化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

バイオ燃料はLCA評価が大事

2007-02-13 | バイオマス
バイオ燃料はカーボンニュートラルなので化石燃料の代替として使用すると、CO2排出量が実質的に削減されます。原則的にはそのとおりですが、何事も現実的にはそうはいかないもので、バイオ燃料の利用がかえってCO2排出を増加させているといいます。

ヨーロッパではバイオ燃料の利用がすすめられていて、中でもオランダは国から補助金を出してバイオ燃料の使用量を倍増させています。EUでは2010年に輸送用燃料の5.75%をバイオ燃料に置き換えることを目標にしています。

ヨーロッパでバイオ燃料といえばバイオディーゼル(BDF)のことで、これはガソリン車よりもディーゼル車が普及しているからです。反対に北米でバイオ燃料といえばガソリン代替のエタノールです。

このBDFの原料となるパーム油はインドネシアやマレーシアで大量に栽培され、ヨーロッパに輸入されています。ところで、パームを栽培しているインドネシアやマレーシアでは、その生産量を増やすためにパーム畑を増加させています。マレーシアは85年から2000年にかけて87%増加させ、インドネシアは実に118%もパーム畑を増加させています。

これらの国ではパーム畑を増やすために熱帯雨林を伐採したり、ピート土壌を開墾したりしています。ピーと土壌は水分の多い泥炭質ですが、これはスポンジのようなもので大量のCO2を吸収しています。このピート土壌から水を抜くと吸収されていたCO2が大気に放出されます。さらに整地のため泥炭を焼き払うので燃焼によるCO2が上乗せされます。

パームの生育を早めるために大量の化学肥料が使用されることとあわせて、バイオ燃料使用によるCO2削減効果よりも、パーム畑を作るために排出されるCO2の方がはるかに多いという皮肉な調査結果です。

バイオ燃料の利用においては植物の選択とその栽培方法が重要で、それによりCO2削減が90%になるケースから、逆に20%増加するケースまであるといいます。
そういうことですから、いわゆるLCA評価を充分にしないといけません。

ドイツの調査ではインドネシアのピート土壌からの水抜きにより、年間660ミリオンドンのCO2が大気に放出され、さらに焼畑により1.5ビリオントンのCO2が発生しているといいます。合計でなんと2.1ビリオントンです。

日本のCO2排出量はおよそ1.3ビリオントンですから、日本全体のCO2排出量よりもインドネシアのパーム畑を造るために排出されているCO2量のほうが多いことになります。この様な事情があってインドネシアは、米国、中国についで世界第3位のCO2排出国というありがたくないランキングに入っています。

パーム油の価格が安すぎるのでこの様な環境破壊を伴う栽培が行なわれている。だからパーム油の買い取り価格を高くすることで、持続可能な栽培が行なわれると、環境団体は主張しています。

これはおかしな論法です。パーム油の価格が上昇すれば焼畑による開墾がなくなるのでしょうか。もしパーム畑の価格が上昇して現在のパーム油生産量で充分な収益が得られるようになり、その結果として開墾が止まれば、パーム油の生産量も頭打ちになります。それではバイオ燃料の利用も増えていかないわけで、持続可能な栽培とは一体何をさしているのでしょう。
やっぱり、しっかりとLCA評価をしてCO2削減という側面からパーム油BDFがフィージブルかどうかを検討していくことが一番大事です。

エタノールガソリンの腐食性

2006-10-31 | バイオマス
とうもろこしや小麦・ビートを原料として製造されるバイオエタノールは、カーボンニュートラルとみなされるのでこれを自動車用燃料に利用することにより、CO2排出を抑制できます。アメリカでは10年以上前からガソリンに10%混合し使用されてきましたが、今日ではエタノール混合割合は85%まで高められています。ブッシュ政権や中西部州では中東石油への過度の依存を下げる目的で、このバイオエタノールの導入を促進させています。

しかし最近、独立製品安全テスト機関であるUnderwrites Laboratories(UL)がE85は給油ステーションのディスペンサーポンプの金属・プラスチック部品を腐食すると発表しました。そしてE85ディスペンサーに張ってあるUL認証シールを取り消しました。ULはE15用として認定しているのであってE85については認定していないという理由です。

ULはトースターからテレビまですべての製品の安全性を認証しています。今後2年かけてE85用の規格を制定し認証を行なうとしています。これによりいくつかの州ではE85ディスペンサーを使用できなくなる事態が想定されます。

BPはこの決定を受けてE85の販売開始を延期しました。Wal-MartはE85ステーションを400箇所に設置する計画ですが、さらに検討するといいます。
一方、アイオワ州は今後2年間でE85ステーションを3倍にする計画です。同州の法律ではUL認証がなくても2009年6月まではE85ステーションを作ることができるからです。

