ビアドロローサとは、イエスが死刑の判決を受け、茨の冠をかぶせられ、自ら十字架を背負って歩いた道のことです。旧市街イスラム教徒地区からキリスト教徒地区へと続くおよそ1キロほどの道です。14留(14ステーション)があります。
出発点はローマ総督ピラトの官邸、終着点はゴルゴダの丘です。イエスはゴルゴダの丘で磔刑されるのです。
ゴルゴダの丘とされる場所には、現在、聖墳墓教会があります。
ビアドロローサの14ステーション
1 イエス、死刑判決を受ける
2 イエス、十字架を背負わされる
3 イエス、十字架の重みで倒れる
4 母マリアが十字架を背負ったイエスに出会う
5 シモンがイエスに替わって十字架を背負わされる
6 女性べロニカがイエスの顔を拭く
7 イエス、2度目に倒れる
8 イエス、悲しむ女性たちを慰める
9 イエス、3度目に倒れる
10 イエス、衣を脱がされる
11 イエス、十字架に付けられる
12 イエス、十字架上で息を引き取る
13 アリマタヤのヨセフ、イエスの遺体を引き取る
14 イエス、埋葬される
(10から14までは聖墳墓教会のなかにあります)
第2ステーション 鞭打ちの教会 有罪に定められローマ兵に鞭で打たれたところです。
ゲッセマネで逮捕されたイエスは、エルサレムの大祭司の官邸に連行されます。
そこでは、正式な裁判が始まる前に、祭司たちは有利な証言を引き出すことを目論んでいました。
彼らは、イエスが神を冒涜した容疑を立証しようとして証拠を求めていました。
イエスが神殿を壊して、三日で立て直すということを二人の人が証言した。しかし、この件について証言は一致せず、有罪は立証できませんでした。
イエスに「神の子キリスト」であるかどうかという質問をします。
イエスはそれに対して、自らが権威をもって人間を裁くために天から地上に戻ってくる神であること意味する答えをします。
それを、聞いた祭司は自分の衣を引き裂いて、イエスが神を冒涜したことを宣言。
そして、議員は一致して、死刑に相当すると答えました。
その後、神殿警察がイエスの権威を失墜させるために、イエスを取り囲んでつばきをかけたり、こぶしで殴りつけたりしました。
すでに、夜明け前にイエスの死刑を決定していました。しかし、死刑の決定は昼間しか下せなかったので、夜が明けてから、刑を確認して、再協議を始めます。
議員は、ローマのパレスチナ行政官の総督ピラトから死刑の判決を引き出す方法を協議して、危険人物であることを印象付けるために、イエスを捕縛して、イエスの身柄をピラトに明け渡します。ユダヤ人には死刑を決定して執行する権限がなかったからです。
イエスはピラトの前にたったが、ユダヤ人たちは異邦人の家に入って穢れることを避けるために官邸には入りません。ピラト自らユダヤ人にもとにやってきて、イエスの告発の理由を尋ねます。
ピラトはユダヤの律法によって裁くことを勧めたが、ユダヤ人たちは、イエスが反逆者で死刑に相当する罪を犯していることを訴えます。
ピラトはイエスに、ユダヤ人の王であるかと尋ねます。
イエスはその通りであると答えます。
その後、ピラトは官邸でイエスにユダヤ人がイエスを告発した本当の理由を尋ねました。イエスは自らが真理をあかしするためにこの世に来た王であることを告げました。
官邸でイエスを尋問した総督ピラトは、イエスに死刑に相当する罪を見出せませんでした。しかし、祭司長や群集は納得しません。
そして、イエスがガリラヤ領民であることを知って、ガリラヤの国主ヘロデがエルサレム滞在中なので、ピラトはイエスを、ヘロデに裁いてもらうために送ります。
ヘロデは、以前からイエスに会いたいと思っていたので大変喜びました。ヘロデはイエスを質問攻めにしましたが、何も答えません。そこで、ヘロデはイエスを嘲弄して、派手なきものを着せて総督ピラトに送り返します。
再び、総督官邸に戻ってきたイエスをピラトは釈放しようと考えていました。ピラトの妻もイエスについて悪夢を見たので釈放するようにお願いしていました。そこで、過越祭の恩赦によってイエスを釈放しようと考えます。
そして、群集の前で、イエスか強盗犯のバラバのどちらかを釈放したらよいかと問います。ピラトの予想に反して、群集はバラバを釈放するように叫びました。
それでも、ピラトは懲らしめて釈放すると告げ、そこで、イエスに鞭を打った後に、いばらの冠をかぶらせ、手に葦の棒を持たせ、緋色の着物を着せて、イエスの前にひざまずき、「ユダヤ人の王様万歳」と叫んでからかったのでした。
それでも、群集はイエスを十字架につけろと叫びます。
暴動になりそうなので、ピラトはイエスを外に引き出し、皆の見ているところで手を洗って、「この人の血については私には責任がない。」と宣言し、バラバを釈放して、イエスを十字架につけるように兵士に引き渡します。
ローマ兵に担ぎ出されイエスにユダヤの群衆が騒ぎたつ様子と潔白を主張して手を水に浸すピラト
ピラトは手を洗って自分に責任がないことを示そうとしました。しかし、彼は無罪を知りながら、人々を満足させるために不当な死刑判決を認めたので『最も愚かなジェスチャー』と揶揄されています。群集の要求に応えてやむをえずイエスの処刑に踏み切ったとありますが、ピラトの動機には自分の政治生命を守ることで、ローマにユダヤの情勢が伝わらないようにしたいという願いがあったとされています。
しかし、こうしてイエスを殺したのはユダヤ人であるという事実は、後に、ヨーロッパ・キリスト教社会において、ユダヤ人差別へとつながっていったのかもしれません。
バラバの赦免
過越し祭のたびの慣例となっていた罪人の恩赦にあたって、総督ピラトはイエスの放免を期して、バラバかイエスかの選択を民衆に問います。しかし、そそのかされた群集はバラバの赦免とイエスの処刑を要求。
ピラトは不本意ながらこれに従ったため、バラバが釈放されました。
ピラトがイエスを指さして言った「エッケ・ホモ」(この者を見よ)アーチ