映画と音楽そして旅

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(CD雑記帳) タンゴ「碧空」 (アルフレッド・ハウゼ・タンゴ・オーケストラ)

2006-01-30 00:10:54 | 音楽
  <魅惑のムード・ミュージック・CDアルバム>より
 雪が多い今年ですが今日は久しぶりに、紺碧に澄み渡った青空が覗きました。冬の透き通った大気の中で聴くのには、少し古いですがちょうど良い曲があります。それはアルフレッド・ハウゼ・タンゴ・オーケストラが演奏するタンゴ「碧空」です。
 戦時中には英米系の洋楽は敵性音楽として、聴くのは勿論のことレコードを持つことすら、禁止されていた暗黒の時代がありました。戦前からジャズにかぶれていた人達は、当時は同盟国として共に戦っていたドイツやイタリアの音楽に、抑圧された音楽熱のはけ口を求めました。
 南国の情熱を秘めたアルゼンチン・タンゴは、戦前に遥か大西洋を越えてヨーロッパに渡り、やがてドイツ・タンゴまたはコンチネンタル・タンゴとして、洗練されたスタイルとセンスに溢れたミュージックとして生まれ変わりました。
 タンゴ「碧空」は戦前、戦中は勿論のこと、敗戦国として復興の道を歩む戦後の日本やドイツの人々に、絶えず生きる喜びと勇気を与え続けて来た不滅のヨーロッパ・タンゴの一つです。
 
 雲一つない穏やかな大空を思わせるような静かで快い序奏から始まり、それが徐々に高まって行き、やがてそのリズムが最高潮に到達すると‥それがまた急にトーン・ダウンして‥わずかな余韻を残しながら消えて行き‥‥再び訪れる静寂の世界‥ 
 アルフレッド・ハウゼとか、リカルド・サントスなど、ドイツ系のオーケストラはリズミカルな流れの中で、チラリと感じる知性のかけらみたいなもの‥‥そしてまるで少年時代にでも戻ったような、郷愁みたいなもの‥ドイツ・タンゴは今ではすっかりと、私の心のふるさとみたいなものになりました。
 少し苦味走ったマスクで女性方にも人気のあった、アルフレッド・ハウゼ氏の他界は昨年でしたが、それにつけても一入寂しさを感じるこの頃です。