日本でもCO2排出抑制と自給率向上(わずかばかりですが)に寄与することを評価し、バイオエタノールの使用を認めています。各種自治体や企業がE3ガソリンの実証化を進めてきています。総合資源エネルギー調査会の答申(2003年6月20日)で、ガソリンへのエタノールの混合率は3%上限とされました。これは含酸素率が1.3%を超えると金属腐食が起こるという実験結果によるものです。これをエタノールに換算すると3%になります。

同調査会では2006年4月の取り纏めで、エタノールを直接ガソリンに混合するよりもETBEに転換することを推奨しています。ETBEはバイオエタノールとFCC装置で生産されるイソブテンから製造されます。バイオエタノールを一部原料にしているのでCO2抑制とエネルギー源の多様化に寄与します。しかしエタノールは蒸気圧が高く大気中に揮発する、水と混和するという欠点があります。ETBEではこの欠点がなくなるため、石油業界はETBEを今後導入していこうというものです。含酸素率1.3%の制限でETBEならば8.3%までガソリンに添加が可能です。

同じバイオエタノールといっても日米ではその取り込み方に違いがあります。

エタノール狂想曲

2006-10-17 | バイオマス
オイル&ガスジャーナル誌にバイオエタノールガソリンに反対するコラムが掲載されています。要は、コーンから製造されるエタノールをガソリン代替に利用することは、エネルギー収支(石油ベース)でプラスにならず、経済性も成り立たないという立場からの主張です。

バイオエタノールはエネルギープラスになるというのが今日の大勢を占める意見ではありますが、記事の内容を見てみました。

企業は修復不可能な過ちを犯しているし、米国政府は将来性の無い施策を拡大しその成功を公言しています。税制優遇措置と市場に対する命令によって、政府はエタノール狂想曲を煽っています。バイオエタノールは海外石油依存度を低下させ、大気環境を改善すると謳っていますが、その実は農業ビジネスと農業州経済の振興という政治的目的にあります。

誰も出費を強いられないのならばどんなひどい政策も良いでしょうが、エタノール政策はその付けを消費者と納税者に回しています。さらに自動車メーカーも優遇税制にそそのかされてフレキシブル燃料自動車を売り込んでいます。こうしてエタノールプラントは増えるばかりです。

政府の目標は2015年に7.5 billion gal/yearですが、現在計画中のエタノールプラントがすべて稼動すれば2010年にも10 billion gal/yearを超えると推定されています。
そのため議会はエタノール目標生産量の引き上げを要求しています。

今後も原油価格が$50/bblを下回ることなく、さらにコーン価格が上がらなければバイオエタノールは経済的に成り立つでしょう。しかしその条件が崩れた時、経済性が成り立たなくなった企業はエタノールプラントの稼動を中止し、やがては廃棄してしまうでしょう。

しかし、今日のエタノール産業は政治家が作り出したものですから、この様な経済原則に従うことはないでしょう。どのような状況になっても政治家達はエタノールの増産を行い、その結果として輸入原油は減り環境は改善されたと公言し続けるでしょう。その付けを消費者と納税者に回しながら。

原料コーン増産のため土壌は肥料付けになり、より多くの化石燃料が消費され最後にはオゾン層が破壊されるとも知らないで。

うなづける部分もありますが、本当にこの主張でよいのでしょうか?確かに数あるエタノールプロジェクトの中には、エネルギー効率に疑問符がつくものや、補助金なしでは経済性が成り立たないものもあるのでしょう。環境保全と経済性が基本的にはトレードオフの関係にあることも確かだと思いますが、だからといってすべてのバイオプロジェクトを否定する事は適切でないと思います。各プロジェクトごとにエネルギー効率、環境保全と経済性の妥協点を見出すことが今の企業に求められている社会的使命と考えねばなりません。

クリーン燃料製造への投資

2006-09-27 | バイオマス
ビルゲイツやウォーレンバフェットなどの大富豪が莫大な個人資産を慈善事業に投じる話題が以前にありました。
今回はクリーン燃料製造に私財を投資するというお話です。英国バージングループを率いるリチャード卿が航空や鉄道事業などからの収益のうち、個人資産についてクリーン燃料の開発に投資するといいます。投資総額は10年間で3,500億円とも言われています。その手始めとしてネットチケット販売会社を売却し、既に350億円を用意しているそうです。

自分の世代が親の代から引き継いだ美しい地球を子供たちの世代に渡してゆくためには、温暖化抑制が大事であり。そのためには化石燃料を代替するクリーン燃料の開発製造が不可欠との考えです。

