彷徨者のネット小説レビュー

ネット小説サイト「Arcadia」や「ハーメルン」をメインに、あちこちで見かけたネット小説をレビューするブログです。

ようこそ

 このブログの管理人、彷徨人です。名前の通り、あちこちのサイトをさ迷っています。ネット小説に限れば『Arcadia』と『小説家になろう』がメインになります。
 初めての人は、まずこちらを一読下さい。→はじめに
 これまでレビューした作品のリストです。→五十音順リスト

魔法使いと風精霊

2011-12-31 18:00:00 | オリジナル作品

原作名:オリジナル
作者:田中23号
最終更新日:2011年12月29日 2012年11月9日
評価:D
サイト:小説家になろう
    http://ncode.syosetu.com/n5884z/

[あらすじ]
 街道を旅する一人の旅人。そして彼を取り巻く山賊。
 「命が惜しけりゃ身ぐるみ全部置いていきな」
 恫喝する山賊に、旅人は片手を挙げ……途端に吹き荒れる強風に、山賊達は蹴散らされ。
 何事もなく悠々と歩み去る旅人。
 「ふっ。オレってカッコいい」
 自画自賛する主人公に、ツッコミを入れる風の精霊。
 そんな緩い二人の冒険物語。

[文章]
 主人公視点の一人称。会話文が多く、情景描写に貧しい。物語の抑揚も乏しく、おそらくは一番の見せ所であるはずの魔物退治も、気の抜ける淡白さで終了。だらだらぐだぐだで第一章、完。

[総評]
 「俺は騎士になる!」と木刀片手に故郷を飛び出した少年が、五年後、上位の風精霊と契約した青年の魔術師となって帰郷。故郷に忍び寄る巨大な敵に、精霊と共に立ち向かう。
 こう書くといかにも王道的ヒロイックサーガ。しかし実際の主人公と精霊のコンビは、真夏日に溶けかけたゼリーよりも緩いゆるゆるさ。緊張感の意味で。
 魔術の学校をぎりぎりで卒業した主人公は、魔術師でありながら、精霊と契約したために魔術がほとんど使えないダメっぷり。その分、剣でドラゴンを一刀両断にしてしまうドラゴンスレイヤー。良くも悪くも、剣の実力で近隣諸国から目を付けられている始末。
 これ程の実力の主人公でも、精霊には頭が上がらない。実力的にも性格的にも。加えて黒歴史も色々知られ、尻に敷かれている状態。
 多分、主人公と精霊の実力は、国内でトップクラス。にも関わらず、その強さが読んでいて全く伝わってこない。ドラゴンや魔力食いと呼ばれるモンスターがどれ程のものか、主人公は半ばキレて説明しているが、実際の戦闘は実にあっさり風味。敵に反撃の隙すら与えない。
 最強物のスタンスとしては正しいのだろうけど、緊張感や抑揚のなさには、一読者として面白いとは感じなかった。主人公と精霊が漫才な会話を繰り返し、他人の話を無視するスタンスには不快感すら覚える。
 後に契約した火の精霊の容姿と主人公達の対応で、この作品を切る事にした。


猫さんといっしょ

2011-12-30 18:00:00 | オリジナル作品

原作名:オリジナル
作者:田中23号
最終更新日:2011年12月19日
評価:F
サイト:小説家になろう
    http://ncode.syosetu.com/n0861z/

[あらすじ]
 森へ薬草を摘みに行ったら、大型の猫に睨まれた。良く見れば酷い怪我をしている。
 取り敢えず応急処置をし、家に連れ帰ったその夜、枕元に現れた天使。
 その猫は神獣の末裔の子供で、魔物に浚われたのだとか。怪我はその時に負った物。
 ついては、その子猫を親元まで連れてきてもらえないだろうか。期限は主人公の寿命の尽きる前までに。
 天使から祝福の加護をもらい、神獣の子猫の故郷を目指し、旅をする話。

[文章]
 主人公の一人称。
 会話文と主人公の内面描写がメイン。情景描写は乏しい。何せタイトルにある猫すら、15歳の主人公が抱き抱えられる精一杯の大きさ、とあるだけで、長毛なのか短毛なのか、体毛の色はどうなのか、その描写すらされていない。

