映画と音楽そして旅

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(映画音楽) ( 53) 映画「「追憶」より

2006-01-02 06:17:57 | 映画音楽
      美しい追憶よ
      ただ傷つくだけの思い出ならなら忘れたい
      幸せに満ちた回想だけを胸に
      懐かしい青春の日よ
 何か近年の私の気持ちを表現したような、センチメンタルな歌詞の主題曲が流れて、この1973年の映画「追憶」はラストとなります。
 新しい年を迎えるたびに今までの、我が人生の軌跡を振り返って見て、この歌詞と同じような思いが深まります。
 自らの理想を絶えず追い求め、自分の信念に忠実に生きた女性の、愛と苦しみの歴史をテーマにした映画です。そして彼女を女性として愛しながらも、やがて別々の道を歩まねばならなくなった男性の、愛と苦渋の物語でもあります。
 1930年代のニューヨーク‥貧しい女子学生ケーティー(バーブラ・ストライサンド)はバイトをしながら「スペイン内戦反対」などを学生仲間に叫びます。
 1940年代‥第二次大戦中は、ラジオ局に勤めながら「米ソ協調」を‥
 1950年代‥米ソ冷戦の時代‥相変わらず彼女は思想的に左翼寄りの理想論を展開して富裕階層の人たちを敵視します。
 戦時中に再会した学生時代の友人、ハベル(ロバート・レッドフォード)との楽しい愛の日々‥自己主張は堅持しながらも、優しさとか心づかい‥とか、彼のために魅力ある女性になろうと努力しますが‥この時代にアメリカ全土に吹き荒れた、
マッカーシー旋風‥つまり左翼思想弾圧の風潮が二人の人生を変えます。しかし二人の間にはすでに‥‥
 彼女が人生で最も幸せを感じた日々‥それは冒頭の歌詞のようにあの「懐かしい青春の日々」だったのかも判りません。
 
 離婚後も相変わらず「原爆反対」の活動に励むケィティーは、新しい妻を連れたハベルと再会します。二人はハベルの妻の前で、懐かしさのあまり思わず抱き合い、改めて紹介された二人の女性はしっかりと握手します。
 一人で歩みよってきたハベルに彼女は「いい奥さんね、家へ連れてきたら‥」「そうはいかんよ‥」「そうね‥」などと、さりげない会話のあと子どもの無事を確かめて、彼は妻の方へ立ち去ります。
 このラストはカトリーヌ・ドヌーブ「シェルブールの雨傘」での、あの雪の日の再会‥感動的なラストを思い起こすような良い場面でした。
 ラストに流れる主題曲はプロの歌手であり、この作品の主演女優でもあったバーブラ・ストライサンドが歌って、アルバム売り上げ全米第一位の記録を立てたと云われます。
 この主題歌のように楽しい思い出だけは、いつまでも懐かしい追憶の断片として、心の片隅にでも残して置きたいものですね。