原作名:オリジナル
作者:まいまいഊ
終更新日:2012年3月21日 2013年3月29日
評価:C
サイト:小説家になろう
http://ncode.syosetu.com/n7609p/
[あらすじ]
今日も今日とて電子顕微鏡で微生物のサンプルを観察していた主人公。ふと、映像の中に現れる人型の影。
何事かと思い見直そうとすれば、視界は真っ白な世界に。なぜか電子顕微鏡の中に入ってしまったらしい。そして神を名乗る存在の登場。結論:神の大きさは微生物並みだった。
元の場所に帰す力は所轄違いのため神には無く、やむなく特典能力をもらい、その神の管轄内の世界の一つに漂着。そして早速始める微生物観察。親切な通りすがりが声をかけても聞く耳持たず。
異世界に漂着した元院生が、戦いも開発も内政も食事改革もせず、ひたすら微生物を観察していく話。
[文章]
三人称。たまに誤字。書き慣れていて文章の質は高い。ツボも押さえていて、狙った箇所でくすりと笑わせる技術もある。最新話に近づくにつれ、文字数の減ってきているのが気になるところ。
[総評]
異世界漂着物。微生物の観察に寝食を忘れ、命を賭けると言い切る自他共に認める変人の主人公。もらった異世界特典も、裸眼で微生物を観察できる視力。ただしどこかのコミックのようにデフォルメはされず。会話能力は勧めたらけれど却下。
異世界到着して早々、人里を探す事すらせずに微生物観察と、実に趣味の世界を独走。いつの間にか一夜明けていました。日蔭や部屋の角や水たまりの隅にしゃがみこみ、ぶつぶつと呟く23歳(女)。近づきたくはないけれど、キャラとしては立っていて面白い。
主人公の脇を固めるキャラも良い味を出している。主人公を拾った苦労人な竜人に、主人公より常識人な水の精霊。主人公に興味を持ったらしい女たらしの冒険者と火の精霊など。
日雇労働者派遣業のギルドあり。ランク制度とランク別クエストはなさそう。ただし登録手続きは、書類記入とオーバーテクノロジーな機器で生体認証。ありがちな登録者割引制度あり。この辺の設定は残念。初仕事はヒヨコの雌雄の選別。
開発はしても量産・販売はせず、戦闘は遥か遠くから見物するだけ。ひたすら趣味の微生物観察に走る主人公の奇行に振り回される周囲と、色々と観察・考察を重ねる設定語りが面白い作品。何気に絵も上手かったりする。
原作名:オリジナル
作者:彩守るせろ
終更新日:2012年3月22日 2013年3月13日
評価:D
サイト:小説家になろう
http://ncode.syosetu.com/n7250bb/
[あらすじ]
異世界の食堂で働く医大生の主人公。この世界の医療は、治癒の魔術か神の奇跡の祈道で果たされるため、魔力を持たない主人公に立ち入る隙はない。そのため、自分の居場所はどこかと、厨房を切り回ししながら絶賛モラトリアム中。
そんな折、何者かに召喚された魔物が街中に出現。たまたま居合わせた騎士達により、あっさり魔物は討伐されるも、それを境に付近住民の間に謎の疫病が発生する。
治癒魔術なら半々、祈道だと一時的な緩和しかできない病気に、職場の知人らが弱っていく。中途半端な医療知識しかないのを自覚しつつ、主人公は治療法を求め立ち上がる。
[文章]
三人称。読点「、」を振る位置がおかしく読み難い。表現も回りくどい。「~だが、しかし~」と逆説詞の二重使いを定型として多用。描写自体は悪くないはずなのに、これら三点のせいで、全体的な文章が台無しになっている印象。作者氏の持ち味と称する事もできるが、テンポの悪さは受け入れられなかった。
[総評]
異世界漂着物に、医療サスペンスっぽい要素を加えたもの。言語に問題がない以外、主人公にはありがちな異世界特典はなく、魔力すらない。あるのは元の世界から持ってきた知識のみ。
剣と魔法のファンタジー世界なのに、コンロや冷蔵庫・冷凍庫は普通に存在する。詳しい描写はされなかったが、現代日本のレベルのキッチン周りは揃っているらしい。魔具師、いわゆるマジックアイテムの製作が職として成り立っているので、そういう品なのだと思われる。それでいて、医療に関しては治癒魔術が祈道士頼みで、解剖学すら始まっていない状態。実にちぐはぐな世界感。それもそのはずで、実はこの世界は……という種明かしもある。
