庫する、フローティング在庫の需要が急激に高まりました。
また増産に転じたサウジが原油輸出船積み量を増やしたこと。
原油タンカーがこれまでと異なる新しい航路をとるようになったことや、荷揚げ港での遅延がその理由のようです。

現在4億バレルのフローティング設備のうち、1億バレル分が利用可能だそうです。陸上のタンクの空きにこのフローティング分を含めてあと11億バレルの在庫が可能との試算があり、現在1,800万BDの原油が過剰生産になっているとすれば、あと60日すると在庫が満杯になります。

サウジの輸出量急増(過去800万BDだったものが足元1,000万BDを超える)などによって、原油タンカーの一日のスポット価格は4万ドルから20万ドルに上昇しているようです。石油製品用のタンカーも同様で1.9万ドルが6万ドルに上がていると言います。

フローティングを利用している石油トレーダーによれば、石油価格が将来5ドル上がることは、1日5万ドルを払って6か月在庫しておくこととに見合うのだそうです。

石油の需要減少はどこまで続くのでしょうか。

2020-04-08 | 石油
石油製品の消費量減少の結果、米国のガソリン価格は急落しています。
1.6ドル/ガロンから0.6ドル/ガロンに低下しており、この価格では製油所は逆マージン、すなわち赤字になってしまいます。ガソリン需要の落ち込みは3月末の1週間で880万BDから660万BDといい、当然多くの製油所は減産を実施していて、米国の製油所の稼働は1580万BDから1490万BDに低下しているそうです。



OPEC+は米国が協調するならば生産量削減に応じると言っています。G20の石油相は4/3にバーチャル会議を開催し、交渉を進めることとなってます。しかし、需給ギャップはとても大きく、1,000万BDの削減が決まったとしてもオイル価格を回復させることは無いだろうという意見もあります。

原油生産削減の動きはあります。ExxonMobilは今年の投資額を3300億円から2200億円に削減すると。そのほとんどはPermian Basinのものですが、シェールオイルは生産停止、開始が容易だからです。

米国エネルギー情報局はこのような動きにより、今年3Qには石油輸出国から石油輸入国に再び戻るだろうと推定しています。

イギリスのコンサルタント会社は、需給ギャップは現在話し合われている1,000万BD の2倍のレベルにあると言います。4月の需給ギャップは2,800万BD、5月のギャップは2,100万BDだそうです。

石油関連企業で働く労働者の失業も増えています。Halliburtonは先月Houstonで3,500人の労働者に60日間の出勤停止をしましたが、オクラホマでも350人の削減をすると言います。


パイプラインとタンクが溢れそうなのでシェールオイルの生産を減らします

2020-04-01 | 石油
原油の過剰感についていろいろな分析が行われているようです。
ざっくりと1,000万BDというコメントが多いように思います。つまり足元の原油生産量から1,000万BD減産することになるわけですが、どこが、どの国が減産するのか。サウジ、ロシア、米国間での調整の話し合いがもたれているようです。

昨日のWTIは20.73ドルでした。原油の生産過剰による影響が様々な形で出てきています。
TC Energy社はカナダ・アルバータ州政府が11億ドルの資本を投資すれば、キーストーンXLパイプラインプロジェクトが前進するだろうと。
Valeroはルイジアナ州のSt.Charles製油所並びにテキサス州のPort Arthur製油所の稼働を下げる。
テキサスの複数の石油生産会社はテキサス州当局に対して生産制限が必要として緊急の会合を依頼。
トランプ大統領はプーチン大統領と会談し、両国のエネルギー責任者が下落している石油市場について話し合うことを合意。サウジとロシアに協調減産に戻るように働きかけ。
テキサスのパイプライン会社は、パイプライン、在庫タンクと製油所の能力が限界にきており、原油生産の削減をシェール会社に要望。生産の削減はすぐに始まるとの観測がある。

シェールオイルの減産は、随伴する天然ガスの生産量減少をもたらすが、これにより天然ガスの需給は締まり、天然ガス価格は2021年に現状の二倍になるというアナリストの予想もある。

