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低油価と環境問題に直面しているカナダのオイルサンド産業

2020-04-15 | 石油
原油価格は3月末に過去20年間の最低レベルとなってから、少し持ち直しているものの低いままです。あまり注目されてませんが、世界第5位の産油国であるカナダの原油価格下落(WTIとの値差)は止まりません。

原油の価格はまず原油性状によって決まります。硫黄分が低い方が高い原油よりも高い、軽質な原油の方が重質のものよりも高いという具合です。
ところが、2017年以降は、軽質のWTIの方がより重質なドバイ原油よりも安くなっています。当たり前ですが原油価格がその性状だけでなく、需給の状況によっても影響されるからです。WTIの場合、2017年以降アメリカのシェールオイル生産量増加並びにカナダのオイルサンド生産量増加により、北米地域での原油需給が緩んだためと言われています。

カナダのオイルサンド由来の原油には合成原油(Synthetic Crude Oil)と希釈ビチューメン(Western Canada Select)の二種類があります。WCSの方がより重質(API≒20)で高硫黄(3.7%)なので、SCO(API≒40、硫黄0.4%)よりも安値となっています。更にオイルサンド由来の原油はWTIに比べて相当安くなってます。


カナダの原油生産量はざっくり500万BDで、そのうちオイルサンドは300万BDあります。カナダ国内の原油需要は150万BDですから、大部分は輸出されます。カナダの産油地域はアメリカの製油所が集中しているガルフ地区からは遠く、輸出のためにはロッキー山脈を越えてカナダ西海岸まで輸送する必要があります。ところがこれらに使うパイプライン能力が不足していて、鉄道貨車で運ぶ必要があります。つまりカナダの原油は販売地域が限定されていて、地域外の製油所からは安くないと買わない、と言われているわけです。

現在のカナダの原油生産量は90万BD減少しているようですが、原油貯蔵タンクが満杯になるにつれて150万BDまで減少が大きくなるとみられています。最大の理由はCovid-19による石油製品消費の減少です。外出禁止により自動車用ガソリンの消費はなくなり、飛行機が飛ばなくなったことでジェット燃料の消費もなくなっていることから、容易に想像できます。

オイルサンドは生産コストが高いことに加えて、CO2排出量も多いことから地球温暖化の観点からも敬遠されるようになってきています。採掘されたオイルサンドは油分と砂の分離に温水を使っており、このため大量のエネルギーを必要とします。
日立総合計画研究所の試算ではオイルサンド由来の原油生産では、通常の石油生産のおよそ3倍のCO2排出量になるそうです。

オイルサンドはカナダという治安のよい国にある資源で、その量はサウジアラビアの原油量を凌ぐと言われています。低価格とCO2排出量の低減という二つの大きな課題を抱えているオイルサンドを、うまく利用する方法を開発する事が望まれます。



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