化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

エネルギー作物の経済性

2006-02-23 | バイオマス
少し前のTV番組でサトウキビから自動車燃料(エタノール)を作る開発のレポをやっていました。いわゆるE3ガソリンというやつです。
サトウキビからエタノールを作る技術もさることながら、サトウキビの収穫量を上げることもエネルギー作物としては最も重要なことです。

アメリカではエネルギー作物を作ることが本当にエネルギープラスに働いているのか、という議論があります。一応、プラスですよという結論になっているようですが、その効率には検討の余地があるのでしょう。

一方、経済性という点からはまだまだ改良の余地はあるのでしょう。先日、新聞で砂糖農家を保護するための交付金制度が650億円の累積赤字を抱えており、農水省は価格保証制度の廃止や交付金の上限額設定の検討をしているとありました。

砂糖をめぐるお金の流れを少々、整理してみました。
スーパーなどでわれわれが買っている砂糖の価格は180円/kgです。トンでは180,000円/tonです。統計では市中価格というものがあり、これは卸値あるいは工場出荷価格に相当するのでしょうが、135.5円/kg=135,500円/tonです。てんさいの買い上げ価格は16,760円/ton@糖度16.7%だそうですから、糖に換算すると100,359円/tonになります。砂糖会社は約10万円で原料を買って、砂糖を13万5千円で売っていることになりますが、これでは利ざやが少なすぎます。ここに交付金があり、砂糖会社に対して80,412円/tonが農畜産業振興機構から支払われています。

結局、砂糖会社は交付金を除いて考えると農家から19,947円/ton-糖で原料を購入し、砂糖を135,500円/tonで出荷しているわけです。一方、農家はてんさい1トンあたりで3,331円を砂糖会社から受け取り、13,429円を交付金で受け取っていることになります。実に補助金率400%です。

一方、この交付金はどこから持ってくるかといえば、主なものは砂糖会社が粗糖を輸入した時に調整金として先の農畜産業振興機構に支払います。輸入品に関してお金を払うのですから、一種の関税なのでしょうが、書類上は輸入した粗糖を30,420円/tonで農畜産業振興機構に一旦売り、68,283円/tonで買い戻すという方法をとるようです。実質、37,863円/tonの関税を払っているようなものです。

この調整金と交付金は年度年度で変わるようです。業界では砂糖年度というものがあり、10月-9月です。先にあげたのは農畜産業振興機構のHPの統計のH16の数値を参考にしています。ざっくり言って、輸入トン4万円弱のお金を集めて、国産トン8万円を配っているのですから、輸入トンと国産トンのバランス2:1が崩れると成り立たなくなります。近年はこのバランスが崩れてきて、交付金の累積赤字が進んできたわけです。

さてここで問題です。エネルギーの値段は食料に比べて安いのが一般です。ガソリン1Lは牛乳やミネラルウォーターよりも安いですね。砂糖原料をつくために400%の交付金を出しているわけですから、この交付金がなくなった状態でエネルギー作物として売れるでしょうか?すぐには難しそうです。CO2税から交付金を出すような方策を考える必要があります。経済性については大いに検討しなければいけないということでしょう。しかし、技術的に効率的に成立することを確認・実証することが先決であることは変わりがありません。

ナイジェリアで武装集団が石油施設破壊

2006-02-22 | 石油
トリノオリンピックの話題といえばなんと言っても女子カーリングチームの検討でしょう。北海道出身の「チーム青森」の彼女たちの頑張りによりカーリングというマイナーな競技の面白さが十分にTVを通じて伝わってきた。ついテレビに見入って力が入ったのは小生だけではないでしょう。実に奥の深い競技だと言う事がわかりました。
それから女子ホッケーのチームCanadaはやっぱり強かった。スピード、パワー、テクニックとも群を抜いていたと感じます。それに比べると男子の方のチームCanadaはもう一つです。これからエンジンがかかってくるのでしょうか。

このような平和な時間にあって、アフリカのナイジェリアでは武装集団が石油施設、パイプラインの爆破やターミナルへの攻撃を仕掛け、ターミナルは機能停止している。同国の主オペレーション会社であるシェルはforce majeureを宣言している。同国では昨年から地元武装勢力と政府軍との衝突が相次いでいたが、石油施設就労者が軍に誘拐されたことで、20日の大きな攻撃につながっている。シェルによれば同国の生産能力250万BDのうち45.5万BDが休止している。今後も10から20%程度の生産ダウンは避けられないようだ。