この原油安のどさくさに紛れてかどうか分かりませんが、トランプ政権はオバマ政権時に決めた自動車の燃費基準55マイル/ガロンを40マイル/ガロンに引き下げると発表しています。これにより自動車の累積CO2排出量は10億トン増えるという事です。

今はとにかくCoronaと言っておけば、反対意見は抑え込めるという風潮でしょうか。
もちろんCoronaは一刻も早く収束してほしいのですが、どうやら専門家の意見に従えば、マラソンになると。少なくとも2-3か月は今の状況が続くと思った方が良さそうです。


原油の生産過剰はこの先どうなっていくのだろう

2020-03-30 | 石油
新型コロナウィルスによる世界経済への影響は計り知れないものがあると予想されるが、それがいったいどれくらいの規模になるのかは、ウィルス終息への見通しが立たないことから、誰にも分らない。

アメリカはサウジに石油戦争を止めよと要請しているが、そのサウジは増産分の売り先がなく困っている。中国、フィンランド、印度並びにアメリカのいくつかの製油所はサウジからの輸入を減らしている。このような状況からサウジの生産目標1,200万BDは実現しないとも言われている。

南米での原油生産はおよそ700万BDであるが、足元の原油価格ではその半分は採算割れという。

先週原油価格WTIは23ドルとなっているが、場所によっては一桁での取引もある。ワイオミング州の低硫黄原油は先週、1.75ドルで取引されたという。このようなことが至る所で起きており、小さな生産者は生産停止に追い込まれている。カナダのWestern Canada Selectは9ドルとなり、オイルサンド生産者であるSuncorはFort Hillsの1系列をシャットダウンする。

原油トレーダーやアナリストの予測では、原油過剰は1,000万BDとも2,000万BDともいわれている。
需要がないので仕方がないのですが、生産者は減産で対応していくしかありません。



原油価格は回復するのだろうか

2020-03-25 | 石油
原油価格の暴落とCovid-19のよる先々の石油消費低迷の見通しから、各国の石油会社は開発投資を軒並み減らすという報道が相次いでいます。

昨日のWTIは23ドル台です。注目すべきはアメリカのリグカウントが20減って777基、1年前に比べて250基程度減少している事です。リグカウントの減少は半年先の原油生産量の減少を意味するようです。

中国の原油輸入量は2017年にアメリカを抜きましたが、2019年は1,000万BDを超えました。ちなみにアメリカは700万BDの輸入でした。中国の輸入原油の55%はOPEC諸国からですが、これは2005年以降最も低い割合です。代わってロシアが15%と大きくなっています。

P66、EMは製油所の稼働を下げると発表し、TOTALとシェルは20%の投資削減を発表しました。

Axicorpは今後の原油価格が10ドルから15ドルのレンジに下がると予想しています。これは原油在庫が一杯で生産を下げざるを得ないからとのこと。また、価格を回復させるにはOPECとTexasの話し合い・合意が必要とも付け加えています。

ロシアが話し合いに応じず、原油増産の構えを崩さないのは、ルーブルが20%も下落しており、原油価格安のある程度の部分を補完しているからのようです。つまり協調減産の仲間はOPECとロシアではなく、OPECとテキサス(要はシェールオイル生産会社)に変わったという事です。

先の見通せないCovid-19との戦いですが、原油価格の先行きも見通しが立たないという事かと。

ロシア産原油の米国への輸出

2019-10-02 | 石油
久しぶりに石油の話題です。

2019年1月-5月のロシア産原油の輸入量は平均41万BPDで2018年に比べて4万BPDほど増加しているそうです。

①クリミア半島併合以降、ロシア制裁していたのに原油はそこそこ買ってたんですね。闇取引じゃないでしょうから米国政府が認めていたはずです。米国の原油処理量は1700万BPDですから、大きな割合ではありませんが、制裁しててもゼロじゃないんだ。

