化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

E10への変更

2006-04-24 | バイオマス
アルコール燃料に関するアメリカの話題です。
週末にバージニア州からNew Jersey州にかけて数十軒のガソリンスタンドが休業してしまったそうだ。原因はアルコール入りガソリンE10へ切り替えとのこと。

製油所とガソリンスタンドではMTBEが禁止となる5月6日を間近にして、E10への切り替えを急いでいる。また、今の時期はガソリンスペックが冬規格から夏規格に切り替わる時で、ガソリン性状の切り替えも同時に行なわれている。加えて、先日原油は$75ドルをヒットし、ガソリン価格は前月平均の$2.15から$2.85に上昇しているという。このような状況にあって、ガソリンスタンドが休業していることで、パニックは広がることを懸念している。

一方、ニューヨーク州やコネチカット州のようにすでに1年前にMTBE使用禁止をしている地区では、このような混乱は無いようだ。

ガソリン添加剤として使われているMTBEが地下水に混入して、飲料水中に検出されたことで全面禁止が決められたが、その最終期限が5月6日となっており、E10への変更を急いでいる。また、アルコールをガソリンへ利用すれば、MTBEが巻き起こす損害賠償裁判での製造物責任の免責が得られる。5月6日以降になるとこの免責が期限切れになってしまうのではというおそれから、石油会社・スタンドはE10への転換をあせっている。

通常、ガソリンタンクを空にしてドレンを抜き、清掃するのに2日を要する。よほど余分なタンクを具備していない限り、ガソリンスタンドの休業は免れない。AAAはガソリン不足による休業では無いので、買いだめなどの措置は要らない、隣のガソリンスタンドは開いていると呼びかけている。

一方、アルコール入りガソリンの値段は確かに高くなるので、この期に乗じての便乗値上げが無いかどうか、エネルギー省は監視を強めている。

今後は全米でアルコール入りガソリンのマークが見れることとなりそうだ。

クリーンディーゼルエンジンの開発

2006-04-21 | 石油
アメリカのBorgWarner社とEPA(環境保護庁)はCDCと呼ばれるクリーンディーゼルエンジンの開発について協力する。EPAが持っているCDC技術を具体的な製品にするためにBorgWarner社が技術とノウハウを提供するというもの。
EPAが開発しているCDCはin-cylinder NOx controlといわれるもので、燃料室でのNOx発生を出力を落とすことなく下げる技術で、そのためには過給器が必要になるわけだが、BorgWarner社はターボ部品と空気制御技術を提供するものである。

ディーゼルエンジンはそもそもガソリンエンジンに比べて燃費が良いので、これの排ガスがクリーンになれば、空気がきれいになり、消費者のガソリン代も安上がりで、中東石油への依存度も減るという一石三鳥の技術である。

このような共同開発の動きが出てくる背景には米国の排ガス規制の強化ということがある。
先にも書いたが、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも効率が高い。しかし、排気ガス(NOx、PM、NMHC)が汚い、振動が大きいなどの欠点が有る。
燃費が良いことからアメリカではバスや大型トラックはディーゼルだが、小型トラックLight Duty(ピックアップ、カーゴバン、ミニバン)や乗用車のディーゼルシェアは4%以下だ。

自動車に関連する規制には燃費規制、排ガス規制、燃料油規制の3種類がある。燃費規制はCorporate Average Fuel Economyと呼ばれ、各メーカーごとに作っている車の総平均値で規制がなされている。現行の規制では乗用車は27.5mile/gal(11.6km/L)、小型トラックは20.7mile/gal(8.7km/L)になっている。これは適時見直しされるが、乗用車と小型トラックの区別をなくして35mile/galに引き上げるという主張をしている議員さんもいるようである。いずれにせよ、燃費改善となるとディーゼルエンジンの活用という方策が注目される。

一方、EPAのTier2という化学物質全般の規制の中に自動車のNOx、PM,NMHC(non methan hydro-carbon)が定められていて、乗用車と小型トラックの適用車種が段階的に広くなっている。
大型ディーゼル車については2007年からNOxなどそれまでの90%に削減するという規制が始まる。規制値をあげれば、NOx0.2、PM0.01NMHC0.14以下である。こちらも段階的に適用比率を引き上げていき、2010年には100%実施としている。これらの規制はとくにPMが肺がんを発生させているという報告書が出されてことから勢いづいたと考えられる。
この2007年以降の規制を達成するためには後処理装置の装備が不可欠である。そこで、後処理装置に悪影響を与える燃料中の硫黄分を下げるという燃料規制が始まった。これは2006年9月から軽油中の硫黄分を500ppmから15ppmに減らすというものである。但し、燃料や潤滑油に含まれる添加剤には多量に硫黄分が含まれているが、こちらには着目されていない。燃料中の硫黄分は後処理装置の触媒を劣化させたり、サルフェートを生成しこれがPMの核になるといわれている。

