化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

石炭の話

2006-05-31 | 石炭
日常生活において、石炭を使うことや見かけることはほとんど無いが、今でも工場や発電所では燃料として使われている。日本の一次エネルギーに占める割合は18%であり、石油には及ばないが天然ガスや原子力よりも多いのである。しかし実感としては灯油やガソリンのように身近に触れることがないので、19世紀の燃料と思う人が多いことだろう。

しかし石炭が重要なエネルギー源であることは今も昔も変わらないようで、アメリカでは日本以上に石炭が重要になっている。アメリカの石炭埋蔵量は可採年数で200年といわれており、もちろん米国内の石炭と天然ガスの合計よりも多い。また、エクソンモービルが持っている海外も含めた石油・ガス埋蔵量よりも、アメリカ国内の石炭埋蔵量は多いという。

以下はNYTimesの記事を織り交ぜながら。

Peabody Energy社はワイオミング州に全米最大の露天鉱山を有しているが、炭層は24メートルあるそうだ。

全米には1000箇所の石炭火力発電所があり、今後も140箇所の建設計画があるそうである。しかし、温室効果ガスの排出量は化石燃料の中でもっとも多い(排出係数が高い)ので、使用量を増加させることにブレーキがかかりつつある。
50万kWの発電所は50万軒の家庭のエネルギーをまかなえるが、75万台の自動車と同じ量のCO2を排出する。(このたとえが意味あるのかどうか分からないが)

American Electric Power社は全米一の石炭火力発電量を有するが、OhioとWest Verginiaにそれぞれ$1.3billionをかけて60万kWの発電所を計画している。排出CO2を地中に固定化することで、石炭火力はもっとも経済的なエネルギー源になると主張している。

これに対して、Peabody Energyの社長はCO2固定化はまだ技術的にも経済的にも確信の持てる技術では無い。石炭は逃げないのであせって対策を講じることは返ってまずいといっている。

埋蔵量から言えば魅力的な石炭だが、温暖化を加速せずにエネルギー需要を満たすことは改めて技術的、経済的なChallengeである。

コノコフィリップスとサウジアラムコ

2006-05-25 | 石油
コノコフィリップスとサウジアラムコが合弁で新規に製油所を建設するというニュース。

精製能力は40万BD、日本で一番大きい製油所は新日石根岸で34万BDなので、それよりもはるかに大きい製油所である。2011年のスタートアップを予定している。アラビアンヘビー原油から米国や欧州の規格に合うようなUltra-Low Sulfur製品を精製する。製品は全量輸出される。アラヘビという重質油を想定原油にするところがポイント。

アラムコとコノコフィリップスで50:50の合弁会社を作り、この会社が製油所を所有し運転する。アラムコが原油を全量調達し、出来た製品は両社が半々で販売する。コノコフィリップスはイギリスにも製油所があり、コノコブランドのSSを運営しているので、このルートでの販売になるのだろう。

コノコフィリップスはWorldwideな精製能力引き上げのための投資の一環として、本製油所建設を計画している。

ハリケーンと石油、天然ガスの価格

2006-05-24 | エネルギー
ハリケーンの予測が石油や天然ガスの価格を引き上げているという。

米国気象庁の予測では今年は13-16のストームが発生し、8-10がハリケーンに発達し、そのうち4-6が大型化するようである。2005年ほどシビアでは無いとしているが、とレーダーたちはこのニュースに反応して石油、天然ガスの価格が直近は上昇している。

それも無理ないことだろう。ニューオリンズの被災地の復旧は始まったばかりだ。さらにGulfの石油ガスの施設もカトリーナとリタの被害からいまだ完全には復旧していない。Gulf最大のシェルのMarsプラットフォームは6月になって漸く、被害前の状況に戻る計画である。今なお、復旧工事が急ピッチで進められている。

原油WTIは$71.3/bblである。余談だがWest Texas Intermedieteというからテキサス州の原油かと思ったら、WTI at Cushing,OKとあるのでオクラホマ州の原油ですね。Cushingを地図で調べてみたらOklahoma State UnibersityのあるStillwaterの近くでした。
天然ガスも$6.28/MMBtuとまた6ドルを超えてきている。