②今年になって増加しているのは、ベネズエラ原油を米国が買わなくなったから。こっちも政治がらみの経済制裁だそうな。直近では60万BPD程度購入していたのが、足元ゼロになってます。この分をカナダ、イラク、コロンビアからの輸入増で補っているそうですが、ロシア産原油にも影響しているわけです。

一筋縄ではいかない世界です。

ニューセブンシスターズ

2019-05-11 | 石油
ニューセブンシスターズという言い方があるそうです。先日講演会ではじめて聞きました。

セブンシスターズは石油をやっているものならば誰でも知っている。今は合併して7つではなくなったけれど、世界の石油を牛耳ってきた大資本のことだ。

ニューがつくと石油メジャーではなく、ITメジャーを指すという。いわゆるGAFAにマイクロソフト、中国のテンセントとアリババを加えた7つの会社。昨今話題のファーウェイは上場企業ではないので数に入れない。この7社の株式時価総額は合計で5.1兆ドルという。日本のGDPとほぼ同じ。

これに対して旧セブンシスターズの時価総額は1.2兆ドルにすぎない。世界中で油田の権益を持ち、製油所やパイプライン、SSなどの膨大な資産を有している石油メジャーよりも、ほとんど物的資産を持たないIT企業の方が時価総額が大きいことに違和感を覚えるとしたら、もはや時代をわかっていない人になるらしい。

残念なのは日本にはこのニューセブンシスターズに入るような会社がないこと。2000年から始まったITの時代を、日本の会社は製造業の延長でしか考えなかった。ITに使われる機器を開発・製造すること。ところがITの本質は情報の取扱の革命であることに気が付かなかった。

それが分かっていたのは、あるいは分かるようになったのは孫正義ソフトバンク会長に代表される少数の人だけでしょう。残念なのはソフトバンクは世界中のITベンチャー企業に投資はしたけれど、自ら進んで情報を扱うビジネスに参入しなかったことでしょうか。

最近は自分の仕事の周りにもAIやらDXという言葉が飛び交っている。旧時代エンジニアもなんとか流れについていかねば。



今年の油田発見は200億バレル

2009-09-27 | 石油
ニューヨークタイムズの記事からの引用です。

今年はこれまでに200の油田が世界で発見されたといいます。イラク、オーストラリア、イスラエル、イラン、ブラジル、ノルウェー、ガーナ、ロシアなどなど。
BPが最近ガルフで最大となる油田を発見したことは報道されたばかりですが、ここまでの発見原油量は100億バレルだそうです。このペースでいけば、2009年では200億バレルに達し、これは2000年以来の確認埋蔵量になるといいます。

しかし、足元の石油会社の状況は不安がいっぱいだとか。足元の景気が弱いことから再び原油価格が下落して、油田開発が減速するのではないかということです。原油掘削の価格は鋼材の値上がりや、海底深く掘らねばならないなどの状況からバレル60ドル以上ナイト採算が合わないようです。

実際Deepwaterの井戸を掘るには一本あたり100億円かかるそうですが、原油が出る確率は20%から50%だそうです。今年のように油田発見が続けばいいのですが、向こう10年くらいを見渡すと今年のような油田発見が続くとは限らず、そうなると原油供給量が需要に追いつけなくなることも起こりうるのだそうです。

日本にあっては、自動車は売れないし、売れるのは燃費のいいハイブリッドばかりということはガソリンも売れない、景気が悪いので物流もその量が減って、トラック輸送に必要な軽油も需要が減っています。さらに人口が減っていくのですから、石油需要が増えることはありえない気がします。
石油供給が追いつかない、という状況はすんなりとは理解できません。

大油井の発見

2009-09-12 | 石油
次期鳩山新首相は2020年までに25%のCO2削減目標を掲げたという。しかも、基準年は京都議定書と同じ1990年だという。ということは今のレベルから言うと35%程度の削減になるのではないでしょうか!理想は結構だけれども、それをどうやって実施していくのか、なかなかに難しいではないでしょうか。