リチャード卿はお金をどこかに寄付するというのではなく、自らのクリーン燃料事業に投資するとしています。事業ですから将来的には利益を上げることを目標にしているのでしょうが、すべての関連事業で収益を上げるものではないとのことです。

彼の会社では既に石油由来でない航空燃料の開発として、多年草や食料でない農産物からバイオ燃料を製造するプロセス研究に着手しています。

バージングループは36年前にレコードの通販会社として始まりました。今では航空会社、携帯電話、ワイン販売、鉄道事業などを擁しています。彼は起業家精神で新しい事業に取り組み、1999年にはナイトの称号を与えられています。もちろんなかには失敗した事例もあり、バージンコーラや真実テレビショウなどは顧客から見向きもされませんでした。

エネルギー関連研究には大きな資金が必要なことから、国プロとしても取り組まれています。2007年の米国予算ではバイオ燃料に175億円(対前年60%増)であり、再生可能エネルギー全体では1,150億円になっています。
最も1970年代のオイルショック時に石油代替燃料開発に投じられた金額に比べるとはるかに少ないそうです。

米国予算と比較して、リチャード卿が個人で投資するという金額の大きさが理解できます。



全く関係ないが、ファイターズよ、今日も全力でプレーしてシーズン1位になってくれ。それにしても金村の件はがっかりです。間違いは誰にもある、というヒルマン監督の言葉をかみしめて欲しい。

バイオ燃料に投資のブーム

2006-09-15 | バイオマス
アメリカでは原油高と税制優遇によりバイオディーゼルの製造工場の新設が相次いでいます。2004年には22箇所しかなかったバイオディーゼルの製造所が今では76箇所に増えています。この勢いは当分止まりそうもありません。

バイオディーゼルを手がける企業はこぞって、製造設備の増強や新設を行なっていますが、その資金はベンチャーをはじめとしていろいろなところから出ているようです。

Greenshift Corporaion(ニューヨーク州)は$22Millionをかけて年産45Millionガロンの工場を新設します。資金はCornell Capital Partnersから出るそうです。
Renewable Energyは$100Mの資金を集めて年産60Mガロンの工場を建設します。資金はBunge Ltd.と二つのベンチャーファンドからでるそうです。

食品大手のCargillやArcher Daniels Midland Companyといった会社もバイオ燃料に投資するとしていますし、石油大手のシェブロンやBPといった会社もバイオ燃料の製造や取扱いに注力を始めました。

さしずめスモールビジネスにBig companyが終結するといった感じです。

現在76あるバイオディーゼルの生産工場は、平均で30Mガロンを生産し$20Mの売り上げだそうです。
アメリカ全体では2.3Bガロンのバイオディーゼルが生産されていることになります。しかし、全米でのガソリン消費量は140Billionガロンですから2桁違います。また、バイオエタノールをるくめたバイオ燃料の売り上げは$15.7Bでそのうちバイオディーゼルはわずかに$1.6Bです。

バイオ燃料の需要の高まりがバイオ燃料ビジネスを後押しし続けることでしょう。

燃料作物とバイオ工学

2006-09-11 | バイオマス
NYTimesより
バイオテクノロジーを用いてエタノールを製造するためのコーンや他の作物を改良する開発が進められています。原油の高騰と化石燃料使用抑制(輸入石油に頼ることの安全保障上の観点と地球温暖化抑制の観点から)を追い風にバイオ燃料は増産の方向ですが、そこには解決すべき課題がたくさんあるようです。

1.燃料作物改良の目的・目標
農作物はこれまで害虫と除草剤への耐性を上げる改良が加えられてきましたが、燃料作物ではリグニンを減らす改良が目指されています。リグニンは植物の剛性を保つために必要な物質ですが、エタノール転換に際しては邪魔者です。

現在のところ、バイオエネルギーに関する技術的関心は燃料作物からバイオ燃料への転換技術におかれていますが、バイオ燃料の重要さが増すにつれて単位農地面積当りの生産エネルギー量に関心は移るでしょう。それはバイオ燃料の最大の弱点が量的確保にあるからです。

またコーンの発酵可能なデンプン量を増やすことで、エタノール収率は2から5%はアップするといいます。

2.遺伝子操作と一般的な交配による品種改良
Syngenta社は2008年に遺伝子操作で改良したコーンを製品化するとしています。これはエタノール工場で添加する酵素を初めから含むものです。同社は海底火山の近くにいる微生物からの遺伝子を酵素コーンに移植しています。高温耐性のある微生物からの遺伝子を持つので、エタノール発酵条件をより高温に、より酸性度アップ方向にできることでエタノール生産効率は向上します。