これまで原油価格は供給と需要の関係に産油国事情などに影響されていたが、気象というファクターも新たに付け加わるかもしれない。

イランの油田開発

2006-05-23 | 石油
イランのAzadegan油田開発に関して、米国とイランの板ばさみにあっている。

米国、UK、フランスはイランの核開発を止めさせるべく、安保理での経済制裁を主張している。一方ロシアと中国は経済制裁には賛成していない。米国は日本に対して、経済性が発動されるかどうかにかかわらず同油田開発を中断するよう要請している。油田開発はイランの核開発を金銭的に後押しするものとしている。

これに対してイランはこの問題を安保理からIAEAの場に引き戻すよう日本に協力を要請している。Azadegan油田は日本のエネルギー安全保障上重要であり、日本が経済制裁に加わるようであれば、その影響はテヘランよりも東京の方が大きい、と脅しているわけである。

この開発はInpex、トーメン、Japexが日本側コンソーシアムとなり、2004年2月にイランと調印している。総開発費は$2Billionで日本が75%を負担する。
イランのように地政学的リスクの油田の利権を持つことが本当に安全保障上、重要かどうかは意見の分かれるところ。しかし、自前の油田を持つことは重要であり、イがあることだ。しかし、イランではかつでホメイニ革命の時、日本イラン石化プロジェクトが破綻して手痛い被害をこうむったこともある。まー、日本側の事業会社はその辺のリスク管理・ヘッジはしていることではあろうが。

日本がこのPJから手を引けば、代わりに中国が乗り出すだけだろう。そもそも中国は経済制裁に反対しているのだし、油田は欲しくてしょうがないわけだから。米国の一部には中国の技術ではAzadegan油田は開発できないと主張する学者もいるようだが、多少効率は悪くなるかもしれないが、油田の開発は出来るだろう。

米国ではイランの油田開発に協力する外国企業に対して、米国として何らかの制裁措置を課す法案が審議されている。米国への輸入差し止めを食らうのは痛いところではあるが、一体日本からのどんな輸入品を差し止めるのだろうか。そしてそれらを日本以外から簡単に調達できるのだろうか。このあたりについては疑問が残る。

核の拡散は防がなければならないが、すでに持っている国は良くて、後からついていくのはだめよ、というおきまりの理屈はやはり通らない。

日本はイランから全原油輸入量の15%を輸入している。2004年の全輸入量は242millim kL で約417万BDで有る。これの15%は62.5万BDだ。Azadeganの推定埋蔵量は260億バレルといわれており、このうちの75%の利権を日本が得るとすれば、62.5万BDで割り返して85年となる。これだけの量を黙ってほおっておけといわれても出来る相談では無い。

天然ガスの価格

2006-05-22 | ガス
先週のNYMEXでの天然ガス価格(一月もの)は$5.997/MMBtuで15ヶ月ぶりの安値となった。直近の高値は2005年11月頃の$15/MMBtuであるから、大幅な低下である。しかし、昨年の冬はハリケーンの影響でガス生産設備は受け入れ設備が損害を受けていたという特殊事情がある。

今の時期から秋口にかけてはガス需要が減るので、地下貯蔵されるそうである。ところが今年はすでに2.08tcfになっており、この時期としては高い在庫になるそうだ。そのような影響で足元の天然ガス価格が昨年に比べて低下しているのだろう。

ところで、ガス価格は99年までは$2/MMBtu(British Thermal Unit)で安定したいたのだが、2001年に倍の$4、2003年は$5、2005年はついに$7となり、原油と同様に価格の高騰が続いている。基本的には石油よりも価格高騰になりやすいのだそうだ。

さて、ガスを扱う時の単位は熱量ならばBtu、体積ならばcf(cubic feet)という日本人にはなじみの無い単位である。それゆえ、$5/MMBtuといわれても日本に比べて安いのか高いのかどうもぴんと来ない。在庫が2tcfといってもどらくらいの量なのか見当がつかない。

そこでおよその換算をしてみた。Btu=1.055kJなのでMMBtuは1.055GJとなり、メタンの発熱量39.75MJ/Nm3で割り返すと、約25Nm3となる。つまりは、6$/MMBtuならばおよそ$0.24/Nm3ということになる。一般家庭のガス料金120/Nm3と比較してみると勘所が分かる。
一方、2.08tcfという在庫量を換算してみる。cfは28.3Lなので2.08tcfは約590億Nm3になる。日本の総一次エネルギー使用は24×10^18Jでそのうち天然ガスは13.1%なので3.14×10^18Jである。これをメタン熱量で換算すると790億Nm3となる。アメリカのガス在庫は日本の全ガス消費量に匹敵するくらいある、というのがおおよその理解であろう。

