原作名:マブラブオルタネイティブ
作者:山崎ヨシマサ
終更新日:2011年7月9日
評価:A
サイト:Arcadia
http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=muv-luv&all=4039&n
[あらすじ]
日本帝国招致による『オルタネイティブⅥ』。これは、因果導体の白銀武と、社霞のリーディング能力を用いて、どこかの平行世界へ救難信号を送るという、それこそ藁どころか空を掴む計画。
しかし救難の願いは、意外な存在に感知される事になる。
次元と時間を越えたどこか。死闘の末、サイケル・エフェスを打倒したα-チームの機体の一機、イデオンが不可解な行動を起こす。
イデオンから迸る白光に包まれた空間で受信する救難信号。助けを求める者あれば、躊躇わずに手を差し出す。それがα-チーム。
かくして、BETAとの戦いに勝機を見出せなくなった地球に、かの勇者達が舞い降りる。
[文章]
三人称。ギャグありシリアスありと、緩急の付け方が上手く、読んでいて飽きない。更新がないので、つい最初から読み返してしまう。気にならない程度に誤字脱字。
[総評]
『スーパーロボット大戦α』シリーズのα-チームが対BETA戦争に参戦。
どう考えても戦力過剰なα-チームの介入に、速効でBETAの終了を予想されるのだが、そう上手く事が運ばないのは世の常。最終決戦直後の転移のため、機体のほとんどが修理とメンテが必要な状態。加えてイデオンやライディーンなど、独自の意思を持つ機体はなぜか不稼働に。ストーリーが進むにつれ戦力が充実していく展開は、正にスパロボの王道。
問題は戦力だけでない。
地球側の技術と常識の格差の壁は大きな障害。恒星間航行や時間移動、謎な構造化学に謎なエネルギー、物理学に喧嘩を売る謎な物理法則、異星人にコロニー生まれにサイボーグにクローンにコーディネーターにニュータイプに超能力者に勇者、合体・変形する機体や曲がるビーム、気合で威力の変わる武器に必殺技が標準のα-チームの面々に、地球側の専門家は真っ白に燃え尽きた灰状態。夕呼先生のSAN値はカンナで削られるが如く。
各国首脳部の動向も気になる所。α-チームは過去、政治家連中に振り回され、時には命令違反や脱走をしてきた栄えある愚連隊。魑魅魍魎蠢く地球の政治と、どこまで歩調を合わせられるものやら。
戦場だけでなく、夕呼先生とのやり取りや政治の裏側の話にもにやにやできる。
一作で二度も三度もおいしいだけに、作者氏の早い復帰を待ち続けている秀作。
原作名:オリジナル
作者:Rail
終更新日:2011年12月6日
評価:C
サイト:小説家になろう コノ杯ヲ受ケテクレ
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[あらすじ]
奴隷として売られ、ぶくぶくと太った醜い男の前に引きずり出されたエルフの少女。一見して悪党と知れるこの醜男が主人と知り、これから降りかかる災厄に、身体が震えるのは止められない。
「まずは風呂。それから着飾って、歓迎の宴を始めよう」
不吉な事をのたまうのは、主人の腹心の部下であろうエルフ。
その宣告の通り、風呂で身体を満遍なく洗われ、綺麗なドレスで飾り立てられた彼女は、宴の開かれる大広間へ連れて行かれる。
彼女の運命やいかに。
[文章]
三人称。各話の文章量が少なめで、一部描写不足を感じる場面がある。
安定して読み易い。A面とB面で、奴隷と主人の側の別の物語となっているのが印象的。
[総評]
見るからに悪党面で醜悪な男に購入され、暗澹たる将来に絶望する奴隷の少女。しかし男は意外にも気立ての良い善人で……。
何となくシチュエーションが『美女と野獣』に似ているが、この手のギャップを活かした組み合わせは珍しくないだろう。