DuPont社はバイオディーゼルのための大豆を改良すると発表しています。
Ceres社はswitch grassを燃料作物にする開発を実施しています。

モンサント社やDuPont社は現時点での燃料作物の改良に必ずしも遺伝子操作が必要というわけではないといいます。一般的な品種改良のほうが開発期間が短くて済むという理由からです。さらに燃料コーンに要求される特性は、病気、害虫や干ばつへの耐性ですが、それは食用コーンに要求されることと同じです。従って、必ずしもSyngenta社の酵素コーンが必要ではないといいます。

環境主義者は、遺伝子操作作物が野生種と交配することで森林がしおれてしまうことを心配し、この様なバイオ燃料の情報が国民の車社会への熱中を加速する(省エネと反対の機運)ことに反対しています。

2000年にはAventis CropScience社のスターリンクコーン事件がありました。飼料用のみに認められた遺伝子操作コーンが異花交配により食用コーンにも混ざっていることが判明し、回収と輸出停止になったというものです。

さらにはエタノール発酵槽に後からそのような酵素を加えることと、あらかじめ燃料コーンの中にその酵素を入れ込んでおくことにどれくらいの差があるのか、という疑問もあります。

一方、賛成者は国外の石油への依存という恐怖に比べれば、遺伝子操作作物のリスクは小さいと主張しています。
Syngenta社は酵素コーンについて食用、資料用の両方の認可をアメリカ、ヨーロッパ、南アフリカなどいくつかの国で取得する方針です。この酵素は安全であり、事実唾液にも含まれているというのがその根拠です。

食品安全センターの関係者はこの酵素(のための遺伝子)はまだ良く解明されていない微生物から取り出されたものであり、この酵素自身がアレルギーを生じさせる可能性も否定されてはいないと慎重な意見です。
農業省は同社に対してこの酵素コーンについてもっと情報を提示するよう要求しています。

3.セルロースの利用

コーン全量をエタノールに転換してもガソリンの15%にしかならない現状では、コーン以外の作物に注目する必要があります。

またエタノール生産増加により固いコーンの需要が高まります。農家は輪作をやめ、毎年コーンを作ることを強いられますが、これは土壌にゆがみをもたらし害虫や病気を増やす元になります。

量的確保の観点からはバイオエタノールの原料をデンプン・糖ではなく、セルロースに求めることは必然に思えます。例えば多年草植物であれば、灌がいや植付けに要するエネルギーは少なくてすみます。
Ceres社は一般的な交配と遺伝子操作の両面からswitch grassの研究を進めています。現在のところ、通常5トン/acreの収穫量が9トン/acreに向上しているといいます。

Mendel Biotechnology社は中国原産のmiscanthusに注目しています。収穫量は20トン/acreも可能であり、植付けも受粉も灌がいの手間も要らず、少なくとも10年間はただ刈り取るだけでいいといいます。
さらにポプラも候補の一つといえます。ポプラはゲノム解明された最初の木だからです。

この様な状況にあって、燃料作物の開発は一般的な交配技術から次第に遺伝子操作に移行していくことは間違いないでしょう。それは地球を守る、地球温暖化を抑制する技術に反対するのは困難だからといえそうです。

バイオブタノール

2006-06-27 | バイオマス
日本でもサトウキビから作ったバイオエタノールをガソリンに混ぜて、CO2排出を減らそうという実証が沖縄県各地で実施されている。宮古島では、全島のガソリンスタンドをエタノールガソリン(E3)にして、大規模に実証試験を行なうようである。しかしながら、エタノールにはいくつかの課題も指摘されている。

石油連盟の発表によれば、以下のような課題があるという。
ガソリンにエタノールを混合すると蒸気圧が上昇し、光化学スモッグの原因物質である燃料蒸発ガスが増加する。
既存車に3%以上の高濃度エタノールを使用するとNOxが増加する。
水分が混入するとガソリンとエタノールが分離し、燃料性状の変化や自動車部品値の腐食・劣化が発生する。水分混入防止のためには約3,000億円の設備投資が必要。石油会社が自腹で3000億の投資をするのはいやですよ、とは書いて無い。

世界におけるエタノールの年間貿易量は約300万kLのみで、輸出余力があるのはブラジルのみ。日本でE3に必要なエタノール量は180万kL。原油を中東に握られているように、エタノールはブラジルに握られることになる。
原料がサトウキビであるため、天候や食料品価格により生産量・価格が大きく変動する。んー今年のような冷夏では、エタノールの生産量が落ちて価格が上がるということですね。

輸入ガソリンが35円/Lであるのに対してエタノールは45円/Lであり、価格が高い。さらにエタノールの熱量はガソリンよりも30%少ないので、結果として燃費(1Lで走れる距離、ということは100円で走れる距離)が悪くなる。ということで、年間400億円のコストアップになる。これは消費者価格の上昇になるのですよ、とまでは書いて無い。

で、石連としては経済性には目を瞑るとしても、環境への悪影響をなくすためにエタノールそのものではなくて、エタノールとイソブテンからETBEを製造して利用すべき、としている。確かに、その方が環境には良いのだろうが、経済性とETBEを製造するエネルギーロスを考えると、本当に出来るの?