[総評]
 薬師見習いの少年が、助けた神獣の子供の故郷を目指し、旅をする成長物?
 兎にも角にも何よりも、情景描写が徹底的に不足。前述しているが猫の特徴はほぼ何一つ描写されておらず、主人公の容姿についてもほとんど説明がされていない。戦闘にしても、猫が口を開いた、何か凄いものが飛び出して、敵諸共木や岩を吹き飛ばしてしまった、で済ませてしまうレベル。
 それでいて、これからの旅のルート、最初に訪れた街の構造、天使からの祝福の確認、ギルドのルール、等の説明は比較的細かい。ただしこの物語のギルドは、いわゆるモンスター討伐も含めたよろず業の取りまとめと、身元保証の組織。史実の徒弟制度による職能組合で考えると失敗する。
 設定集を読みたいのなら、それなりに楽しめる出来だろう。
 しかし小説として読むのであれば、情景の希薄さは致命的。戦闘のあった第五話で切りたかったのだが気合で読み進め、第八話のギルドの説明で挫けた。


《Blade Online》

2011-12-29 18:00:00 | オリジナル作品

原作名:オリジナル
作者:夜兎__〆 夜之兎
最終更新日:2011年12月29日 2012年12月23日
評価:D
サイト:小説家になろう
    http://ncode.syosetu.com/n7059z/

[あらすじ]
 軍用に開発されたVRが、スペックダウンはあるだろうが民間でも使用できるようになった時代。ほのぼのまったりのVRばかりに飽き、血わき肉躍る戦闘VRを体験したい層向けに開発されたVRMMO『Blade Of Online』。『Of』を付けた意味が不明なのはご愛敬。
 そのβ版も終了し、正規サービス開始と同時にログインした主人公達。
 しかしそこは運営の手により、ログアウトできなくされていた。しかもご丁寧にも、ゲーム世界で死亡すれば、現実の肉体の方も殺されると言うデスゲーム。
 武器としては最弱装備の太刀持ち主人公は、他のプレーヤーから相手にされず、一人狩りに出向き、ひょんな事から隠しエリアらしい強モンスターのいる森に迷い込んでしまう。
 主人公のレベルは1。主人公のサバイバル生活が始まる。

[文章]
 主人公の一人称。と言うか、セリフ付きで登場しているのは主人公以外には、運営の人と、β版の時の知人、そして妹の3人だけ。これでは三人称や他キャラ視点の一人称は難しい。誤字脱字がやや多め。英単語の綴りを正確に書けないのなら、辞書で調べてほしい。

[総評]
 VRMMOのVR空間に閉じ込められたプレーヤーのサバイバル物。
 「太刀は武器の中で一番中途半端で、使い物にならない設定。そんな武器を持っているプレーヤーと組むのは止めておけ」などと運営から指摘された太刀持ち主人公。お陰で、β時代の知人や妹にまで組むのを拒絶される。やむなく単独で外に出れば、事故で高レベルモンスターのいる森に迷い込み。生存のために修行をする。
 流れだけなら、主人公の葛藤や、隠されているかもしれない特殊スキルの発見、ないしは自己流修行の話になりそうなもの。
 しかしそんな描写は一切ない。
 レベル1で高レベルのモンスターを偶然倒し、いきなりレベル26に到達。新しい技や称号をごっそり獲得、アイテムも良品。レアドロップの武器も入手。この流れで挫けた。
 しかも出てくるのは、アイテムや技の名前とその説明ばかり。最新話まで読み進めても、主人公の人柄と言うのがどうにも見えてこない。思考と行動が一致していない印象。
 RPGのように、数あるオートイベントをこなし、隠しアイテム・隠し技を身に着け、レベルアップしたキャラのステータスを読みたい層なら、この作品は面白いのだろう。
 しかし主人公と言う『人物』の活動を読みたい人には、不向きな作品だと思う。


[2013年2月19日追記]
 書籍化とのことです。おめでとうございます。


tolvte krake

2011-12-28 18:00:00 | オリジナル作品

原作名:オリジナル
作者:こ~ふ
最終更新日:2011年12月24日 2012年11月29日
評価:F
サイト:小説家になろう
    http://ncode.syosetu.com/n3133z/