ちなみに後処理装置にはNOX吸蔵触媒、Diesel Paticulate Filter,酸化触媒、SCR(尿素触媒)、プラズマ排気処理などがある。
このような後処理装置をつけるという現実的な対応を補完するために、クリーンディーゼルエンジン(CDC)の開発が進められているということだ。


液晶テレビ

2006-04-16 | 社会
2ヶ月ほど前から我が家の液晶テレビの画面にしみのようなものが出てきてしまった。2年半ほど前に購入したもので、我が家の電化製品の中では最も新しい部類である。購入時はまだ、液晶テレビは結構珍しく、20インチを結構高い値段で購入した。購入した量販店で、メーカー保証以外に量販店の保証(3年)をつけるかどうか聞かれましたが、天下のSプ社の製品ですから必要ないだろうとつけませんでした。すべてのテレビを液晶に変えるとコマーシャルしているくらいですから、品質には絶対の自信があるだろうとも納得していましたから。
ところが2年ほどで液晶画面にしみのような模様が現れました。量販店の販売員に聞いてみたところ、メーカー保証は切れているのでもちろん有償修理、バックライトの交換の必要がありそうとの事。当然、修理になんて出せません。
修理費用を払うくらいならば格安のブラウン管テレビを購入した方がよっぽどいいと思う。
最近TVでよく見かける○○太夫ではないが「ちっくしょう」以外の何者でもない。

ブラジルのエタノール燃料

2006-04-12 | バイオマス
Bushの一般教書演説にも今後6年以内にコーン以外の木質チップのようなものからエタノールを製造する、しかも競争力の有る技術を開発するといっている。エタノールについての関心は増すばかりだ。

ブラジルは30年以上前からバイオエタノールの製造を推し進めてきた。今ではガソリンを自給できるという。とくに2002年にワーゲンを初めとした自動車メーカーが「Flex fuel engine」を出してから、加速度的にエタノール対応自動車が売れるようになっている。価格は普通のガソリン車と同じという。ブラジル人はいまや、エアバッグやオートマやワパーウィンドウを省いてでもこのFlex fuelエンジンを選ぶそうだ。
このエンジンはどのような混合割合のエタノールにも対応できる。消費者は価格をにらみながらエタノールを好きなように混合しているという。

アメリカでもバイオエタノールに限らず、バイオ燃料の栽培・製造にかかるエネルギーと得られるバイオ燃料のエネルギーはバランスしているのか、本当にプラスになっているのかという議論がある。
普通に考えれば、プラスにはならないと思われる。アルコールと水の蒸留分離を考えただけでも、エネルギーはマイナスになる。
ブラジルではサトウキビの絞りかす(バガスという)を燃料にして、発電しこの電力を利用するらしい。エタノールの製造に化石燃料は一切使わないという。本当に、と思うところもあるが、そうでもなければエネルギーはプラスにはならない。

ブラジルの研究者によれば、アメリカなどで行なわれているコーンからのエタノール製造のエネルギー収支は使用した化石燃料の1.3倍だそうだ。ところが、ブラジルのサトウキビからのケースでは実に8.3倍になっている。これはサトウキビからの方が収率が高いこともあるが、そもそも使用する化石燃料が極端に少ないためと思われる。

そんなわけで原油が$30/bblになっても競争力があるとしている。わが国でもE3ガソリンのためブラジルからのエタノール輸入を検討しているところであるが、価格的にも充分引き合うらしい。エネルギー源の分散という意味からも望ましいことではあろう。
但し、石油会社にとってはガソリンの生産量だけを3%減らすことになるので、あまり面白くは無いかもしれない。重質原油を購入してガソリンの得率を下げるような方向を探るのであろうか。


