彷徨者のネット小説レビュー

ネット小説サイト「Arcadia」や「ハーメルン」をメインに、あちこちで見かけたネット小説をレビューするブログです。

ようこそ

 このブログの管理人、彷徨人です。名前の通り、あちこちのサイトをさ迷っています。ネット小説に限れば『Arcadia』と『小説家になろう』がメインになります。
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リリカルだったもの

2021-09-18 18:00:00 | 魔法少女リリカルなのは
原作名:魔法少女リリカルなのは
作者:てぃしぃ
最終更新日:完結済
評価:B
サイト:ハーメルン
    https://syosetu.org/novel/7518/

[あらすじ]
 列車事故に巻き込まれて死亡したと思ったら、ビニール袋に入れられて寒風吹きすさぶゴミ置き場に捨てられた新生児になっていた。
 死亡確定秒読み開始寸前の難易度でも生き残れたのは、目も開いていない新生児でも大人の悟性があったことと、『あらゆるものをなおす程度の能力』のお陰。
 何とか生き延び、施設に保護されてから数年。
 初春の夜に聞こえてくる謎の声。見つけたのは数字の入った青い石、ジュエルシード。
 時空管理局とは関わりたくない巻き込まれ系転生オリ主が、好き勝手に物語を造り替えていく。

[文章]
 主人公の一人称。たまに第三者の一人称が入る。一話平均五千五百字と、満足できる長さ。誤字脱字は少な目。当ブログで二作レビューしている作者氏の作品なので、文章の質自体は安定している。

[総評]
 地球側の『防衛軍』の立ち上げから時空管理局との紛争から条約締結までが、闇の書と守護騎士を中心にして回る物語。
 てぃしぃ氏の他の作品同様、かなり読者を選ぶ作品に仕上がっている。二次ファン時代の作品だとの言だけれど、ハーメルンで読むまでこの作品の存在は知らなかった。
 プレシアとアリシアの救済あり。フェイトはすずかと一緒にヒロイン枠。
 ギル・グレアムがラスボス化するので、何が何でも時空管理局は擁護されないと許せない読者には非推奨。原作は早々に影も形もなく粉砕されるので、原作沿いでないと我慢できない読者にも非推奨。
 主人公の考察や設定語りの部分では目が滑り易くなるし、防衛軍の結成と配される階級に酷い無理矢理感があったりするけれど、そういう部分に目をつぶれば、最後まで一気に読ませる勢いがあり、気が付いたら夜が明けていたので実際に読まされた。
 原作ではさらっと流されてしまったことに、家族の過去の罪を一緒に償うとはやてが管理局に入局した経緯があるけれど、そんな的外れな罪滅ぼしの必要はないと、この作品では大人たちが説得していたのが印象的。
 いつの日かフェイトが、プレシアとアリシアに再会できることをひっそり願う作品。

ブレイク・トリガー

2020-02-27 18:00:00 | 魔法少女リリカルなのは

原作名:魔法少女リリカルなのは

作者:中西矢塚

最終更新日:完結済

評価:B

サイト:Arcadia

   http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=10452&n=0#kiji

 

[あらすじ]

 場所は聖王教会騎士団訓練所。

 埃まみれで転がり、青空を見上げて重い溜め息を吐くのは、クロス・ハラオウン九歳。最年少での騎士叙勲を間近に控え、それでも身にまとうのは興奮ではなく、鬱々した諦観のような何か。

 今のこの生が、異世界にあるのではなく、『リリカルおもちゃ箱』という創作世界で、自分がその世界の異物であると知っているのは、果たして幸福か不幸か。

 鬱々とモラトリアムを抱えながら、『魔法少女リリカルなのは』の世界だと知ることなく、クロノ・ハラオウンの弟、クロスとして生き足掻く転生者の話。

 

[文章]

 オリ主のクロス視点の時のみ一人称。他視点では三人称。誤字誤用脱字は少な目。各話の文字数は多めで読み応えあり。

 

[総評]

『魔法少女リリカルなのは』ではなく、『リリカルおもちゃ箱』の知識持ちが、クロノの一つ年下の弟クロスに転生し、管理局員ではなく聖王教会の騎士となって活動する話。ただし派手な戦闘シーンはない。