魔物の出現と疫病の相関関係を、主人公が突き止めるまでは、二種類の治癒魔法の設定の考察なども含めて楽しめたのだけど、締めが残念すぎた。再度の魔物の出現と、苦戦する騎士団、増える一方の病人。主人公ないし知り合った騎士らが、逆転の奇策を見つけるのかと思いきや、今まで名前しか出てこなかった人物が全てをかっさらってしまう。
一大決心をして事に当たった主人公や、それに協力した皆の努力が空回りで終わってしまったのは、作品としていかがなものか。
第一節が終わったばかりなので、以後の展開に期待したい作品。
原作名:オリジナル
作者:にんぽっぽ 七沢またり
最終更新日:2012年3月24日 完結済
評価:C
サイト:小説家になろう
http://ncode.syosetu.com/n5240bc/
[あらすじ]
住んでいた村が焼かれ、親兄弟・村人全員が殺害された中、役立たずだからと小屋の中に放置され、生き延びていた少女。あるのは死への恐怖でも生への執着でもなく、お腹一杯ご飯を食べたい飢餓感。
そして食べてしまった死神っぽい何か。その後に何が起きたか、知るのは少女のみ。
村を襲った賊――解放軍兵士――の首と引き換えに、食事を求めて少女は王国軍へ志願。功績を上げて出世していく。
後の世に『死神』の二つ名を冠せられ、恐れられた少女の戦記。
[文章]
三人称。たまに誤字。少々設定語り――特に王国・解放軍以外の国の説明――が長いと感じたが、許容範囲内。会話文だけで長々と続くのでなく、時折地の文を混ぜてテンポを変えているなど、文章力は高い。
[総評]
戦記物。暗愚な王と佞臣達により国の中枢から腐敗した王国と、そんな王国打倒を掲げる元王族の娘率いる王都解放軍。両軍による内戦をメインに、その周辺国家の動向などの描写もあり、読みでがある。『職業は何を? 勇者です。』で登場した街や教団の名前も出てくるが、本編には絡まない様子。
現段階で登場している王国軍の大将勢が、前線に出ると脳筋になるところに違和感。間諜を使っているのが解放軍の軍師だけで、王国軍がその手の人員を手配していないところにも無理を感じる。それでいて、解放軍の稚拙な作戦なぞ数で押せば踏み潰せると、満足な作戦も立てずに突撃するのだから、ボロ負けは必然。
そんな負け戦の中、毎回のように最前線に取り残される主人公。手元の僅かな戦力でしんがりを務め、本隊の撤退に貢献する。しかも直上の指揮官は必ず戦死。このパターンが多い気がする。
パターン化しているきらいはあっても、両軍の上層部の軍議描写や、解放軍が綺麗事だけで決起しているのでない描写もあり、読んでいても飽きが来なのが良い。主人公の動機が満腹になるまで食事を摂る事と一貫し、上層部の思惑や世情に流されずにいるのも高評価。
追っている戦記物のほとんどの更新が停止しているため、この勢いを殺さず、最後まで走り抜けてくれるのを期待しているた作品。
[2013年2月25日追記]
書籍化されています。
[2013年3月26日追記]
一部修正しました。
2012年3月15日、『にじファン』の運営『にじファン/NOS』(以下、NOS)が通達を出した。
『にじファン/NOSから極めて重要なお知らせ』
http://nizisosaku.com/nizi/news1/
===引用開始↓
(前略)台詞や文章を原作から多数引用した作品や実在人物を題材とした作品に関する情報提供が増加しております。これらの作品の中には以前より二次創作物作成の禁止を明言されているコンテンツホルダー様関連作品の二次創作物も含まれており、今後にじファンの運営継続の上で重大な問題となるものと判断いたしました。
つきましては、にじファン/NOSでは本日、平成24年3月15日付けで公式サイト等でテキスト形式の二次創作物作成の禁止が明言されているコンテンツホルダー様関連作品の投稿を全面禁止致します。また、実在する人物(歴史上の人物を除く)を基にした作品に関しても本日より投稿を全面禁止致します。
