彷徨者のネット小説レビュー

ネット小説サイト「Arcadia」や「ハーメルン」をメインに、あちこちで見かけたネット小説をレビューするブログです。

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 このブログの管理人、彷徨人です。名前の通り、あちこちのサイトをさ迷っています。ネット小説に限れば『Arcadia』と『小説家になろう』がメインになります。
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起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない

2019-12-22 18:00:00 | その他

原作名:機動戦士ガンダム

作者:Reppu

最終更新日:2019年12月19日

評価:A

サイト:ハーメルン

    https://syosetu.org/novel/183290/

 

[あらすじ]

 連休に浮かれて酒を飲みながらガンダムを見ながら寝落ちしたら、起きた時にマ・クベになっていた。

 何がどうしてこうなった。現実逃避したくても、こちらが現実になってしまったのは変えられないようで。

 このままだとギャンに乗ってテキサスコロニーでアムロに殺されてしまう。そうでなくても、中の人が変わっていると知られたら、スパイ容疑で逮捕・銃殺もあり得る。しかも頑丈に秘匿された一室には、軍資金を横領して買い漁ったツボ、つぼ、壺。

 死亡フラグに囲まれた自称・一般人が、生き延びるために真面目に基地司令をしていく話。

 

[文章]

 マ・クベ視点の時は一人称、それ以外の視点の時は三人称の変則的な書き方。誤字脱字は少な目でさくさく読める。一話平均四千字前後。マ・クベ視点と他者視点の二つで一話なので、好みとしてはもう少しボリュームがほしい。

 

[総評]

 いわゆる原作知識を使った内政チートの系統作品。他にも二十一世紀の兵器や技術からの考察もあり、読んでいて楽しい。

 ガンダムオタクがマ・クベに憑依。散見する死亡フラグをへし折るため、ジオン勝利のため、オデッサの基地司令の仕事に励む。

 ただそれだけなのに、なぜかジオン軍は良い方向へ強化され、宇宙世紀の別作品で悲惨な扱いをされていたキャラが次々と合流。オデッサはジオン・連邦共に認める魔境へと。

 オデッサ魔境化のプロセスは読んでいて楽しいし、上司とのやり取りや部下かのやり取りも楽しい。ただし正座や土下座は止めてほしい、文化的に。

 この手の作品にありがちなマ・クベ憑依主人公スゲ~なのだけれど、上司と部下の評価が共通して「仕事はできるし能力もある。なのに目を離すと何をやらかすか分からない残念な人」なので、絶賛賞賛系は緩和されている。この手の賞賛系が苦手な人にも無理なく読めると思う。

 宇宙世紀に降臨した智謀知略の人、マ・クベ(笑)の活躍が楽しい作品。

 


ひねくれ魔法少女と英雄学校

2019-12-15 18:00:00 | その他

原作名:僕のヒーローアカデミア

作者:安達武

最終更新日:2019年10月23日

評価:A

サイト:ハーメルン

    https://syosetu.org/novel/167873/

 

[あらすじ]

 2004年3月。卒業式も終わり、四月からの高校生活を間近に控え、『白き翼』の面々で花見をしている真只中。脈絡なく唐突に現れた謎の魔法陣に巻き込まれ、どこかへと転移させられてしまった長谷川千雨。

 飛ばされた先は見覚えのない廃墟の街。そして警告もなく襲いかかってくる黒ずくめの不審者。

 辿った歴史も年代も異なる平行世界に脈絡もなく転移してしまった千雨が、止むに止まれぬ事情に流されて、現実逃避気味にヒーローを目指す戦いは、こうして始まったのだった。

 

[文章]

 三人称。一話平均六千字前後と、長さとしては妥当な感じ。誤字脱字の類の少ない癖のない文章で読みやすい。

 

[総評]

 千雨魔改造物。ただし舞台はネギまの世界ではなく、僕のヒーローアカデミアの世界。元となった作品の設定は作中で少しずつ説明がされているので、どちらかの原作知識しかなくても、安心して読める。

 逆ハーレム要素がちらほらしているので、苦手な人は回避推奨。

『僕のヒーローアカデミア』の世界に転移してしまった千雨。当然戸籍や住む場所のあるはずがなく、身元保証人もいなければ、所持金も心もとない。ないない尽くしの千雨に手を差し伸べてくれた相手の要求は、ヒーローになること。

 そんな事情から、中学を卒業したばかりなのに、雄英高校受験のためにもう一度中学生に。エヴァンジェリンと違い、三年生の二学期からだったのが救いか。

 ヒーローを目指すにしても、ヒロアカ世界の基準だと、千雨って『無個性』じゃないっけ?

