彷徨者のネット小説レビュー

ネット小説サイト「Arcadia」や「ハーメルン」をメインに、あちこちで見かけたネット小説をレビューするブログです。

詰みかけ転生領主の改革

2013-03-31 18:00:00 | オリジナル作品

原作名:オリジナル
作者:氷純
最終更新日:2013年3月28日 完結済
評価:B
サイト:小説家になろう
     http://ncode.syosetu.com/n5966bh/

[あらすじ]
 21世紀日本の前世の記憶を持つ主人公。現世はとある領主の嫡男で、肖像画から見る両親は絶世の美男美女。品行方位で慈愛に溢れ、領民に慕われ、理想を体現したかのような領主。
 ……と言うのは真っ赤な嘘。領主を批判すれば一族郎党命がないと、使用人から下々の領民まで戦々恐々。
 土地柄から領地は貧しく、両親は領地運営を腐敗役人共に丸投げし、王都での派閥争いに汲々。領民からの受けが悪いだけでなく、国内の貴族達から嫌われ、王家からも嫌われ、所属する派閥からも蔑視され、という有様。家名だけで敬遠されるとか……将来継げる領地があるのか、疑問になるほどに詰みかけ状態。その前に暗殺かも?
 自身の未来の安寧は領地の復興にあり。正に崖っぷちな未来の領主の奮闘の物語。

[文章]
 三人称。誤字脱字の類は見当たらず、読み易い。人によっては『固い文章』と感じるかもしれない。

[総評]
 異世界転生による内政チート物。
 連載開始数話目でランキング入りした時は、似たテーマの作品の多くに辟易していたところで、またかという気持ちで読まずにいた。実に迂闊。
 この作品が他と違う大きな点は、何と言っても『最悪の敵は身内』という、ある種の王道を貫いているところだろう。
「領民の誰一人飢えずに済む領地を作りたい」
 ありきたりと言えばありきたりかもしれないけれど、そんな願いが主人公の根幹になる程に劣悪な領地と、領地をさらに悪化させていく両親。主人公への理解や寛容さなど当然あるはずもなく、金儲けのアイデアを出せば掠め取り、少しばかり金を稼げば奪おうとする。そういう間柄。
 脇を固める人物たちも、それなりに曲者。ある者は主人公に付き、ある者は主人公を裏切って両親側に付き、ある者はどちらが己の得になるかを見極め、またある者は……。
 領民どころか国王や同じ派閥の貴族達からも嫌われる鼻つまみ者一族の嫡男が、じわじわと地盤を固めつつ、領地を盛り返していく様は、スポ根物やバトル物とは違った熱さを感じさせてくれる。思わず主人公を応援したくなる作品。


[2013年7月31日追記]
 書籍化です。おめでとうございます。

   




1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
無題 (名無し)
2013-04-01 08:53:21
あぁ、二歳?
返信する

コメントを投稿