エチレンボトム油からの水素製造

2006-05-19 | 水素
エチレンクラッカーのボトム油(エチレンタール)から水蒸気改質により燃料電池向けの水素を製造する技術を某大学と某社が開発したという某産業新聞の記事。

新聞に載る技術開発の記事は随分と間違っていることが書いてある。もちろん、プレス発表をする側が誤っていることもあると思うが、大部分は記者の理解不足によるところが多いのではないかと思う。結局、インタビューや発表の中からキーワードを切り出す時の意識の問題ではないかと思う。

この記事ではこれまで重油を水蒸気改質の原料にすることは、触媒活性低下が大きくて難しかったが、カルシウムを添加することでコーキングを抑制しているとしている。ここまでは読む分には有効な技術だろうと読み取れる。

現在用いられているガスや灯油に比べてエチレンボトムは価格的にも安いので製造コストの低減には寄与するだろうことも理解できる。しかし、記事中では反応器温度は1000℃であり、水蒸気にヘリウムを混合して供給するとある。現在化学工場などでガスやナフサを原料に行なわれている水蒸気改質水素製造では、800℃程度の温度と、スチームのみを供給する。1000℃と言うと反応管などの材料コストが大きく上昇する。また、ヘリウムガスを追加するコストもかかる。この条件ではたして製造コストが本当に下がるのだろうか?

さらに記事ではエチレンボトムは消費しきれずに廃棄物として処分されることも有ると書いているが、本当だろうか。エチレンボトム油は超低硫黄で燃料油として利用されるはずである。事故等の非常時で無い限り、廃棄処分されることなどありえない。

記事ではただ同然の分解重油を原料とするため、水素製造の大幅なコスト低下が見込めるとある。エチレンボトム油が常にただ同然で提供されるならばわざわざ水素などを作らずに燃料油として利用されるだろう。

技術としての新規性は理解できるのだが、それが一体どういうメリットを生むのかがはっきりしない。この技術が実用化できるとわれわれにとってどういういいことがあるのかを伝えて欲しいものである。

再生可能エネルギーの導入量

2006-05-18 | 再生可能E
英語のRenewable Energyを直訳すると再生可能エネルギーとなるが、日本語としてはいわゆる自然エネルギーといったほうが分かりやすい。業界的には再生可能エネルギーが定着してきている。
この再生可能エネルギーは果たしてどれくらい導入が可能なのだろうか、というのは大きな関心である。

政府の新エネルギー導入目標は2010年で電力や熱利用の総計として石油換算で1,910万kL/年である。多いのか少ないのか判断つきかねるが、別の単位で表せば33万BDである。これは日本の一次エネルギーの3%に相当する。足元は1.2%相当を利用しているに過ぎないので、あと5年ほどで2.5倍にするのは容易い事ではなさそうだ。新エネルギーとは風力発電、太陽光発電、バイオマス熱利用や廃棄物発電などをさす。再生エネルギーとはこれらに既存の技術である水力発電や地熱発電を加えたものをさす。再生可能エネルギーの一次エネルギーに占める割合は足元6%である。京都議定書での削減目標が6%なのだから、この再生可能エネルギーで6%という数値や新エネルギー導入目標3%という数値は決して小さいものでは無い。

しかし、石油枯渇説、最近はピークアウト説などで非常に近い将来、化石資源の使用を相当量減らす必要ありとの立場に立てば、3%や8%なんてもんじゃ全く追いつかない。だから原子力をという主張もあり、いや省エネをいっそう進めるという意見ありの状態になる。どれも定性的には正しいけれど、一体定量的に正しいのはどれだ、との結論は無い。もちろんエネルギーミックスは基本的に必要な考えです。

ところで太陽光発電はパネルのコストが今後下がっていくことが期待されている。2030年には現状の5分の1くらいになる。現状は家庭用3kWシステム、パネル面積24m2で200万円だそうだ。パネル単価は250円/W。1kW当りに直すと8m2のパネルが必要でパネル価格25万円、システム価格67万円。パネル1m2当りに直すと125W、31,000円でシステムで83,000円となる。但し、ソーラーパネルの利用率は11.4%が平均実績。
20年の寿命・金利3%で発電単価は45円/kWhになるが、システム単価が半分になれば今の電気代と同じであるから、補助金が無くても普通に普及するだろう。でもマンションに住んでいる場合は最上階の人しか設置できない。