 主人公が少々ダウナー思考と語りをしているので、人によっては受け付けないかもしれないので注意が必要。これは前世の記憶から、ここが『創作物』世界だと知っていることで、異分子である自身の存在に葛藤し続けているため。

 また、クロスが聖王教会所属なので、母と兄を含めた管理局との折り合いが悪い。これを管理局アンチとするか、評価が分かれると思われる。

 地球での活動が第十五話からと遅いのは、その前にStS編のフラグをべきべきにへし折っているから。管理局を見限ったスカリエッティは、聖王教会の研究室で愉快な研究を続け、レジアスはそこから出て来る謎な技術で自派閥の勢力強化。どう頑張ってもStS編には辿り着けそうにない。

 その代わり、アリサやすずかが良い味を出して、クロスと絡んでくれる。なのはは名前が一回出るかどうかの完全な空気、セリフすらない。ついでにリンカーコアもないので、ジュエルシードに関わることもない。

 人によっては地雷率がかなり高くなる要素が多いが、個人的には主人公の鬱なペースを乗り越えてから楽しめる作品だった。

 


りりかるグラハム

2013-02-04 18:00:00 | 魔法少女リリカルなのは

原作名:魔法少女リリカルなのは
作者:えなりん
最終更新日:完結済
評価:C
サイト:Cross Rood
    http://crossrood.sblo.jp/article/41829851.html

[あらすじ]
 ガンダムエクシアとの死闘の末、相討ちとなり宇宙に散ったグラハム・エーカー。この人生に悔いなどない。
 ないはず……なのに、少女のすすり泣く声に意識を取り戻す。
 見渡せば見知らぬ場所。博物館級の古めかしい内装の部屋。声の主はベッドの上。
 二、三話をして気が付けば、少女は足が不自由なのか車椅子を使い、見上げる視線が何やらおかしい。
 まずは状況の把握をしようと試み、少女がまず取り出したのは一枚の鏡。
 そしてそこに映るは、鎖で縛られた黒装丁の本が一冊。人外どころか無生物に転生してしまったらしい。
 それがグラハム・エーカーと八神はやての出会いだった。

[文章]
 三人称。文章全体としての力量と完成度は高い。ただし誤字がやや多め。小石に躓くタイミングで誤字が出てくるので、話の腰を折られてしまう感じ。

[総評]
 『ガンダム00』のグラハム・エーカーが、どういう訳か夜天の書経由で八神家に出現。はやての兄代わりとなり、リリカルなのは原作に関わっていく物語。
「無茶な組み合わせだろ、これ。MSが管理局を目の敵にして蹂躙する話にしか思えん」
 そんな心配は良い意味で裏切られた。
 確かに管理局には管理局なりの理念があり、グラハムにはグラハムなりの信念があり、なのは(&ユーノ)には目的がありと、それぞれの思惑の違いによる誤解や衝突はある。それがありがちなオリ主視点の一方的な管理局叩きではなく、各勢力の立場を描写することで、嫌みのないぶつかり合いに仕上げているのは好感を持てた。
 グラハムと言う戦争を知る大人との出会いで、なのはにも変化が。戦いは怖いもの、だけど譲れないもののために戦う。その決意が、対フェイトだけでなく、管理局や友達、家族にも色々と影響を与え、原作とはやや違った流れに。
 ただやっぱり、魔法とMSを組み合わせた設定は難しかったらしい。所々力技で乗り切ったご都合主義な箇所がある。無理矢理感が強すぎ、その箇所は読むのが辛かった。
 とは言え、総合すればかなりの良作。完結しているのも良い。どちらかの原作のファンで、二次創作が好きな人なら、十分楽しめる作品として勧められる。


性根の腐ったろくでなし

2012-11-26 18:00:00 | 魔法少女リリカルなのは

原作名:魔法少女リリカルなのは
作者:TS-P
最終更新日:2012年11月25日 完結済
評価:B
サイト:Arcadia
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=tiraura&all=35472&n

[あらすじ]
 野生の動物に襲われたのだろうか、足元に横たわるのは一匹のフェレットの死骸。その横には紅い宝石。
 理解したくない状況を理解し、現場から回れ右をしようとした主人公。しかし思わず呟いた固有名詞を聞きとがめられていた。
「ちょっとお待ちなさい」
 呼び止めたのは紅い宝石――レイジングハート。
 襲いかかるはジュエルシードの暴走体。
 これが主人公の魔法との出会いだった。
 リクルートスーツ型のバリアジャケットを身にまとい、リリカルにならないやさぐれ魔法少年(八歳)がまかり通る。

