【ユーザー】TISは、マンション建設最大手の長谷工コーポレーションが、マンション事業を支える重要データ(設計図面・現場写真)等が保存されている情報系システム120台のサーバ統合プロジェクトを全面的に構築し、第1段階のシステムが09年4月にカットオーバーしたことを発表した。 今回のサーバ統合プロジェクトでは、対象サーバ120台を2011年の秋までに3段階に分けて統合していく予定だ。第1段階の統合ファイルサーバの構築によるプラットフォームは、09年4月にシステムがカットオーバーし、安定稼働している。今後は既存サーバのリース終了に併せて、第2段階、第3段階で機器増設を行い、新システムへのデータ移行を随時実施していく予定。 (TIS:09年6月22日発表)
【コメント】今回の構築では、サーバ用途、要求性能に応じて、次の4種類の最適なサーバー統合方式を選定して、高い拡張性を持ち効率的で安定運用が実現できる基盤を構築した。
①仮想化集約によるサーバ統合 : 仮想化ソフト+ブレードサーバ+大容量スト
レージ
②物理集約によるサーバ統合 : ブレードサーバ+大容量ストレージ
③機能集約によるファイルサーバ統合 : 大容量ストレージ
④機能集約によるバックアップ統合 : 大容量ストレージ
また、高性能かつ高可用性を兼ね備えた大容量ストレージで全てのデータを一元管理することで、格納される全てのデータに対する信頼性を確保し、サーバ個別のストレージ管理から全ストレージの一元管理を実現。サーバ個別のバックアップから集中的バックアップへと一元化を進めることで管理コストの大幅な削減が可能になった。
今回のプロジェクトにより再構築されたシステムの3年後の全面改定時には、以下のような成果を想定しているという。①サーバ台数への効果:非統合の場合と比較して、1/2以下に集約 ②ディスク容量への効果:非統合の場合と比較して、約40%削減 ③ハードウェア保守コストの約40%削減 ④運用管理業務を一括して実施することによる人的リソースの有効活用 ⑤各サーバ・システムに対する仕様が標準化され、高いセキュリティレベルを確保 ⑥大規模災害のBCP対応の向上 ⑦グリーンIT(CO2排出量)への効果:非統合の場合と比較して、CO2排出量の約60%削減
仮想化によるサーバーの統合は、現在多くのユーザーにおいて検討され、既に統合化を終えたユーザーもある。今回の長谷工コーポレーションの事例は、サーバーの統合化を終え、3年後にはサーバー数を現在の1/2以下に削減の見通しが立っている成功事例である。この事例は、仮想化によるサーバーの統合は一部分であり、物理集約、機能集約によるものが多く含まれることが分かる。
実は仮想化はメインフレームに時代から開発されてきた“古い技術”であるが、企業システムにサーバーが多く採用されている現在、これらのサーバーの機能を最大限に発揮させようということで仮想化技術が見直され、サーバーの統合には欠かせないツールとして、今や企業システムの中心課題にまで上り詰めているわけである。もともと仮想化技術が開発されたは背景は、当時高かった半導体メモリーを何とか
物理的容量以上に使いこなす方法はないか、ということで編み出され苦肉の策であったわけだ。
問題は、そんな素朴な発想で開発された仮想化技術が、だんだんと企業システムの奥深くに入り込み始めたことに一抹の不安が残る。今回の長谷工コーポレーションの事例は、一部に仮想化技術を取り入れた統合化なので問題はないが、“ストレージの仮想化”などというテーマが具体化の段階に入りつつある最近の動きには注意が必要ではなかろうか。企業システムがサーバーはいうに及ばず、ストレージまで仮想化された場合、システム全体としての安定性は保証されるのであろうか。
金融や航空の大規模システムがダウンして社会問題化したことは、つい最近のことである。もし、仮想化されたシステムにトラブルが発生した場合のサポート体制は、誰が負うのか。ユーザーなのか、ベンダーなのか。この辺の問題を曖昧にして企業システムの仮想化を論じるのは無謀としか思えないが、いかがなものであろうか。(ESN)