原作名:オリジナル
作者:林育造
終更新日:2013年2月27日 完結済
評価:C
サイト:小説家になろう
http://ncode.syosetu.com/n1966bn/
[あらすじ]
人とは似ていても異なる知性種族――亜人・獣人――と人が、食ったり食われたりしながら、取り敢えず均衡を保って生活している世界。
ママサの街に住むゲルツルード(愛称ルッツ)は、住人たちから重宝されている薬師。六年前に流行した壊血病の治療に始まり、最近では狂犬病のワクチン開発を手掛け、ある程度の成功にまで至っている。
蒸留した消毒用アルコールを、いつの間にか飲み干されたりするアクシデントはあるものの、比較的穏やかに時の流れているママサに、ある日のことラミア――半人半蛇――族の少女が空から落ちてくる。
かつてラミア族の一人に救われた経緯のあるルッツは、負傷した彼女の身柄を引き取り、店兼自宅に運び、治療を始める。
ルッツとラミア族との交流が、こうして始まる。
[文章]
一人称。誤字少々。気になるような脱字はない。漢字で良いと思える単語が平仮名表記の場合があり、それが時々違和感となっている。
[総評]
異知性種族との交流物。それもエルフやドワーフのようなファンタジーでありがちな種族ではなく、ラミアやハイピュイア(ハーピー?)と言う『モンスター』の側が、それぞれの文化や風習、生理を持って人族と交流しているのが面白い。また、それら種族の作者独自の設定も楽しい。
プロローグと第一話のつながりに意味が感じられないのと、第一話から三話までが設定語りになっているのが残念。第四話以降のように、所々に説明を入れていけば、話の流れがスムーズになったように思える。第四話からは後の展開が早く、読み易くなっている。
この物語の見どころは、前述した通り、登場種族の作者なりの解釈と独自設定。半人半蛇のラミア族の簡単な生理学や生殖方法、社会構成などがしっかり練られており、一度登場して終わりとはならないのが良い。上半身はヒトで下半身がヘビのラミア族が産むのは、果たして子供か卵か。この基本的な疑問に答えているのは、この作品ぐらいだろう。
助けたラミア族の少女に懐かれ、狂犬病ワクチンの技術を狙われ、安穏とした生活から離れざるを得なくなりそうな薬師の、今後の活躍に期待。
原作名:魔法先生ネギま!
作者:朝来夜終
最終更新日:完結済
評価:C
サイト:銀狼の寝床
http://92940899.blog120.fc2.com/category20-1.html
[あらすじ]
路上を疾駆する改造路面電車。目指すは麻帆良の外、それは自由。乗るのは四人:ネギ・スプリングフィールド、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、絡繰茶々丸、そして長谷川千雨。
追うはタカミチ・T・高畑を始めとする魔法先生達。
立派な魔法使い(マギステル・マギ)など知ったことかと、魔法からの逃亡を計るネギ達と、立派な魔法使いの名の元、抜けるなど許さぬと執拗に追いかける魔法使い達との、日本をまたにかけた追走劇。
[文章]
三人称。会話文が多すぎる印象。誤字脱字は少なめ。
文章とは関係ない点だけれど、カテゴリーで分けるだけでなく、目次ページと各話へのリンクを貼ってもらえれば、もっと読み易くなると思った。
[総評]
出だしから原作が崩壊しているので、「原作が~」「原作では~」と原作重視の人には勧められない。流れからも推測できるように、魔法使いに対して否定的なので、それが許容できる人でないと読むのは辛いと思われる。
巻き込まれたカタギと自分の女を連れ、極道から足を洗おうと組を飛び出した元やくざ者と、今さらカタギになどさせるかと付け狙う組合員たちとの抗争を描いた極道物を、ネギまに絡めたような物語。
……実際に原作の話でも、立派な魔法使いの道から外れれば、グッドマンみたいな鉄砲玉が粛清に来るわけだし、あながち間違っていない……?