先週来、60ドルを下回ってきた原油価格はこの事件で北海Brentが61.46$/bblに上昇している。21日のWTIは62.45まで上昇している。

ナイジェリアの原油の半分は米国に輸出されている。米国の原油輸入先はメキシコ、ベネズエラ、カナダ、サウジアラビアの次にナイジェリアとなっている。ナイジェリアの原油は中東原油と比較すると軽質で不純物が少ない、いわゆるlight sweet crudeですからアメリカにとっては重要な産油国の一つです。地球の反対側の小さな事件が、世界の原油市況を動かす典型的な例です。

カリフォルニアで水素発電所の計画

2006-02-20 | 水素
BPとEdison Mission Group(電力会社)が水素を燃料に50万kWのガスタービン発電所をカリフォルニアに建設すると発表した。投資額は1b$です。

水素はどこから調達するかといえば石油コークスのガス化による。石油コークスはBPのCarson製油所で年産120万トン生産されているので、それを含めて近隣の製油所から集める予定だ。石油コークスは石油系残油(アスファルト)を熱分解して作られる。というわけで水素の大元は石油になります。ガス化した際の副生CO2を分離して、油井に圧入することでCO2を永久的に地中に閉じ込めると同時に、油井の圧力が上がるので、原油生産量が上がるという効果を狙っています。油井の候補としてはOccidenntal Petroleumがあがっている。

水素で発電という題目ですが、むしろ分離したCO2を如何に地下貯蔵(それも半永久的に)ということがこのPJのポイントと思われる。

このプロジェクトにより建設時の雇用1000人と運転のための永久雇用150人が新たに生まれる。2006年に技術と経済性のFS調査、2008年に投資を決定して、2011年には完成・運転の計画です。

このPJは石油コークス->ガス化->H2/CO2分離->ガスタービン発電です。
最終的に電力を得るわけですから、既存技術で言えば
(1)石油コークス->コークスボイラー・発電->CO2分離
(2)石油コークス->ガス化->ガスタービン発電->CO2分離
などと競合します。(1)は石油コークスを石炭に置き換えてもよいので、いわゆる石炭火力発電所になります。(2)はイーグルプロジェクトとして日本国内でも取り組まれています。
技術的にはH2/CO2ガスの分離と燃焼ガスからのCO2分離はどちらがよいでしょうか、という比較のPJと思われる。

一見して分かるとおり、(1)に比べて経済性がおとる。そこでBPのプロジェクトは新しいガス化技術として連邦政府より、州の電力供給安定化への寄与、の二つの面からIncentive(日本流に言えば補助金)を与えられるようだ。

高圧水素製造・出荷研究設備

2006-02-17 | 水素
PEC(石油産業活性化センター)のプレスリリースによれば、経産省の委託事業の一環として、出光・愛知製油所内に水素燃料電池車用高純度高圧水素の製造・出荷設備を完成させた。

製油所で製造・副生する水素をPSAにより99.99%以上の純度にし、圧縮機により40MPaまで昇圧する。PSA・コンプレッサーの能力は50Nm3/Hrである。この高圧水素を40MPa鋼製容器および35MPa軽量CFPR容器からなる移動式水素ステーションにより名古屋市北区で燃料電池自動車に供給する。また、豊田市のアポロホームガス中部社内に設置した純水素型燃料電池に水素供給する。

製油所内には脱硫や水素化に使用するための水素を製造する大型装置がある。これの余力を使って、製油所外に販売する水素を製造することが可能である。また、ガソリン基材を製造する接触改質装置(リフォーマーとかパフォーマーと呼ばれる)からは脱水素により水素が副生する。通常はこの副生水素は製油所内の水素として利用されるが、外部に販売することも可能である。

しかし、いずれも製油所で出来るということはその原料は石油成分です。水素ガスの貯蔵・輸送を考えた時、もとの石油成分のまま運搬し利用先で水素製造するほうが効率はよいと考えられる。いわゆるオンサイト利用です。オフサイト水素供給が勝ると考えられるのは、製油所の大型装置で水素を大量に作る方が、経済的には安上がりな点です。

研究開発の一環として、どれくらいの効率になるか、経済性を含めて実証規模で確認するという意義はある。

風力発電

2006-02-15 | 再生可能E
トリノオリンピックの選手はがんばっているのだろうが、あまりにマスコミが事前に騒ぎすぎたのでメダルゼロに、マスコミ報道もどーんダウンしている。日本だけでなく、世界の一流選手の活躍を解説して欲しいもんだ。

それにしてもJR北海道はダルビッシュなんぞをポスターに起用せずに、自社のクロカン女子選手を起用すればいいのにと思うのは小生だけでしょうか!

