彷徨者のネット小説レビュー

ネット小説サイト「Arcadia」や「ハーメルン」をメインに、あちこちで見かけたネット小説をレビューするブログです。

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 このブログの管理人、彷徨人です。名前の通り、あちこちのサイトをさ迷っています。ネット小説に限れば『Arcadia』と『小説家になろう』がメインになります。
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Fate/sn×銀英伝クロスを考えてみた

2019-12-23 18:00:00 | Fate/stay night

原作名:Fate/stay night

作者:白詰草

最終更新日:完結済

評価:B

サイト:ハーメルン

    https://syosetu.org/novel/42788/

 

[あらすじ]

 迫る聖杯戦争に備え、サーヴァント召喚の準備に精を出す遠坂凛。しかし家探ししても目ぼしい触媒は見当たらず。やむを得ず触媒なしで召喚の儀式に臨めば、現れたのは赤い弓兵ではなく、荒事と無縁そうな現代風の英霊――ヤン・ウェンリー、クラス・アーチャー。

 自他共に認める最弱英霊こと魔術師ヤンが、第五次聖杯戦争に乱入。伝説に謳われる矢ではなく、言葉の矢を打ち続けて周囲を煙に巻いていく。今戦争の結末やいかに。

 

[文章]

 三人称。一話が大体六、七千文字、多いと一万字を超える時があるのではないかな? 満足のいく文量。たまに誤字脱字誤用があるけれど、個人的には許容範囲内。文章自体もこなれていて読みやすい。

 

[総評]

『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーがアーチャーとして参入。未来の英雄が英霊として召喚される場合もあるシステムなのだから、一千六百年後の英雄が召喚されてもおかしくない……はず。

 英霊達の服装に、時代考証を交えてヤンが色々とツッコミを入れているシーンがあるので、人によってはアンチ判定を入れるかもしれない。ギルガメッシュのあの金ぴか甲冑は『ドルアーガの塔』の影響だし、ライダーのあの服装が紀元前にあったかと問えば否になるだろうし、多分誰もしていないツッコミをあまり気にしてはいけない。

 ヤンの願いは「戦争のない平和な国を楽しみながら、歴史の英雄たちの話を聞くこと」。召喚された時点で願いの半分が叶っているし、戦う気概は皆無。

 凛もこんな弱いサーヴァントでは勝ち目がないし、死亡すれば遠坂の魔術が絶えると釘を刺されて、半ば投げやり。

 実の娘を嫁の実家に預けて夫婦で夫の故郷に帰ったところ、災害に巻き込まれて妻は死亡。夫は嫁の家に帰らずに養子を取り、自分に娘がいることも知らせず死亡。何かしら事情があったにせよ、それを知った娘が怒り狂うのは当然だろう。

 こんな感じで士郎とイリヤスフィールの仲立ちをして、御三家中二家は積極的な殺る気を削がれ、血風舞う聖杯戦争は早々に家庭ドラマの場へと変化。

 ヤンの智謀が光り、死者の出ない第五次聖杯戦争の勝者となるのは一体誰か。そんな物語。


起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない

2019-12-22 18:00:00 | その他

原作名:機動戦士ガンダム

作者:Reppu

最終更新日:2019年12月19日

評価:A

サイト:ハーメルン

    https://syosetu.org/novel/183290/

 

[あらすじ]

 連休に浮かれて酒を飲みながらガンダムを見ながら寝落ちしたら、起きた時にマ・クベになっていた。

 何がどうしてこうなった。現実逃避したくても、こちらが現実になってしまったのは変えられないようで。

 このままだとギャンに乗ってテキサスコロニーでアムロに殺されてしまう。そうでなくても、中の人が変わっていると知られたら、スパイ容疑で逮捕・銃殺もあり得る。しかも頑丈に秘匿された一室には、軍資金を横領して買い漁ったツボ、つぼ、壺。

 死亡フラグに囲まれた自称・一般人が、生き延びるために真面目に基地司令をしていく話。

 

[文章]

 マ・クベ視点の時は一人称、それ以外の視点の時は三人称の変則的な書き方。誤字脱字は少な目でさくさく読める。一話平均四千字前後。マ・クベ視点と他者視点の二つで一話なので、好みとしてはもう少しボリュームがほしい。

 

[総評]

 いわゆる原作知識を使った内政チートの系統作品。他にも二十一世紀の兵器や技術からの考察もあり、読んでいて楽しい。

 ガンダムオタクがマ・クベに憑依。散見する死亡フラグをへし折るため、ジオン勝利のため、オデッサの基地司令の仕事に励む。

 ただそれだけなのに、なぜかジオン軍は良い方向へ強化され、宇宙世紀の別作品で悲惨な扱いをされていたキャラが次々と合流。オデッサはジオン・連邦共に認める魔境へと。

 オデッサ魔境化のプロセスは読んでいて楽しいし、上司とのやり取りや部下かのやり取りも楽しい。ただし正座や土下座は止めてほしい、文化的に。

 この手の作品にありがちなマ・クベ憑依主人公スゲ~なのだけれど、上司と部下の評価が共通して「仕事はできるし能力もある。なのに目を離すと何をやらかすか分からない残念な人」なので、絶賛賞賛系は緩和されている。この手の賞賛系が苦手な人にも無理なく読めると思う。