そしてこの手の物語となれば必須と言えるのが、組に雇われる殺しのプロに、切っても切れない因縁のある敵対極道一家、そして微力ながら主人公達を手助けしようとする第三勢力。それぞれに龍宮真名、関西呪術協会、完全なる世界を据え、ノリは正しく極道物。海路の逃走で某商会を出したおふざけがなければ、もっと良かったかもしれない。
ネギ達の未来は、お天道様の下を堂々と歩ける明るいものか、雨に打たれ自らの血の海に沈む惨めな最期か。逃げて隠れて追われ襲われ、緊張感は途切れず最後まで走り続けてくれる。
超の過去改変の計画はどうなったとか、原作の細かいところにこだわらず、勢いで読んでほしい作品。
原作名:鋼殻のレギオス
作者:へびひこ
最終更新日:2013年1月29日
評価:C
サイト:ハーメルン
http://syosetu.org/Novel/536/
[あらすじ]
キャロル・ブロウニングは、故郷で英雄と呼ばれる少女。武芸の実力だけでなく、隔絶した剄量もあって、老生体の首すら一撃で切り落とす。
その反面、幼少から戦いに明け暮れた生活のため、同年代の友達がいない。それを心配した両親に促され、ツェルニへ留学することに。
そこで出会ったのは、良くも悪くも癖のある人物たち。自分以上の実力者、レイフォン・アルセイフ。目立ちたくない目立ちたくないと言いつつ、なぜか目立つ行動ばかり。銀髪でにこやかながら、腹に一物を抱える生徒会長、カリアン・ロス。ツェルニを守るためなら、恫喝・八百長・懐柔なんでもござれ。
他にも色々と癖のある面々に囲まれ、ツェルニに留学した凄腕武芸者の送る学園青春物。
[文章]
三人称。誤字脱字は少ない。読点「、」が少なく、ひらがな表記が多いので、少々読みにくい印象。「~た。」「~だ。」「~ない。」で終わる短い文章が連続するのも、読みにくさの一因。ただし文章自体は簡潔なので、目が慣れさえすれば問題はないと思われる。
[総評]
準最強系女オリ主。設定はレギオスだけど、ストーリーはかなり改変されている。
「青春しているなあ。ラブコメしているなぁ」
と、むず痒さを感じながらニヤニヤして読める点では、なかなかに貴重な作品だと思う。主人公の所々天然なところも可愛い。
原作の幼生体襲撃はないけれど、ラブコメ路線で行くなら、小隊戦より血生臭い戦闘シーンは無粋と言うもの。個人の戦力ではツェルニでワン・ツーを飾れる実力者を従え、それでも小隊戦では勝てずに苦悩する新米小隊長。三角関係の未練を断ち切れず、それでいて主人公に心が揺らぎ始める先輩。自己を全否定され故郷を追われ、傷ついていた心を癒してくれた主人公に、友人以上恋愛未満な感情を持ち始める原作主人公。そして主人公をうまく使い、来たる都市戦に勝利しようと目論み、そのためなら裏で八百長の手引きすら厭わない生徒会長。ほら、役者は揃っている。汚染獣なんかお呼びじゃない。
原作キャラ勢の物分りが良い……良すぎるのと、いわゆる『愛され系主人公』で誰からも悪意を持たれていない事から、キャラ同士のぶつかり合いがなく、全体の起伏が乏しいのが残念と言えば残念。
この2点を踏まえて読めば、スポーツに恋にと青春物として読める新しいレギオス作品。
原作名:魔法少女リリカルなのは
作者:えなりん
最終更新日:完結済
評価:C
サイト:Cross Rood
http://crossrood.sblo.jp/article/41829851.html
[あらすじ]
ガンダムエクシアとの死闘の末、相討ちとなり宇宙に散ったグラハム・エーカー。この人生に悔いなどない。
ないはず……なのに、少女のすすり泣く声に意識を取り戻す。
見渡せば見知らぬ場所。博物館級の古めかしい内装の部屋。声の主はベッドの上。
二、三話をして気が付けば、少女は足が不自由なのか車椅子を使い、見上げる視線が何やらおかしい。
まずは状況の把握をしようと試み、少女がまず取り出したのは一枚の鏡。
そしてそこに映るは、鎖で縛られた黒装丁の本が一冊。人外どころか無生物に転生してしまったらしい。
それがグラハム・エーカーと八神はやての出会いだった。
[文章]
三人称。文章全体としての力量と完成度は高い。ただし誤字がやや多め。小石に躓くタイミングで誤字が出てくるので、話の腰を折られてしまう感じ。
[総評]
『ガンダム00』のグラハム・エーカーが、どういう訳か夜天の書経由で八神家に出現。はやての兄代わりとなり、リリカルなのは原作に関わっていく物語。
「無茶な組み合わせだろ、これ。MSが管理局を目の敵にして蹂躙する話にしか思えん」
そんな心配は良い意味で裏切られた。
確かに管理局には管理局なりの理念があり、グラハムにはグラハムなりの信念があり、なのは(&ユーノ)には目的がありと、それぞれの思惑の違いによる誤解や衝突はある。それがありがちなオリ主視点の一方的な管理局叩きではなく、各勢力の立場を描写することで、嫌みのないぶつかり合いに仕上げているのは好感を持てた。
グラハムと言う戦争を知る大人との出会いで、なのはにも変化が。戦いは怖いもの、だけど譲れないもののために戦う。その決意が、対フェイトだけでなく、管理局や友達、家族にも色々と影響を与え、原作とはやや違った流れに。
ただやっぱり、魔法とMSを組み合わせた設定は難しかったらしい。所々力技で乗り切ったご都合主義な箇所がある。無理矢理感が強すぎ、その箇所は読むのが辛かった。
とは言え、総合すればかなりの良作。完結しているのも良い。どちらかの原作のファンで、二次創作が好きな人なら、十分楽しめる作品として勧められる。