さて米大統領の演説が風力発電を後押しているようだ。

全然関係ないが日本語では風力発電や太陽光発電を含めて自然エネルギーという言い方をするが、英語ではrenewable energyという。自然という言葉からはRenewableという単語は想像できない。Renewableの日本語訳は再生可能ということになる。英語の言い方はEnergyに主体があり、それがどういう類のEnergyかという観点からバイオマスから得るものも含めてRenewableと表現するのだろう。日本語の自然エネルギーといったとき、バイオマスから得る例えばエタノールなどは想像できない。バイオマスを意識した時に再生可能という表現が生きてくるのだろう。

GE社は風車製造会社の一つであるが、エネルギーファイナンス部門も持ちalternative energyに積極的に事業を展開している。この部門は6.3b$の売り上げだそうだが、今後とも伸びが期待でき5年以内には10b$を超えると期待している。この中には4年前にあのエンロン社から買収した風力部門も含まれている。
装置を作っているといろいろな情報がキャッチできFinance事業とは相乗効果があるそうである。

JPモルガンチェースは風力発電分野に250m$の投資をしている。
NPO法人の調査では昨年はrenewable energyプロジェクトに投資に全米で7b$の投資がなされており、今後とも25%の伸びを示すとのことである。中でも風力発電が最も信頼性があり、効率も向上しているとしている。太陽光は慢性的なシリコンの不足により伸びが抑えられ、下水汚泥等のメタン発酵にWall street moneyは興味がないようである。
これに対して、大統領演説で名前が挙がったバイオエタノールには興味がもたれるだろう。

そういえば昨日のTV東京の番組でサトウキビからエタノールを製造するプロジェクトをやっていた。E3ガソリンの給油機にはビール会社のロゴが大きく入っており、ビールが出てくるのかと勘違いしそうであった。

科学雑誌 編集者の意見

2006-02-13 | 社会
韓国の人クローン細胞製造に関する偽の発表に関連して、NatureやScienceといった科学雑誌の編集者(Reporter)の意見がNew York Timesに載っていました。
日本でもつい先日、東大のRNA研究に関して研究結果の追試が出来ないという大学当局の発表があったばかりである。

まー、いつの時代にも大発見をしたといって吹聴する科学者(その時点でもはや科学者とは呼べませんが)というものはいました。今に始まったことではありません。これらの事件は、先端の生命科学に関することだったため、韓国の研究はScience誌に、東大の研究はNature誌という世界的に権威ある科学雑誌に乗ったことから、反響を呼び、それがウソと分かったため逆に反響も大きかった。

科学雑誌の編集者は記事を同僚にチェックしてもらったり、専門家に意見を聞いたりして信憑性をチェックはするが、記事の真偽を保証するものではない、ということのようです。そりゃそうだ、科学雑誌の記者さんはいろんな分野を扱っているのだから、そのすべてについて専門的な知識や判断が出来るわけじゃありませんもんね。

新聞などに載っている科学記事、技術記事で自分の専門領域に関するものを読むといつも思うのは、記事にはウソが多いなということです。裏返せば、自分の専門ではない経済記事などにも同じように専門家が見れば、ウソと思えることが書いてあるんだろうな、ということです。

韓国の例では国を挙げて某博士の研究をバックアップしているので、もはや出来ないなどということは許されず、出来ましたと発表してしまった。某博士に同情する余地もあるのかなあ。いやいやそうやって国の予算をほしいままにもらっていたのだから、他の研究者から見ればなんら同情の余地などないでしょう。

東大の例では、発表された実験結果の再実験を例の助手と外部機関が行ったところ、例の助手は発表と同じ結果が出たが、外部機関では異なる結果が出たとのこと。教授は「10年来信頼してきたが、ここ数日のやり取りで助手を疑わざるを得ない」と、疑惑を否定できない可能性もあると認めたそうだ。なんだそりゃ。10年来の信頼がたった数日で壊れるのかい。10年間も私の目は節穴でしたといっているようなもんだろうと思うのは小生だけでしょうか?
全く、何とかの巨塔を見ているようです。