[あらすじ]
 コンビニからの帰り道、謎の光に追いかけられ、追いつかれたと思ったら、見た事のない石壁の通路。
 通路の終点で出会った少年、自称・魔王で神。
 ここはVRMMOの世界で、主人公は勇者候補として召喚されたとの事。目的は魔王、すなわち目の前の少年の討伐。
 魔王であり神である存在から戦う能力を与えられ、帰還のためにも魔王討伐に奮闘する迷宮物。

[文章]
 出だしは主人公の一人称。その後は三人称。(笑)や他のネットスラングあり。
 MMOの経験があれば、会話はチャットで良く見かける内容。にやにやできるかも。
 設定語りや会話、キャラのステータスは所持アイテムから所持金、果ては購入するアイテムの名前から価格まで詳しく書かれている。
 が、物語として肝心の場面描写・行動描写は非常に乏しい。

[総評]
 召喚物で迷宮物。
 プロローグの冒頭が主人公のモノローグ。その痛々しさに回れ右をしたくなった。それを克服すれば、ある程度落ち着いた描写になる。
 プレーヤーは、キャラメイクや装備、飲食物の売買をログアウトした編集場面で行い、迷宮探索時はログインして生身で行う。このイン・アウトする部屋からの脱出が、この物語の主題。
 第一話から不鮮明な描写のオンパレード。MMORPGの経験がない読者には、意味が通じ難い描写が多々。『パーティー勧誘』や『アイテムの受け渡し』のやり取り等。
 MMOの知識を会話で説明しているだけで、肝心の物語が存在していない。
 第二話まで読み、そう判断して切った。
 MMO経験者が「あるある」と納得して読むのなら楽しいのかもしれない。しかし個人としては読むに到らない。回避推奨。


鍛冶屋とかはじめてみました

2011-12-27 18:00:00 | オリジナル作品

原作名:オリジナル
作者:あああ
最終更新日:2011年12月24日 2012年1月4日
評価:D
サイト:小説家になろう
    http://ncode.syosetu.com/n7531t/

[あらすじ]
 街から離れた場所に住む優秀な鍛冶師。しかし中身は、この世界に酷似したMMOのプレーヤー。元の世界に戻る手立てが見つからないため、鍛冶師で食っている。
 そんな彼に舞い込んだ大口の依頼。領主に献上した武器が気に入られ、兵士の装備を彼の作品で統一したいとか。
 その材料と食料の調達に、いつもの街へ出向いた際に聞かされる嫌な話。魔王の復活。
 あまつさえ、街で唯一の鍛冶師は過労で急死。兵士達の装備は手入れできずにボロボロ。
 思わず手を差し伸べてしまったのが運の尽き。筆頭鍛冶師に任命され、従軍する羽目に。
 主人公は生き延びる事ができるか!?

[文章]
 主人公の一人称と三人称の入り乱れ。最初は主人公の一人称だが、魔王軍との戦争が本格的になった辺りから三人称に切り替わっている。人称を切り替えた辺りから、魔王軍との戦争から描写が駆け足になり、上滑りな感じに。

[総評]
 憑依かトリップ物。『小説家になろう』ではMMO物、特にVR(ヴァーチャルリアリティ)のキャラに憑依する作品が人気のようだが、これもそんな一つ。
 貴族・準貴族に対する主人公の慇懃無礼さが鼻につく。封建制の社会だから、平民の主人公が貴族にへつらうのは良い。ただし主人公の態度は卑屈にして無礼のレベル。読んでいて不快な気持ちになる。
 「普段卸している製品は+1や+2だけど、その気になれば+10だって簡単に作れるんだぜ!」な自画自賛も読む気力をへし折ってくれる。
 しかしそれさえ乗り越えられれば、後はそれなりに読めるだろう。
 戦う能力もある主人公だが、専門は武具の生産。魔王軍の侵攻に抵抗するため、国の筆頭鍛冶師に任命され、あれやこれやで軍略に関わる製造にも手を出していく。しかも金属製品だけでなく、弓矢のような非金属製品、魔法的なアイテム、橋や砦などの設計と建造まで幅広く。しかも本職の軍人よりも軍略に優れる軍師ぶり。
 人によっては楽しく読めるだろう。
 が、残念ながら挫折。「こんなこともあろうかと」と、次から次へアイテムを出し続ける主人公に、嫌気が差してしまった。製造できる幅がもっと狭ければ楽しめたろうに、と思った作品。