そこで、「純恋」はオリジナルのアクセサリーを作り、その売り上げを「イルカセラピー」の資金にすることを思いつく。
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母良子:“今ね、ちょっと言えないけど、すごいことこれからするの。”って言われたんですよ。
それで、“それはね、お母さんも絶対「賛同」すること”って言われたんですよね。
“えっ、それはどういうこと?”って言ったら、“今は、まだちょっと言えない”って言われたんです。
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「純恋」は、母を驚かせたかった・・・。
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自分は、ただ華やかな世界を謳歌(おうか)しているだけではない。母から教えられた「思いやりの心」もちゃんと持ち続けている。
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しかし・・・
この頃から、体に「異変」が・・・
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モデルとボランティアに忙しいのに、なぜか熟睡できず常に「眠い」・・・
当時のことを「純恋」の先輩モデルの「早川沙世」さんは、こう語る。
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沙世:ちょっとなんか体調おかしそうだし、悪そうだなって想って、その日終わるのを待って、一緒に家に帰って・・・
だから、家に来ても、とにかくずっと寝てるんですよね。ずぅ~っと寝てて、とにかくよく寝るな、と・・・。
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そんな体調の中でも、「純恋」はイルカセラピーの開催のために奔走(ほんそう)していた。
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資金を得るためのアクセサリーは、何度も何度も「試作」を重ねた。
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そして、実際のイルカセラピーの視察を兼ねて、ボランティアとして参加。
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イルカと触れ合う子どもを見て、確信した。
“私のやろうとしていることは、無駄じゃない。”
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イルカセラピーの支援をしている日本児童家庭文化協会の「荻田」さん。
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荻田:いきなり家族の所にテテテと走っていくわけではなくて、そ間合いを少しずつ詰る感じだったんですね。
イルカさんと遊んでいる子供さんの近くで、“楽しいね”とか“楽しい?”とか声かけるのがすごく自然で、それに対して子どもは必ずしもレスポンスを返す訳でなないんですが、それでも話しかけ続けているってところが、すごく素晴らしいなと想いました。
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アクセサリーが完成すれば、もっと多くの子どもを笑顔にして挙げられる
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「純恋」は、希望に燃えていた。
しかし、5月になると体調はさらに悪化する。
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5月8日、9日と二日連続で「頭痛」に悩まされていたことをブログに書いた。
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そこで、いったん休みをとり、岩手の実家で「静養」することに。
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母:その時も、いつもより口数が少なかったので、何か心配だって言ったら、“大丈夫だから”って感じで“だってね、お母さん。私5箇所も病院行って、みんな偏頭痛とストレスなんだよ”って言われて・・・。
2009年6月2日、「純恋」は母に見送られて、東京へ戻った。
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それが、母が見た「純恋」の最後の姿だった・・・。
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イルカセラピーのために作ったアクセサリーの試作品が完成、「純恋」のチェックを待っていた「6月10日「純恋」は初めて撮影を無断で休んだ。
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深夜になって「純恋」の自宅をマネージャーが訪ねた。
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インターホンに応答がなく、ドアの鍵が開いていた・・・
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「純恋」の体は既に冷たくなっていて、揺り動かしても反応しなかった・・・。
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すぐに母に連絡が行った。たまたま東北に出張していた事務所のスタッフが母を連れて東京へ急いだ。
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母:もし、それがなかったらもう医師の方の立会いの時に立ち会えなかったんだろうなぁと想って・・・
安里沙が待っていた
待っててくれてたんだなって、そのとき想いましたね・・・。
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2009年6月11日未明、「純恋(石川安里沙)」21歳の死亡が確認された。原因は「脳出血」だった。
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最後となった「6月2日」のブログには、こんな言葉が残されていた。
皆様、ホントにホントにホントにホントに本当~~~に、
ありがとぅございました
そこに添えられていた「最後の写真」は、ウェディングドレス姿だった。
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「純恋」が手にすることのできなかったオリジナルアクセサリーは、7月24日に販売が開始されると、予想を上回る注文が殺到、収益はすべて「イルカセラピー」に寄付された。
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その資金をもとに、10月25日イルカセラピーに難病や障害のある子どもたちが招待された。
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イルカと触れ合った子どもたちは、笑顔にあふれていた。
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こんな絵をかいた。
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一方、母は「純恋」の死後、初めて娘が障害者の支援をしようとしていたことを知った。
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母:たぶん、安里沙はそんなにすごいことをやったとは思ってないかもしれないすね。
煌びやかな中にいても、そういうボランティア精神は忘れずに、ちゃんと心の中に置いていたんだなって思ったので、偉いと思いましたね。
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「純恋」の想いを知ったモデル仲間も立ち上がり、障害のある子どもたちとその家族のお世話をしている。
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沙世:それだけでも、気持ち的に一緒にやっているような感じなんで、
まだ一緒にやれてるんだね
ってゆう、優しい気持ちになれましたね・・・
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私にも何かできるはず
「純恋」の想いは、心を動かし、人を動かした。
誰もが人の役に立てることがある
と、「純恋」は私たちにメッセージを送り続けている。
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「6月2日」のブログには、「25000件」を越える「コメント」が書き込まれ、それは今も増え続けている。
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