主人で地方領主の醜男グレンは、現代日本で過労死した中間管理職の記憶持ち。そして地方とは、内政に関しては自分の意向が100%発揮できる一国一城の主な立場。では現代知識を活かして、と思いきや、醜悪な容姿ゆえ家臣が居着いてくれない問題が。
そこで一考。
奴隷は持ち主の財産の一部であり、技術を仕込む事で付加価値を上げられる。これは企業のOJTやOffJTと同等である。そして身に着けた技術を、新しい職場へ持ち出される事もない。奴隷とは、正に終身雇用と一緒だ。
いや、その理屈はおかしい。……と言う当然のツッコミは、ここでは不要。
それならば、前世では叶えられなかった福利厚生をここで実現しよう、と一念発起。早速、奴隷の購入に乗り出し。
A面で奴隷サイド、B面でグレンサイドと書き分けてあり、その落差にも読んでいてにやにやできる。
物語はまだまだ序盤。これから物語がどう転がるのか、先を期待している作品。
原作名:機動戦士ガンダムSEED Destiny
作者:kuboっち
終更新日:2011年11月11日 2012年8月28日
評価:C
サイト:Arcadia
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[あらすじ]
先の戦争から2年。
アーモリーワンで慰安コンサートの準備中、突然に起きた爆発と、強奪され暴れ出す3機の新型MS。降り注ぐ瓦礫と流れ弾に、傷つき倒れるスタッフとザフト軍人たち。
動けるのは、コンサートの飾りに置いてあるピンクのザク1機。武装は儀礼用の剣。
「ピンクちゃん、いきま~す!」
元気良くザクを駆り立てるパイロットは、機体と同じくピンク色の髪をした少女だった。
[文章]
キャラ視点移動の一人称。たまに三人称。流れ的に、シンとミーアの視点が交互に入れ替わる書き方で十分だと思った。
[総評]
タイトルから察すれるように、偽ラクスことミーア・キャンベルが主人公の種死再構成物。
しかしこのミーア、歌手志望が挫折、半ばやけになってモビルスーツパイロットになり、それにも挫折してギルバートに見出され、ラクスの偽物になったと言う、実に癖のある経歴の持ち主。
当然、実力は初陣のシンやルナマリアの比でなく、苦戦するエクステンデッドとも対等以上に渡り合い、ギルバートに食ってかかるカガリを「政治家の理想論」と切って捨てるなど気風も良い。その愛機はピンクのザク、ピンク・ザ・スラッシュ。
お陰で間近で見ていたシンは、「あの背中に着いて逝きたい(誤字にあらず)」と一発で心酔。原作になかった追うべき『先達』が、今後の成長にどう影響するか期待大。
対する本物のラクスは、理想を唱えて歌うだけのお嬢様ではない。裏の裏に精通し、正にラスボスの余裕と貫録を持つ怖い人。ギルバートが木っ端役人か小ボスに見えてしまう不思議。
グラヴィス艦長の胃が心配になる波乱の元を乗せて、ミネルバは今日も戦場へ。
次の展開に期待。
原作名:機動戦士ガンダム
作者:koshi
終更新日:2011年10月23日
評価:B
サイト:Arcadia
http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=12088&n
[あらすじ]
時は宇宙世紀。
地球連邦軍で『野獣』の異名を馳せた男の悪運も果て、とうとう命尽きたかと思いきや、突然現れた『神』。なかなか愉快な生涯だったので、転生させてやろう、と。
願ったのは、美少女な身体に金と権力。
そして新たな母の死後に現れたのは、顔に傷のある二メートル以上の大男。ドズル・ザビ。何と転生先の肉体はザビ家ゆかり。しかも時は遡り一年戦争前。
かくして、かつて連邦軍で悪名を轟かせた野獣は、ザビ家の一人として世に放たれたのだった。