大学の役目は何でしょうか?確かに、大学病院は病気を治すところですが、その大前提として優秀な医者を育てることがあるでしょう。一般学部でも世界的な研究成果を上げるために、タダで学生をこき使って研究をすればいいのではなく、いっぱしの科学者や技術屋を教育することがその目的です。大学のプロダクツは卒業生のはずです。研究ならば国の研究所に任せておけばいい。第一線で活躍するためには、最新の技術や研究に触れておく必要があるので、大学では最新の研究を教育の題材としてやっているのでしょうが。研究を進めるための考え方を身に着けるために、研究をやっているのでしょう。目的と手段を逆にしてもらっては困る。したがって、教育という観点から言えば、データ偽造なんて問題外です。データの解釈の仕方に随分と屁理屈をつけるというか、結論が飛びすぎている、例えば少ない実験例ですべてのケースに当てはまるような結論を出す、たまにそんな間違いを犯すこともあるでしょう。しかし、偽造となるとなんとかエモンと同じことですよ。

こういう言い方をすると、大学は職業訓練所ではないとかの反論があります。職業訓練所を馬鹿にしないで欲しいといいたい。大学と職業訓練所は機能としては同じでしょう。ただ、通ってくる人が違う(年齢とか、もろもろ)、身に着けようとしている技術の種類が違う、のでおのずと大学と訓練所の有り様は違ってくるが、求められている機能は同じはずです。小生は研究に対する姿勢や物事の考え方を教えてくれる大学教授も如何に精度良く旋盤加工をするかを教えてくれる訓練所の教官も同じように尊敬しています。いずれもその道のプロというか、匠ですからね。
こういう方々はフィロソフィーも持っていますし。

バイオエタノールのエネルギーバランス

2006-02-07 | バイオマス
ブッシュ大統領の一般教書演説の中でもRenewable Energyとしてのバイオエタノールが言及されている。畑からガソリンの代わりになる燃料、それも液体燃料を作ることが出来る技術なので、大いに注目されている。しかし、そのエネルギーバランスはどうだろうか。

New York Times(Web版)の記事には、コーンからエタノールを製造する段階で5分の2のガソリンが使われているという。実際にエタノールプラントで使用される燃料はガソリンではなくて、天然ガスですが。しかも、この数値にはコーンの栽培や収穫にかかわる機械の燃料などはカウントされていない。エネルギーバランスという観点からは更なる技術開発が必要である。

今年全米で生産されるエタノールは5000億ガロンで全ガソリン消費量の3%に相当する。これをさらに増やすためにも、エネルギー効率というかエネルギーバランスの向上が期待されるわけである。

その一つの方法として、コーンの茎なども一緒に収穫してそれをガス化して天然ガスの代わりに利用する方法や、エタノールプラントに隣接して牛(cow)をかって、糞尿からメタン発酵によりメタンを得る方法が紹介されている。
Frontline Bioenergy社がパイロットプラントの運転をしている。

それにしてもある程度の量をバイオエネルギーにも期待したい。

The Next Four

2006-02-06 | 社会
The Next Fourという表現がある。The Big Twoといえば、アメリカ自動車業界のGMとFordを表す。それに対応させて、Crysler, Toyota, Honda, Nissanの4社を”The Next Four"と呼んでいる。しかし、2006年にはToyotaがGMを抜いて自動車生産台数世界一になるのは確実なので、Nextという表現はもはやToyotaには当てはまらないだろう。

新聞記事の趣旨はThink smallというどこかのPCメーカー、おっとすでにPC部門は中国に売ってしまっている、のキャッチフレーズにあったような気がする。大きな車ばかり作っていないで、小さな車を作らないとだめということのようである。
また、製品だけでなく経営の考え方を小さくすることにも言及している。Large-company-mind-setから抜け出さねばいけませんということです。

ミシガン州Dundeeに昨年803Million$で小型エンジン工場が出来ており、年産84万台の能力である。ここはCrysler,Mitsubishi,Hyundaiが合弁で建てた工場で、3社でシェアすることで経済的な合理性を出そうというものである。ここでは250人の時間工が働いているが、同じCryslerのデトロイトの工場では750人で年産35万台しか出来ないそうである。さらに、大型エンジン工場になると2500人の時間工が必要になるとのこと。少人数の秘密はEveryone learns every jobsという多能工化にあるようだ。この辺りはToyotaを初めとする日本の工場のお得意領域である。