ということで、エタノールに代わるアルコール燃料をBPとDuPontは共同で開発しますという発表がありました。次世代のバイオ燃料と銘打っておりますが、バイオブタノールです。DuPontがこれまで培ってきたバイオテクノロジーとBPの持っている燃料油技術やマーケッティングノウハウをあわせて、エタノールに対抗してバイオブタノールを市販していこうというものです。

具体的には2007年にイギリスのBritish Sugarが持っているエタノール発酵設備を改造してブタノールを生産という。ブタノールの利点には次のようなことがある。

蒸気圧が低く、水への溶解性が少ない。これにより既存のインフラ(ブレンダーや油槽所)をそのまま使用でき、改造の必要が無い。
高濃度にガソリンに混入する場合でも、自動車の改造が必要で無い。
エタノールよりも燃費がアップする。
ということで、価格以外のエタノールの課題を解決してくれるようです。

ブタノールの原料はサトウキビ、てんさい、とうもろこし、小麦、カッサバ(何か良く分からん)となっている。将来的には、草やわら、とうもろこしの茎なども使用できるようにするそうだ。アセトン・ブタノール菌というのは古くから知られているそうなので、これを改良しているのでしょうか?

価格とエネルギー効率(製造の)を踏まえたうえで、エタノールか、ブタノールかの比較になるのでしょう。

バイオマスタウン

2006-06-07 | バイオマス
アメリカのバイオマスタウンの話。

シカゴからインディアナポリスに抜けるI65の間にあるRaynoldsという人口533人の小さな町。この町はとうもろこしと大豆と養豚農場が主な産業で、高齢化も進んでいる。この町が中東原油と決別し、バイオマスタウンとして自立するという。

インディアナ州はバイオマスからのエネルギーのみで成り立つバイオマスタウンのモデル地域を探していた。条件は、人口が少なく、家畜が多く、大学から近く、大きな道路に面しているというものだった。担当者は地図を広げてRaynoldsをその候補にした。バイオマスタウン構築に当たっては、州政府や連邦政府からも交付金が出される。

当初は計画に積極的でなかった住民たちも、ガソリンの高騰を受けて自分たちの考えとしてバイオタウン構築に当たるようになった。
全米のエネルギーと電力のグリッドから切り離し、完全に再生可能エネルギーのみによる生活を送ろうというものである。カリフォルニアのような先進的な地域でなく、むしろ保守中の保守の町といったふうのRaynoldsがこのような取り組みを始めるのは驚きとして見られている。

本当のモデルケースにするために、補助金をあてにするのではなくPrivate financeで発電所を作ろうとしている。資金は徐々に集まりだしており、今秋には建設が始まる。豚や牛の廃棄物、あるいは都市廃棄物からメタン発酵によりメタンガスを製造し、これによりガス発電を行なって町全体の電力をまかなう。

一方、住民たちはE85の車を購入し、ガソリンの代わりにバイオエタノールを利用しようという。すでに100台のアルコール対応車が購入されている。町の公用車3台もアルコール対応車とBDF対応車に変更されるという。

しかし、全く障害が無いというわけでは無い。
町にはE85のガソリンスタンドが無い。町で唯一のスタンドのおじさんは言う。確かにバイオタウンは長期的に見ればよいことであり賛成。でも、俺にはもう1基の地下タンクとノズルを増やすだけの資金が無い。仮に増やせたとしても、遠くからE85ガソリンを受け入れねばならず、通常ガソリンよりも安く販売出来るという保証は無い。ということで、自分のお店をE85で商売が出来ると考える人に売るという。もう一件の雑貨屋さんも閉店。床屋さんも移転したそうだ。

E85の導入が床屋さんの移転の原因であるというのは妙な話ではあるが、未来は明るいが足元は暗いということを言いたいのでしょうか。
バイオマスエネルギーの導入=既存エネルギーからの完全脱却と一足飛びに考えるのは、やはり無理があるということです。

コーンエタノール

2006-05-16 | バイオマス
カリフォルニア大学の研究者がScience誌に投稿した記事。
コーンからのエタノールはエネルギープラスになるが、GHGの削減効果はそれほど大きくないというもの。

これまで発表されている代表的な7つの研究を再検証した。そのうち3つはそもそもNegativeな結論であった。Coproductsを無視していたり、時代遅れのデータを利用している点などを修正すると、いずれの研究も同じ結論すなわちNetでエネルギープラスになるという。その値はエタノール1Lあたり4-9MJだそうだ。