 そんな疑問が出て来るかもしれないけれど、心配無用。アーティファクトで従えている電子精霊七匹が個性役を果たしている。しかも千雨の強化にも色々とお役立ち。どんな強化がされるかは読んでからのお楽しみ。

 期末試験に備えての勉強会に入ってからグダグダになってきているので、そろそろビシッと締めてほしいところ。

 千雨魔改造物が好きな人なら、満足のいく出来だろう。


オーバーロード 骨の親子の旅路

2019-12-14 18:00:00 | その他

原作名:オーバーロード

作者:エクレア・エクレール・エイクレアー

最終更新日:2019年12月13日

評価:B

サイト:ハーメルン

    https://syosetu.org/novel/174591/

 

[あらすじ]

 カルネ村に住む娘エンリは、妹のネムと一緒にトブの大森林へ薬草採集に出かけた先で、これまでなかったはずの豪邸を見つける。

 誰かいるのかな? と声をかけてみれば、出てきたのは生者全ての敵、アンデッドのスケルトン――モモンガ――だった。

 しばらくはトブの大森林側の屋敷でひっそり暮らしていたものの、原作イベントは容赦なく軍靴を鳴らして迫ってくるもので。

 モモンガがナザリックではなく、パンドラズ・アクター入り宝物殿と一緒に転移した世界で、カルネ村を拠点にあれやこれやする話。

 

[文章]

 三人称。会話文多め。誤字脱字は少な目で読みやすい。ただし場面転換で空行が多いのが気になった。一話平均3~4千字。一話辺りの尺はもう少し長くしてほしかった、という印象。

 

[総評]

 モモンガとパンドラズ・アクターとの二人旅のコンセプトが珍しくて目を通してみたら、意外に当たりだった。

 エンリのもらうアイテムがゴブリン召喚ではなく、天使召喚なのを除けば、基本的にオリキャラはなし。この点でも不安要素は少ない。

 守護者がいないので肩肘張る必要がなく、ナザリックがないので、アインズ・ウール・ゴウンと改名することもない。王都がヤルダバオトに襲撃されることがないので、イビルアイフラグもない。

 世界征服に乗り出すこともせず、心と興味の趣くまま未知を求めてぶらり旅。いや、カルネ村を拠点にしているから、そこまでぶらぶらはしていないけれど。

 自分らが異邦人であるのを理解し、世界をどうとでもできる力はあっても、たっち・みーのような正義にも、ウルベルトのような悪にもなれない半端者。ならば半端者なり意地を見せてやると、存外にカッコ良いモモンガの軌跡の物語。

 


一夏がついてくる

2013-05-15 18:00:00 | その他

原作名:IS インフィニット・ストラトス
作者: コモド
終更新日:2013年5月11日 完結済
評価:C
サイト:Arcadia
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=tiraura&all=37185&n

[あらすじ]
 IS学園――女だけの全寮制の学園――に放り込まれた男子二人、一夏と主人公。
 周りが女だらけの環境の中、二人だけの男同士。気楽にいられる分、色々とつるむのは納得できるもの。
 しかし付き合いが長くなるにつれ、主人公の中に生まれる疑惑。
 箒、鈴音、セシリアの三人から好意を寄せられも気が付かない一夏。そのくせ、男に向けられた侮蔑には過敏なまでに反応し、簡単にキレる一夏。箒のブラを見ても、性的な意味で動揺しない一夏。それでいて、更衣室で主人公の身体を褒める一夏。仲良くしたいと歩み寄る三人を放り出し、主人公に寄り添ってくる一夏。
 ……ひょっとして、一夏って……ホモ?
 そんな疑惑を抱きつつも、二人っきりの男同士、無碍にしたくもない。
 ジレンマに悩んでいるうちに、主人公と一夏の仲は、学園内で半公認のカップルに。三人からは殺意混じりの嫉妬の視線が、他の女生徒達からは生暖かい視線が注がれ。
 普通にヘトロセクシャルな主人公にかけられたホモ疑惑、解けるのはいつだ。