やっぱり、製造業というのは、製造業に限らないでしょうが、人が大事ということです。

一般教書演説

2006-02-03 | エネルギー
日本の新聞にもブッシュ大統領の一般教書演説に関する記事がいくつか載っています。エネルギーについても言及しているということなので、HPから原文を読んでみました。

テキスト印刷して6ページになりましたが、その半分のほぼ3ページ分をテロとの戦争のことで費やしています。文中にはやたらとfreedomとdemocraticという単語が出てきます。いまさらながら、9.11の影響というのはすごいものだと思わずに入られません。後世からブッシュは9.11大統領と呼ばれるかも。

次の2ページで具体的政策に言及しています。Keeping America competitiveという書き出しのパラグラフが6つあります。内容は、市場開放、移民、社会保険・医療保険、エネルギー、教育に関するものです。教育に関しては具体的に数学と理科の能力を引き上げて、ナノテク、スーパーコンピューター、代替エネルギー源などの技術開発を進めようといっています。3万人の数学と科学のプロフェッショナルが高校の授業で数学と科学を教えるようにするといっています。教育を大事にすることは洋の東西を問わず重要です。しかるに昨今の日本の大学は、。。。これについては後日に。

最後の1ページはA hopeful societyという書き出しで社会正義や倫理的な事項となっています。

さて、本題のエネルギー問題に関してですがAdavanced Energy Initiativeと称して、DOEを通じてclean-energy研究の予算を22%増額するといいます。具体的には、zero-emission石炭火力発電所、革新的太陽光・風力技術、クリーンで安全な核利用をあげています。

一方、自動車関連研究にも言及し、ハイブリッドや電気自動車用のバッテリー、水素自動車(燃料電池自動車に限らない)やバイオエタノール(コーンからのみでなく、木質チップ・枝、草からも)を具体的にあげています。バイオエタノールは6年以内に実用性も経済性も達成するとしています。

自動車だけを具体的に上げているのは「もうGMやFordには任せておけない。日本の会社に勝つには国家PJとして遂行する」という意味と思われます。

これらを通じで中東からの原油の輸入の75%を削減するという壮大な計画となっています。中東依存から脱却し、石油依存から脱却して環境を改善するとしています。

これに対してIPAA(Independent Petroleum Association of America)とNPRA(National Petrochemical & Refiners Association)の会長がそれぞれ声明を出しています。代替エネルギーの研究には是非力を入れて欲しいが、現在全エネルギーの65%を石油に依存しているのだから、国内の石油・ガス資源開発にも力を入れて欲しいといっています。また、石油・ガス製品の価格統制や管理体制を敷いたり、懲罰的手段を講じることのないようにして欲しいと要望も忘れていません。懲罰的手段とは、議会の一部から「石油会社は今年は棚ボタ的に儲けているのだから、特別に税金を沢山取れ」という声をけん制してのことです。

原文を読むことで日本の新聞で書いてある内容は同じでもそのニュアンスの違いが少し分かったような気がします。

フォードのE85ハイブリッド車

2006-02-01 | バイオマス
フォードは小型SUVのEscape HybridにE85仕様車を開発した。

E85はバイオマスから製造されるエタノール(renewable)を最大85%含有するガソリンである。むしろガソリンの方が少ないのだから、言い方としてはガソリンを15%含むエタノール燃料といった方が分かりやすい。
もし、全米の5%の車でE85 Hybridが採用されれば年間1億4000万BBL(38万BD相当)の石油輸入が節約できる計算になる。

このE85仕様Hybridは通常のガソリンHybridに比べて25%のCO2削減となる。ガソリンHybridの燃費は36mile/gallonだが通常ガソリン仕様車に比べてどれくらいCO2削減となるのかは不明。全米では10%以下のエタノール入りガソリンはそこここで販売されているが、E85は中西部で販売されている。
(参考)エタノール 5,597kcal/L  ガソリン8,266kcal/L

このE85 Hybridはアメリカの石油輸入依存度を下げることに貢献するとともに温暖化ガスの排出削減にも寄与するというものである。また、エタノールはコーンや砂糖ビートから生産されるので、アメリカの農業経済を支える役目と石油輸入金抑制の双方に寄与するものと考えられる。

バイオエタノールの経済性について、日本とアメリカでは農業の経済基盤が異なるので、一概に判断できないが、普通に考えるととてもバイオエタノールがガソリンに勝てるとは思えない。自分でも検討して見ようと思う。