映画と音楽そして旅

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時には新しい映画も…

(バーチャル・ツアー)「あずさ2号で信濃路へ」③

2006-06-02 00:04:24 | 旅 おでかけ
 それにしても私がなぜ今、信州なのか…それは前にも触れたように「狩人」の「あずさ2号」の影響もありますが、その原点を辿って行くと…それは少年時代に遡ります。。
 あの頃NHKラジオ歌謡に『山小屋の灯火(ともしび)』と云う歌がありました。
「たそがれの灯火は ほのかに点(とも)りて 懐かしき山小屋は 麓の小路よ」
  何番目かは忘れましたが、こんな歌詞が続きます。
  「暮れ行くは白馬か 穂高はあかねよ …(以下略)
 ここで北アルプスの主峰「白馬」「穂高」の名が鮮明に刻みこまれました。
 
 もう一つ伊藤久男の「高原の旅愁」と云う歌もありました。
  「昔の夢の懐かしく 尋ね来たりし信濃路の 山よ小川よ また森よ…」
 
 その後に読んだ宇野浩二の小説「山恋ひ」の冒頭の引用文が気に入りました。
  「北に遠ざかりて 雪白き山あり…」(小島鳥水「日本アルプス」より)
 この小説は主人公の青年の山を愛する気持ちと、信州で知りあった一人の女性への尽きせぬ思いを綴った作品ですが、アルプスや諏訪湖畔あたりの風光が美しく描かれて、私の未知の世界への憧れを増幅しました。
 
 北アルプスへの憧れを決定的にしたのは、井上靖「氷壁」でした。何度も読み返してぼろぼろになってあちこちを、テープでつくろった本は手元に今でも残っています。奥付けには「昭和32年11月8日第3刷発行」定価は「参百壱拾円」と書いてあります。
 パラパラとぺージをめくって見ると…
 冬山に挑む山男の魚津と小坂…小坂が愛した美しい人妻 美那子…魚津を慕う彼の妹 かをる…しかし魚津の心も美那子に…そして切れたザイルの謎…詳しいストリーは原作を読んで戴くとして…上高地や前穂高東壁などを、舞台として物語は展開して行きます。
 まだ二十歳を過ぎたばかりの私が、この二人の山男と女性そして雄大な北アルプス連峰に、なにか強い印象と憧れにも似た気持ちを持ったのも…それは自然なことでした。
 
 映画も見ましたがキャストは菅原謙治と、山本富士子だったかと記憶しますが、私には映画よりもやはり原作の方がよかったと思いました。
 最近NHKでも同名のドラマが放送されたようですが、お相手がヒマラヤK2など8000m級の山で、どうも別の話しみたいですので見ないで終わりました。

 あれから長年にわたり暮らしに追われるまま、心の奥底に眠っていたなにかが突然目を覚ましたのは…やはり、あの「あずさ二号」の歌声でした。こんな要因が相重なって信州への思いを、尚一層深めていったものと思います。
 
 人それぞれ…、過ぎし日の尽きない思いをのせて、列車はひたすら甲州路…そして信濃路を目指し駆けて行くのでした。