映画と音楽そして旅

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(映画音楽) ( 56) 「ジェルソミーナ」(映画「「道」)

2006-01-10 00:05:48 | 映画音楽
 敗戦国の混乱と悲哀をリアルな目で描いた、イタリアン・リアリズムが苦手で私はヴィトリオ・デ・シーカ監督作品の「自転車泥棒」以来、長年間にわたりイタリア映画を敬遠してきました。
 1957年に製作された映画「道」は従来のイタリア映画の路線を、大きく転換した作品として注目を浴びました。
 そうかと云って急にイアリア映画を観た訳でもなく、そのまま数十年の歳月が流れてこの映画を観たのも最近のことです。
 貧しいイタリアの娘ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は大道芸人のザンパノ(アンソニー・クイン)に売られます。早く一人前になって親に仕送りをしようと頑張りますが、芸を教えるザンパノは粗暴な男で、ともすれば挫折しそうになります。ある日綱渡りの男イル・マットと知り合いますが‥。
 マットの死後に元気をなくした彼女を彼は持て余しを置き去りにしますが、その時に彼女が愛用していたトランペットをそばにそっと置いてやります。ザンパノにちょっとだけ良心が戻ってきた瞬間でしょうか。
 その後彼女の死を知った彼は初めて自分が「孤独」なったことに気づいて、夜の海辺で泣きじゃくりますが、このとき初めて獣のような彼がやっと、純粋な聖女のような彼女に近づいていくことが出来たのだと思います。

 フランス映画の「禁じられた遊び」が戦争の哀しい現実をを描きながらも、そこには何か詩情が漂っていたように感じたのは、やはりあの主題曲「愛のロマンス」が大きい役割を果たしていたのではないだろうか‥と思います。
 この「道」も「ジェルソミーナ」という主題曲の哀切な調べに、しっとりとした余情が感じられたように思います。
 戦後の一時期には日本と同じ敗戦国として、その貧困と混乱を余すところなく訴え、我が国でも大きい共感を持って迎えられましたが、その頃はそれなりの役目を果たしたイタリア映画の傾向も、時代の変化と共に転換して行った記念すべき作品といわれるのも理解できるような気もします。
 私が長年のタブーを解禁して近年になって観た最初のイタリア映画は、ソフィア・ローレンの「ひまわり」ですが、この映画に惹かれたきっかけは彼女が1950年代のスターであったということの外に、あのヘンリー・マンシーニ作曲の心に沁みるような主題曲でした。
 ザンパノ役のアンソニー・クインは私も名前程度は覚えていた、1950年代からのハリウッド・スターですが2002年の、「ザ・ガードマン」とか言う作品に出ているそうで息の長いこと感心します。
 エヴァ・ガードナーと共演した映画を観たいな‥と思ったことがありますが、肝心の映画のタイトルが思い出せないのはどうも残念なことですね。
 この映画がいままであまり観てこなかった、イタリア映画を見直すきっかけになればいいがな‥と思ったりしています。