[文章]
 主人公視点の一人称。誤字脱字少々。会話文が多く情景描写が少ないため、置いていかれる感がある。勢いとノリが読める人であれば、文章は受け入れやすい。

[総評]
 IS学園に一夏以外の男子操縦者がいたら、なifの物語。
 この手の設定だと一夏を落としてけなして、原作ヒロイン勢を取り上げてしまう作品を目にする機会が多いが、この点に関して心配は少ない。それでも一人、ヒロイン枠として取られてしまうので、それにも耐えられない人は避けるべきだろう。
 女子校の中に放り込まれた男二人の身の上、男同士の友情を求めるのはやむを得ないにしても、問題なのは一夏が過剰なまでに求めてくるスキンシップ。「パーソナルスペース? なにそれおいしの?」とばかり、着替えからトイレから風呂まで、べたべたべたべたべた貼りつきたがる一夏に、ヒロイン勢からは『最大の障害』に認識され、その他の生徒達からは半分公認のカップル扱い。
 そこへ三人目の男性操縦者シャルルが加われば、転がる先は三角関係か三つ巴か。
 無意識にヒロイン(?)に収まろうとする一夏と、一夏を巡り主人公と張り合おうとする真ヒロイン勢の攻防戦に、声を出して笑える学園コメディー。


罰は聖なる焔の光と深淵を歩む

2012-04-10 18:00:00 | その他

原作名:テイルズオブジアビス
作者:朔夜
最終更新日:2012年4月6日
評価:C
サイト:にじファン
    http://ncode.syosetu.com/n2830ba/

[あらすじ]
 真なる罰の紋章の持ち主、ラズロ。数多の艱難辛苦を乗り越えた彼は、旅に出る決意を固める。準備にも色々と揉めながらも、とにかく故郷行きの定期船に乗り、いざ旅立ち。
 しばしの日数が経ち、徒歩で山道を歩いていたところへ、虚空から突然現れる二人の人物。茶色の髪の女と、朱色の髪の男。
 とりあえず男を起こして話を伺ってみれば、師匠と剣の練習中、この女が乗り込んできての刀傷沙汰の様相を呈し。二人を止めようと割って入ったら、周囲が光り、気が付いたらこの場所だったと。
 男の名はルーク・フォン・ファブレ。キムラスカ王国の公爵家嫡男だそうな。
 オールドラントに流れ着いたラズロの新しい冒険の幕が、ここに切って開かれた。

[文章]
 三人称。キャラを無理に枠にはめて動かしている印象があり、内面描写になるとぎこちない感じがした。ただし文章自体は上手いので、ぎこちなさが取れれば、もっと良い文章になると思われる。誤字脱字は少なめ。

[総評]
 『幻影水滸伝Ⅳ』の主人公「ラズロ」が、オールドラントのタタル渓谷に飛ばされ、ルークを拾うところから始まるクロスオーバー。ラズロはⅣエンド後のステータスなので、戦闘面に関してTOAキャラが足元に及ばない最強物。原作のゲームではルーク苛め前提だったシナリオとPTメンバーの言動に、色々と突っ込みを入れるアンチ傾向。ルークのヴァンへの傾倒ぶりがラズロにすり替わっているので、この手のキャラの入れ替わりに抵抗を覚える人にはお薦めしない。
 ラズロの介入により、ゲーム内設定で三ヶ月もかかったバチカル帰還の旅は発生しない。チーグルの森でのイベント――イオンやジェイドとの合流――もカットされている。さっさとケセドニアの領事館経由でバチカル入りしたラズロとルークは、和平の使者一行の到着するまで勉強。
 この三ヶ月の違いが、ルークの思考や行動面に色々と影響を与えている。預言の影響もあり、大まかな流れは原作沿いを変えられないまま、対人関係や原作キャラへのルークの評価が大きく変わっている。可能性の物語として、読んでいて面白い。
 原作PTとは異なる顔触れの一行で、どうやってオールドラント救済に到るのか、興味津々な作品。