[文章]
最初は主人公視点の一人称だったのが、途中から三人称で固定。戦記物とはいかないまでも、登場人物が多く舞台移動も多い場合は、やはり三人称が読み易い。
[総評]
神様転生、TS、逆行物。
主人公の選択で吹いた。ZZの時には酸素欠乏症の影響か、愉快な性格になっていたけれど、Z時点でのあの情け容赦のなさは、レイズナーのゴステロに次いで敵役の鑑だと思う。三位は大きく引き離されてマクロスの『味方殺し』。
そんな人物が主役。期待せざるを得ない。
そして期待を裏切らずに暴れてくれる。過労で倒れたガルマには上司の心得を叩き込み、シミュレーションではシャアをあしらって喝を入れ、暴動のどさくさでガンタンクもどきを強奪し、護衛のランバ・ラルを振り回す。
そのお陰で、歴史は予想外の方向へと。
親の七光と陰口を叩かれ、功を焦っていたガルマ坊やは、ここでは広い視野と戦略眼と余裕を備えた頼もしい指揮官。偽りの親友気取りだったシャアも、後ろから撃ち殺す仇としてではなく、正面から挑むべきとライバル意識がむくむく。
勿論、好き勝手に暴れまくっていた主人公の功績は、ジオン国民の注目の的。MSのパーソナルカラーは、見るも眩しい『ピンク』。
ザビ家に放たれた野獣は、気に入らなければ上司でも殺す危険人物。あれ、この一族とは相性良さそうじゃないか。
我を貫く野獣の次の行動に期待しつつ、更新を待つ作品。
原作名:ゼロの使い魔
作者:灰色
終更新日:2011年11月6日 2012年11月4日
評価:B
サイト:Arcadia
http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=7277&n
[あらすじ]
アメリカに観光旅行中、突然現れた謎の巨大爬虫類に食い殺されてしまった武器オタクの大学生。神様による転生もなく得た次の生は、ゼロ魔世界のラ・ロッタ家の十二女ケティ。
このラ・ロッタ領、ヒト並の知性を持つ巨大スズメバチが制空権を握る陸の孤島で、外部からは魔境認定されている危険地帯。そんな風評に反して、ラ・ロッタ領の住人は領主一族も領民もおおらか。と言うか天然?
そんな一族の血を引く主人公は、火のトライアングルと優秀。性格は武器オタクなパイロマニアで策謀家。ただし肝心の詰めで一本抜けるのがデフォ。
頼もしくもドジ属性の付いた主人公が、原作キャラを支援したりされたり、知らずに撒いた種が勝手に育って足元をすくわれたり。そんな物語。
[文章]
主人公視点一人称。主人公不在の時は三人称と、場面展開に無理がなくて読み易い。
各話の文章量もそれなりにあり、読み応えもある。
[総評]
シリアス少なめの微ギャグ物。
主人公TS。とは言え、百合ハーレムを求める流れはなく、異性に片想いもするので、TS嫌いの人でも抵抗感は少ないと思う。主人公の語りが「~なのです」と独特で、最初のとっつき難さを克服するのが前提。
正直、何と表現すれば良いか悩む作品。
少なくともアンチではない。原作キャラとは良い友人関係だし、状況改善のための知恵を出すし、手も出す。ただ、実家の領地を豊かにしようと色々と深慮遠望した結果が、予想外の彼方から別の形で主人公に戻ってくるだけで。
内政物……と言えなくもない。主人公が幼少の頃に書いた思想書は、各国貴族の間で愛読されている模様。『場違いな工芸品』のレプリカの製造販売も行っているようだが、それでどこかの勢力が優位に立っている訳ではない。三圃作などの農業改革はない。
暗躍物? 戦記物? どちらでもない。色々と裏でこそこそしているのだけれど、暗躍に付きものの後ろ暗さはない。むしろ軽い。
『場違いな工芸品』の銃器を暖炉に飾り、それを眺めつつワインをちびちび舐めてニヤニヤするのが好きな主人公の、ゼロ魔世界での活躍の物語。