[文章]
 主人公の一人称。他キャラの視点の時は三人称。目立つ誤字脱字の類は、デバイスの話す英語の時以外は、気にならないレベル。

[総評]
 主人公はヤクザの転生者。ヤクザと言ってもインテリ系ではなく、腕っ節と度胸と何かでのし上がってきた系。なので強いし怖い。転生して廃業しているのが幸いか。原作知識が僅かにあるのは、前世の義妹が好きな番組で、一緒に観ていたから。真面目に見ていたわけではなく、内容の記憶はかなり曖昧。
 ユーノはセリフもなく死亡、なのはに魔力はない。この時点で原作は遠く次元の彼方。
 主人公にやる気は乏しく、面倒だからフェイトが来たら丸投げしようかとの考えもちらちら。前世の経験から、管理局みたいな治安組織も苦手だし。
 原作に関わる気になったのは、フェイトを見て。あぁ、この目はまずい。かつての自分と同じ、そして間違いなく同じ場所に落ちてしまう。そんな不幸は……許せんわなぁ。浪花節と言うのか、これ? そんな感じで関わっていく。
 本人曰く「ろくでなし」、レイジングハート曰く「性根が腐っている」。それなりに相性は良いようで。
 アリサ、すずか、なのはの三人娘との関わり方も独特。この方面からのアプローチとは予想外。
 どこか無法無頼だけれど、筋は通している元筋もの主人公が我が道を往く物語。


リリカルなのは ~生きる意味~

2011-12-02 18:00:00 | 魔法少女リリカルなのは

原作名:魔法少女リリカルなのは
作者:友
最終更新日:2011年11月27日
評価:D
サイト:Arcadia
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=15302&n

[あらすじ]
 気がつけば何もない白い部屋。現れる老人。自称、神。寿命の尽きる前に死なせてしまったので、別の世界に転生させるとの事。
 そして迎えた第二の人生は、時空管理局局員を両親に持つ男児。両親は共にSSランク、本人はSSSオーバーと、何そのチートぶり? 住まいはなぜか第97管理外世界『地球』は海鳴市。あからさまな死亡フラグ。
 あり余る魔力資質は管理世界内一、だけど性格はヘタレな主人公が、挫折してハーレム要員を回収し、暴れてハーレム要員を回収し、普通に生活してハーレム要員を回収し、トラブルに巻き込まれてハーレム要員を回収する話。

[文章]
 始めの数話は主人公視点の一人称。原作に突入した辺りから、キャラ視点移動の一人称に変わっている。
 同じシーンでキャラ視点を変えて語る時があり、三人称で書けと言いたくなった。

[総評]
 前書きに警告されているように、『主人公最強』『ハーレム』物。『原作知識持ち』『神様転生』主人公の『管理局アンチ』も付け加えておく。
 ヒロイン枠は、原作三人+オリキャラ1人+アリサ+すずか+シグナム+シャマルと、ほぼ全ての女キャラと節操なし。使い魔にリニス。スバルやギンガ、果てはナンバーズに到っても好感度高しと、正直どん引きのレベル。好きな人には堪らないラインナップなのだろうけれど、当方には耐えられなかった。
 とは言え、最初の神様との対話と、主人公の乳幼児期の気持ちの悪い高テンションを克服すれば、それなりに読める作品ではある。
 ほぼ原作沿いに事態が進行しつつも、原作を逸脱した設定はそこかしこに散りばめてあり意外性がある。なのはに双子の姉がいたり、フェイトがジュエルシードを探す理由が違っていたり、暴走体がデジモンを模していたり、五人目の守護騎士が登場したり。
 無印とA’s編では、管理局基準での犯罪者のいない話でまとまっているのだが、その反面、しわ寄せが管理局内部での不正や謀殺等として描かれている。StS編においては、組織の腐敗を正すのが目的の模様。
 基本的には後ろ向きなヘタレ、開き直ると最強、ただし歯が浮き身悶えするような臭いセリフ付きな主人公。そんな主人公に耐性のある人なら、この作品はツボだろう。