風力発電は設備が大型になるので、設備単価は19万円/kWで発電単価は10円/kWhとなる。こっちは充分に安いけれども直接家庭で利用するのは無理なので、電力会社に電気を買ってもらわなければならない。電気が売るほどある電力会社に電力を買ってもらうということ自体、仕組み的にうまくない。トヨタや日産に中古自動車を買い上げてもらうときには、安くなるのと同じこと。

バイオマスは発生源が分散しているので、原料の確保と収集のコストが一番の課題。小規模で効率のより転換技術の開発が望まれているところです。2010年の目標は450万kW(586万kL)となっている。バイオマスニッポンとして推し進めている。

身近なのはごみ処理場での熱利用や発電です。温水プールがあったり、地域電力があるあれです。しかし、全国に1800箇所ある焼却場のうち18%しか熱回収・発電をやっていない。今の技術で出来るのは200トン/日のような大型焼却場だけのよう。100トン/日以下の小型でも25%くらいの発電効率が出せるような技術開発が進んでいるそうだ。

再生可能エネルギーの将来は明るいが、その道は険しい。


排出権取引

2006-05-17 | 環境
CO2排出権取引のお話。

先週、欧州で年に1回公表されるデータがインターネット上に誤って流れてしまったそうだ。予定より3日早かった。各国が自国の企業のCO2排出量を多く見積もりすぎていてCarbon creditを必要以上に持っていることが分かった。企業は自分のCO2排出量を多くしておきたいので、政府はどうしても多めに見積もってしまう傾向になるのは仕方が無い。

問題はCarbon creditが余っていることが予定より早く公表されてしまったことで、市場参加者から売りが殺到し、一気に31ユーロ/トンから22ユーロ/トンまで9ユーロ近くも下落したこと。
市場にVolatilityはつき物だが、排出権市場はその日の参加者が30-40と少ないので変動が大きくなってしまう。
さらにデータの公表が年1回というのはあまりに少なすぎ、少なくとも四半期に1回は公表するよう政府に要請している。

排出権取引はロンドンで2002年4月から始まり、現在は400口座がある。2005年の取引額は$10Billion、2006年は$30Billionを見込んでいる。日本でも環境省が2006年4月から開設し、現在の参加者は70社である。

排出権取引が本当に排出量を減らすことに、経済的にも効率的にも有効であるのかは疑問のあるところだ。取引は排出量削減に寄与しないという意見もある。

Carbon creditが余る人(場合)と足りない人(場合)があるから、取引が成立する。しかし市場になると実需とは関係の無い参加者が増え、実需以上の量が取引されるようになる。いい例がWTIである。但し、市場での取引量が増えるといつでも取引が出来るということとなり、それなりに利便性はあがる。このあたりは、排出権に限らずすべての市場の持つ意義ということになるのだろう。

ところでCarbon creditが余るとか足りないというのは、目標値あるいは制限値があるからだ。それがKyoto議定書になるが、途上国は参加していない。参加出来るわけが無い。これから経済発展を目指している国にとって、エネルギー需要が増すことは当たり前なわけで、先に発展をしてしまった国が一方的に途上国に対して、制限を付けることはできない。核兵器も同じような議論になる。しからば各国が好き勝手にやってよいかといえば、その先には大変な世界が見えるので何とかブレーキをかけたいのは皆同じ。総論賛成、各論反対の状態になる。

とすると、取引市場はそれなりに役割を果たすことが出来るのかもしれない、と期待をかけることも出来ようか。

コーンエタノール

2006-05-16 | バイオマス
カリフォルニア大学の研究者がScience誌に投稿した記事。
コーンからのエタノールはエネルギープラスになるが、GHGの削減効果はそれほど大きくないというもの。

これまで発表されている代表的な7つの研究を再検証した。そのうち3つはそもそもNegativeな結論であった。Coproductsを無視していたり、時代遅れのデータを利用している点などを修正すると、いずれの研究も同じ結論すなわちNetでエネルギープラスになるという。その値はエタノール1Lあたり4-9MJだそうだ。

米国でのバイオ燃料のうち99%がエタノールである。2004年には3.4Billion gallonのエタノールがガソリンにブレンドされて利用された。これは223,000BDに相当する。全ガソリンの2%(Volumeベース)、1.3%(エネルギーベース)に相当する。

Bush政権はバイオ燃料の導入を進めるべく二つの政策を実施している。一つはガロン当り$0.51のTax creditであり、もう一つはEPACT2005(Energy Policy act)で2012年までにバイオエタノールを7.5Billion gallonまで増産するというものである。