米国でのバイオ燃料のうち99%がエタノールである。2004年には3.4Billion gallonのエタノールがガソリンにブレンドされて利用された。これは223,000BDに相当する。全ガソリンの2%(Volumeベース)、1.3%(エネルギーベース)に相当する。

Bush政権はバイオ燃料の導入を進めるべく二つの政策を実施している。一つはガロン当り$0.51のTax creditであり、もう一つはEPACT2005(Energy Policy act)で2012年までにバイオエタノールを7.5Billion gallonまで増産するというものである。

この研究ではコーンエタノール1MJを製造するのに必要な石油はわずかに0.1MJであり、石油を95%削減していることに匹敵するが、GHG削減効果は13%とmoderateだとしている。moderateという語感をどうとるかによるが、13%は非常に大きな数値といえる。また、エタノールを作るのにエネルギーで10%の石油しかし要しないのは驚きである。副産物の利用(エタノールを作るプラントの燃料)を最大限に見ているのであろう。

エタノールの熱量は23.5MJである。エネルギープラスが9MJ/Lであることから14.5MJは生産・製造過程で使われていることになる。しかし、エタノールを作るには10%の石油でよいという記述からは、2.3MJが生産・製造過程で使用されることとなり、14.5MJと一致しない。どこか、読み落としている部分がありそう。

いずれにせよ、バイオ燃料は環境にとっても、エネルギー安全保障にとってもプラスに作用するという結論が固まりつつある。

E10への変更

2006-04-24 | バイオマス
アルコール燃料に関するアメリカの話題です。
週末にバージニア州からNew Jersey州にかけて数十軒のガソリンスタンドが休業してしまったそうだ。原因はアルコール入りガソリンE10へ切り替えとのこと。

製油所とガソリンスタンドではMTBEが禁止となる5月6日を間近にして、E10への切り替えを急いでいる。また、今の時期はガソリンスペックが冬規格から夏規格に切り替わる時で、ガソリン性状の切り替えも同時に行なわれている。加えて、先日原油は$75ドルをヒットし、ガソリン価格は前月平均の$2.15から$2.85に上昇しているという。このような状況にあって、ガソリンスタンドが休業していることで、パニックは広がることを懸念している。

一方、ニューヨーク州やコネチカット州のようにすでに1年前にMTBE使用禁止をしている地区では、このような混乱は無いようだ。

ガソリン添加剤として使われているMTBEが地下水に混入して、飲料水中に検出されたことで全面禁止が決められたが、その最終期限が5月6日となっており、E10への変更を急いでいる。また、アルコールをガソリンへ利用すれば、MTBEが巻き起こす損害賠償裁判での製造物責任の免責が得られる。5月6日以降になるとこの免責が期限切れになってしまうのではというおそれから、石油会社・スタンドはE10への転換をあせっている。

通常、ガソリンタンクを空にしてドレンを抜き、清掃するのに2日を要する。よほど余分なタンクを具備していない限り、ガソリンスタンドの休業は免れない。AAAはガソリン不足による休業では無いので、買いだめなどの措置は要らない、隣のガソリンスタンドは開いていると呼びかけている。

一方、アルコール入りガソリンの値段は確かに高くなるので、この期に乗じての便乗値上げが無いかどうか、エネルギー省は監視を強めている。

今後は全米でアルコール入りガソリンのマークが見れることとなりそうだ。

ブラジルのエタノール燃料

2006-04-12 | バイオマス
Bushの一般教書演説にも今後6年以内にコーン以外の木質チップのようなものからエタノールを製造する、しかも競争力の有る技術を開発するといっている。エタノールについての関心は増すばかりだ。

ブラジルは30年以上前からバイオエタノールの製造を推し進めてきた。今ではガソリンを自給できるという。とくに2002年にワーゲンを初めとした自動車メーカーが「Flex fuel engine」を出してから、加速度的にエタノール対応自動車が売れるようになっている。価格は普通のガソリン車と同じという。ブラジル人はいまや、エアバッグやオートマやワパーウィンドウを省いてでもこのFlex fuelエンジンを選ぶそうだ。
このエンジンはどのような混合割合のエタノールにも対応できる。消費者は価格をにらみながらエタノールを好きなように混合しているという。

アメリカでもバイオエタノールに限らず、バイオ燃料の栽培・製造にかかるエネルギーと得られるバイオ燃料のエネルギーはバランスしているのか、本当にプラスになっているのかという議論がある。
普通に考えれば、プラスにはならないと思われる。アルコールと水の蒸留分離を考えただけでも、エネルギーはマイナスになる。
ブラジルではサトウキビの絞りかす(バガスという)を燃料にして、発電しこの電力を利用するらしい。エタノールの製造に化石燃料は一切使わないという。本当に、と思うところもあるが、そうでもなければエネルギーはプラスにはならない。