 宇宙世紀に降臨した智謀知略の人、マ・クベ(笑)の活躍が楽しい作品。

 


ひねくれ魔法少女と英雄学校

2019-12-15 18:00:00 | その他

原作名:僕のヒーローアカデミア

作者:安達武

最終更新日:2019年10月23日

評価:A

サイト:ハーメルン

    https://syosetu.org/novel/167873/

 

[あらすじ]

 2004年3月。卒業式も終わり、四月からの高校生活を間近に控え、『白き翼』の面々で花見をしている真只中。脈絡なく唐突に現れた謎の魔法陣に巻き込まれ、どこかへと転移させられてしまった長谷川千雨。

 飛ばされた先は見覚えのない廃墟の街。そして警告もなく襲いかかってくる黒ずくめの不審者。

 辿った歴史も年代も異なる平行世界に脈絡もなく転移してしまった千雨が、止むに止まれぬ事情に流されて、現実逃避気味にヒーローを目指す戦いは、こうして始まったのだった。

 

[文章]

 三人称。一話平均六千字前後と、長さとしては妥当な感じ。誤字脱字の類の少ない癖のない文章で読みやすい。

 

[総評]

 千雨魔改造物。ただし舞台はネギまの世界ではなく、僕のヒーローアカデミアの世界。元となった作品の設定は作中で少しずつ説明がされているので、どちらかの原作知識しかなくても、安心して読める。

 逆ハーレム要素がちらほらしているので、苦手な人は回避推奨。

『僕のヒーローアカデミア』の世界に転移してしまった千雨。当然戸籍や住む場所のあるはずがなく、身元保証人もいなければ、所持金も心もとない。ないない尽くしの千雨に手を差し伸べてくれた相手の要求は、ヒーローになること。

 そんな事情から、中学を卒業したばかりなのに、雄英高校受験のためにもう一度中学生に。エヴァンジェリンと違い、三年生の二学期からだったのが救いか。

 ヒーローを目指すにしても、ヒロアカ世界の基準だと、千雨って『無個性』じゃないっけ?

 そんな疑問が出て来るかもしれないけれど、心配無用。アーティファクトで従えている電子精霊七匹が個性役を果たしている。しかも千雨の強化にも色々とお役立ち。どんな強化がされるかは読んでからのお楽しみ。

 期末試験に備えての勉強会に入ってからグダグダになってきているので、そろそろビシッと締めてほしいところ。

 千雨魔改造物が好きな人なら、満足のいく出来だろう。


オーバーロード 骨の親子の旅路

2019-12-14 18:00:00 | その他

原作名:オーバーロード

作者:エクレア・エクレール・エイクレアー

最終更新日:2019年12月13日

評価:B

サイト:ハーメルン

    https://syosetu.org/novel/174591/

 

[あらすじ]

 カルネ村に住む娘エンリは、妹のネムと一緒にトブの大森林へ薬草採集に出かけた先で、これまでなかったはずの豪邸を見つける。

 誰かいるのかな? と声をかけてみれば、出てきたのは生者全ての敵、アンデッドのスケルトン――モモンガ――だった。

 しばらくはトブの大森林側の屋敷でひっそり暮らしていたものの、原作イベントは容赦なく軍靴を鳴らして迫ってくるもので。

 モモンガがナザリックではなく、パンドラズ・アクター入り宝物殿と一緒に転移した世界で、カルネ村を拠点にあれやこれやする話。

 

[文章]

 三人称。会話文多め。誤字脱字は少な目で読みやすい。ただし場面転換で空行が多いのが気になった。一話平均3~4千字。一話辺りの尺はもう少し長くしてほしかった、という印象。

 

[総評]

 モモンガとパンドラズ・アクターとの二人旅のコンセプトが珍しくて目を通してみたら、意外に当たりだった。

 エンリのもらうアイテムがゴブリン召喚ではなく、天使召喚なのを除けば、基本的にオリキャラはなし。この点でも不安要素は少ない。

 守護者がいないので肩肘張る必要がなく、ナザリックがないので、アインズ・ウール・ゴウンと改名することもない。王都がヤルダバオトに襲撃されることがないので、イビルアイフラグもない。

 世界征服に乗り出すこともせず、心と興味の趣くまま未知を求めてぶらり旅。いや、カルネ村を拠点にしているから、そこまでぶらぶらはしていないけれど。

 自分らが異邦人であるのを理解し、世界をどうとでもできる力はあっても、たっち・みーのような正義にも、ウルベルトのような悪にもなれない半端者。ならば半端者なり意地を見せてやると、存外にカッコ良いモモンガの軌跡の物語。