化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

ガソリン中のベンゼンの低減

2006-09-12 | 石油
ガソリンへのバイオエタノールの混合は、ただ単純に混ぜればよいというものではなく、その他のガソリン性状の規格を守らなければなりません。
一例としてベンゼン濃度についてみてみます。

ベンゼンの発がん性が指摘されて、日本では2000年にガソリン中のベンゼン含有量の規格が5vol%から1vol%に変わりました。また、関連して蒸発エミッションを低減するため2001年から夏場の蒸気圧(RVP)は78kPaから72kPaに低減されました。つまりRVP(37.8℃)規格は44から72kPaとなりました。但し、寒冷地用のものの上限は93kPaです。

アメリカではハイオクガソリン(Reformulated gasoline)中のベンゼン濃度を1vol%以下に規制しています。しかし2011年1月1日から全ガソリン中のベンゼン濃度は0.62vol%以下になろうとしています。ハイオクガソリンは全ガソリン中の35%程度を占めています。

それでは今のガソリン中のベンゼンの濃度はどれくらいになっているのでしょうか。規制が無いのではっきりとした実績は分かりませんが、ハイオクより高いのは間違いないでしょう。ガソリンの主な基材であるリフォーメートのベンゼン濃度は0.2から8.0vol%、FCCナフサは0.5から1.3vol%です。ガソリン中のベンゼンを0.62vol%以下にするには、この基材中のベンゼンを下げなければなりません。

リフォーメートのベンゼンを減らすには接触改質装置原料からベンゼン前駆体を分離することです。また、FCCナフサではFCC装置の運転条件、すなわちシビアリティ、触媒、原料ならびに添加剤を調整してやる必要があります。例えば、FCC運転をガソリンモードからプロピレンモードにするとベンゼンは0.5%から1.3%に増加します。

ガソリンの品質に関する規格は厳しくなる一方です。オクタン価はRONとMON平均で85から87に増大すると予想されています。オクタン価をあげるにはリフォーメートをたくさん入れればよいのでしょうが、それではベンゼン含有量も多くなってしまいます。

VOC規制も厳しくなる方向です。さらにエタノールの混合義務化の影響もあります。エタノールはリフォーメートと同じオクタン価ですが、RVPが1.3psi(9kPa)上昇します。このRVPの上昇を大目に見てもらえるのか、あるいは現行のRVP規制そのままなのか、はたまたVOC低減の観点から低くなってしまうのか、これらによってベンゼン含有量を低減する量やその方策が異なってきます。

また、ヨーロッパをはじめカナダや日本のガソリンはベンゼン1%規制のままです。アメリカでは夏場のガソリン需要期には10%を輸入に頼っています。この輸入品を0.62vol%規格を適用することが可能かと言う課題もあります。

ところでアメリカでのガソリン消費量はどれくらいなのでしょうか。
1日当り360 million galといいますから131 billion gal、つまり500百万kLです。きりのいい数字ではあります。石油全体の消費は1,090百万kLで2,080万BSD(330日)です。これは世界の25%に相当します。ちなみに石油は一次エネルギーの40.2%ですから、一次エネルギー全体では2,711百万kL(原油換算)になります。

話題の2006年のエタノールのガソリンへの混合量は4.0 billion galと予想されているので、3%に相当します。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