ブラジルの研究者によれば、アメリカなどで行なわれているコーンからのエタノール製造のエネルギー収支は使用した化石燃料の1.3倍だそうだ。ところが、ブラジルのサトウキビからのケースでは実に8.3倍になっている。これはサトウキビからの方が収率が高いこともあるが、そもそも使用する化石燃料が極端に少ないためと思われる。

そんなわけで原油が$30/bblになっても競争力があるとしている。わが国でもE3ガソリンのためブラジルからのエタノール輸入を検討しているところであるが、価格的にも充分引き合うらしい。エネルギー源の分散という意味からも望ましいことではあろう。
但し、石油会社にとってはガソリンの生産量だけを3%減らすことになるので、あまり面白くは無いかもしれない。重質原油を購入してガソリンの得率を下げるような方向を探るのであろうか。


エネルギー作物の経済性

2006-02-23 | バイオマス
少し前のTV番組でサトウキビから自動車燃料(エタノール)を作る開発のレポをやっていました。いわゆるE3ガソリンというやつです。
サトウキビからエタノールを作る技術もさることながら、サトウキビの収穫量を上げることもエネルギー作物としては最も重要なことです。

アメリカではエネルギー作物を作ることが本当にエネルギープラスに働いているのか、という議論があります。一応、プラスですよという結論になっているようですが、その効率には検討の余地があるのでしょう。

一方、経済性という点からはまだまだ改良の余地はあるのでしょう。先日、新聞で砂糖農家を保護するための交付金制度が650億円の累積赤字を抱えており、農水省は価格保証制度の廃止や交付金の上限額設定の検討をしているとありました。

砂糖をめぐるお金の流れを少々、整理してみました。
スーパーなどでわれわれが買っている砂糖の価格は180円/kgです。トンでは180,000円/tonです。統計では市中価格というものがあり、これは卸値あるいは工場出荷価格に相当するのでしょうが、135.5円/kg=135,500円/tonです。てんさいの買い上げ価格は16,760円/ton@糖度16.7%だそうですから、糖に換算すると100,359円/tonになります。砂糖会社は約10万円で原料を買って、砂糖を13万5千円で売っていることになりますが、これでは利ざやが少なすぎます。ここに交付金があり、砂糖会社に対して80,412円/tonが農畜産業振興機構から支払われています。

結局、砂糖会社は交付金を除いて考えると農家から19,947円/ton-糖で原料を購入し、砂糖を135,500円/tonで出荷しているわけです。一方、農家はてんさい1トンあたりで3,331円を砂糖会社から受け取り、13,429円を交付金で受け取っていることになります。実に補助金率400%です。

一方、この交付金はどこから持ってくるかといえば、主なものは砂糖会社が粗糖を輸入した時に調整金として先の農畜産業振興機構に支払います。輸入品に関してお金を払うのですから、一種の関税なのでしょうが、書類上は輸入した粗糖を30,420円/tonで農畜産業振興機構に一旦売り、68,283円/tonで買い戻すという方法をとるようです。実質、37,863円/tonの関税を払っているようなものです。

この調整金と交付金は年度年度で変わるようです。業界では砂糖年度というものがあり、10月-9月です。先にあげたのは農畜産業振興機構のHPの統計のH16の数値を参考にしています。ざっくり言って、輸入トン4万円弱のお金を集めて、国産トン8万円を配っているのですから、輸入トンと国産トンのバランス2:1が崩れると成り立たなくなります。近年はこのバランスが崩れてきて、交付金の累積赤字が進んできたわけです。

さてここで問題です。エネルギーの値段は食料に比べて安いのが一般です。ガソリン1Lは牛乳やミネラルウォーターよりも安いですね。砂糖原料をつくために400%の交付金を出しているわけですから、この交付金がなくなった状態でエネルギー作物として売れるでしょうか?すぐには難しそうです。CO2税から交付金を出すような方策を考える必要があります。経済性については大いに検討しなければいけないということでしょう。しかし、技術的に効率的に成立することを確認・実証することが先決であることは変わりがありません。

バイオエタノールのエネルギーバランス

2006-02-07 | バイオマス
ブッシュ大統領の一般教書演説の中でもRenewable Energyとしてのバイオエタノールが言及されている。畑からガソリンの代わりになる燃料、それも液体燃料を作ることが出来る技術なので、大いに注目されている。しかし、そのエネルギーバランスはどうだろうか。