===↑引用終了
セリフや文章の盗用に一々対応し切れなくなったため、一斉に禁止と削除の方向に舵を切ったようだ。
残念ながら「なるほど」と納得せざるを得ない心境だ。このブログでも、運営に削除された盗作小説を紹介したし、商業作品から文章をほぼコピー&ペーストで書いていた作品も見かけた。それ程に文章盗用が氾濫する環境だったのだ。ちなみに運営には、盗用は見かける都度報告している。
勿論、禁止までやる必要はなかったと、一抹の不満があるのは否定しない。文章盗用の作者と作品名、削除理由をリスト化し、見える場所に掲載すれば、一罰百戒の効果は期待できたかもしれないし、それでも効果がなければ、改めて一斉に禁止しても良かっただろうに、と。
あくまで外野の意見で、内部事情はもっと複雑なのだろうとは、想像に難くない。
これにより、相当数の二次小説が『にじファン』から消えると予想される。実際、お気に入り登録している作品が次から次へと打ち切り完結となり、作者諸氏が軽い恐慌状態を起こしている様子が伺える。
気の早い作者氏は、早々にArcadiaに作品を掲載し、感想で散々に叩かれた挙げ句、逃げ出しているのも確認している。他の小説投稿サイトに移動しているのも見かけているが、一部の例外を除けば『にじファン』レベルの文章力と内容がよそで通じるとはとても思えない。大半の作品は再投稿できる場もなく消えてしまうのだろう。残念である。
『にじファン』での二次創作禁止は、当ブログにも影響がある。紹介した作品の何割かは『にじファン』からなので、読めなくなってしまうのは悲しい。
『小説家になろう』はともかく、『にじファン』はしばらく静観しようと思う。
原作名:オリジナル
作者:月野安積
終更新日:2012年3月13日 2013年2月5日
評価:C
サイト:小説家になろう
http://ncode.syosetu.com/n1658bb/
[あらすじ]
帰宅途中、謎の穴に落ちてしまった社会人。なぜかそこは異世界で、身体はドラゴンになっていた。
食料を求めて穴を出、発見した遭難者と、いつの間にか身に着けていた人化の術。遭難者を村に運び、そのままその村で普通に生活を開始。
村の生活に馴染んだ頃、大事なお客の迎えに送り出されれば、いきなり向けられる剣。
この国の王族でした。確かに大事な客。
そして王族の持ってきた頼みは、間もなく孵化する竜の卵の面倒を見る事。
竜と契約し従えたい王族と、関わりたくない主人公、孵化の間近に迫った卵が、雪に閉ざされた寒村で一冬を迎える。
そこで起きるのは抗争か喜劇か悲劇か。
[文章]
主人公の一人称。番外編で三人称、別話で他者視点の一人称あり。誤字脱字は少なく、一人称の話は読み易いのだけれど、三人称の番外編は読み難い。目線があちこちに移動し、主語が誰のものなのかが分からない。
[総評]
『俺、竜!』がタイトルを変更したもの。第一章が終わったので再評価。
異世界転生物。出だしのテンションにやや抵抗感を覚えた。シリアスなのか、滑ったギャグを連発するコメディなのか、読み取れないため。
シリアス傾向にあると分かると、今度は主人公のぐるぐる回る悩みが鼻に付き始めた。葛藤描写はもう少し薄口が好みだったかも。良く言えば、モラトリアムに苦しむ主人公を良く書けている。悪く言えば、状況に流されるだけで主体性に欠ける主人公が、内心で愚痴を垂れ流しているだけ。人とは契約しないと言いながら、人を乗せる飛行訓練には同意するなど、言動がちぐはぐなのも、悪い方の印象を強調している。
以前の短評で、人化しては人外設定が台無しと書いたが、人と竜の姿を取れるからモラトリアムを起こす原因となっているので、死に設定ではない点には好感が持てた。この部分は訂正する。
第一章の最後で主人公は旅立ち、次章からは大きな街に場面は移る模様。何やらギルドに登録して仕事を斡旋してもらうとかで、『小説家になろう』クオリティのランク制度採用のなんちゃって冒険者ギルドでないのを期待するばかり。