CO2削減という言葉の響きとは逆の話しですが、BPがガルフで大油井を発見したというニュースです。これから探索をまだ続けないと正確な規模は分からないのだそうですが、およそ30億バレルくらいはあるだろうとの予想です。日本の原油消費は400万BDくらいですから、単純に日本の石油消費量の2年分以上がある勘定です。

しかしながらTiber wellと呼ばれるこの油井から原油が生産されるのはだいぶ先の話のようです。何でも場所はヒューストンから沖合い250マイルで、深さはエベレストよりも深いのだそうで、相当の圧力と温度に耐える生産設備を作る必要があります。しかも、カトリーナの記憶も新しいですが、ハリケーン地帯ですから気候環境への対応も大きなハードルの一つです。

BPはこの近くに2006年に発見したKaskidaという油井もあるそうで、生産設備はこれら二つの油井で共有できる部分もあり、そのことはコスト的に有利ではありますが、ざっと70ドルくらいの原油価格で無いと引き合わないとの資産が示されています。

BPはガルフ地区で1999年にThunder horseという油井を建設し、30万BDの生産を始めているのだそうですが、装置や設備のトラブルツヅキで実際にはまだ商業生産ができていないとも言います。10年たってもまだ生産開始できないのですから、よっぽど難しいことなのでしょうね。

このTimber wellの開発はBP一社でやっているのではなく、ペトロブラスやコノコフィリップスとの共同開発だそうです。
枯渇することが分かっている石油に依存するのは良くない、という意見はもっともですが、すぐに石油に代わるエネルギー源は無いのですから、開発は今後とも進めていかなければならないし、その有効利用を進めていかねばなりません。

石油会社の再編

2008-12-28 | 石油
新日石と新日鉱の合併報道がありました。ほかの業界と同じように石油業界も再編にもまれてきました。

新日石は三菱石油の合併、(三菱商事が見放した三石を拾った問いいう言い方もありますが)興亜石油の合併、東北石油、吸収石油をおっと間違った九州石油も取り込んできました。

一方、新日鉱は日本鉱業と共同石油が合併してできた会社です。その際に、銅事業部門を日鉱金属として切り離しましたが、後年またいっしょになりました。新日鉱というのは持ち株会社で、ジャパンエナジーと日鉱金属の二つの会社があります。

さて、新日石と新日鉱が合併した新たな会社の社名はどうなるのでしょうか。
ちまたでは
全日本石油
大日本石油
などといわれています。
しかし、現在も昔も新日石の英文名はNippon Oilです。したがって、合併後の社名は日本石油に戻ったりして。

しかし、新日石はもはや自分たちを石油会社とは考えていないのでは。少なくとも将来は石油会社ではなくなると志向しているはずです。したがって、新社名に石油の文字を残すことはないでしょう。
新日石は総合エネルギー会社を思考しています。競争相手は、東京ガスであり東京電力だと考えているのでは。
そう考えると新社名はジャパンエナジーがよいかも。
エナジーという社名で銅精錬をやるのはちょっとミスマッチかもしれませんが。
いかがでしょうか。

ガソリンが下がった

2008-12-15 | 石油
IEAなどいろいろな機関から2008年の原油消費量が前年を下回りそうだという発表がなされています。なんでも1983年以来のことだそうです。今春以降の原油価格急騰によるガソリン価格の高騰で、北米、ヨーロッパ、日本などで消費量は一気に落ち込みました。ここ一月くらいの原油価格下落によりガソリンは下がってきましたが、消費は戻っていないそうです。

そりゃ、これだけ経済危機が騒がれればガソリンが安くなったからドライブにどんどん行こう、という人はいませんね。

さらに経済の減速により石油消費は落ち込んでます。これまで石油需要増の大半を占めていた中国やインドでもその伸びは著しく鈍化しているそうで、結局2008年の総消費量は前年を40万BDないし80万BDだか下回りそうだといいます。さらに2009年も減少は続く、というよそうです。