New York Times(Web版)の記事には、コーンからエタノールを製造する段階で5分の2のガソリンが使われているという。実際にエタノールプラントで使用される燃料はガソリンではなくて、天然ガスですが。しかも、この数値にはコーンの栽培や収穫にかかわる機械の燃料などはカウントされていない。エネルギーバランスという観点からは更なる技術開発が必要である。

今年全米で生産されるエタノールは5000億ガロンで全ガソリン消費量の3%に相当する。これをさらに増やすためにも、エネルギー効率というかエネルギーバランスの向上が期待されるわけである。

その一つの方法として、コーンの茎なども一緒に収穫してそれをガス化して天然ガスの代わりに利用する方法や、エタノールプラントに隣接して牛(cow)をかって、糞尿からメタン発酵によりメタンを得る方法が紹介されている。
Frontline Bioenergy社がパイロットプラントの運転をしている。

それにしてもある程度の量をバイオエネルギーにも期待したい。

フォードのE85ハイブリッド車

2006-02-01 | バイオマス
フォードは小型SUVのEscape HybridにE85仕様車を開発した。

E85はバイオマスから製造されるエタノール(renewable)を最大85%含有するガソリンである。むしろガソリンの方が少ないのだから、言い方としてはガソリンを15%含むエタノール燃料といった方が分かりやすい。
もし、全米の5%の車でE85 Hybridが採用されれば年間1億4000万BBL(38万BD相当)の石油輸入が節約できる計算になる。

このE85仕様Hybridは通常のガソリンHybridに比べて25%のCO2削減となる。ガソリンHybridの燃費は36mile/gallonだが通常ガソリン仕様車に比べてどれくらいCO2削減となるのかは不明。全米では10%以下のエタノール入りガソリンはそこここで販売されているが、E85は中西部で販売されている。
(参考)エタノール 5,597kcal/L  ガソリン8,266kcal/L

このE85 Hybridはアメリカの石油輸入依存度を下げることに貢献するとともに温暖化ガスの排出削減にも寄与するというものである。また、エタノールはコーンや砂糖ビートから生産されるので、アメリカの農業経済を支える役目と石油輸入金抑制の双方に寄与するものと考えられる。

バイオエタノールの経済性について、日本とアメリカでは農業の経済基盤が異なるので、一概に判断できないが、普通に考えるととてもバイオエタノールがガソリンに勝てるとは思えない。自分でも検討して見ようと思う。

国内最大規模の木質バイオマス発電施設を建設

2005-12-25 | バイオマス
やまがたグリーンパワー(株)は発電出力2,000kWの国内最大の木質バイオマス発電設備を工費15億円で建設します。2006年4月着工、2007年2月運転開始予定です。
これは経済産業省「新エネルギー事業者支援対策事業」として、1/3の補助と90%の債務保証を受けている。

同社は平成 17年7月29日、日本バイオマス開発株式会社(代表取締役社長:鈴木 誠氏)および五十嵐特殊建設株式会社(代表取締役社長:五十嵐 邦夫氏)が共同で設立したベンチャー事業会社です。

燃料となる木質バイオマスとしては、間伐材、道路河川事業樹木、支障木、ダムの流木、松喰い虫被害木、果樹剪定枝等をチップ化して利用し、使用量は年間約 20,000トンです。

燃料ボイラーによる発電においては木質バイオマスは水分量が多いため、乾燥する必要があり(乾燥のためのエネルギーを必要とする)、さらに50t/d程度の施設では発電効率が低く、事業化は困難とされていた。

今回の装置はJFEエンジニアリングが受注し、デンマーク・バブコック&ウイルコックスフェルント社の装置を導入する。
この装置はガス化炉・ガスエンジンの構成です。排熱を融雪やビニールハウスへ供給することも可能としている。JFEエンジによれば装置の特徴は以下の通り。
・ 水分が 35%~55%含まれるバイオマス資源を、乾燥工程を経ることなく直接処理することが可能。
・ガス化炉内部で熱交換が行なわれるアップドラフト式ガス化炉を採用しているため、総合エネルギー効率が高い。
・約 30%の高い発電効率 (総合効率は80%以上のようです)
・ガス化炉は、 10%まで低負荷運転が可能であり、運転のフレキシビリティが高い。
・完全自動化により、少ない保守要員で運転可能。
・独自のガス処理システムにより生成ガスの清浄度が高く、ガスエンジンの長期連続稼動が可能。
・タール含有排水は、独自のシステムで浄化。

ガス化炉方式の課題はタール分をどう少なくし、どうしても発生するタールをどう処分するか、です。また、ガス化材として利用する水(水蒸気)を使用後どう処理するかです。このあたりはJFEが独自技術で対応しているということのよう。

木質バイオマス利用促進は、新エネルギー導入の要でもありますからプラントの成果に注目です。