ガソリン価格

2006-04-11 | 石油
アメリカのガソリン価格上昇が止まらない。AAAによれば全米平均価格は$2.61で昨年同時期に比べて36セントアップしている。

今は供給不足でもハリケーンが襲来しているわけでも無いのに、価格そのものは上昇している。これは、需要が高いこと、供給余力が限られていること、産油国政情不安などにより原油が高止まりしていることに大きく起因している。

2004年以降、ガソリン価格が上がっているにもかかわらず消費は落ちていない。むしろ2%の増加だそうだ。アメリカの生活は車と安いガソリンを基本としているので、価格が少々上がったからといって直ぐに車をやめるというわけにはいかない。

全米の精製能力は1700万BDで消費量は2050万DB(そのうち約半分がガソリン)である。その差はヨーロッパや近隣からの製品輸入で補われている。精製会社も2010年までに140万BDの能力増強を計画しているが、明日から増産が出来るわけではない。

もう一つ、今後の製品輸入には品質の問題が絡んでくる。今年からULSDがスタートする。Ultra-low-sulfur-dieselという硫黄分10ppm以下の規格だ。これはヨーロッパの規格よりも厳しいので、ヨーロッパから単純に製品輸入が出来なくなる。

さらにMTBEの使用禁止とエタノールへの移行が決められているが、エタノールの供給不足は13万BDに上るとのAPIの調査結果がある。
いずれにせよ、供給が追いつかない事情に変わりはなさそうだ。

ところで、アメリカのガソリン価格構成は60%が原油代、20%が税金、20%が精製と流通コストといわれている。昨年価格2.25$/galを基準にすると、$1.35が原油代、税金は$0.45、精製流通コストは$0.45となる。
これらはガロン基準なのでリットル当りに換算すると、$0.36が原油代、税金と精製流通コストはそれぞれ$0.12にすぎ無い。為替を117円/$とすれば、アメリカのガソリン価格は69円/Lであり、日本の価格に比べれば半分程度である。これならば多少価格が上がっても、ガソリン消費が減らないというのはうなずける。

Marylandの決断

2006-04-10 | エネルギー
Marylandは東部7州で構成されるthe Regional Greenhouse Gas Initiativeに加盟する法案を制定した。

RGGIとは2003年に米国東部9州により結成された組織で、2019年までにCO2排出量を10%削減のための、排出制限と取引の仕組みである。ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット、デラウエア、メーン、ニューハンプシャー、バーモント、ロードアイランド、マサチューセッツのうち、昨年マサチューセッツとロードアイランドが脱退したので7週になっていた。

メリーランドが新たに加わったことで現在は8州になっている。メリーランドの法はCO2削減とともに有害ガスの排出も抑制している。NOx、SOx、水銀の排出量に上限(Cap)が設けられた。メリーランドには石炭火力発電所が多くあり、CO2排出量が必然的に多くなっているという事情がある。

州政府はCO2排出削減により電力供給の不安が生じることは無く、電力価格の上昇もわずかである、との調査結果を発表している。しかし、RIとMAの脱退はその2点が担保されていないという懸念によるものである。

メリーランドでも知事ならびに電力会社から同様の懸念が表明され、2009年1月1日までにさらに総合的な調査を行い、価格と安定供給が確保される見通しが無い場合は、加盟しないことと法案自体は修正されている。

カリフォルニアでの動きとも呼応して、連邦政府が温暖化防止に積極的関与をしない中で、州政府が動き出している。

カリフォルニアでのCO2削減法案

2006-04-05 | 環境
カリフォルニア州議会にすべての温暖化ガスの排出制限を義務付ける法案が提出されている。議会を通過すれば全米で初めてのCO2制限のある州となる。

法案では温暖化に関連するCO2やその他のガスについて、2020年までに1.45億トンを減らすことを義務付ける。これは2020年の排出予想量に対して25%の削減に相当する。
日本の2012年でのCO2削減量は6000万トン程度なので、このカリフォルニアの数値が以下に大きいかがわかる。

カリフォルニアはこれまでも環境政策に関して全米をリードしてきている。California Clean Actなどの排気ガス規制はその代表例である。排ガス規制に関しては日本も先端を行っていたが、ある時からCAがもっとも厳しくなった。

あのシュワちゃん知事によれば、太陽光や風力の活用を一層進めること、水素を自動車用燃料にすることなどを通じて、CO2削減を進めることのようだ。

京都議定書にアメリカは加わらなかったが、各州が独自に地球温暖化に対応するということになる。