この研究ではコーンエタノール1MJを製造するのに必要な石油はわずかに0.1MJであり、石油を95%削減していることに匹敵するが、GHG削減効果は13%とmoderateだとしている。moderateという語感をどうとるかによるが、13%は非常に大きな数値といえる。また、エタノールを作るのにエネルギーで10%の石油しかし要しないのは驚きである。副産物の利用(エタノールを作るプラントの燃料)を最大限に見ているのであろう。

エタノールの熱量は23.5MJである。エネルギープラスが9MJ/Lであることから14.5MJは生産・製造過程で使われていることになる。しかし、エタノールを作るには10%の石油でよいという記述からは、2.3MJが生産・製造過程で使用されることとなり、14.5MJと一致しない。どこか、読み落としている部分がありそう。

いずれにせよ、バイオ燃料は環境にとっても、エネルギー安全保障にとってもプラスに作用するという結論が固まりつつある。

シェルカナダのオイルサンドオペレーター買収

2006-05-15 | 石油
シェルカナダがオイルサンドオペレーターのBlackRock Venture社を買収する。買収額は2.4Bカナダドル。一株当り24ドル(市場価格は18.88ドル)となり、27%のプレミアがついていることになる。
この買収によりシェルカナダは14,000BDのSSBを増産させることとなる。

BlackRock Venture社は7年前に設立された会社でPeace River、Cold LakeとLloydminster地区での生産をしている。今後5年間でSeal地区での開発とHilda LakeでのSAGDプロジェクトを進める。SAGDはSteam Associated Gravimetric Drainageの略で、地中にスチームを注入してBitumenを軟化させて回収井戸で回収する方法で、オイルサンドを掘ってBitumenを抽出する方法に比べて安上がりな方法である。前者はIn situ法、後者はSurface mineとも呼ばれる。

原油価格の上昇に後押しされてオイルサンドの開発は活況である。3月にはアルバータ政府が日本でオイルサンド開発への参画を募る講演会を実施している。アルバータ州にはPeace River, Athabasca, Cold Lakeという3つのエリアがあるが、合計で14mヘクタールに上る。このうち開発されているのは3.5mヘクタール、25%に過ぎず、まだまだ開発の余地がある。

オイルサンドから生産されるBitumenは超重質油なので、Upgradingが必要である。コーキングとハイドロクラッキングを組み合わせて、軽質化と脱硫がなされる。アルバータのオイルサンド埋蔵量はサウジの原油についで世界第2位(イラクの埋蔵量よりも多い)と見られており、カナダという地政学的リスクの全く無いところで開発できることは、非常に有利なところであろう。

地球温暖化の事実

2006-05-09 | 環境
ホワイトハウスは地球温暖化に関する研究結果を公表した。全文はclimatescience.govにて読めるらしい。その結論はこうだ。地表の温度は間違いなく温暖化が進んでおり、気候変動に対して間違いなく人間が影響を与えているという確かな証拠がある。

これはホワイトハウスがClimete change science programとして取り組む21の研究の最初のひとつの結論だ。
これまで10年以上にわたって、地表の温度上昇と上空(対流圏)の温度上昇のスピードが異なっているという議論が続いていた。研究者はそれぞれ異なった方法により気温変化を測定していることが、矛盾する結果を生む一因ではあろう。このような事情からBush政権は、温暖化ガスの蓄積が本当に気温上昇をもたらしているのかどうかを、科学的に検証することを優先させてきた。

今回の調査で、地表の気温上昇と上空の温度上昇に矛盾は無いという結論が出された。さらに、過去50年間の平均気温の上昇の唯一の原因は温暖化ガスの蓄積であり、それは主として石炭・石油の燃焼によるものと説明できるとしている。

しかしながら、現在のコンピューターシミュレーションでは地球の平均気温の上昇はうまく説明できるもの、熱帯地方では結果が大きく外れるなどの不備な点もある。従った引き続き調査研究を継続するとしている。なんといっても今回の研究は21あるうちの一つにしか過ぎないので。

どのような地球温暖化のモデルが確立できたとしても、今後十年、二十年で温暖化をとめることは不可能である。もちろん、温暖化ガスを排出しないエネルギー源を探すことは必要であるが、温暖化に適応するすべも同時に探す必要がある、と指摘する科学者もいる。

とはいえ、温暖化の因果関係の一端は明らかになったのだからBush政権もCO2削減に向けて思い腰を上げざるを得なかった(一般教書演説で)わけである。