それにつれてという因果関係ではないでしょうが、原油価格は40ドルそこそこまで下がってきました。8月ころの高値から1/3になってます。確かに昨日ガソリンを入れたら106円でした。夏の高値のときは180円くらいでしたから、ずいぶんと安くなったと実感しました。でも、だから満タンに入れようとは思いません。いつもどおり、20Lだけ入れました。

さらにさらに13年ぶりにドル90円を割ったというニュースです。8月ころは108円くらいだったので、20%近く下がっています。円があがることはいいことですが、これだけ急激に上がるとちょっと大変です。あのトヨタでさえ、2008年下期の想定為替レートは100円といいます。何もしないで、売上げが10%も下がってしまうのはとても恐ろしいわけです。もっとも、アメリカ国内での清算比率を上げて、為替変動に対応するでしょうが、全体に販売が落ちているので、それだけでしのげるわけでもありません。

このような需要現象を受けて、サウジは生産量引き下げを発表しました。これを受けて原油価格は48ドルくらいになったようです。しかし、消費の下げ基調はまだまだ続くのですから、これで原油価格が落ち着くとは考えられません。

あの夏の高値のときにこんな事態を想定できた人がどれくらいいるのでしょうか?もちろんあたしゃ、まったく予想できませんでした。でも、注意深く世の中を見ていた人には、金融危機に続く経済の減速とそれに伴う消費量の減少、したがって原油価格の低下は普通に予測できていたのかもしれません。

原油価格とガソリン価格

2008-11-25 | 石油
気がつけば原油価格(WTI)が50ドルを割っています。今年の夏に140ドルを超えたときには、誰もが200ドルまで上がるんじゃないかと、天井知らずこ高騰にびっくりしていたのがうそのようです。

市況の格言じゃありませんが、あがったものは必ず下がるとその当時考えていた人がどれくらいいたでしょうか!まー、消費者にとっては原油価格はガソリン価格などの油料価格の下げに直結しますから、ありがたいといえます。

毎週、ガソリン価格を改定することになった石油会社はこの急落をどう思っているのでしょうか。

ところで、原油が下がったことでガソリンの小売価格は下がってきたことが実感できましたが、それでは一体ガソリンはいくらくらいまで下がるのでしょうか。簡単な試算をしてみました。

先週、近所のガソリンスタンド、業界的にはガスステーションやサービスステーションというのでしょうが、ガソリンの価格は117円/Lでした。家計簿をひっくり返してみたら、この夏一番あたしが買った一番高いガソリン価格は176円でした。その差、59円/Lが原油が下がったおかげで下がった分です。

この間にWTIで言えば高値が147ドル/bblで、直近の安値が49.93ドル/bblでした。これをその間の為替変動を考慮して換算すると、高値が15,882円/bblで安値が4790円/bblと成ります。為替も11月は95.94円/ドルで、8月の108.04円/ドルからずいぶんと円高になった門です。

この8月から11月にかけての原油(WTI、円換算)の下落率は実に69.8%に達します。ざっくりいって1/3以下になったことになります。この下落率が59円/Lのガソリン価格の下落ですから、59円/L÷0.698=84.5円/Lが176円/Lのときのガソリン価格に入っている原料代(原油代)になります。

ガソリンの価格構成は原料代、税金、と精製・販売合わせたコストと利益です。税金はガソリン税53.8円、石油税2.0円、タックスオンタックス2.8円の合計58.6円/Lです。すると、ガソリン価格からここ58.6円と原料代84.5円を引くと32.9円になりますが、これが精製・販売あわせたコスト+利益です。

逆に32.8円+58.6円=91.5円/Lになります。これがガソリン価格から原料代を引いた価格ですから、これ以下にはガソリンは安くならないというわけです。
もっとも、日本のガソリンはWTIから作られるのではなく多くは中東原油から作られますから、原料代はもう少し安くなるでしょう。また石油会社が原油価格の変動そのものを原料価格として、販売価格に反映させているかどうかは分かりません。さらに精製コスト販売マージンは、その時々の精製装置稼働率によっても変わります。ですからここで計算したガソリン価格の下限も変わります。
まー、それでもおよその目安にはなりそうです。